製紙業界・パルプ業界の世界市場シェアの分析

製紙・パルプ業界の世界市場シェア、市場規模、業界再編について分析をしています。インターナショナルペーパー、UPMキュンメネ、王子、ストラ・エンソ、P&G、キンバリークラーク、スヴェンスカ、スマーフィットカッパ等、主要な製紙会社の概略も掲載しています。

製紙世界シェア

2019年5月時点での「パルプ・製紙メーカーの世界売上高ランキングの分析 」に記載されている最新売上高の内容を基に、世界市場シェアの情報を掲載しています。 シェア算出の前提となる市場規模は、各種調査会社が公表している規模などを考慮し、約3000億ドルと仮定しています。製紙業界の市場シェア1位はインターナショナルペーパー、2位はウェストロック、3位はストラ・エンソとなります。

  • 1位 インターナショナルペーパー 8%
  • 2位 ウェストロック 5%
  • 3位 ストラ・エンソ 4%
  • 4位 王子製紙 3%
  • 5位 スマーフィット・カッパ 3%
  • 6位 UPM 3%
  • 7位 ナイン・ドラゴンズ・ペーパー 3%
  • 8位 キンバリー・クラーク 2%
  • 9位 日本製紙 2%
  • 10位 スヴェンスカ・セルローサ 1%

パルプ生産における生産量ベースのランキングでは、ブラジルのスザノが首位を誇っています。2018年に同社がフィブリアを買収し、生産量では断トツトップのパルプメーカーが誕生しました。ユーカリパルプに強みがあるのが大きな特徴です。その他大手には、インターナショナルペーパー、チリの製紙大手であるアラウコ、同じくチリのCMPC、インドネシアを中心にパルプ事業を手掛けるエイプリル、フィンランドの名門であるUPMとストラ・エンソ等があります。

市場規模

調査会社のリポーツアンドデータによると、2019年の同業界の市場規模は5188億ドルです。2027年にかけて年平均3.75%での成長を見込みます。一方、調査会社のフォーチュンビジネスインサイツによると、2019年の同市場規模は3488億ドルです。2027年にかけて0.8%での成長を見込みます。⇒参照したデータの詳細情報
2016年におけるパルプの生産キャパシティは、ブラジルのパルプ大手であるスザノ社の資料によれば、年間約63百万トンとなっています。

パルプの作り方

パルプは、木材が原料の木材チップから樹脂などの不純物を蒸解して取り出したあと、洗浄や漂白工程を経て、さらに木材の繊維分を抽出して作られます。出来上がったパルプを水で薄め、ワイヤーで作った網の上に乗せてプレスし、ドライヤーで乾燥させて原紙を作っていきます。その後、紙の用途により、コーティングやツヤ出しを行っていきます。パルプの原料となる木は、広葉樹、針葉樹、ハードウッド、ソフトウッド等に分類され、取り出せる繊維の長さ等によって用途が異なってきます。主にブラジル、インドネシア、チリではユーカリやアカシア等の広葉樹やハードウッドを、フィンランド、スウェーデン、米国ではソフトウッドを多く生産していることが下図よりわかります。

出典:スザノ社公表資料

製紙の用途による分類

紙は、厚紙(paperboard)、ティッシュ、ノート、印刷用紙、新聞等に分類され、用途別で成長率が異なります。成長している分野はティッシュ、厚紙の分野です。逆にマイナス成長は新聞です。ノートの分野で横ばい状態です。

出所:スザノ社公表資料

製紙・パルプ業界の再編

製紙・パルプ産業の事業特性から、今後も原料調達力の強化や、コスト競争力の強化を目指した業界再編による規模拡大の流れは継続するものと思われます。

製紙パルプ会社の主要M&A

1996年インターナショナルペーパーによるFederal Paper Boardの買収
1998年スウェーデンのStoraとフィンランドのEnsoの経営統合(ストラ・エンソ誕生)
2000年ストラ・エンソによる米Consolidated Papersの買収
1999年インターナショナルペーパーによるUnion Campの買収
2000年インターナショナルペーパーによるチャンピオンインターナショナルの買収
2001年UPMキュンメネによる独Haindl’sche Papierfabrikenの買収
2008年インターナショナルペーパーによるWeyerhaeuserの部門買収
2011年UPMキュンメネフィンランドのMyllykoskiの買収
2011年インターナショナルペーパーによる印大手製紙会社のAPPMの買収
2012年インターナショナルペーパーによるTemple-Inlandの買収
2014年王子ホールディングによるニュージーランドの紙パルプ・段ボールメーカーCHHPPの買収
2018年ブラジルのスザノによるフィブリアの買収

