造船業界の世界シェア、市場規模や再編について分析をしています。中国船舶集団(CSSC)、現代重工業(韓国造船海洋)、大宇造船海洋、サムスン重工業、今治造船、JMUなど主要造船メーカーの概要も掲載しています。
市場シェア
造船各社の2021年度の売上高(⇒参照したデータの詳細情報)を分子に、市場規模を分母にして、2021年の造船業界の世界市場シェアを簡易に算出すると、1位は中国船舶集団(CSSC)の27%、2位は現代重工業の10%、3位は大宇造船海洋の6%となります。
造船業界の市場シェア(2021年)
順位 | 会社名 | 市場シェア |
---|---|---|
1位 | 韓国造船海洋 | 6.22% |
2位 | 中国船舶集団(CSSC) | 5.35% |
3位 | サムスン重工業 | 3.10% |
4位 | 大宇造船海洋 | 2.11% |
5位 | 今治造船 | 1.78% |
6位 | ジャパンマリンユナイテッド | 1.04% |
参考 | 川崎重工 | 0.32% |
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世界1位は韓国造船海洋(旧現代重工業)です。韓国造船海洋は、原油タンカー、石油タンカー、ケミカルタンカー、バルクキャリア、コンテナ船、LNG/LPG/FPSOタンカーなどを製造しています。
世界2位は、2019年10月に、中国の造船1位と2位である中国船舶工業集団(CSSC)と中国船舶重工集団(CSIC)が経営統合をして誕生した、中国船舶集団(CSSC)です。
3位はサムスンです。サムスンはドリルシップ船、LNG船、FPSOといった、高い建造技術が求められる船舶を中心に、売上を伸ばしています。
4位は韓国政府支援で経営再建中の大宇です。現代重工業による買収も中断しました。
5位は今治、6位はJMUとなっております、日中韓で争う構図が続いています。
2018年の造船竣工量ランキングは下記となります。
1位 韓国造船海洋 (1140万トン、市場シェア14%)
2位 中国船舶工業集団 (925万トン、同11.5%)
3位 中国船舶重工集団(CSIC)(602万トン、同7.5%)
4位 今治造船 (533万トン、同6.7%)
5位 大宇造船海洋 (520万トン、同6.5%)
出所:英クラークソン・リサーチ
2018年の国内造船会社の建造量市場シェアでは、1位が今治造船、2位がジャパンマリンユナイテッド、3位が大島造船所、4位が名村造船所、5位が三菱重工業、6位が三井造船、7位が新来島ドック、8位がサノヤス造船、9位が常石造船となります。
出所:経産省
地域別造船竣工量ランキング推移
順位 | 2013年 | 2014年 | 2015年 |
1位 | CSSC | DSME | HHI |
2位 | HHI | HHI | Imabari |
3位 | DSME | Imabari | DSME |
4位 | SHI | SHI | HSHI |
5位 | CSIC | HSHI | SHI |
クラークソンリサーチなどの情報から作成
世界的な船腹の過剰感や中国景気の減速による海上荷動きの低迷を受け、受注残高は低調となっています。そうした中、市場を中国勢や韓国勢の造船大手の世界ランキングも安定しません。2013年に世界首位になったCSSCも2015年にはトップ5外となりました。2014年、2015年には環境配慮型のエコシップを受注を伸ばした今治造船がトップ5に入り、日本勢として健闘しています。
市場規模
当サイトでは、各調査会社等の公表データを参考にし、造船業界の2021年の世界市場規模を1785億ドルとしております。参照にしたデータは以下の通りです。
調査会社のザビジネスリサーチカンパニーによると、2021年の同市場規模は1785億ドルです。2022年には1943億ドルへと拡大し、2026年にかけて年平均8.2%での成長を見込みます。
調査会社のスタティスタによれば2018年の同業界の市場規模は1143億ドルです。2025年に向けて年平均5.7%で成長すると見込んでいます。
調査会社のテックナビオによれば2020年~2024年に造船市場は年率平均3%で143.6億ドル増加するとあります。前提となっている2019年の同市場の規模は898億ドルと計算できます。
調査会社のDataInteloによると2019年の同市場規模は1208億ドルです。2026年まで年平均5.7%での成長を見込みます。⇒参照したデータの詳細情報
年 | 市規規模 | 成長率 |
---|---|---|
2021 | 1785億ドル | 8.2% |
2020 | 1300億ドル | ー |
2019 | 1208億ドル | 3−5.7% |
2018 | 1143億ドル | 5.7% |
再編の歴史
- 1997年 韓国のSamho Heavy Industries(三湖重工業)が経営破たん
- 1999年 現代重工業が三湖重工業を買収し、現代三湖重工業が誕生
- 1999年 双龍重工業が大東造船を買収し、STX造船海洋が誕生
- 2002年 JFE(旧NKKの造船事業)と日立造船の造船事業が経営統合をしてユニバーサル造船が誕生
- 2002年 IHIの海洋船舶部門と、住友重機械工業の旧・艦艇部門を統合しアイ・エイチ・アイ マリンユナイテッドが誕生
