ユニリーバの紅茶事業

2020年1月30日にユニリーバ(Unilever)は、同社の紅茶事業のストラテジック・レビューを開始すると発表しました。完全売却や部分売却などあらゆる選択肢を含めた可能性について、検討を行うとのことです。
出所:同社プレスリリース”Full-year growth led by emerging markets and Home Care”の”Tea Strategic Review”

紅茶事業の概要

リプトン(Lipton)、ブルックボンド(BrookeBond)、PGティップス(PG Tips)、プレミアムハーブティーのパッカ(pukka)といった著名ブランドを有し、世界最大級の紅茶事業に対するストラテジックレビューを行う背景としては、消費者の嗜好が変化したことに伴い、近年同事業の先進国における成長率が鈍化していることが挙げられます。イングリッシュブレックファストやアールグレイなど伝統的な紅茶が余り先進国で飲まれなくなっている傾向がみられるようです。

出所:同社アニュアルレポート

一方で、下図の通り、同社の紅茶事業の世界市場シェアは20%程度と推計されており、他のグローバルブランドよりは市場シェアは低いものの、販売網、生産背景、歴史に裏付けされた知名度等を加味すると圧倒的なブランド力を有していると考えられます。同社資料によれば、世界の紅茶の生産量の10%を同社が購入しています。

出所:同社アニュアルレポート

業績ハイライト

ユニリーバの2019年度の売上高は520億ユーロとなっています。その内フーズ&リフレッシュメントセグメントは192億ユーロと全体の売上高の37%を占めております。

出所:同社アニュアルレポート

そのうち、紅茶事業は全体売上高の概ね6%を占めるとの記載があります。520億ユーロの6%なので、紅茶事業の2019年度の売上高は約31億ユーロと掲載されます。事業の規模の比較では、ユニリーバの中でも紅茶事業は8番目に大きいことが分かります。
紅茶事業の利益水準は開示されていませんが、仮にフーズ&リフレッシュメントセグメントと同程度の17.5%の売上高営業利益率だと仮定すると、営業利益で約5~6億ユーロ程度の規模の事業となります。
仮に買収を行うとなると、買収マルチプルが営業利益の約15倍だと仮置きすると、買収価格は75億ユーロ程度と推計されます。

出所:同社アニュアルレポート

ユニリーバの紅茶事業が属する「Foods & Refreshment」セグメントは、2019年度の売上高の成長率が1.5%と、他セグメントである「Beauty & Personal Care」の2.6%、「Home Care」の6.1%と比較すると低くなっています。また販売数量は0.2%減少しています。

同社はティーパック事業については単独で行っているものの、ペットボトル等の紅茶飲料事業についてはペプシコ(PepsiCo)社との共同で事業を展開しています。ペプシコとの飲料事業の売上高は約15億ユーロと推計されており、仮に飲料事業が売却される場合は、ペプシコに先買権(ファーストリフューザルライト)があると思われます。

紅茶事業は、ユニリーバの他消費者向け商品の販売網を活用する形で、インド(Red Labelブランドが強い)、米国、パキスタン、トルコ、英国、ロシア、インドネシア(SariWangiブランドが強い)、フランス、ポーランド、サウジアラビア等の地域を含め110カ国以上で事業を展開しております。地域別の売上高は北米が約40%、アジア太平洋が約30%、欧州が約30%程度と推計されています。

過去の買収

同社は2013年の豪州超高級ブランドであるT2の買収を皮切りに、過去プレミアム紅茶ブランドの買収を通じて成長を図ってきました。プレミアムカテゴリーは成長領域という認識ではあるものの、主力事業である伝統的な紅茶事業の減速が響き、プレミアム領域での価格単価の上昇を目指す戦略では、近年及び今後も継続するであろう数量の落ち込みをカバーできないと、同社経営陣は判断しつつあるのかもしれません。プレミアムで成長しているパッカといえども、2017年の買収当時の売上高は30百万ポンドと、紅茶事業の約1%程度なのです。

ユニリーバの紅茶事業における買収の歴史
  • 2013年
    オーストラリアのT2

    買収時点の売上高は57百万豪ドル。

  • 2017年
    英国のパッカ

    買収時点の売上高は30百万ポンド。

  • 2017年
    北米のTazo(タゾ)

    買収時点の売上高は112百万ドル。

買収先候補

買い手候補としては、2018年にユニリーバの租業であるマーガリン事業を80億ユーロで買収したKKRは有力候補として名前が挙がっています。
コーヒーと紅茶事業のシナジーという観点では、ドイツ・オーストリアの資産家ファミリーであるライマン家(Reimann Family、レキットベンキーザーの創業家)が保有するJABホールディングス(コーヒー業界の世界シェアではネスレに次ぐ世界2位、最近はDr Pepper Snapple Groupを買収。)、ネスティ―といった紅茶飲料ブランドを展開するスイスの飲料の巨人のネスレ、紅茶事業の世界シェアでユニリーバと競うタタ飲料やトワイニングス(Twinings)ブランドABF(アソシエイテッド・ブリティッシュ・フーズ)が考えらえます。お茶(グリーンティー)とのシナジーからは日本の伊藤園との親和性が高そうです。

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