さらに業界を理解するための関連書籍
紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている
熔ける
知っておきたい紙パの実際
近代日本製紙業の競争と協調

世界の主要製紙・パルプ会社の一覧

International Paper(インターナショナルペーパー)

米国テネシー州に本拠を置く世界最大級のパルプ製紙会社です。インダストリアルパッケージング、パルプ、印刷紙が大きな事業の柱となっています。2000年に北米同業のチャンピオンインターナショナル、2011年にはインドの大手製紙会社APPM(Andhra Pradesh Paper Mills Rajahmundry、アンドラプラデッシュ・ペーパー・ミルズ)の過半数を取得する等、買収により規模を拡大しています。

インダストリアルパッケージング事業で、段ボールを製造販売しています。段ボールの原紙製造に加え、段ボールの貼合加工も行っています。また、2011年に段ボール大手の米Temple-Inland(テンプルインランド)買収しました。

P&G(プロクター&ギャンブル)

P&G(プロクター&ギャンブル)は、米国に本拠を置く世界最大級の日用品メーカーで、1837年にウィリアム・プロクター氏とジェームズ・ギャンブル氏によって設立されました。日用品業界屈指の商品開発力・マーケティング力を誇っています。取り扱っている分野は、トイレタリー、ファミリーケア、ファブリックケア、ホームケア、ヘアケア、スキンケア、オーラルケアといった広範囲の消費財で、いずれもブランド力のある商品を展開しているのが特徴です。

ベビー・ファミリーケア部門:
おむつの分野では、パンパースブランドを世界的に展開し、業界最大級となっています。製紙・パルプの分野では、ペーパータオル「バウンティ」やティッシュペーパー「パフス」を展開し、クリネックスブランドのキンバリークラーク等と競っています。
ファブリック&ホームケア部門:
洗濯用洗剤のアリエール、柔軟剤のレノア、食器用洗剤のジョイ、エアケアのファブリーズ、柔軟剤のDowny(ダウニー)を展開しています。日用品・トイレタリー分野においては、ユニリーバやコルゲートを抑え、世界シェアトップを誇っています。
ヘアケア・化粧品部門:
ヘアケアのPantene(パンテーン)、ヴィダルサスーン、h&sを展開しています。化粧品分野においては、SK-II等の強力なブランドを有しており、業界内の世界シェアで上位に位置しています。香水分野では、ブランド系各社と提携し、大手の一角を占めています。主なブランドに、HUGO BOSS(ヒューゴボス)、Lacoste Fragrances(ラコステ・フレグランス)、Puma(ピューマ)、Naomi Campbell(ナオミ・キャンベル)、Escada Fragrances(エスカーダ・フレグランス)、Dolce&Gabbana(ドルチェ&ガッバーナ)等があります。2015年、フレグランスブランドの「Hugo」「Gucci」、カラーコスメティックブランドの「COVERGLRL」「Max Factor」、ヘアカラービジネスの「Wella」「Clairol」をコティに売却しました。
ヘルス部門:
オーラルケアの分野では、Oral Bやクレストなどのブランドを展開し、歯磨き粉・マウスウォッシュともに世界シェアで上位に位置しています。
電動歯ブラシでは、子会社のブラウンがフィリップスと世界シェア1位を争っています。シェーバー・カミソリ業界では、シェーバーはBraun(ブラウン)が、カミソリは2005年に買収したGillette(ジレット)が世界シェア上位に位置しています。
2005年にP&Gが髭剃り大手のジレットを買収しました。P&Gは女性用美容機器に強みがあり、一方、ジレットは男性用髭剃りに強みがあります。傘下に電動シェーバーも保有しています。P&Gは買収によって男性用と女性用美容機器の分野で一気に存在感を示すことができました。当時のジレットは、ジレットモデルという消耗品(カミソリ)の買い替えモデルを確立し、超高収益企業ででした。
  • 参考書
    P&Gウェイ: 世界最大の消費財メーカーP&Gのブランディングの軌跡 [単行本]
    P&G 一流の経営者を生み続ける理由 [単行本(ソフトカバー)]

