産業・工業用ガスの世界市場シェアと市場規模と業界再編

産業・工業用ガスの世界市場シェア、市場規模、業界再編について分析をしています。エア・リキードが米国のエアガスを買収、リンデとプラクスエアの合併より、グローバルプレーヤー上位2社が覇権を競う時代へと入りました。

産業・工業用ガスの世界シェア

産業ガス会社の各社の2020年度(一部別年度を含む)の売上高を分子に、後述する市場規模を分母に、簡易に2020年の産業ガス各社の世界市場シェアを計算すると、1位はドイツのリンデの28.2%、2位はフランスのエア・リキードの25.4%、3位は米国のエアープロダクツの9.2%となります。⇒参照したデータの詳細情報

2020年の産業・工業用ガス会社の世界シェア

  • 1位 リンデ 28.2%
  • 2位 エア・リキード 25.4%
  • 3位 エア・プロダクト&ケミカルズ 9.2%
  • 4位 日本酸素ホールディングス 7.9%
  • 5位 メッサ―グループ 3.8%
  • 6位 エア・ウォーター 1.8%
  • 7位 インデ・ガス 1.2%

産業ガス業界の市場シェア(2020年)
産業ガス業界の市場シェア(2020年)

世界1位は2019年に続きリンデです。2018年に米国の当時業界3位であったプラクスエア買収しました。2位のフランスのエア・リキードはエアガスを買収し、一時は1位となりましたが、リンデに巻き返された形になりました。既に両社の市場シェアは50%を超えており、今後の成長戦略が注目されます。3位にはエアープロダクツです。上位2陣営との売り上げ規模の差が広がりつつあります。4位に日本酸素ホールディングスが入ります。プラクスエアの欧州事業を買収し、トップ4入りを目指します。

産業ガスは、顧客である化学メーカーの近くにガス生産工場を設けて、パイプライン、タンクローリー、ボンベ等でガスの充填や配給をする地産地消型のビジネスモデルです。そのため寡占が進みやすい傾向にあり、例えば、1990年は、1位がエア・リキード、2位は英国のBOC(現リンデ)、3位がプラクスエア、4位はエアープロダクツ、5位がリンデ、6位が大陽日酸となっており、上位6社で約7割の市場シェアでしたが、現在は上位4社で約7割超の市場シェアとなり、更なる寡占化がうかがえます。

産業ガスの市場規模

当サイトでは、調査会社等の公表データを参考にし、産業ガス業界の2020年の世界市場規模を970億ドルとしております。参考したデータは以下の通りです。調査会社のアイマークによれば2020年の同業界の市場規模は970億ドルです。調査会社のグランドビューリサーチによれば2020年の同業界の市場規模は920億ドルです。2028年にかけて6%の年平均成長率を見込んでいます。フォーチュンビジネスインサイトによると2019年の同業界の市場規模は957億ドルです。参照したデータの詳細情報

推定市場規模
(億ドル)
前年成長率
20209701.36%
2019957n/a
産業ガスの市場規模の推移©ディールラボ

産業ガス・工業用ガスの種類

産業ガスとは、主に家庭用エネルギーとして使われる都市ガスやLPガスを除き、製造業で原料や中間材、あるいは品質向上、省エネや製造プロセスの安全のため、幅広く産業全般に使われるガスの総称です。また、病院で使用される医療用ガスもこれに含まれます。産業ガスには、酸素、窒素、アルゴン、炭酸ガス、水素、ヘリウムなどがあります。

業界再編

再編を通じてリンデとエア・リキ-ドの2強時代へと突入しました。M&Aマルチプル(売上高倍率)は概ね2~5倍のレンジですが、直近の倍率は徐々に上昇傾向(買収プレミアムが増加)にあります。

  • 2006年 独リンデによる英BOCの買収
  • 2007年 仏エア・リキードによる独Lurgi買収
  • 2009年 大陽日本酸素による米Valley Natinal Gaseの買収
  • 2012年 独リンデによるエアープロダクツの欧州在宅医療事業の買収
  • 2012年 エアープロダクツによるチリのINDURA買収
  • 2012年 仏エア・リキードによるスペインのGASMEDI買収
  • 2012年 独リンデによる米LINCARE買収
  • 2014年 三菱ケミカルによる大陽日本酸素の買収
  • 2015年 仏エア・リキードによる米エアガス買収
  • 2016年 独リンデと米プラクスエアが経営統合
  • 2017年 PAGがインデ・ガスを買収
  • 2018年 大陽日酸によるプラクスエアの欧州事業の買収
  • 2018年 メッサ―グルとCVCがリンデの米州事業を買収
  • 2019年 PAGがBaoSteelガスを買収
  • 2019年 IMMがリンデ韓国事業を買収(AirFirst設立)
  • 2020年 マッコーリキャピタルが韓国Daesung Gasを買収

