世界の主要なベアリングメーカーの一覧、各社の世界市場シェアや市場規模について分析をしています。ベアリング業界は「機械の米」と言われ産業機械や自動車部品に必要な部品です。SKF、シェフラ―、日本精工、NTN、ティムケンといった日米欧のメーカーによる寡占的な構造となっていましたが、近年は中国系のメーカーによる追い上げも盛んです。
【ベアリングとは】
ベアリングは、機械のなかの軸をなめらかに回転させる部品です。「軸」の回転を「受」け、支えることから「軸受(じくうけ)」とも呼ばれます。ベアリングは内輪、ボール、外輪の3層でできています。外輪を機械に固定して、内輪のなかに軸をはめ込むことで、軸を安定させ、なめらかに回転させます。摩擦を0に近づけ、回転をなめらかにする役割をもちます。自動車や電車、飛行機、風力発電機など様々なところで使われる部品です。
ベアリングの種類
ベアリングは、機械部品と機械部品の間に生じる摩擦抵抗を低減させる機能を持ち、消耗品でもあります。ほとんど全ての機械類にベアリングが利用されていると言っても過言はありません。自動車、航空機、家電、産業機器等で幅広く利用されています。潤滑剤、耐用性、耐摩耗性といった性能が求められ、欧米日のメーカーが製品品質の観点から競争力を保っています。
軸受には様々な種類があり、用途に応じて玉軸受(新溝、アンギュラ)、ころ軸受(円筒、円すいころ軸受、針状ころ軸受)、針軸受、スラスト玉軸受等があり、自動車のトランスミッション、車輪、工作機器、建設機器、ポンプ、エンジン、鉄道車両、農機等の幅広い分野で使用されています。
さらに業界に詳しくなるためのお薦め書籍と業界団体
図解入門よくわかる 最新ベアリングの基本と仕組み
ベアリングのおはなし
トコトンやさしい軸受の本
ベアリングがわかる本
日本ベアリング工業会
American Bearing Manufacturers
China Bearing Industry Association

【ベアリング業界の世界市場シェア+ランキング】
ベアリング業界の2023年度の売上高⇒参照したデータの詳細情報を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、2023年のベアリング業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はSKF、2位はシェフラー、3位はローテエルデとなります。
ベアリング業界の世界市場シェア(2023年)
順位 | Company name(English) | 会社名 | 市場シェア |
---|---|---|---|
1位 | Aktiebolaget SKF | SKF | 7.64% |
2位 | Schaeffler AG | シェフラー | 3.76% |
3位 | Rothe Erde | ローテエルデ(ティッセンクルップ) | 3.37% |
4位 | NSK Ltd. | 日本精工 | 3.15% |
5位 | Timken | ティムケン | 2.68% |
6位 | JTEKT Corporation | ジェイテクト | 2.25% |
7位 | NTN Corporation | NTN | 2.18% |
8位 | MinebeaMitsumi Inc. | ミネベアミツミ | 1.33% |
9位 | C&U Group Co.,Ltd. | 人本集団 | 1.11% |
10位 | NACHI-FUJIKOSHI CORP. | 不二越 | 1.03% |
11位 | NIPPON THOMPSON CO.,LTD. | 日本トムソン | 0.30% |
12位 | Wafangdian Bearing Group Corporation | 瓦房店軸承集団 | 0.25% |
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ベアリング業界世界1位はスウェーデンのSKFです。続く2位はドイツのSchaeffler(シェフラー)社です。同社は支配株主であるシェフラ―家を通じてタイヤ大手のコンチネンタルをグループに有しています。3位は、ティッセンクルップ(ThyssenKrupp)を親会社にもつドイツのローテエルデです。4位には日本精工が入っており、同社はベアリング以外の電動パワーステアリング等の自動車部品の比率が高いことが特徴です。5位は米国のティムケン、6位∼8位には日本のジェイテクト、NTN、ミネベアミツミが入っています。ティムケンは2009年に軸受事業の一部をジェイテクトに売却しています。
【ベアリング業界の世界市場規模】
当データベースでは、2023年のベアリング業界の市場規模を1210億ドルとしております。参照した各種調査データは次の通りとなります。
調査会社グランドビューリサーチによると、2023年の同業界の市場規模は1210億ドルです。2030年にかけて年平均9.5%で成長し、規模は2266億ドルへと拡大することを見込んでいます。⇒参照したデータの詳細情報
年 | 市場規模 | 成長率見込み |
---|---|---|
2023年 | 1210億ドル | – |
2030年 | 2266億ドル | 9.5% |

