公開株主提案の定期レビュー オアシスと三菱倉庫編

2020年5月に物言う株主のオアシスが三菱倉庫に対して公開株主提案を行いました。同年の株主総会においてオアシスの株主提案は否決されましたが、オアシスの株主提案の論拠となった三菱倉庫の財務数値が株主提案によってどのように経年変化しているかについて定期的にレビューをしています。

三菱倉庫について

1887年に設立された物流会社です。社名の通り倉庫を軸とした陸上、港湾、フォワーディングといった物流に強みを持ちます。三菱グループの中でも5番目に古く設立された会社です。
三菱倉庫の業績推移、株価パフォーマンスや市場シェアなどさらに詳しく

オアシスについて

セス・フィッシャー(Seth Fischer)氏によって2002年に設立された香港に本拠を置くヘッジファンドです。日本の上場会社に対して幅広く投資を行い、物言う株主として積極的なエンゲージメントを行なっています。過去にアルパイン、東京ドーム、三菱倉庫、安藤ハザマ、サンケン、東洋製罐といった会社に対して公開提案を行っています。

原提案の骨子

オアシスからの原提案(⇒参照したデータの詳細情報)では、三菱倉庫のEVブリッジ、同業他社とのEBITDA有利子負債倍率、自己資本比率とROEの比較、インデックスと株価のパフォーマンス比較やPBRの推移が分析されています。

EVブリッジでは事業価値がマイナス1010億円となり改善の余地があることを指摘しています。

同社のEBITDA有利子負債倍率が1.8倍と同業他社より低く自己資本比率も61%と高く、財務の健全性が優れている点を指摘しています。

一方、株価はインデックスよりアンダーパフォームし、またPBRの推移では1倍割れが常態化していることを指摘しています。ROEは3.9%と同業他社比低くなっております。

こうした分析から、自己株式取得によってやや厚すぎる自己資本やPBRの改善を行うことを提案しております。また三菱グループ外からの役員招聘によって持合株式の解消を含めた企業価値向上を検討するよう提案しています。

株主総会では結果としてオアシス側の提案は全て否決されましたが、EVブリッジによる事業価値分析、同業他社比較、株価とインデックスの比較は、同社の永続的な企業価値の向上の分析をする上では有益なので、当データベースではオアシスによる三菱倉庫への公開提案における各分析を継続的に定点観測しおります。

2021年11月20日時点の分析

EVブリッジ分析

三菱倉庫EVブリッジ 2021年11月20日時点
*持株時価と不動産時価は、再算定が困難のためオアシスの原提案における数値を適用
**各社2020年度決算数値
三菱倉庫EVブリッジ 2021年11月20日時点 
©業界再編

オアシスの分析時点では、三菱倉庫の事業価値はマイナス1010億円でしたが、2021年11月時点ではマイナス288億円と改善が見られます。

しかし、事業価値自体は引続きマイナスの価値なので、投資家は三菱倉庫が倉庫・物流事業を継続することには魅力を感じておらず、むしろ、三菱ブランドを活かした株式投資や不動産投資で稼ぐビジネスモデルへの転換を期待しているかもしれません。

EBITDA有利子負債倍率

同業他社との有利子負債EBITDA倍率の比較
*各社2020年度決算数値
同業他社との有利子負債EBITDA倍率の比較 (2021年11月20日時点) ©業界再編

原提案の時と同じく同業他社と比べた際に最も低い数値になっています。

自己資本比率

同業他社と自己資本比率の比較
*各社2020年度決算数値
同業他社と自己資本比率の比較(2021年11月20日時点) ©業界再編

原提案の時と同じく同業他社と比べた際に最も高い数値になっています。

株価パフォーマンス

三菱倉庫、UPSとインデックスの株価パフォーマンス比較
三菱倉庫、UPSとインデックスの株価パフォーマンス比較(YTD 2021年11月20日時点) ©業界再編

原提案では株価パフォーマンスをトピックスと比べていますが、ここではMSCIオールカントリーと物流大手UPSで株価パフォーマンスをYTDで比較しています。

三菱倉庫は残念ながらアンダーパフォームしています。

ROE

同業他社対比ROE
*各社2020年度決算数値
同業他社対比ROE(2021年11月20日時点) ©業界再編

ROEは同業の中では3位です。原提案では4位だったので、僅差ではありますが順位を上げました

PBR

同業他社対比PBR
*各社2020年度決算数値
同業他社対比PBR (2021年11月20日時点) ©業界再編

引続き1倍割れが続きます。

まとめ

オアシスによる提案から概ね1年6ヶ月が経ちましたが、オアシスが指摘した点については大きな改善が見られないようです。投資家の視点からすると、上記の財務分析は、株価パフォーマンスを判断する上で基本中の基本ともいえる分析なので、今後も経営陣へ各種数値の改善要請が続く可能性があります。

2022年中に改めて定期レビューを実施する予定です。