- 2013年 ユニバーサル造船とIHIマリンユナイテッドが経営統合してジャパンマリンユナイテッドが誕生
- 2013年 今治造船と三菱重工業がLNG船等の合弁会社MI LNGカンパニーを設立
- 2014年 名村造船所による佐世保重工業の買収
- 2016年 STX造船海洋が法的整理を申請
- 2019年 現代重工が造船部門を韓国造船海洋として分社化
- 2019年 中国船舶工業集団(CSSC)と中国船舶重工集団(CSIC)が経営統合
- 2020年 今治造船とジャパンマリンユナイテッドが資本提携を発表
船舶の種類
船舶は、大きく民間向けの商船、漁船と軍需用の軍艦に分かれます。商船はさらに旅客船と貨物船に分かれます。貨物船はさらに大きく、(1)ばら積み船(鉄鉱石や穀物等を運搬)、(2)タンカー(石油やLNG、LPG、化学品を運搬)と(3)コンテナ船(自動車等を運搬)に分かれます。船の種類と建造船種別の市場シェアには、ばら積み船、タンカー、コンテナ船の構造や用途が詳しく説明されています。
近年、韓国や中国の造船会社の技術力は向上しており、LNG船、コンテナ船、タンカーの分野では技術力で韓国が日本を上回っていると言われています。
シップファイナンス
造船の技術
図解入門 よくわかる最新船舶の基本と仕組み
海運業界の市場シェア・売上高ランキング・規模・再編の分析
世界の主要な造船会社一覧
中国船舶集団公司(China State Shipbuilding、CSSC)
2019年10月に、中国の造船1位と2位である中国船舶工業集団(CSSC)と中国船舶重工集団(CSIC)が経営統合をして誕生しました。旧CSSCは中国に本拠を置く国営の造船会社で、中国の南部を地盤としていました。祖業の舶用ディーゼルエンジンメーカーにも強みをもちます。CSICは中国北部を地盤としていました。
韓国造船海洋(Korea Shipbuilding & Offshore Engineering)
2019年に現代重工業の造船部門が分社化して誕生しました。 グループ会社にFPSOやLNGタンカー等に強みを持つ現代三湖重工業(Hyundai Samho Heavy Industries)を有しています。
現代重工業ホールディングス(Hyundai Heavy Industries Holdings、HHIH)とは
韓国を代表するコングロマリットです。現代財閥の解体を経て誕生した現代中核4社(現代商船、現代自動車、現代百貨店、現代重工業)の1社です。現代重工業ホールディングス傘下には、韓国造船海洋以外には、発電タービンや送電線を製造する現代電力、化学事業を行うOilbank、建設機器を製造するHCEとなっています。

大宇造船海洋(Daewoo Shipbuilding & Marine Engineering、DSME)
韓国の大手造船メーカーです。大宇財閥の解体を経て誕生しました。政府系の銀行が筆頭株主となっています。
サムスン重工業(Samsung Heavy Industries、SHI)
韓国の造船大手です。サムスングループの1社です。ドリルシップの分野に強みを持ちます。
今治造船
愛媛県に本社がある非上場の造船会社です。日本では最大手となりました。業界2位のジャパンマリンユナイテッドへ3割程度出資を行い、造船日本連合が誕生する予定です。
ジャパン マリンユナイテッド
日立造船、石川島播磨重工業、JFE(旧日本鋼管)、住友重機械の造船部門が集結して誕生した造船会社です。2020年に今治造船との資本提携を発表しました。
三井造船
三井物産の船舶部門を源流とする造船大手です。2013年に川崎重工業との経営統合が発表されましたが破綻しました。子会社の三井海洋開発は、海洋エネルギー開発事業(FPSO)等に強みを持ちます。艦艇事業を三菱重工業に譲渡する方向で検討中です。
三菱重工について
1884年に創業された日本を代表する重工業グループです。三菱グループの中核企業の1社と言われています。戦前は軍産複合体として成長し、戦時中は戦艦武蔵やゼロ戦を手掛け、当時から技術力では世界最高水準を維持しています。戦後は民間向けの重工分野を強化し、発電所システム、航空機エンジン、航空機、船舶、ターボチャージャ、フォークリフト、機械システム、エンジニアリング、防衛関連機器の製造販売を行っています。さらに詳しく
川崎重工
1896年に松方正義の支援によって川崎正蔵氏によって設立された川崎築地造船所を源流とする日本を代表する宇宙防衛・重電大手メーカーです。戦前の神戸川崎財閥には、川崎造船(川崎重工)の他に、川崎汽船、川崎製鉄(JFE)が属していました。技術者の育成には定評があります。現在は、防衛、航空エンジン、鉄道車両、プラント、油圧機器、溶接やシリコンウエハの搬送等の産業用ロボット、造船、中大型バイク、オフロード四輪車、パーソナルウォータークラフト(ジェットスキーの商標で展開しています)、汎用エンジンを開発製造しています。さらに詳しく
STX造船海洋
韓国STXグループ(旧・双龍重工業)傘下の大手造船会社です。現在経営再建中です。中国最大級大連のSTX大連造船所は破産手続き中です。
参照したデータの詳細情報について
参照したデータは以下の通りです。リンク切れなどありましたら、お問い合わせのページからご連絡頂けますと大変有難く存じます。
造船会社の売上高ランキング
参照した市場規模の情報