眼内レンズ業界の世界シェアと市場規模について分析をしています。眼内レンズ大手メーカーであるアルコン、クーパービジョン、カール・ツァイス、HOYA、スターサージカル、ジョンソン&ジョンソン、ボシュロムの概要や動向についても記載しています。
【眼内レンズ業界とは】
眼内レンズ(IOL、intraocular lens)は水晶体内に取り付ける人工水晶体です。白内障の手術で移植される場合が多いですが、最近は視力回復のために移植されることもあります。水晶内に移植するため、半永久的に使用することを前提としたレンズです。
眼内レンズの種類は、近くもしくは遠くの焦点を絞った単焦点眼内レンズと多様な距離をカバーできる多焦点眼内レンズがあります。
【市場シェア】
眼内レンズメーカーの2022年度の売上高を分子に、後述する市場規模を分母にして、2022年の眼内レンズ業界の世界市場シェアを簡易に計算すると、1位はアルコン、2位はジョンソン&ジョンソン、3位はクーパービジョンとなります。
眼内レンズメーカーの世界市場シェアと業界ランキング(2022年)
順位 | 会社名 | 市場シェア |
---|---|---|
1位 | アルコン | 26.78% |
2位 | ジョンソン&ジョンソン | 20.27% |
3位 | クーパービジョン | 16.70% |
4位 | HOYA | 12.71% |
5位 | ボシュロム | 11.15% |
6位 | カールツァイス | 7.30% |
7位 | スターサージカル | 4.41% |
8位 | レイナ― | 0.67% |
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眼鏡レンズ系のプレーヤー(HOYA、カール・ツァイス)とコンタクトレンズ系のプレーヤー(アルコン、ジョンソン&ジョンソン、ボシュヘルス)が上位を競っています。
【市場規模】
アメリカの調査会社Reportlinker.comによると世界の眼内レンズ市場は、2022年の44億3000万ドルから2023年には46億7000万ドルへ、年平均成長率(CAGR)5.5%で成長しました。眼内レンズ市場は、2027年には年平均成長率7.0%で61億2,000万ドルに成長すると予想されています。
2022年の眼内レンズ市場では、北米が最大の地域でした。アジア太平洋地域は、予測期間中に最も急成長する地域となる見込みです。
一方、上述した8社の売上高合計が64.4億ドルとなっていることから、市場シェアの計算上は、便宜的に64.4億ドルを市場規模としています。
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【M&Aの動向】
2017年、ジョンソン・エンド・ジョンソンは、アボット・メディカル・オプティクス(AMO)を43.25億ドルで買収しました。 この買収により、白内障手術やレーザー屈折矯正手術などの眼科製品が取得され、視力矯正製品ポートフォリオが強化されました。AMOは、白内障手術に使用される優れた眼内レンズを提供しており、世界保健機関によると、加齢による白内障によって盲目になっている人はおよそ2,000万人と言われています。
【会社の概要】
Alcon(アルコン、旧CIBA Vision(チバビジョン))
アルコンは、1945年に米国の眼科薬局にルーツを遡ることができ、70年代後半にネスレに買収されたのち、2010年にスイスの大手医薬品会社であるノバルティスが買収をしました。2014年にノバルティスの前身であるチバガイギー(1996年にサンドと経営統合をして現ノバルティスが誕生)のアイケア部門であった、チバビジョンとアルコンが経営統合を行い、現アルコンが誕生しました。2018年にノバルティスがアルコンを分社化上場させ、現在は独立系です。このような経緯から、同社は眼科治療機器を取り扱うサージカル事業とビジョンケア事業の2事業を柱としています。主力ブランドはデイリーズです。コンタクトレンズと並ぶ事業には、白内障(cataract)、網膜(Retinal)、屈折強制(Refractive)等の眼科治療機器や屈折矯正手術の際に角膜と水晶体の間に埋め込む眼内レンズのICL(Implantable Collamer Lens)があります。
分社化ハイライト
2018年に、ノバルティスは、アルコンをスイス証券取引所とニューヨーク証券取引所に分社化上場をすると発表しました。
アルコン分社化
出所:ノバルティス
ノバルティスは、シンジェンタやチバスペシャリティケミカル(現BASF)も過去分社化しており、ポートフォリオの入れ替えによる成長戦略を得意としています。分社化後のアルコンの売上高は約70億ドルで従業員は2万人以上の規模となりました
サージカル事業
白内障、網膜、緑内障、屈折矯正手術用の眼科手術機器、先進技術眼内レンズ(ATIOL)、洗浄液、点眼薬等を取扱っています。眼科手術機器分野の競合には、ジョンソン&ジョンソン、カールツアイス、ボシュロム等があるものの、売上規模では世界1位です。眼科手術機器の市場規模は概ね80億ドルと言われており、市場シェアでは40-50%程度を占めます。
ビジョンケア事業
視力の矯正用のコンタクトレンズ(1日使い捨てタイプ、2週間/1カ月交換タイプおよびカラーコンタクトレンズ)、消毒剤等の製品を取り扱っています。
Cooper(クーパー)
米国に本社を置くコンタクトレンズ・医療機器メーカーです。Cooper Vision(クーパービジョン)がコンタクトレンズ事業を担っており、ワンデーアクエアシリーズを展開しています。眼科治療事業にも強みを持ちます。2014年に欧州のソフトコンタクトレンズの製造販売を行うSauflon Pharmaseuticalsを買収しました。2017年には後発薬大手のテバから避妊具大手のパラガード(Paragard)を買収しています。
カール・ツァイス
ドイツの本拠を置く光学レンズメーカーの老舗です。眼鏡レンズ以外にもカメラレンズや顕微鏡等レンズ分野における技術力の高さには定評があります。半導体製造装置、眼科診断機器等の医療機器、計測機器や顕微鏡なども手掛けています。カール・ツァイス財団(Carl Zeiss Foundation)が株主となっている非公開会社です。
HOYA
HOYAは、1941年に山中氏によって設立された東洋光学硝子製造所を源流とする日本を代表する光学メーカーです。江戸切子職人の技術を承継したクリスタルガラス製造技術から展開していった非球面光学ガラスレンズ、眼鏡レンズ、HDD用ガラスディスクやLCDフォトマスクといった分野に強みを持ちます。さらに詳しく
STAAR Surgical(スターサージカル)
1982年に米国に設立された眼内レンズ製造専門の会社です。
Johnson&Johnson(ジョンソン&ジョンソン)
Johnson & Johnson(ジョンソン&ジョンソン)は1887年にジョンソン三兄弟によって創設された米国に本拠を置く世界最大級の日用品・医療機器メーカーです。医療・衛生用品のバンドエイドや綿棒、スキンケア用のベビーローション、オーラルケアのリステリン、一般医薬品、外科関連の手術器具では圧倒的な強みを有しています。続きを読む
Bausch Health(ボシュヘルス)
ボシュヘルスは1959年に設立されたカナダに本拠を置く皮膚疾患、胃腸疾患、眼科、神経疾患向けの製薬メーカーです。後発薬に強みを持ちます。
Bausch & Lomb(ボシュロム)について
米国に本拠を置く大手コンタクトレンズメーカーです。2013年にValeant Pharmaceuticals(ヴァリアント・ファーマシューティカルズ)が買収し、その後ヴァリアントはボシュヘルスへと社名を変更しました。世界初のコンタクトレンズを製品化したと言われています。主力ブランドにはメダリスト等があります。コンタクトレンズ以外にも、眼内レンズ、眼科手術用機器、眼科用医薬品が事業の柱となっています。
参照したデータの詳細情報について
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