【M&Aの動向】
顧客獲得や技術獲得の観点から業界大手による同業他社の買収が続きます。買収マルチプル(売上高倍率)は1倍弱から7倍と分散しています。
2006年 NTNによるSNR Rolementsのルノーからの買収
2008年 SKFによるPEER Bearingの買収
2009年 JTEKTによる米Timkenのニードル軸受事業の買収
2009年 ミネベアミツミ、歯科、医療機器及び航空宇宙産業向け特殊ベアリングの製造販売会社myonic Holding GmbH社を買収
2010年 SKFによるスウェーデンのLiocoln Industrial Corporationの買収
2011年 シェフラーによる独コンチネンタルの買収
2012年 SKFがGeneral Bearing Corporationを買収
2012年 日本精工によるGongzhouling Bearingへの出資
2013年 日本精工による中国摩士集団への出資
2013年 SKFによる米ベアリングのKaydon買収
2017年 ミネベアミツミ、日本政策投資銀行と共同で米C&A Tool Engineering, Inc.の全株式を取得
2018年 ティムケンがイタリアのリニア軸受会社Rollonを買収
2024年 ジェイテクト、欧州の針状軸受け事業を独ファンドに売却
2024年 ティムケン、精密駆動システム製造会社のCGI 社を買収

【会社の概要】
Aktiebolaget SKF (株式会社エスケイエフ)
1907年に創業されたスウェーデンの誇るベアリング名門。SKFはSvenska Kullagerfabriken(スベンスカ・クラーゲルファブリーケン)の略です。ベアリング領域では世界最大手。商用車・自動車大手のボルボはSKFの経営陣によって設立された経緯もあります。
Schaeffler AG(シェフラー)
ドイツに本拠を置くベアリング大手です。フランクフルト証券取引所に上場をしていますがシェフラー家が大株主として支配しています。自動車事業と産業機械事業の二つの事業が主軸です。INA(ニードルローラーベアリング)、FAG(精密ベアリング)、Luk(クラッチやトランスミッション)の3つのブランドで世界展開をしています。ロンドンアイにも同社のベアリングが用いられていることは有名です。シェフラー家を通じて、タイヤ大手のContinental(コンチネンタル)の筆頭株主でもあります。
シェフラ―家とシェフラ―/コンチネンタルの関係
シェフラ―グループの組織図
シェフラ―家によるコンチネンタル買収
- 2008年に自動車用のベアリング大手の独シェフラー家が独タイヤ・自動車部品大手のコンチネンタルの株式49.9%を非友好的な形で買収を提案。
- 買収価格は最終的に1株75ユーロ(前日比約2%プレミアム、100%ベースの株式価値で約121億ユーロ)。
- 買収成功によってシェフラー・コンチネンタルグループは、ボッシュやデンソーに次ぐ規模の総合自動車部品メーカーとなった。シェフラーは軸受け中心の非公開会社。コンチネンタルはシーメンスから自動車電子部品事業のVDOオートモーティブを買収し、タイヤに加え総合自動車部品メーカーを志向。
- シェフラーの直近の売上は89億ユーロに対しコンチネンタルの売上は264億ユーロと、小が大を飲む買収となった。規模にして約3倍の相手への買収は、自動車部品業界においてシェフラー・コンチネンタル連合というボッシュやデンソーに匹敵する規模の会社誕生にはつながったものの、その後のリーマンショック等の影響で、負債圧縮等の処理に追われました。
Continental(コンチネンタル)について
Continental(コンチネンタル)は、1871年に創業されたドイツのハノーヴァーに本拠を置くタイヤ・ブレーキ等の自動車部品メーカーです。シーメンスやモトローラより自動車制御関連の事業も積極的に買収しています。2008年にドイツのベアリング大手のシェフラ―を傘下にもつシェフラー家が支配株主となりました。大きくタイヤ事業と自動車部品事業に分かれます。タイヤ事業の世界シェアではミシュラン、ブリジストン、グッドイヤーのトップ3に次ぐ規模を誇っています。自動車部品メーカーにおける規模でも、ボッシュやデンソー等に匹敵する世界最大級の自動車部品メーカーです。自動車部品の中でも、ブレーキ、パワートレイン、シャーシ、インパネ、カーオーディオ、ディスプレイといった分野の世界シェアでは上位に位置しています。さらに詳しく
Rothe Erde(ローテエルデ)
親会社であるティッセンクルップ(ThyssenKrupp)は、1811年創業のクルップと1867年創業のティッセンが、1999年に経営統合をして誕生したドイツ最大級の重工業メーカーです。鉄鋼、エレベーター、自動車部品、造船(軍需向け)がメイン事業です。2010年代以降構造改革を行い、タタ製鉄との欧州製鉄事業の経営統合が破たん後、2019年にティッセンクルップは、主に自動車部品、エレベーター、プラントサービスを提供するtkインダストリアルズと鉄鋼販売、クランクシャフト等の産業材、潜水艦、鉄鋼を手掛けるtkマテリアルズに分社化する旨発表しましたが、実現せず、2019年に稼ぎ頭であるエレベーター事業をアドベント・インターナショナルに売却しました。さらに詳しく
