バス業界(バス製造会社)の世界市場シェアの分析

バス業界の世界シェア、業界ランキング、市場規模について分析をしています。世界大手のバスメーカーである、中国の3強(ユートン、キンロン、SAIC福田)、欧州3強(トライトン、ボルボ、CNHインダストリアル)やインドのアショック・レイランドの概要や動向も掲載しています。

【市場シェア】

バスメーカー各社の2020年度の販売台数(⇒参照したデータの詳細情報)を分子に、後述する市場規模を分母にして、2020年のバス業界の世界市場シェアを簡易に算出すると、1位は金龍客車(King Long、キンロン) 7.3%、2位は北汽福田の7.1%、3位は宇通客車(Yutong、ユートン)の7.0%となります。

バス業界の世界市場シェア(2020年)

  • 1位 金龍客車(King Long) 7.3%
  • 2位 北汽福田(SAIC Futon) 7.1%
  • 3位 宇通客車(Yutong) 7.0%
  • 4位 ダイムラー 3.3%
  • 5位 アショック・レイランド 3.0%
  • 6位 トレイトン 2.7%
  • 7位 ナビスター 1.8%
  • 8位 中通客車(Zhongtong) 1.8%
  • 9位 イベコ 1.6%
  • 10位 BYD 1.5%
  • 11位 ボルボ 1.0%
  • 12位 中車時代(CRRC Times) 1.0%
  • 13位 安海汽車(Ankai) 0.9%
  • 参考 日野自動車 0.3%
バス業界のグローバルマーケットシェア(2020年)。1位は金龍客車(King Long、キンロン)です。
バス業界のグローバルマーケットシェア(2020年)。なお、赤色のチャートは中国資本

バス業界の2020年販売台数の世界市場シェアでは、1位から3位までを中国バスメーカーが独占です。1位は中国のキンロンです。同社は廈門市系の投資会社や台湾のメーカーが株主となっています。小型から大型バスまで全方位で製造できる点が強みです。2位は中国の北汽福田です。北京汽車の子会社で小型バスを得意とします。3位はユートンとなります。1993年にバス事業に参入して、短期間で世界上位となりました。4位は、ドイツのダイムラーとなります。子会社に三菱ふそうを有していますが、中国勢との差は開くばかりです。5位はインドのアショック・レイランドとなります。インド国内では、タタ自動車と市場を2分していると言われています。6位は、マンとスカニアを擁するフォルクスワーゲングループのトレイトン、7位はスクールバスに強いナビスターです、8位は山東省系の中通(ズートン)です。9位はイタリアのCNHインダストリルの傘下イベコ、10位は再び中国勢で、電気自動車や車載電池に強いBYD、11位スウェーデンのボルボです。日野自動車は国内の需要が低迷しランキングを落としました。日本では日野自動車といすゞの合弁会社であるジェイ・バスがバス製造の大手です。

【市場規模】

各種調査会社の情報も参照にしながら、2020年のバス業界の生産台数の市場規模を600千台としております。参照した情報は以下の通りです。

調査会社のフリードニアによると、2021年の世界の年間バス需要は2020年より4.9%増加し、623千台となる見込みです。また、同社によると、2018年の世界の年間バス需要台数は約66万台と推計されています。調査会社のSCI Verkehrによれば世界のバス車両台数(2016年)は約1千万台と推計されています。またモードーインテリジェンスによると2025年の同業界の金額ベースの市場規模は549億ドルになると見込んでいます。調査会社のモードーインテリジェンスによれば、2019年のバスの市場規模は502億ドルです。⇒参照したデータの詳細情報

規模(台数)成長率見込み
2021年623千台4.9%
2020年600千台
バス業界の市場規模推移©ディールラボ

 EV(電気)バスの動向

今後の環境規制からリチウムイオン電池等を動力源にしたEVバスのニーズが高まっていくものと考えられています。中国のリチウムイオン電池メーカー大手であるBYD(比亜迪股份有限公司)はEVバスの分野では、同じく中国のユートンバスと競って、世界大手となっています。

日本でもBYDのバスを採用するバス会社が出てきていますが、ディーゼルエンジンのバスが1台2千万円程度に対して、EVバスはその3倍程度すると言われており、普及にあたっては低価格が重要な決め手となるものと思われます。

