LNG・液化天然ガス生産会社の世界市場シェアの分析

温暖化ガスの削減が求められる中、より二酸化炭素の排出が少ないLNG(液化天然ガス)へのニーズが高まっています。LNGを生産する企業の世界市場シェアや市場規模を分析しています。エクソンモービル、カタールガス、シェニエール・エナジー、ペトロナス、BP、シェル、トタルエナジーズ、三菱商事といったLNG生産会社の概略も掲載しています。

【LNGバリューチェーン】

ガス田で採掘された天然ガスはパイプラインでガス液化プラントまで運ばれます。ガス液化プラントではマイナス162℃まで冷却・液化します。その後、LNG運搬の専用船であるLNG船でLNGを出荷します。LNGは燃料として使用される近くのガス受入ターミナルにて保管されます。

ガス受入ターミナルが陸上に設置できない場合はFSRU(浮体式LNG貯蔵再ガス化設備)を海上に設置し代替するケースもあります。

【LNG・液化天然ガス生産会社の世界市場シェア+ランキング】

LNG生産会社各社の2022年度のLNG生産量⇒参照したデータの詳細情報を分子に、下記に記載の市場規模を分母にして、2022年のLNG生産業界の市場シェアを計算すると、1位はエクソンモービルとなります。

LNG生産会社の世界市場シェアと業界ランキング(2022年)

順位 会社名 市場シェア
1位 Exxon Mobil Corporation(エクソン・モービル) 16.93%
2位 Qatargas(カタールガス) 16.10%
3位 Cheniere Energy(シェニエール・エナジー) 9.41%
4位 Shell plc(シェル*、旧ロイヤル・ダッチ・シェル) 8.36%
5位 Petroliam Nasional Berhad(Petronas、ペトロナス) 7.15%
6位 BP plc(BP、ビーピー) 3.97%
7位 Total Energies SE(トタル・エナジーズ) 3.55%
8位 Mitsubishi Corporation(三菱商事株式会社) 2.47%
LNG生産会社の世界市場シェアと業界ランキング(2022年)©2024 Deallab

*シェルの数字は2023年のものになります。

LNG生産会社の世界市場シェア(2022年)

2021年のランキングと比較して、順位に変動はありませんでした。

【LNG・液化天然ガス生産会社の世界市場規模】

当データベースでは、2022年のLNGの生産量を4億7840万トンとしております。参照にした各種統計データは次の通りです。

調査会社インターナショナルガスユニオンによると、2022年のLNG液化能力は2021年から4.3%増の4億7840万トンとなりました。2022年の増加分の75%は米国によるもので、米国の液化能力は世界最大(8810万トン)となりました。

調査会社のS&Pグローバルによると、LNGの世界貿易量は2022年の3.97億トンから2023年には4.04億トンに達するとしています。

調査会社のスフィリカル・インサイツによると、2022年の同市場の規模は1,022.3億ドルとなりました。2022年から2032年にかけて年平均成長率7.6%で推移し、2032年には2,137.8億ドルになると見込んでいます。

参照したデータの詳細情報

     市場規模     成長率見込み
     2022     1022.3億ドル        -
     2032     2137.8億ドル       7.6%
LNG生産会社の予想成長推移(2022年~2032年)©2024 Deallab

さらに業界を理解するためにお薦めの書籍と関連サイト

LNG(液化天然ガス)プロジェクトファイナンス-リスク分析と対応策
LNG 50年の軌跡とその未来
オイルメジャー・石油開発業界の世界市場シェアの分析

【M&Aの動向】

2016年 シェル(Shell)が英ガス大手のBGグループを買収

2018年 トタル・エナジーズ(Total Energies)が電力供給会社である仏ダイレクト・エネルギー(Direct Energie)を買収

2022年 BPが再生可能天然ガス供給会社のArchaea Energyを買収

2023年 シェル(Shell)が、再生可能天然ガス生産会社ネイチャー・エナジー(Nature Energy Biogas)の買収を完了

2024年 BPがドイツの電力会社のGetec Energieを買収

【会社の概要】

Exxon Mobil Corporation(エクソン・モービル)

