化粧品・香水業界の市場シェアの分析

化粧品・香水メーカーの世界シェア・売上高ランキング・市場規模・業界再編について分析をしています。ロレアル、P&G、エスティ・ローダー、ユニリーバ、コティ、資生堂、ナチュラ・コスメティクスといった世界の主要な化粧品・香水メーカーの概要も掲載しています。

【化粧品・香水業界とは】

化粧品は一般的に「パーソナルケア・身だしなみ・外見を整えること」を目的として使用される製品のことを指します。メイクアップ向け製品はもちろん、スキンケアやヘアケア、ネイル、香水などをまとめて「化粧品」と定義されることが多いです。

本データベースでも、スキンケアやヘアケアなどのパーソナルケアを含む広義の意味での化粧品・香水業界の市場規模を採用し、主要企業の市場シェアを分析しています。

化粧品・香水業界は、性別(男女及びユニセックス)、販売チャネル別(百貨店・専門店・ドラッグストアなど小売店・ECなど)によって価格帯やターゲット層が異なります。より多くの顧客を獲得するため、ランキング上位の企業の多くが高級化粧品から低価格化粧品まで様々な路線のブランドを展開しています。例えば、シェアトップのロレアルは、ランコムやキールズなどの「デパコス(百貨店などでブースを構える高級化粧品)」からメイベリンやロレアルなどの「プチプラコスメ(ドラッグストアなどで売られている低価格化粧品」まで、数多くのブランドの化粧品を販売しています。

【市場シェア】

化粧品メーカーの2022年度の売上高⇒参照したデータの詳細情報を分子に、後述する化粧品市場の規模を分母に、2022年の化粧品業界の世界市場シェアを計算すると、1位はロレアル、2位はエスティ・ローダー、3位はP&Gとなります。

化粧品メーカーの2022年世界シェア

順位会社名市場シェア
1位ロレアル12.43%
2位エスティ・ローダー4.88%
3位P&G4.52%
4位ユニリーバ3.98%
5位LVMH2.51%
6位資生堂2.49%
7位バイヤスドルフ2.32%
8位ナチュラ2.27%
9位コティ1.45%
10位花王1.54%
11位ジョンソン・エンド・ジョンソン1.33%
12位ヘンケル0.99%
13位アモーレパシフィック0.72%
14位LG生活0.76%
化粧品メーカーの2022年世界シェア
化粧品会社の市場シェア(2022年)

*エスティ・ローダーとコティは2023年会計年度(2022年7月~2023年6月)のデータを使用

ロレアルが圧倒的なシェアで首位を独走する一方、2〜4位のエスティ・ローダー、P&G、ユニリーバが拮抗しています。

ランキングには、化粧品メーカーだけでなく、ファッション企業(LVMH)も挙げられています。これは、化粧品が衣類や靴、バッグと共に外見を彩るファッションという側面が強く、ファッションブランドが化粧品・香水事業に多角化しているためです。

また、花王やジョンソン・エンド・ジョンソンなど化学・日用品メーカーもランキングに入っています。化粧品の開発・製造には、高い機能性・安全性が求められるため、研究部門や開発部門の強い化学メーカーや同じく安全性が求められる日用品メーカーが化粧品ブランドを有していることが多いためです。

近年では化粧品業界にもEC化の波が訪れ、徐々にECでの販売を拡大しています。その結果、ECやデジタルマーケティングに強い韓国企業が売上を伸ばしてきており、アモーレパシフィックなどが世界中で販路を拡大しています。元々化粧品業界は、高級化粧品は店頭でカウンセリング・提案を受けたい、低価格化粧品なら店頭で購入したほうが安いというニーズから、ECでの売上が伸ばしづらいという特徴がありました。しかし、新型コロナウイルスの影響により店頭販売の需要が減り、今後も安全性の高いオンラインショッピングへのニーズが高まると予想されます。

時系列で理解する化粧品会社の世界ランキング(2012年、2015年、2018年)

1位ロレアルロレアルロレアル
2位P&GP&Gユニリーバ
3位ユニリーバユニリーバエスティ・ローダー
4位エスティ・ローダーエスティ・ローダーP&G
5位エイボン資生堂資生堂

2012年以降2012年以降、化粧品業界の世界ランキングは、ロレアル、P&G、エスティ・ローダー、ユニリーバがトップ4の盤石の地位を占めています。ロレアルは2012年以降1位の座を保持しており、残り3社が2〜4位で変動しています。

