産業・工業用ガス業界

産業・工業用ガスの世界市場シェア、市場規模、業界再編について分析をしています。エア・リキードが米国のエアガスを買収、リンデとプラクスエアの合併より、グローバルプレーヤー上位2社が覇権を競う時代へと入りました。

世界シェア

産業ガス会社の世界売上高ランキング(2020年版)に掲載されている各社の売上高を分子に、2019年の市場規模である835億ドルを分母に、簡易に産業ガス各社の市場シェアを計算すると、1位はドイツのリンデの34%、2位はフランスのエアー・リキードの29%、3位は米国のエア・プロダクトの11%となります。

2019年市場シェア

1位 Linde/リンデ 34%
2位 Air Liquide/エアー・リキ-ド 29%
3位 Air Products &Chemicals/エア・プロダクト&ケミカルズ 11%
4位 大陽日本酸素/大陽日本酸素 9%
5位 YINGDE GASES GROUP/インデ・ガス/盈徳気体集団 2%
6位 Messer Group /メッサ―グループ 1%

世界1位は、リンデです。2018年は、米国の当時業界3位であったプラクスエア買収し、2位のエアーリキッドをかわしての世界1位です。フランスのエアー・リキードはエアガスを買収し、一時は1位となりましたが、リンデに巻き返された形になりました。既に両社の市場シェアは60%を超えており、今後の成長戦略が注目されます。3位にはエアプロダクツです。上位2陣営との売り上げ規模の差が広がりつつあります。4位に大陽日本酸素が入ります。プラクスエアの欧州事業を買収し、トップ4入りを目指します。

産業ガスは、顧客である化学メーカーの近くにガス生産工場を設けて、パイプライン、タンクローリー、ボンベ等でガスの充填や配給をする地産地消型のビジネスモデルです。そのため寡占が進みやすい傾向にあり、例えば、1990年は、1位がエア・リキード、2位は英国のBOC(現リンデ)、3位がプラクスエア、4位はエアープロダクツ、5位がリンデ、6位が大陽日酸となっており、上位6社で約7割の市場シェアでしたが、現在は上位4社で約8割超の市場シェアとなり、更なる寡占化がうかがえます。

市場規模

調査会社のGrand View Researchによれば2019年の産業ガスの市場規模は873億ドルです。また2020年から2027年にかけて5.5%の年平均成長率を見込んでいます。

The global industrial gases market size was valued at USD 87.3 billion in 2019 and is expected to grow at a compound annual growth rate (CAGR) of 5.5% from 2020 to 2027.

Grand View Research

一方、調査会社のIMARCによれば2019年の産業ガスの市場規模は802億ドルです。

The global industrial gases market was worth US$ 80.2 Billion in 2019

IMARC

当サイトでは、2019年の産業ガスの市場規模を上記二つの調査会社の平均値である835億ドルと推計しています。

産業ガス・工業用ガスの種類

産業ガスとは、主に家庭用エネルギーとして使われる都市ガスやLPガスを除き、製造業で原料や中間材、あるいは品質向上、省エネや製造プロセスの安全のため、幅広く産業全般に使われるガスの総称です。また、病院で使用される医療用ガスもこれに含まれます。産業ガスには、酸素、窒素、アルゴン、炭酸ガス、水素、ヘリウムなどがあります。

再編の歴史

再編を通じてリンデとエアー・リキ-ドの2強時代へと突入しました。

2006年 独リンデによる英BOCの買収

2007年 仏エアー・リキ-ドによる独Lurgi買収

2009年 太陽日本酸素による米Valley Natinal Gaseの買収

2012年 独リンデによるAir Product(エアープロダクト)の欧州在宅医療事業の買収

2012年 Air ProductsによるチリのINDURA買収

2012年 仏エアー・リキ-ドによるスペインのGASMEDI買収

2012年 独リンデによる米LINCARE買収

2014年 三菱ケミカルによる太陽日本酸素の買収

2015年 仏エアー・リキ-ドによる米エアガス買収→ケーススタディはこちら

2016年 独リンデと米プラクスエアが経営統合を発表

2018年 大陽日酸によるプラクスエアの欧州事業の買収

産業ガス・工業用ガス世界大手の動向

Linde(リンデ)

独産業ガス大手です。エアー・リキードと競合しています。2006年に大手工業ガスメーカーであったThe BOC Group(ビーオーシー・グループ)を80億ポンドで買収しています。2016年に米プラクスエアと経営統合をしました。

Air Liquide(エアー・リキ-ド)

仏産業ガス最大手です。日本国内シェアは太陽日本酸素とエアー・ウォーターに次ぐ第三位です。独リンデとは歴史的に熾烈なシェア争いをしています。2015年に米国のエアガス社の1兆6500億円での買収しました。

エアー・リキードよるエアガス買収のハイライト

  • 2015年フランスの世界大手工業用ガスメーカーのエアー・リキードが、同業の米エアガスの買収を発表。
  • 買収金額は約100億ドル。エアガスの株価終値に対して35%のプレミアム。
  • エアガスはエアー・リキ-ドの完全子会社へ。
  • エアー・リキ-ドは同業のドイツのリンデと世界首位の座を競い、エアガス買収により世界首位(当時)へ。
  • 地産地消が原則の工業用ガス業界において、エアー・リキ-ドの米国での事業展開の上では、エアガスのプラットフォームは魅力的。
  • またエアー・リキ-ドは工業用ガス事業の上流工程に強く、エアガスは下流工程に強く、事業の補完性も高い。
  • エアガスの直近の業績は堅調であった。
出所:エアガスより当サイトが編集

Praxair(プラクスエア)
米産業ガス大手です。ニューヨーク証券取引所に上場していましたが、2016年に独リンデと経営統合をしました。

Air Products & Chemicals(エア・プロダクト)

米産業ガス大手です。ニューヨーク証券取引所に上場しています。上位2社との差が大きく開いています。

大陽日本酸素

国内産業ガス最大手です。三菱ケミカルホールディングスが筆頭株主です。2018年にリンデと経営統合を発表したプラクスエアの欧州事業を買収しています。産業ガスの市場はほぼ再編が終わったと言われており(上位4社で約8割)、今後は、ガス分離・合成技術やガスアプリケーション等の新技術の獲得、医療ガスを含むメディカル事業(医療機器、在宅医療、病院設備等)といった新市場の拡充を目指しています。

Airgas(エアガス)

米産業ガス第3位で、ニューヨーク証券取引所に上場していました。2015年にフランスのエアー・リキード社が買収をしました。

Messer Group(メッサー・グループ)

ドイツの非上場の産業ガス会社です。米国は撤退。欧州に中心に展開しています。

Air Water(エア・ウォーター)

国内産業ガス大手です。大陽日本酸素と競合していますが、産業ガス以外の事業への多角化に特徴があります。

YINGDE GASES GROUP(盈徳気体集団、インデ・ガス)

中国の産業・工業ガスメーカー大手です。エアプロダクトが買収を提案しましたが失敗しました。

産業・工業ガスの主要業界団体

一般社団法人日本産業・医療ガス協会

European Industrial Gases Association

Asia Industrial Gases Association

Australia New Zealand Industrial Gas Association

産業・工業ガス業界の参考書

産業・工業用ガス業界のページを作成するにあたり、以下の書籍を参考にさせて頂きました。

工業ガス製造法のすべて

工業ガスマーケティング年鑑

工業ガス供給機器図鑑

工業ガス用途のすべて

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