【M&Aの動向】

2020年 Tratonがナビスターを買収
2019年 VWがトラックバス事業をTratonとして分社化
2004年 ダイムラーが三菱ふそうの完全子会社化
2003年 ジェイ・バス設立
2002年 ダイムラーが三菱ふそうの43%の株式を買収
2001年 トヨタが日野自動車を子会社化

さらに業界に詳しくなるためのお薦め書籍

The Complete Book of VW BUS
いすゞ自動車のすべて
バスを良く知る基礎知識

【会社の概要】

Volvo Group(ボルボ・グループ)

Volvo(ボルボ)グループは、スウェーデンに本拠を置くトラック・建機メーカーです。1928年にトラックメーカーとして設立されて以降、現在もトラックの売上がグループ全体の約60%超を占めるなど、最大の事業部門となっています。さらに詳しく

ボルボのバスブランド一覧

出所:同社アニュアルレポート

Traton(トレイトン)

Traton(トレイトン)は、フォルクスワーゲン(VW)傘下のトラック及びバスメーカーです。Volkswagen Truck&Bus(フォルクスワーゲントラック&バス)がトレイトンへ社名変更し、マントラック&バス、Scania(スカニア)がトレイトン傘下となりました。2018年に分社化上場しました。2020年に16.8%の株式を保有している米トラック大手のナビスター・インターナショナルの買収を発表しました。

MAN(マン)

1758 年に創業したルール地方の鉄工所にルーツがある、ドイツに本拠を置くエンジン・機械メーカーです。トラック・バス等の商用車、船舶・産業用エンジン等を手掛けています。MAN Diesel & Turbo(マンディーゼル&ターボ)は、MANグループの動力エンジニアリング部門です。1981 年には、船舶エンジンの老舗であるデンマークBurmeister & Wain(B&W)のディーゼルエンジン部門を買収し、船舶エンジンの分野では主要ライセンサーとして圧倒的な地位を占めています。メンテナンス等のサービスもグローバルで展開しています。トラックとバスは、MAN Truck & Bus(マン・トラック&バス)を通じて展開していましたが、マントラック&バスはトレイトン傘下となりました。

Scania(スカニア)

スウェーデンに本拠を置くトラック・バスメーカーです。元々はスウェーデンのサーブと親しかったのですが、フォルクスワーゲン(VW)傘下となりました。バスは、地盤の欧州のみならず、ラテンアメリカおよびアジアでも強みを有しております。

フォルクスワーゲン(VW)について

1937年に設立されたドイツを代表する自動車メーカーです。第二次世界大戦後にビートルで成長を遂げ、ゴルフシリーズの成功で世界大手となりました。高級自動車である、Bentley、ランボルギーニ、ポルシェ、ブガッティやAudi(アウディ)を傘下に擁しています。2015年の排ガス不正ソフトウェア問題が課題となりましたが、現在ではEV化へ舵を切っています。トラック・バス事業は2018年にTraton(トレイトン)として分社化しました。フォルクスワーゲングループブランドの新車・中古車を調達できることが強みを活かした自動車リース事業も展開しています。さらに詳しく

Iveco(イベコ)

イタリアに本拠を置く建機・農機・バス・特殊車両メーカーです。FIATグループの創業一族が株主であるCNH Industrial(CNHインダストリアル)社傘下にあります。バスは、IVECO BUS (イベコバス、以前は Irisbus(アイリスバス)ブランドであった) とフランスのHeuliez Bus(ユーリエ・バス)ブランドで展開しています。

CNHインダストリアル

CNHインダストリアルは、2013年のCNHグローバルとフィアット・インダストリアルとの経営統合の結果誕生しました。フィアット創業家であるアニェッリ家が大株主となっています。
建機、農機、商用車(トラック)事業を全世界180ヶ国で展開しています。現在はニューヨーク証券取引所とミラノ証券取引所に株式を上場しています。2022年1月に商用車・トラック事業を担うIveco(イベコ)が分社化上場をしました。さらに詳しく

Daimler(ダイムラー)

ドイツに本拠を置く大手自動車メーカーです。乗用車と自動車リースが事業の柱となっています。乗用車ではメルセデスベンツで高級車セグメントにフォーカスした世界展開をしています。1998年にクライスラーと合併したが、2007年にクライスラーを売却しました。インドではバーラト・ベンツ (BharatBenz) ブランドを展開しています。2021年にメルセデスベンツとダイムラートラックが分社化され、社名をメルセデスベンツグループへと変更しました。自動車リースはAthlonで展開しています。