NSK Ltd.(日本精工株式会社)
1916年に設立された、日本初のベアリングメーカーです。戦前は、トラック用軸受けの開発、軸受け用鋼球の国産化、航空機国産エンジン用軸受けの開発などを行い、事業拡大の基盤を築きました。戦後は、アジア諸国への輸出を開始、海外進出としてブラジルに工場を設立するなど、グローバル展開を本格化させました。1980年代以降、NSKはベアリング事業にとどまらず、精密機器分野にも進出し事業分野を拡大させました。現在は、同社が得意とする摩擦・摩耗・および潤滑に関する技術と、デジタルの融合による価値創造を目指しています。ボールねじ、リニアガイド、電動パワーステアリングでも世界シェアトップクラスです。さらに詳しく
Timken(ティムケン)
米国に本拠をおくベアリング大手です。テーパローラベアリングの設計に関する 2 つの特許を取得した Henry Timken によって 1899年に設立されました。テーパローラベアリングの専門知識を活かして、業界をリードするエンジニアリングベアリングおよび産業用モーション製品を開発してきました。さらに詳しく
JTEKT Corporation (株式会社ジェイテクト)
ジェイテクトは、2005年5月に光洋精工株式会社と豊田工機株式会社が合併し発足した会社です。ステアリングシステムや駆動部品を、世界中の主要な自動車メーカーに提供しており、また、あらゆる機械装置において必要となる“回転部分”を支える「軸受」や、機械を作るための機械「工作機械」の分野でも活躍するなど、部品メーカーでありながら、工作機械技術を併せ持つ、世界でも数少ない企業です。2009年に当時市場シェアが5位の米Timken(ティムケン)の軸受事業を買収し同事業を強化してきました。
NTN Corporation (NTN株式会社)
NTNは日本を代表するベアリングメーカーの一つです。1927年にベアリング専門の製造販売会社として「合資会社エヌチーエヌ製作所」が設立されました。現在のNTNが法人として発足したのはこの時です。その後10年間の活動で、国鉄から大口案件の受注航空機用ベアリングの開発などで事業拡大の基盤を築き、1934年に「東洋ベアリング製造株式会社」として株式公開に至りました。株式公開により大幅増資したことが契機となり、海外進出や新工場設立などで事業は大きく飛躍しました。現在は、収益性向上のためアフターマーケット事業(補修部品などの供給)に注力しています。アフターマーケット事業は産業機械や自動車の補修用途に供給する事業です。自動車用等速ジョイントやアクスルユニットにも強みを持ちます。さらに詳しく
MinebeaMitsumi Inc.(ミネベアミツミ株式会社)
ミネベアミツミは、ベアリングをはじめとする機械加工部品、小型モーター、液晶用ライティングデバイス、センサー、アナログ半導体、アクチュエーター、無線/通信/ネットワーク、コネクタ/スイッチ、電源などの電子機器部品まで、幅広く手掛ける「相合精密部品メーカー」です。ミニチュア・小径ボールベアリングや航空機向けのローラーベアリング等に強みを持ちます。2022年には本多通信工業(株)、住鉱テック(株)、2023年には株式会社ホンダロックと、2024年には日立パワーデバイスとのM&Aにより、コネクタ製品やアクセス製品のビジネスを拡大・強化しています。さらに詳しく
C&U Group Co.,Ltd.(人本集団有限公司)
1991年に設立された中国のベアリングメーカーです。C&U精工株式会社は中国人本集団有限公司の日本法人で、中国の製造工場からベアリングを直輸入し日本国内にて販売を行っています。
NACHI-FUJIKOSHI CORP.(株式会社不二越)
不二越は、1928年12月、富山市で工具メーカーとして創業しました。創立から10年、製鋼所を設立し、材料から商品までの一貫生産体制を確立しました。
商標は那智(ナチ)です。ベアリング、切削工具系の工作機械でも有名です。産業用ロボットの分野では溶接系や搬送系のロボットに強みがあります。高品質な材料をベースに工具、工作機械・ロボット、ベアリング・油圧機器、材料を手掛ける世界で唯一の会社です。機械加工、ロボットなどのマシニング事業、ベアリング・油圧機器などの機能部品事業、材料・熱処理などの精密加工剤を供給するマテリアル事業などの複合・連環型のナチ・ビジネスで、「ものづくりの世界の発展に貢献」しています。自動車や産業機器向けのラジアル玉軸受等に強みを持ちます。さらに詳しく
NIPPON THOMPSON CO.,LTD.(日本トムソン株式会社)
1950年に設立された日本トムソンは、「社会に貢献する技術開発型企業」という経営理念のもと、各種機械の重要要素であるベアリング(軸受)および関連機器などの製造販売を行っています。ブランド名であるIKO(アイ ケイ オー)には、革新的で(Innovation)、高度な技術に立脚し(Know-how)、創造性に富む(Originality)という意味が込められています。さらに詳しく
Wafangdian Bearing Group Corporation(瓦房店軸承集団有限責任公司)
中国の大連市系の大手ベアリング会社です。日本のTHKやジェイテクトと合弁会社を設立しています。