王子ホールディングス

国内最大手の製紙会社です。2010年にマレーシアのGS Paper & Packaging (GSペーパー&パッケージング)を買収し、2014年にニュージーランドの紙パルプ・段ボールメーカーのCHHPPを買収する等、近年海外展開を加速させています。

UPMキュンメネ

フィンランドの大手製紙メーカーです。1996年にキュンメネ社とレポラ社等が経営統合して誕生したユナイテッド・ペーパー・ミルズ(United Paper Mills)が源流です。パルプ、粘着紙、出版印刷用紙に強みを持ちます。

Stora Enso(ストラ・エンソ)

フィンランドの大手製紙メーカーです。1998年にスウェーデンのStora(ストラ)社とフィンランドのEnso(エンソ)社の合併により誕生しました。

日本製紙

国内大手製紙メーカーです。タイの製紙大手サイアム・グループペーパーを買収しています。

Kimberly Clark(キンバリー・クラーク)

米国のテキサス州に本拠を置く製紙大手です。Kleenex(クリネックス)ブランドのティッシュペーパーや紙おむつ等の日用品にも強みを持ちます。2014年にヘルスケア部門をスピンオフしました。

Smurfit Kappa Group(スマーフィット・カッパ・グループ)

アイルランドに本拠を置く製紙大手です。包装紙に強みを持ちます。

SCA(スヴェンスカ・セルローサ)

スウェーデンに本拠を置く製紙大手です。ティッシュ類等の衛生用品を手掛けています。2017年にパーソナルケア用品部門を分社化し、エシティ(Essity)として上場させました。同部門の誕生は、1975年にスヴェンスカ・セルローサが買収したパーソナルケア大手のメンリッケ(Mölnlycke)が源流です。

West Rock(ウェスト・ロック)

2015年、パルプ製紙大手のRock-Tenn(ロックテン)と包装材大手のMeadWestvaco(メッドウエストヴェイコ)が経営統合をし、誕生しました。主力事業は、段ボール紙と商品用包装用紙の製造・加工です。なおロックテンは、2011年に段ボール大手のSmurfit-Stone Container(スマーフィット・ストーン・コンテナー)社を買収しました。直近では、SP Fiber、Cenveo Packaging、Star Pizza、MPS、U.S. Corrugated、Island Container、Hannapak、Plymouth Packaging、Schlüter Print Pharma、KapStone、Linkx、UBSを買収しています。

Mondi(モンディ)

1967年に資源大手アングロアメリカンによって設立された製紙・段ボール会社です。段ボール、フレキシブルパッケージ、不織布、印刷情報用紙などを手掛けています。2007年に分社化され、ロンドン証券取引所に上場しました。

Sappi(ザッピ)

1936年に設立された南アフリカに本拠を置くパルプ製紙会社です。Sappiは「South African Pulp and Paper Industries」の略です。

Domtar(ドムタール)

1948年に創業したカナダに本拠を置く製紙・おむつ等の紙製品メーカーです。

CMPC

1848年に創業したチリに本拠を置く製紙会社です。南米最大規模を誇ります。パルプ分野でも大手です。

スザノ(Suzano)

ブラジルの大手製紙会社です。80年以上の業歴があります。2018年に同業のフィブリアを買収し、パルプ事業を強化しています。

フィブリア(Fibria S.A)について
ブラジルにおけるパルプ・製紙メーカーです。2009年にブラジルのアラクルーズ・セルロースとVCP が合併して誕生しました。パルプ生産量では世界最大級で、ユーカリパルプに強みを持ちます。2018年にブラジル同業のスザノが買収しました。

Arauco(アラウコ)

チリのパルプメーカーです。1979年に、国営のCelulosa AraucoとCelulosaConstituciónが民営化する過程で経営統合し、誕生しました。

April(エイプリル)

シンガポールに本拠を置くコングロマリット、RGEグループの傘下のパルプ・製紙メーカーです。Sukanto Tanoto氏によって設立されました。RGEはインドネシアや中国を中心に、パルプ・製紙、パームオイル、石油事業等を展開しています。

RGEグループの事業展開マップ

出所:REGグループ

業界用語集
パルプ:パルプとは紙の原料の総称です。木材チップから木材の繊維を取り出して作ります。
製紙・パルプ産業の特性:紙自体はコモディディ化しており製品差別化は難しいと言われています。よって紙の原価における輸送コスト(嵩張るためコストがかかる)等を低下させるため、各プレーヤーともに地産地消をめざし拡大を続けています。