分社化された、ダイムラートラックは、三菱ふそうトラック・バスを傘下に保有しています。バス分野はメルセデスベンツとゼトラ(Setra )ブランドで展開しています。売上の約66%が欧州となっています。さらに詳しく

宇通集団(Yutong Group、ユートングループ)

中国のバスメーカーです。鄭州市に本拠をおきます。1997年に上海証券取引所に上場しています。中国国内だけでなく、フランス、英国、オーストラリア、キューバ、ベネズエラ、ロシア、サウジアラビア等にもバスの輸出を行なっています。小型~大型バスまで全レンジのバスを生産しています。

金龍客車(King Long、キンロン)

1988年に設立された中国のバスメーカーです。廈門金龍汽車集団(キンロン・グループ)傘下にあります。中国では、中大型バスの分野においてはユートンとキンロンが双璧です。

北汽福田(Beiqi Foton Motor)

1996年に設立されたBAIC Group(北京汽車)の子会社で、主にトラック、バス、農機の製造を手掛けます。小型のバス製造を得意とします。トラックではドイツのダイムラーと合弁会社を設立しています。

中通客車(Zhongtong、ズートン)

1998年に山東バスとして設立された中国のバスメーカーです。1998年に現社名に変更し、2000年に深圳証券取引所へ上場しました。山東省に本拠を置きます。

BYD(比亚迪)

BYD(比亜迪)は、王伝福(Wang Chuanfu)氏によって1995年に設立された中国の電気自動車・車載電池メーカーです。スマホや産業機器向けのリチウムイオン電池の製造に加え、車載向けの電池と電気自動車製造の一貫生産体制が強みです。電気自動車は、SUVのTang、PHVのQin、セダン型のEVであるe6、e5等のブランドを展開しています。王氏は電池王とも称されています。電気自動車を含む新エネ車(EV自動車)でも世界最大規模を誇ります。ウォーレンバフェット率いるバークシャー・ハサウェイ傘下のMidAmerican Energyが大株主となっています。2020年には刀片電池と言われる長距離走行が可能な車載電池を開発しました。さらに詳しく

中車時代電動汽車(CRRC Times Electric Vehicle)

中国政府系の鉄道車両会社である中国中車(CRRC)の子会社として設立されました。電気自動車の製造を行っており、バス製造でも大手となりました。

安海汽車(Ankai Automobile)

1997年に安徽省によって設立されたバス会社です。2004年に乗用車や商用車を手掛ける安徽江淮汽車集団有限公司(Anhui Jianghuai Automobile Group Corp、JAC)の傘下に入りました。

Ashok Leyland(アショック・レイランド)

インドの商用車メーカーです。英国に在住する印僑であるヒンドゥージャ氏が指揮するヒンドゥージャ・グループ(Hinduja Group)傘下にあります。同グループ傘下には、インダスインド銀行(IndusInd Bank)、病院、ガソリンスタンド、ITベンダーのHGS等があります。競合にはタタモーターズがあります。

日本勢では、日野自動車が最大手、いすゞやトヨタがバス大手です。日野といすゞは合弁会社のジェイ・バスを通じてバスの製造を行っています。

ジェイ・バス

2003年に日野自動車といすゞ自動車のバス製造部門が統合して誕生した日本最大のバス製造会社です。日野自動車といすゞ自動車がそれぞれ50%の持分を所有します。同社によれば、国内の全需5,000台のうち、ジェイ・バスが約7割の3,500台を製造しています。

参照したデータの詳細情報について


参照したデータは以下の通りです。リンク切れなどありましたら、お問い合わせのページからご連絡頂けますと大変有難く存じます。

バスメーカーの販売台数ランキング

バス会社の販売台数ランキング(2020年)

参照した市場規模の情報

調査会社URL
Freedoniahttps://www.freedoniagroup.com/industry-study/global-bus-market-by-product-and-fuel-type-6th-edition-3509.htm
Freedoniahttps://www.freedoniagroup.com/industry-study/world-buses-3232.htm
SCI Verkehrhttps://www.sci.de/fileadmin/user_upload/Flyer_MC_Bus.pdf
Mordor Intelligencehttps://www.mordorintelligence.com/industry-reports/bus-market
参照した市場規模の出所

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