ベアリング業界の世界市場シェアの分析

世界の主要なベアリングメーカーの一覧、各社の世界市場シェアや市場規模について分析をしています。ベアリング業界は「機械の米」と言われ産業機械や自動車部品に必要な部品です。SKF、シェフラ―、日本精工、NTN、ティムケンといった日米欧のメーカーによる寡占的な構造となっていましたが、近年は中国系のメーカーによる追い上げも盛んです。

【市場シェア】

ベアリングメーカー各社の2021年度の売上高を分子に、市場規模を分母にして、2021年のベアリング業界の世界市場シェアを簡易に算出すると、1位はSKF AB、2位は日本精工、3位はSchaeffler(シェフラー)となります。⇒参照したデータの詳細情報

ベアリング業界の世界市場シェア(2021年)

順位会社名市場シェア
1位SKF7.41%
2位日本精工3.90%
3位シェフラー3.32%
4位人本集団2.32%
5位NTN2.30%
6位ティムケン2.30%
7位ジェイテクト2.23%
8位ローテエルデ1.21%
9位ミネベアミツミ0.93%
10位不二越0.53%
11位日本トムソン0.40%
12位瓦房店軸承集団0.21%
ベアリング業界の世界シェア(2021年) ©ディールラボ
ベアリング業界の世界市場シェア(2021年)
ベアリング業界の世界市場シェア(2021年)

ベアリングメーカー世界1位はスウェーデンSKFとなっています。同社はほぼベアリング専業となっています。2位は日本精工が入っております。同社はベアリング以外の電動パワーステアリング等の自動車部品の比率が高いことが特徴です。3位はドイツのSchaeffler(シェフラー)社となります。同社は支配株主であるシェフラ―家を通じてタイヤ大手のコンチネンタルをグループに有しています。4位は中国資本である人本集団(C&U)です。5位は日本のNTNです。6位は米国のティムケン、7位は日本のジェイテクトが入っております。ティムケンは2009年に軸受事業の一部をジェイテクトに売却しています。

【市場規模】

当サイトでは、2021年のベアリング業界の市場規模を1213億ドルとしております。参考にしたデータは以下の通りです。

調査会社プレセデンスリサーチによると、2021年の同業界の市場規模は1213億ドルです。2030年にかけて年平均7.6%で成長し、同年には2430億ドルへと拡大する見込みです。
調査会社のグランドビューリサーチによると、2020 年の同場規模は1187億ドルです。2021~2028年で年平均8.5%の成長を見込んでおります。
調査会社のアライドマーケットリサーチによると、2019年の同市場規模は1074億ドルです。2027年にかけて6.1%の成長を見込みます。⇒参照したデータの詳細情報

ベアリング市場規模成長率見込み
2021年1213億ドル7.6%
2020年1187億ドル8.5%
2019年1074億ドル6.1%
ベアリングの推定市場規模の推移 ©ディールラボ
ベアリング業界の市場規模推移
ベアリング業界の市場規模推移

【M&Aの動向】

顧客獲得や技術獲得の観点から業界大手による同業他社の買収が続きます。買収マルチプル(売上高倍率)は1倍弱から7倍と分散しています。

2006年 NTNによるSNR Rolementsのルノーからの買収
2008年 SKFによるPEER Bearingの買収
2009年 JTEKTによる米Timkenのニードル軸受事業の買収
2010年 SKFによるスウェーデンのLiocoln Industrial Corporationの買収
2011年 シェフラーによる独コンチネンタルの買収
2012年 SKFがGeneral Bearing Corporationを買収
2012年 日本精工によるGongzhouling Bearingへの出資
2013年 日本精工による中国摩士集団への出資
2013年 SKFによる米ベアリングのKaydon買収
2018年 ティムケンがイタリアのリニア軸受会社Rollonを買収

ベアリング業界の買収マルチプル(売上高倍率)
ベアリング業界の買収マルチプル(売上高倍率)

ベアリングの種類

ベアリングは、機械部品と機械部品の間に生じる摩擦抵抗を低減させる機能を持ち、消耗品でもあります。ほとんど全ての機械類にベアリングが利用されていると言っても過言はありません。自動車、航空機、家電、産業機器等で幅広く利用されています。潤滑剤、耐用性、耐摩耗性といった性能が求められ、欧米日のメーカーが製品品質の観点から競争力を保っています。


軸受には様々な種類があり、用途に応じて玉軸受(新溝、アンギュラ)、ころ軸受(円筒、円すいころ軸受、針状ころ軸受)、針軸受、スラスト玉軸受等があり、自動車のトランスミッション、車輪、工作機器、建設機器、ポンプ、エンジン、鉄道車両、農機等の幅広い分野で使用されています。

さらに業界に詳しくなるためのお薦め書籍と業界団体

図解入門よくわかる 最新ベアリングの基本と仕組み
ベアリングのおはなし
トコトンやさしい軸受の本
日本ベアリング工業会
American Bearing Manufacturers
China Bearing Industry Association

【会社の概要】

SKF AB

1907年に創業されたスウェーデンの誇るベアリング名門。SKFはSvenska Kullagerfabriken(スベンスカ・クラーゲルファブリーケン)の略です。ベアリング領域では世界最大手。商用車・自動車大手のボルボはSKFの経営陣によって設立された経緯もあります。

Schaeffler(シェフラー)

