工作機械業界の世界シェアや市場規模について分析をしています。トルンプ、DMG森精機、通用技術集団、ヤマザキマザック、シューラ―、オークマといった大手工作機械メーカーの概要や動向も掲載しています。
【市場シェア】
工作機械メーカー各社の2021年度の売上高を分子に、工作機械業界の市場規模を分母にして、2021年の工作機械業界の市場シェアを簡易に算出すると、1位はドイツのトルンプ、2位は日本のDMG森精機、3位はアマダとなります。⇒参照したデータの詳細情報
2021年工作機械業界シェアランキング
順位 | 会社名 | 市場シェア |
---|---|---|
1位 | トルンプ | 4.82% |
2位 | DMG森精機 | 4.20% |
3位 | アマダ | 3.31% |
4位 | ニデック(日本電産) | 2.28% |
5位 | 牧野フライス製作所 | 1.98% |
6位 | シューラー | 1.87% |
7位 | オークマ | 1.83% |
8位 | 斗山マシンツールズ | 1.81% |
9位 | JTEKT | 1.58% |
10位 | ファナック | 1.53% |
11位 | ジョージフィッシャー | 1.16% |
12位 | 現代WIA | 0.82% |
13位 | グリーソンワークス | 0.73% |
14位 | キロン・グループ | 0.61% |
15位 | 通用技術集団 | 0.21% |
1位はドイツのトルンプ、2位はドイツのDMGと森精機が経営統合して誕生したDMG森精機となります。3位はプレス機器最大手のアマダで、2位と3位を日本勢が占めています。4位にニデック(日本電産)が登場です。本業のモーターに加え、工作機械分野にも積極的に進出しています。
日本の工作メーカーの老舗であるオークマ、牧野フライスとJTEKTは常連です。8位は韓国のコングロマリットである斗山グループである斗山マシンツールです。6位にはアマダのプレス分野での競合であるドイツのシューラ―が位置しています。
15位は中国の通用技術集団です。2017年に経営破綻した工作機械大手の大連機床や2019年に破綻した同業の瀋陽機床のスポンサーになっており、中国政府の以降受けた工作機械メーカーの駆け込み寺的な存在です。NC装置の内装化も進め、財務力のあるスポンサーがバックになりました。今後積極投資を通じてドイツと日本勢との競合が激化する可能性もあります。
なお、当該ランキングには非上場で売上高が非公表のため、日本の工作機械四天王の一角であるヤマザキマザックが含まれておりません。
【市場規模】
当サイトでは、調査会社等の公表データを参考にし、工作機械業界の2021年の世界市場規模を821億ドルとしております。参考にしたデータは以下の通りです。
調査会社のマーケッツアンドマーケッツによれば、2019年の同業界の場規模は770億ドルです。2027年までに年平均3.2%で成長し、983億ドルの規模になると推計されています。ただしコロナの影響をうけ2020年は656億ドルとなります。
調査会社のグランドビューリサーチによると2019年、2020年と2021年の同市場規模は772億、795億ドルと820.7億ドルです。2030年にかけて年平均5.5%での成長を見込みます。⇒参照したデータの詳細情報
年 | 市場規模 | 前年成長率 |
---|---|---|
2021年 | 821億ドル | 5.5% |
2020年 | 795億ドル | 3.2% |
2019年 | 770億ドル | n/a |
工作機械の種類
日本工業規格によれば、工作機械とは、主として金属の工作物を切削・研削などによって不要な部分を取り除き、求められる形状に作り上げる機械の総称です。工作機械の製品を生み出す機械を「作っている」ことから、マザーマシーンとも言われています。日本とドイツのメーカーが歴史的に強い業界です。工作機械の種類には、プレス機械、板金機械、放電加工機、歯切り盤、ボール盤、中ぐり盤、フライス盤、マシニングセンタ、旋盤、研削盤、ターニングセンタ等があげられます。それぞれの機械ごとに得意とする企業があります。(例:日本のアマダは板金機械に強み)
また工作機械ごとに、旋削(削る)、穴あけ、中ぐり(穴を拡大する)、フライス削り、研削、歯切り、放電加工、レーザー加工等の得意とする加工役割があります。中には、これらの工程のいくつかを自働化する工作機械もあります。
日本の工作機械会社は、コンピューターによる自動制御を可能とするNC装置(数値制御装置)がついたNC工作機械を得意とし、中国勢との差別化を図っています。NC装置はファナックや三菱電機が強みを持っています。
【M&Aの動向】
工作機械業界では業界内での再編が続いています。MBKパートナーズが保有する斗山マシンツールズが今後の再編の要となる可能性があります。買収マルチプルは売上高倍率ベースで概ね1倍以下です。
