タタは、1868年にペルシャ系ゾロアスター(拝火、インドではパルシーとも言われる)教徒であるジャムシェトジー・タタ氏がムンバイで設立した木綿貿易会社が発祥です。インド西部のムンバイに本拠を置きます。インド三大財閥の一角です。規模ではインド最大級で、塩からソフトまでと言われ、鉄鋼、自動車、ホテル、紅茶、ITサービス、時計、宝飾品、電力、通信、化学、食品、小売などに至る多岐分野で事業を展開する財閥です。海外100ヶ国で事業を展開し、約70万人の従業員と1000億ドル超の売上を計上しています。日本に企業では、三菱商事、新日鐵住金、日立製作所、スズキ、NTTグループ等と提携をしています。リライアンス、アーディティヤ・ビルラー・グループを擁するビルラグループを含めインド3大財閥と評されます。初代ジャムセトジー・タタ、二代目ドラブジ・タタ、三代目ノウロジ・サクラトヴァラ、四代目JRD・タタに続き、現在は五代目となるラタン・タタ氏がグループの総帥です。
タタ・サンズとタタ・インダストリアルズが、各グループ会社の最大株主として、強い影響力を有しています。タタ・サンズは、タタ一族の慈善財団が66%、シャポルジ・バロンジ・グループが18%の議決権を保有しています。2012年にパロンジ家出身のサイラス・ミストリー氏がラタン・タタ氏を引き継ぎ、グループの総帥となりましたが、経営方針の違いから解任され、2016年にラタン・タタ氏が復活しました。現在は、ファミリー出身でないナタラジャン・チャンドラセカラン氏が率いています。
事業構成は大きくIT、鉄鋼、自動車・トラック、化学、飲料に分かれています。
タタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)が中核です。全世界で包括的な IT の受託サービスを提供しています。TCSはタタ・グループの中で最大である39万人超の従業員を有しています。利益貢献もグループ中最大である。米国でのIT技術者の就労ビザ問題を抱えています。
タタ製鉄が中核です。インド内では最大です。日本製鉄と提携しています。2007年に120億ドル(約1兆1千億円)で英蘭コーラスCorus(コーラス、GBR/NLD)を買収しました。2016年に英国の航空、自動車、原油・ガス向けの特殊鋼事業を英鉄鋼商社リバティハウスに売却しております。2017年9月に欧州事業の独鉄鋼大手ティッセン・クルップとの統合を発表しましたが、英国の欧州連合(EU)離脱決定のあおりで売却が頓挫しました。ティッセンとの提携に活路を見いだすという機転に、同氏の経営手腕に対する評価は一気に高まりました。高止まりしている固定費用の削減が課題となっています。
タタ自動車が中核です。売上高は約5兆円弱規模です。売上高がグループ最大です。商用車、乗用車、高級車、スポーツ・ユーティリティ(SUV)、バス、軍用車両を展開しています。2017年は、インド国内の約5000のディーラーを通じて、約1200万台超の販売しています。商用車では50以上、乗用車では11のモデルを販売しています。販売台数ベースの売上構成比は、乗用車26%、SUV36%、小型商用車は約286万台の23%、中大型商用車は約170万台の14%となっています。売上比率では、インド国内のタタ自動車が約1兆円、ジャガー・ランドローバーといった高級・SUVが約4兆円と好調です。一方、乗用車は超低価格車「ナノ」が低迷し、インド国内向け苦戦。独フォルクスワーゲン(VW)との戦略提携もとん挫してしまいました。タタ自動車(乗用車と商用車)部門のEBITDAマージンは約6%に対して、ジャガー・ローバー部門は約13%です。タタ自動車の規模及びマージンの改善が今後の課題と言えます。
商用車部門は韓国の大宇の商用車部門を買収(現タタ大宇)しました。商用車のインド国内の商用車の年間販売台数である880万台における市場シェアは約45%超を有しており、インド最大の商用車メーカーです。ウルトラ1518、シグナ3718、エース・ゴールド等が主要ブランドに強みがあります。乗用車の国内市場シェアは約6%程度です。
エース、マジック、シグナ
商用車・トラックの内訳をみると、中・大型トラックがインド国内の市場シェアの55%を占めていることがわかります。
イギリス、韓国、タイ、南アフリカ、インドネシア、豪州、スロバキアで製造工場を保有しています。約5万台を輸出しており、商用車の輸出先としては、ネパール、バングラデシュ、スリランカ、南アフリカ、インドネシアで約80%を占めます。タタ大宇は約9000台を韓国で生産し、韓国内の市場シェアは約22%程度です。アルジェリアやベトナム向けの輸出が多いです。乗用車部門は高級セダンを展開するジャガーとレンジ・ローバーを展開しています。バス部門は、スペインのイスパノ・カロセーラを買収(現タタ・イスパノ)しました。売上高は近年堅調に推移しています。
タタ化学が主軸です。ソーダ灰業界では世界大手クラスです。製塩も行っています。
タタ・グローバル・ビバレッジが主軸です。紅茶及びコーヒーに強みを持ちます。紅茶はTata Tea、テトリー(Tetley)ブランドを展開しています。2019年の紅茶事業の売上高は520億インドルピーで、1ルピー=0.013ドルの為替レートで米ドル換算売上高は7億ドルです。
ホテル事業:インディアン・ホテルズ(IHCL)が中核です。タージブランドのホテルを展開するもの、現状は事業の再構築に取り組んでいます。宝石事業、エアコン事業は、タイタン、ボルタスが展開しています。電力事業、時計・宝石事業、エアコン・空調ではインド国内では市場シェアトップです。その他、タタ電力が電力事業、タタ・コミュニケーションズがデータセンター・通信事業、タージホテルズでホテル事業、ボルタスがエアコン販売を展開しています。