Exxon Mobil(エクソンモービル)は、1870年に創業した米に本拠を置く石油メジャーです。1999年にエクソンとモービルが合併しエクソン・モービルとなりました。

原油・ガスの探査と生産を在来型から深海まで行い、重油、シェール、LNGなど幅広い分野の上流権益を保有しています。中下流では石油化学コンビナートやガソリンスタンドを展開している垂直統合型のビジネスモデルが特徴です。脱炭素の流れの中で総合エネルギー会社への脱皮を模索中です。2021年には環境系の物言う株主エンジン・ナンバーワンが取締役会の議席を獲得しました。さらに詳しく

Qatargas(カタールガス)

カタール政府系のLNG生産会社です。同国の豊富な天然ガスを背景にLNG生産を拡大させています。日本の商社とも多くのプロジェクトを手掛けています。

Cheniere Energy(シェニエール・エナジー)

1996年に設立されたLNG生産会社です。LNG関連事業に特化していることが特徴です。Sabine PassやCorpus ChristiといったLNGプロジェクトを手掛けています。2023年にはエクイノールと年間約175万トンのLNGの15年間の新規購入契約を締結したことを発表しました。

Shell plc(シェル、旧ロイヤル・ダッチ・シェル)

1907年に誕生した石油メジャーです。2005年にオランダのロイヤル・ダッチとイギリスのシェルが合併して現在の形となりました。かつてのセブンシスターズである民間石油メジャーのエクソン・モービル、BPと競合しています。温暖化ガスの流れを受け、ガス分野の強化やPower as a Service (PaaS)分野の強化を図っています。2021年はオランダの裁判所から二酸化炭素(CO2)の純排出量の削減を命じる判決を出され、物言う株主からリニューアブルエネルギー事業の切り出しを求められています。社名をシェルへと再変更しました。さらに詳しく

Petroliam Nasional Berhad(Petronas、ペトロナス)

1974年に設立されたマレーシアに本拠を置く国営の石油及びガスの開発会社です。同国内における豊富な石油ガス資源の開発を中心に事業展開をしています。

BP plc (BP、ビーピー)

英に本拠を置く石油メジャーの一角です。温暖化ガスの削減に向けて、リニューアブル発電資産を積極的に買収しています。

Total Energies SE(トタル・エナジーズ)

仏に本拠を置く石油メジャーの一角です。地球温暖化対策の国際的な枠組みであるパリ協定に沿う形で、近年はガス・電力のバリューチェーンを拡大しています。2018年に電力供給会社である仏ダイレクト・エネルギーを買収しました。脱化石燃料を明確にするために、2021年に社名をTotal Energies(トタル・エナジーズ)へと変更しました。

Mitsubishi Corporation(三菱商事株式会社)

三菱商事は、九十九商会に源流を持ち、1918年に三菱合資営業部が分社化され設立された総合商社です。広範囲な商材の輸出輸入を手掛けるトレーディングが祖業ですが、商社冬の時代を経て、プロジェクトや事業投資も行う複合企業体へと進化を遂げました。セクターなどで分類しにくい異形の経営スタイルのため、海外でもsogo shoshaという業態として理解が深まりつつあります。天然ガス、総合素材、石油・化学、金属資源、産業インフラ、自動車・モビリティ、食品産業、コンシューマー産業、電力ソリューション、複合都市開発で事業を展開しています。関連会社には、ローソン、三菱食品、三菱自動車、千代田化工などがあります。さらに詳しく

Chevron Corporation(シェブロン)

米カリフォルニア州に本拠を置く石油メジャーの一角です。ガルフオイルやテキサコを買収し上位3強入りを狙っています。2019年には、独立系の米石油大手アナダルコを買収しました。買収総額は500億ドルです。

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