資生堂が長らく5位の座についていましたが、2022年にはLVMHが資生堂を抜き5位に躍り出ました。

業界上位4社の指標比較

10年以上業界トップ4のポジションに君臨するロレアル、エスティ・ローダー、P&G、ユニリーバの4社について、売上高成長率(過去5年平均)、配当性向、ROE(年間)の比較を行いました。

4社ともに売上高成長率が10%を切っていることから、成熟企業であることが伺えます。ROEを見ると、エスティ・ローダー以外の3社は10%を超えており、経営の収益効率性も高いです。4社とも配当性向は高く、投資者への還元率も高いと言えます。

【市場規模】

当サイトでは、2022年の化粧品・香水業界の市場規模を3264億ドルとしています。参考にした統計・調査データは以下の通りです。

調査会社エクスパートマーケットリサーチによると、2022年の同業界の市場規模は3264億ドルです。2023年から2028年にかけて年平均5.2%で成長し、同年には4424.3億ドルへ拡大することが見込まれます。

調査会社グランドビューリサーチによると、2022年の同業界の市場規模は2622億ドルです。2023年から2030年にかけて年平均4.2%で成長し、同年には3363.8億ドルへ拡大することが見込まれます。

調査会社プレセデンスリサーチによると、2022年の同業界の市場規模は3753億ドルです。2021年から2030年にかけて年平均5.1%で成長し、同年には5605億ドルへ拡大することが見込まれます。

調査会社アイマークによると、2022年の同業界の市場規模は3797億ドルです。2023年から2028年にかけて年平均4.9%で成長し、同年には5235億ドルへ拡大することが見込まれます。

市場規模成長率
2022年3264億ドル
2028年2777億ドル5.%
化粧品・香水業界の推定市場規模
©ディールラボ

2019年から2020年には、リモートワーク普及に伴う化粧品需要の低下を背景に、市場規模が低下しました。その後、自粛解禁・脱マスクの流れが広まり、市場規模は再び拡大傾向にあります。今後はEC化が進み、オーガニック化粧品やアンチエイジングなどの分野で需要が拡大すると予測されます。

【売上高ランキング】

2023年4ー6月の四半期売上高をベースとした化粧品・香水メーカーのランキングでは、1位ロレアル、2位P&G、3位エスティ・ローダーとなっています。トップ4の顔ぶれは年次ベースのランキングと同じですが、2〜4位の順位が変動しています。⇒参照したデータの詳細情報

化粧品業界の売上高ランキング(四半期ベース)
化粧品業界の売上高ランキング(四半期ベース)
*2021年7-9月、それ以外は2021年10-12月実績

*ヘンケルはこれまでは2023年会計年度から、ランドリー&ホームケアとビューティーケアがコンシューマー事業として統合。グラフで用いている数値は新しいセグメントでの売上高となる。

【M&Aの概要】

ブランド力のある大手化粧品企業が、新興ブランドを買収するケースが多いです。競争の激しい化粧品業界では、大企業と言えども新ブランドを立ち上げて販路を拡大することは難しく、既存の勢いのあるブランドを買収したほうが容易に企業全体の売上を伸ばせるためです。

また、製品ポートフォリオの組み換えを進める目的で大手メーカー同士が一部事業を取引するケースも多いです。

  • 2023年 ロレアルがナチュラよりAesopを買収予定と発表
  • 2022年 マニキュアや口紅で有名な米化粧品会社のレブロンが米連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請
  • 2022年 資生堂がヘンケルに業務用ヘアケア剤事業を売却
  • 2021年 資生堂がパーソナルヘルスケア事業を欧州系大手投資ファンドCVCへ売却
  • 2021年 資生堂が、「ベアミネラル」「ローラメルシエ」「バクサム」の3ブランドをアメリカのプライベートエクイティファンドAdvent International Corporationに譲渡
  • 2020年 ロレアルがクラランスのフレグランス部門(ミュグレー・アザロを含む)を買収
  • 2020年 コティがプライベートエクイティ会社KKRにヘアケアブランド「Wella」やネイルブランド「OPI」を含むプロフェッショナルビューティー事業の株の一部を売却
  • 2020年 ブラジルの化粧品大手であるナチュラ・コスメティコスがエイボンを買収
  • 2019年 投資会社のJABホールディングスがコティの株式を追加取得し、計60%の株式を保有
  • 2017年 ユニリーバが化粧品などをAHCブランドで展開する韓国Carverを買収
  • 2017年 ナチュラ・コスメティクスがボディショップをロレアルから買収
  • 2016年 コティがP&Gよりビューティー事業を買収
  • 2016年 ロレアルが米国のIT Cosmetics(イットコスメティックス)を買収