2012年 アンドリッツがシューラ―を買収
2015年 森精機がドイツのDMGを買収
2016年 MBKパートナーズが斗山マシンツールズを買収
知りたいプレス機械
工作機械産業と企業経営―なぜ日本のマシニングセンタは強いのか
トコトンやさしい工作機械の本(第2版)
初歩から学ぶ工作機械
【会社の概要】
Trumpf(トルンプ)
1923年に設立されたドイツに本拠を置く大手工作機械メーカーです。工作機械の中でも板金機械が主力です。非上場です。
DMG森精機
DMG森精機はNC旋盤やマシニングセンターなど切削系工作機に強い日本の森精機とドイツの工作機械大手のDMGが経営統合をして誕生しました。
General Technology Group(通用技術集団、Genertec)
通用技術集団は国務院国有資産監督管理委員会(SASAC)の監督下にある中央管理型の国有企業です。超精密CNC工作機械、CNCシステムなどの分野で積極的に再編を行い、機械工具集団、ハルビン測定工具集団、北京工作機械研究所、大連機床、瀋陽機床等の工作機械の会社を傘下に収めています。
Shenyang Machine Tool(瀋陽機床)
中国瀋陽に本拠を置く大手工作機械メーカーです。中大型の金属切削機械に強みを持ちます。2011年には工作機器業界の売上高で世界最大となりましたが、2019年に会社更生法を申請し、同業の中国通用技術がスポンサーとして再建支援をしています。
Dalian Machine Tool Corporation(通用技術集団大連機床、DMTG)
旋盤やマシニングセンタ等に強みを持ちます。中国の国営企業である通用技術集団傘下企業です。積極的なM&Aが特徴で、Ingersoll (インガソルランド)傘下の特殊機械事業、マシニングセンタに強いZimmermann を買収しています。通用技術集団傘下となり2019年に通用技術集団大連機床が設立されました。
ANDRITZ(アンドリッツ)
オーストリアに本拠を置くコングロマリット企業です。製紙パルプ、水力発電向けの電気機械装置、固液分離機器、工作機械を手掛けています。工作機械は買収したSCHULER(シューラー)を通じて展開しています。
SCHULER(シューラー)について
ドイツに本拠を置くプレス機世界大手メーカーです。金属成型プレス、鍛造プレス、硬貨用プレス等のプレス機を製造しています。プレス機分野は、特に自動車向けの高張力鋼板(ハイテン)のプレス成型への需要が高まっており、日本のアイダエンジニアリング、日本電産等と競合しています。
Doosan Machine Tools(斗山マシンツールズ)
斗山マシンツールズは韓国に本拠を置く工作機械メーカーです。建機大手の斗山インフラコアの事業部門でしたが、2016年にMBKパートナーズが買収しました。
Georg Fischer(ジョージフィッシャー)
1802年に設立されたスイスに本拠を置く製造会社です。液体や気体の輸送のための配管パイプ、自動車の鍛造品、工作機械の3部門で事業を展開しています。ミーリングマシンや放電加工機等の製品に強みを持ちます。
Gleason Corporation(グリーソンワークス)
米国に本拠を置く工作機械メーカーです。歯車に関するベベルギヤ加工機やシリンドリカルギヤ加工機の製造に強みを持ちます。
Hyundai WIA(現代WIA)
1976年に設立された韓国の現代自動車・起亜自動車のグループ会社です。主に自動車部品と旋盤、プレスライン等の工作機械を製造販売しています。
Chiron Group(チロングループ)
ドイツに本拠を置くCNC立形フライス盤、複合旋盤加工機、およびターンキー製造ソリューションに強みを持つ工作機械メーカーです。CHIRONとSTAMAブランドで展開しています。
JTEKT(ジェイテクト)
自動車部品メーカーですが、研削盤、切削機、マシニングセンタ等の工作機械も手掛けています。
アマダ
板金加工機に強みを持つ日本の大手工作機械メーカーです。
牧野フライス製作所
マシニングセンタに強みを持つ工作機械メーカーです。
日本電産
ニデック(日本電産)は、1973年に永守重信氏によって設立された日本を代表するモーターメーカーです。精密モーターと言われるHDD用モーターやCD・DVD用モーター等で圧倒的な強みを持ちます。産業用モーターはエマソンエレクトリックから産業用モーター・ドライブ事業を買収し強化しています。精密小型モーター(HDDモーターを含む)、車載モーター、家電・産業用モーター、機器装置、光学品が主軸です。さらに詳しく
参照したデータの詳細情報について
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