アクティビストファンドの株主提案や投資先経営陣との対話について事例分析をしています。アクティビストファンドとは、割安に評価されている、もしくは株価が低迷している上場企業に対して株主提案や経営陣との対話を行い、企業価値の向上を企図する投資ファンドの総称です。上場会社の株式を数%取得し、複数年にまたがり、企業価値向上に向けた対話を経営陣と行います。
アクティビストファンドによる株主提案には類型があります。各種資料を参考に、アクティビストファンドが企業に対して要求する事項は、下記5つの骨子に分類されます。
同業他社との成長率や利益率といったベンチマークなどを比較することで、既存の経営戦略の見直しを求めます。利益率の低い事業については、潜在力はあるのか、経営資源を十分に投入できるか、といった改善策も検討した上で、追加の資源配分やノンコア事業としての売却を求める場合もあります。
明示的な施策提案を行わず、割安に評価されているとアクティビストが判断している自社の株式について、どのように考えているのかを経営陣に質問するなどして、自主的な改善を求めます。
アクティビストファンドの要求水準に見合うリターンを挙げられない企業に対して、株主への資金還元を求めます。特別配当、自己株式の取得や配当性向の見直し、資本政策の見直し 等が挙げられます。例えば、自己資本が厚く、PBR倍率が1倍を下回る(解散価値以下の評価しかされていない)企業には、Recapitalization(リキャップ)と呼ばれる負債を調達し、自己株消却を行う手法で、最適な資本構成を提案する事例もあります。
【ご参考】 コーポレートファイナンスと投資家の視点から見たPBR1倍割れ企業
一概に役員報酬を減らすように要求するのではなく、報酬と会社の業績に合理性が認められるかという点を重視します。役員報酬と業績を連動させるような報酬設計への見直しを求める場合があります。
コーポレートガバナンスの更なる向上を目指すために、アクティビストファンドが社外取締役を指名する、現状の取締役会のメンバーの再構成を提案する場合があります。
アクティビストファンド的なアプローチをする投資ファンドの総数に関する正式な統計はありません。過去株主対話を積極的にしている代表的な海外のアクティビストファンドの一例は以下の通りです。
Active Ownership Capital、AVI、Amber Capital、Barington Capital Group、Baupost Group、Blue Clay Capital Management、Cevian Capital、Corvex Management、Elliott Management、Engaged Capital、Greenlight Capital、Icahn、Lion Point Capital、Perry Capital、Pershing Square Capital Management、Quantum Pacific Capital、TCI Fund Management、Third Point、ValueAct Capital Management
日本では、マネックスグループがアクティビストファンドを立ち上げています。
ディールラボでは、これらの代表的なアクティビストファンドをカバーし、株主提案がどのような業界の再編につながる可能性があるのか、といった観点での分析を行なっております。