化粧品業界のM&Aマルチプル(売上高倍率)
化粧品業界のM&Aマルチプル(売上高倍率)

さらに業界に詳しくなるためのお薦め書籍

ロレアル 「美」の戦略
基礎から応用までよくわかる!化粧品ハンドブック
進化する資生堂 中国市場とメガブランド戦略
日用品・スキンケア・トイレタリー・ホームケア業界の世界市場シェア分析

【会社の概要】

L’Oréal(ロレアル)

1909年に設立世界最大級の仏総合化粧品メーカーです。祖業の事業はヘアカラーです。日本のShu Uemuraを初めとして、高級ブランドが手掛ける化粧品や香水事業の買収を通じて成長をしています。仏小売り大手PPR(現ケリング)からイブ・サン・ローラン・ボーテ(YSLボーテ)、ランコム、ラルフローレン、アルマーニ等の香水事業を買収しています。他にブシュロン(Boucheron)、元ビートルズのポールマッカートニーの次女ステラ・マッカートニー(Stella Nina McCartney)等のブランドを有しています。さらに詳しく

Estee Lauder(エスティ・ローダー)

Estee Lauder(エスティローダー)は、1946年に設立された米国に本拠を置く世界的な化粧品会社です。スキンケア、メーキャップ、香水、ヘアケアの分野に強みを持ちます。特殊株式を保有し過半数の議決権をおさえるローダー家の影響力は絶大です。さらに詳しく

P&G

P&G(プロクター&ギャンブル)は、米国に本拠を置く世界最大級の日用品メーカーで、1837年にウィリアム・プロクター氏とジェームズ・ギャンブル氏によって設立されました。日用品業界屈指の商品開発力・マーケティング力を誇っています。取り扱っている分野は、トイレタリー、ファミリーケア、ファブリックケア、ホームケア、ヘアケア、スキンケア、オーラルケアといった広範囲の消費財で、いずれもブランド力のある商品を展開しているのが特徴です。さらに詳しく

ユニリーバ

Unilever(ユニリーバ)は、イギリスに本拠を置く世界を代表する消費財大手メーカーです。イギリスの石鹸会社のリーバ・ブラザーズとオランダのマーガリン会社のマーガリン・ユニが1930年に合併して誕生しました。紅茶、アイスクリーム、食品、化粧品やパーソナルケア分野において強力なブランドを保有しています。紅茶事業は2021年11月に売却を発表しました。さらに詳しく

LVMH(ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー、Moët Hennessy ‐ Louis Vuitton S.A)

LVMHは、1987年にルイ・ヴィトンとモエ・ヘネシーが合併して誕生した世界最大級の仏高級ブランド会社です。高級ブランド業界では圧倒的な存在感を示しており、バッグ、アパレル、ジュエリー、化粧品、ワイン、免税店等多面的に展開しています。Bernard Arnault氏が支配するChristian Dior(クリスチャン・ディオール)を通じて議決権のほぼ過半数を所有しています。主要なブランドには、仏ファッションブランドのLouis Vuitton (ルイ・ヴィトン)、Christian Dior (クリスチャン・ディオール)、BVLGARI(ブルガリ)、シャンパンのDom Pérignon (ドン・ペリニヨン)、Moet & Chandon (モエ・エ・シャンドン)や免税店のDFSが含まれます。さらに詳しく

資生堂

日本を代表する化粧品メーカーです。プレスティージ化粧品に強みを持ちます。香水は資生堂のフランスのBeauté Prestige International(ボーテ・プレステージ・インターナショナル)が展開しています。イッセイミヤケ、ナルシソ・ロドリゲス、エリー・サーブ等とタイアップし、セルジュ・ルタンスブランドでも展開しています。2020年にパーソナルケアブランドをCVCに売却しました。

Beiersdorf(バイヤスドルフ)

バイヤスドルフは、1882年に設立されたドイツに本拠を置く化粧品・スキンケアメーカーです。日焼け止めのコパトーン、制汗剤のエイトフォー(8×4)、Nivea(ニベア)、Eucerin(ユーセリン)、Hansaplasなどのボディケア商品に強みを持ちます。Tesa(テサ)ブランドで産業用の粘着テープも電機・自動車やヘルスケア向けに展開しております。コーヒー大手のチボーも保有するMichael Herz氏の資産運営会社であるMaxingest傘下にあります。さらに詳しく