産業ガス業界のM&Aマルチプル(売上高倍率)
産業ガス業界のM&Aマルチプル(売上高倍率)

さらに業界に詳しくなるためのお薦め書籍と業界団体

工業ガス製造法のすべて
工業ガスマーケティング年鑑「ガスジオラマ2020」
工業ガス供給機器図鑑
工業ガス用途のすべて「ガスアプリケーション2020」
一般社団法人日本産業・医療ガス協会
European Industrial Gases Association
Asia Industrial Gases Association
Australia New Zealand Industrial Gas Association

産業ガス・工業用ガス世界大手の動向

Linde(リンデ)

Linde(リンデ)は独産業ガス大手です。エア・リキードと競合しています。2006年に大手工業ガスメーカーであったThe BOC Group(ビーオーシー・グループ)を80億ポンドで買収しています。2016年に米プラクスエアと経営統合をしました。水素製造でも大手です。

Praxair(プラクスエア)について
米産業ガス大手です。ニューヨーク証券取引所に上場していましたが、2016年に独リンデと経営統合をしました。

Air Liquide(エア・リキード)

Air Liquide(エア・リキード)は仏産業ガス最大手です。日本国内シェアは太陽日本酸素とエア・ウォーターに次ぐ第3位です。独リンデとは歴史的に熾烈なシェア争いをしています。2015年に米国のエアガス社を1兆6500億円で買収しました。水素製造でも大手です。

Airgas(エアガス)

米産業ガス第3位で、ニューヨーク証券取引所に上場していました。2015年にフランスのエア・リキードが買収をしました。

エア・リキードよるエアガス買収のハイライト

  • 2015年フランスの世界大手工業用ガスメーカーのエア・リキードが、同業の米エアガスの買収を発表。
  • 買収金額は約100億ドル。エアガスの株価終値に対して35%のプレミアム。
  • エアガスはエア・リキードの完全子会社へ。
  • エア・リキードは同業のドイツのリンデと世界首位の座を競い、エアガス買収により世界首位(当時)へ。
  • 地産地消が原則の工業用ガス業界において、エア・リキードの米国での事業展開の上では、エアガスのプラットフォームは魅力的。
  • またエア・リキードは工業用ガス事業の上流工程に強く、エアガスは下流工程に強く、事業の補完性も高い。
  • エアガスの直近の業績は堅調であった。

出所:エアガスより当サイトが編集

Air Products&Chemicals(エアープロダクツアンドケミカルズ)

Air Products&Chemicals(エアープロダクツアンドケミカルズ)
米産業ガス大手です。ニューヨーク証券取引所に上場しています。上位2社と規模では差が開いていますが、水素では世界3強の一角です。

日本酸素ホールディングス

国内産業ガス最大手です。三菱ケミカルホールディングスが筆頭株主です。2018年にリンデと経営統合を発表したプラクスエアの欧州事業を買収しています。産業ガスの市場はほぼ再編が終わったと言われており(上位4社で約8割)、今後は、ガス分離・合成技術やガスアプリケーション等の新技術の獲得、医療ガスを含むメディカル事業(医療機器、在宅医療、病院設備等)といった新市場の拡充を目指しています。2020年に日本酸素ホールディングスが設立され持株会社体制へと移行しました。

三菱ケミカルについて

三菱ケミカルホールディングスは、日本の最大手の化学メーカーです。三菱レイヨンや大陽日酸を買収し、機能性化学分野の強化を図っています。アクリル樹脂の分野では、ダウケミカルやエボニックといった、大手化学メーカーを抑え、世界最大級の規模となっています。また、炭素繊維分野では、傘下の三菱レイヨンがパイロフィルの商標で炭素繊維を世界展開し、自動車会社とも開発を加速させています。電池材料では、正極材からは撤退し、電解液と負極材を強化しています。水処理膜事業では、MBR膜に強く、ステラポアーブランドで展開をしています。さらに詳しく

Messer Group(メッサー・グループ)

ドイツの非上場の産業ガス会社です。欧州に中心に展開しています。米国事業は2018年にCVCと共同でリンデの米州事業を買収しました。

Air Water(エア・ウォーター)

国内産業ガス大手です。大陽日本酸素と競合していますが、産業ガス以外の事業への多角化に特徴があります。

YINGDE GASES GROUP(盈徳気体集団、インデ・ガス)

中国の産業・工業ガスメーカー大手です。2017年に投資ファンドのPAGが買収をしました。

参照したデータの詳細情報について


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