ドイツに本拠を置くベアリング大手です。フランクフルト証券取引所に上場をしていますがシェフラー家が大株主として支配しています。自動車事業と産業機械事業の二つの事業が主軸です。INA(ニードルローラーベアリング)、FAG(精密ベアリング)、Luk(クラッチやトランスミッション)の3つのブランドで世界展開をしています。ロンドンアイにも同社のベアリングが用いられていることは有名です。シェフラー家を通じて、タイヤ大手のContinental(コンチネンタル)の筆頭株主でもあります。

シェフラ―家とシェフラ―/コンチネンタルの関係

シェフラ―グループの組織図

シェフラ―グループの組織図

シェフラ―家によるコンチネンタル買収

  • 2008年に自動車用のベアリング大手の独シェフラー家が独タイヤ・自動車部品大手のコンチネンタルの株式49.9%を非友好的な形で買収を提案。
  • 買収価格は最終的に1株75ユーロ(前日比約2%プレミアム、100%ベースの株式価値で約121億ユーロ)。
  • 買収成功によってシェフラー・コンチネンタルグループは、ボッシュやデンソーに次ぐ規模の総合自動車部品メーカーとなった。シェフラーは軸受け中心の非公開会社。コンチネンタルはシーメンスから自動車電子部品事業のVDOオートモーティブを買収し、タイヤに加え総合自動車部品メーカーを志向。
  • シェフラーの直近の売上は89億ユーロに対しコンチネンタルの売上は264億ユーロと、小が大を飲む買収となった。規模にして約3倍の相手への買収は、自動車部品業界においてシェフラー・コンチネンタル連合というボッシュやデンソーに匹敵する規模の会社誕生にはつながったものの、その後のリーマンショック等の影響で、負債圧縮等の処理に追われました。

コンチネンタルについて

Continental(コンチネンタル)は、1871年に創業されたドイツのハノーヴァーに本拠を置くタイヤ・ブレーキ等の自動車部品メーカーです。シーメンスやモトローラより自動車制御関連の事業も積極的に買収しています。2008年にドイツのベアリング大手のシェフラ―を傘下にもつシェフラー家が支配株主となりました。大きくタイヤ事業と自動車部品事業に分かれます。タイヤ事業の世界シェアではミシュラン、ブリジストン、グッドイヤーのトップ3に次ぐ規模を誇っています。自動車部品メーカーにおける規模でも、ボッシュやデンソー等に匹敵する世界最大級の自動車部品メーカーです。自動車部品の中でも、ブレーキ、パワートレイン、シャーシ、インパネ、カーオーディオ、ディスプレイといった分野の世界シェアでは上位に位置しています。さらに詳しく

Wafangdian Bearing Group Corporation(瓦房店軸承集団有限責任公司)

中国の大連市系の大手ベアリング会社です。日本のTHKやジェイテクトと合弁会社を設立しています。

ジェイテクト

2006年に光洋精工と豊田工機の経営統合により誕生した会社です。自動車向けの産業機器や工作機械大手メーカーです。2009年に当時市場シェアが5位の米Timken(ティムケン)の軸受事業を買収し同事業を強化しております。

日本の大手ベアリング会社では日本精工、NTN、ミネベアミツミ、不二越、日本トムソン等が大手です。日本精工はボールねじ、リニアガイド、電動パワーステアリングでも世界シェアトップクラスです。NTNは自動車用等速ジョイントやアクスルユニットにも強みを持ちます。ミネベアミツミは、ミニチュア・小径ボールベアリングや航空機向けのローラーベアリング等に強みを持ちます。不二越は、自動車や産業機器向けのラジアル玉軸受等に強みを持ちます。

Timken(ティムケン)

米国に本拠をおくベアリング大手です。ベアリング以外にはワートランスミッションやチェーン等も手掛けております。

C&U(人本集団)

1991年に設立された中国のベアリングメーカーです。C&U精工として日本でも事業を展開しております。

LYC Bearing(洛阳LYCベアリング

1954年に設立されたベアリングメーカーです。

Rothe Erde(ローテエルデ)

ティッセンクルップグループで、産業機器向けの軸受けの開発製造を行っています。

ティッセンクルップについて

ティッセンクルップ(ThyssenKrupp)は、1811年創業のクルップと1867年創業のティッセンが、1999年に経営統合をして誕生したドイツ最大級の重工業メーカーです。鉄鋼、エレベーター、自動車部品、造船(軍需向け)がメイン事業です。2010年代以降構造改革を行い、タタ製鉄との欧州製鉄事業の経営統合が破たん後、2019年にティッセンクルップは、主に自動車部品、エレベーター、プラントサービスを提供するtkインダストリアルズと鉄鋼販売、クランクシャフト等の産業材、潜水艦、鉄鋼を手掛けるtkマテリアルズに分社化する旨発表しましたが、実現せず、2019年に稼ぎ頭であるエレベーター事業をアドベント・インターナショナルに売却しました。さらに詳しく

ILJINベアリング

韓国大手のベアリングメーカーです。

Wanxiang Qianchao(ワンシンエンチャオ)

中国の大手自動車部品メーカーです。自動車用シャシー、サスペンション、ブレーキ、車輪ユニット、ベアリング、精密部品といった製品を開発製造しています。

不二越

商標は那智(ナチ)です。ベアリング、切削工具系の工作機械でも有名です。産業用ロボットの分野では溶接系や搬送系のロボットに強みがあります。

参照したデータの詳細情報について


参照したデータは以下の通りです。リンク切れなどありましたら、お問い合わせのページからご連絡頂けますと大変有難く存じます。

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