Coty(コティ)

世界最大級の香水・化粧品メーカーです。仏にて創業ののち、ファイザー、トイレタリーの英Reckitt Benckiser plc(レキットベンキーザー)と関係が深い独Joh. A. Benckiser GmbH(ヨー・A・ベンキーザー)傘下企業として成長し、現在はNYSEに上場しています。主力香水ブランドにアディダス(Adidas)、ジョーバン(Jovan)、ステットソン(Stetson)やアパレルブランドの派生香水のカルバンクライン(Calvin Klein)、マーク ジェイコブス (Marc Jacobs)、ヴェラウォン(Vera Wang)、ケネスコール(Kenneth Cole )等があります。2015年にP&Gよりフレグランスブランドの「Hugo」「Gucci」、カラーコスメティックブランドの「COVERGLRL」「Max Factor」、ヘアカラービジネスの「Wella」「Clairol」を買収しています。

花王

花王は、1940年に日本有機として設立された日本を代表する化粧品・日用品メーカーです。ビューティケア、ファブリック&ホームケア、ケミカルとヒューマンヘルスケアの4事業を柱に展開しています。アタック、ハイター、ビオレ、メリーズブランドなどのブランドを有しています。2005年にカネボウから化粧品事業を買収しています。さらに詳しく

Natura Cosméticos(ナチュラ・コスメティコス)

ブラジル化粧品大手で、サンパウロ証券取引所に上場しています。南米を中心に展開し、セールスレディーを通じて化粧品を販売しています。香水を含めマス向けの商品が多いことが特徴です。2017年にボディショップを、2019年にエイボンを買収しました。

Avon(エイボン)
米化粧品大手で、NYSE上場企業していました。エイボンレディーを通じて化粧品を販売しています。香水もマス向けの商品が多いのが特徴です。

Chanel(シャネル)

仏高級ブランドです。服飾・化粧品・香水・宝飾品・時計の分野でブランドの横展開しています。有名なシャネルN ° 5やエゴイスト等の香水を販売しています。

Puig(ピュイグ)

ピュイグ家によって経営されているスペイン・バルセロナに本拠を置く服飾・香水大手メーカーです。主要ブランドは、ニナ・リッチ(Nina Ricci)、コム・デ・ギャルソン(Comme des Garçons)、ジャン・ポール・ゴルチェ(Jean Paul Gaultier)等があります。2020年に急成長しているメイクアップおよびスキンケアブランドである2013年設立のシャーロット・ティルベリーを買収しました。

Elizabeth Arden(エリザベスアーデン)

米大手化粧品メーカーです。製薬会社のイーライリリー(Eli Lilly)や日用品大手ユニリーバ(Unilever)傘下を経て、米ナスダックに上場しています。主要な香水ブランドは、「Elizabeth Arden Red Door Salons」「Fifth Avenue」「Green Tea」「Provocative Woman」「Mediterranean」「Pretty」「Red Door Aura」等があります。

Clarins(クラランス)

仏化粧品大手です。香水はThierry MuglerとAzzaro Perfumesのブランドで展開しています。

Henkel(ヘンケル)

ヘンケルは、1876年に設立されたドイツに本拠を置く化学・トイレタリーメーカーです。接着剤、粘着剤、スキンケア、トイレタリー、洗剤、石鹸等のボディケア、シャンプー等ヘアケアの事業を展開しています。世界初の合成洗剤のPersilを開発しました。接着剤はBonderite、Technomelt、Loctiteといったブランドで展開をしています。さらに詳しく

LG生活健康

LG生活環境(LG H&H)は、1947に設立された化粧品、日用品と飲料メーカーです。2001年にLG化学から分社化上場しました。化粧品はThe History of Whoo、O Huiなどを手掛けています。日用品はオーラルケア、ボディケアやホームケアを手掛けています。米国事業強化の一環で、2019年にニューエイボン、2021年にボインカを買収しました。飲料はコカコーラのボトラー事業を運営しています。

参照したデータの詳細情報について


参照したデータは以下の通りです。リンク切れなどありましたら、お問い合わせのページからご連絡頂けますと大変有難く存じます。

化粧品会社売上高ランキング

参照した市場規模の情報

シェアをする

  • facebook
  • hatebu
  • linkedin
  • line
EN