北米における空調機やエアコン業界の市場シェア・市場規模・M&A(合併買収)について分析しています。北米空調業界の市場環境は、住宅用市場は軟調傾向にある一方で、商業用市場は住宅用市場の影響を凌ぐ堅調さを見せており、連続的な成長が見込める市場です。
こちらの記事では、北米の空調市場環境や主要プレイヤーであるトレイン・テクノロジーズ、ダイキン、キャリア・グローバル、ジョンソン・コントロールズ、レノックスなどの概要、各種経営指標も掲載しています。
【空調市場の区分について】
空調はHeating, Ventilation, Air Conditioningの頭文字を組み合わせて「HVAC」とも表現されます。空調市場を大きく分類すると、暖房、換気、冷房といった機器の製造販売を行う機器事業と、メンテナンスや空調システムに関するサービスなどのソリューション事業の2つがあります。近年は、施設全体のエネルギーマネジメントやエネルギー効率への関心の高まり、保守運営の観点からHVACシステムを組み合わせるソリューション事業の比重も拡大傾向にあります。
暖房、換気、冷房の機器は、ヒートポンプ、ボイラー、清浄機、換気扇、除湿器・加湿器、ユニットエアコン、VRFシステム、チラー、ポータブルエアコンなどへさらに細分化されます。

【北米における空調業界の市場シェア】
空調機・エアコンメーカー各社の2025年のHVAC事業の北米地域における売上高を分子に、後述する業界の市場規模⇒参照したデータの詳細情報⇒参照したデータの詳細情報を分母にして、2025年の空調・エアコン業界の市場シェアを簡易に試算すると、1位はトレイン・テクノロジーズ、2位はダイキン、3位はキャリア・グローバル、4位はジョンソン・コントロールズ、5位はレノックスとなります。
| 順位 | 会社名 | 市場シェア |
|---|---|---|
| 1位 | Trane Technologies plc(トレイン・テクノロジーズ) | 24.39% |
| 2位 | DAIKIN INDUSTRIES, LTD.(ダイキン) | 19.41% |
| 3位 | Carrier Global Corporation(キヤリア・グローバル) | 17.30% |
| 4位 | Johnson Controls, Inc.(ジョンソンコントロールズ) | 14.18% |
| 5位 | Lennox International Inc.(レノックス) | 8.10% |
出所:各社アニュアルレポート等から2025年度の北米空調事業の売上高をディールラボが推計し作成
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北米HVAC市場は、商業用と住宅用に大別されますが、近年は両市場の成長率に大きな差が見られます。
まず商業用市場では、AIの普及に伴うデータセンター建設の増加に加え、インフレ抑制法(IRA)による高効率設備や脱炭素化設備への税制優遇・補助金制度などを背景に、設備投資が活発化しています。 また、オフィスビルや病院、教育施設などでも省エネ化を目的とした設備更新が進んでおり、商業用HVAC市場は住宅用を上回る成長を続けています。
一方、住宅用市場は、住宅ローン金利の高止まりや住宅価格の上昇を背景に、新築住宅市場が低迷していることから成長が鈍化しています。 新築向け需要は弱含みで推移しているものの、SEER2基準への対応や低GWP冷媒への移行に伴う既存設備の更新需要が市場を下支えしており、住宅用市場は堅調ながらも商業用ほどの成長には至っていません。
このような市場環境の違いは、各社の業績にも表れています。昨年に続き北米空調市場の首位だったトレイン・テクノロジーズは、データセンターや大型商業施設向けHVAC事業を強みとしており、商業用市場の拡大を追い風に安定したシェアを占めています。
一方、2位のダイキンはシェアが前年比0.21ポイント増加し、引き続き北米市場で高い競争力を維持しています。シェアの変動には、米ドルベースで比較した際の為替影響も一定程度含まれると考えられます。北米では住宅用HVACを中心に設備更新需要を着実に取り込んだ一方、インフレや住宅ローン金利の高止まりを背景に新築住宅向け需要は低調に推移しました。また、AI向けデータセンターなどを背景とした商業用市場の急成長は、商業用HVACに強みを持つトレインがより大きく取り込んだことで、両社の成長率には差がみられました。
【北米における空調業界の市場規模】
当データベースでは、北米HVAC業界(空調及びエアコン)の2025年の市場規模を579億ドルとしております。
| 年 | 市場規模 | 成長率* |
|---|---|---|
| 2025 | 579億ドル | 4.88% |
| 2034 | 995億ドル | 6.20% |
*2024年から2025年の成長率は、当データベース2024年実績からの算定
*2034年は2025~2034年までの年平均成長率(CAGR)見込みを当データベース独自で算定
参照した各種調査データは次の通りとなります。調査会社フォーチュンビジネスインサイツによると2025年の同業界の市場規模は約516億ドル、2032年までに約758億ドルへと規模が拡大することを見込んでおります。
調査会社ネクストMSCによると2025年の空調業界の世界市場規模は約2361億ドルで、うち北米は24.53%を占めています。2035年までに約4309億ドルへと規模が拡大することを見込んでおります。
今後の北米空調市場は、夏季の高温化による冷房需要の拡大に加え、既存設備の更新・買い替え需要を背景に、引き続き成長が見込まれます。
設備更新需要を支える要因の一つが、エアコンの省エネ性能を評価する新基準「SEER2」の導入です。SEER2では、従来より実際の使用環境に近い条件で省エネ性能が評価されることから、基準に対応した高効率機種への更新・買い替えが進んでいます。
さらに、環境規制の強化も買い替え需要を後押ししています。米国では2025年から、地球温暖化係数(GWP)の高いR410A冷媒を使用した特定の新規HVAC機器の製造・輸入が禁止されました。これに伴い、今後はR32(ダイキン)やR454B(キャリア、ジョンソン・コントロールズ) などの低GWP冷媒を採用した機器への切り替えが進む見込みであり、既存設備の更新需要を支える要因の一つとなっています。
さらにデータセンターの市場拡大が空調市場の拡大をけん引することが予想されます。データセンターには大量のサーバーが設置されており、サーバーの稼働時には多くの熱が発生します。そのため、機器を安定して稼働させるには、高性能な空調設備や冷却システムによる温度管理が不可欠です。データセンターが新設・増設されるたびに、これらの空調・冷却設備への投資も拡大するため、空調市場にとって大きな需要となります。
調査会社モルドールインテリジェンスによると、北米のデータセンター市場は2025年から2030年の間に10.49%の年平均成長率で成長し、2030年には253億ドルに達すると予測されております。その背景には、クラウド需要の増加とAI(人口知能)の急速な発達があります。特にAI用のサーバーは、一般的なクラウド用のサーバーと比較して数倍から10倍以上の電力を消費するといわれており、高い冷却能力が必要となります。また、温度管理においても技術力が求められる領域であり、各社の技術革新が進む領域であるとも考えられます。
世界から見た北米市場
調査会社ネクストMSCによると、HVACの最大の市場はアジア太平洋で、全世界の40%程度を占めていますが、北米市場は世界全体で25%近くの市場規模となっており、世界的に見ても重要市場であることが分かります。
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HVACの地域別の市場規模(シェア)
出所:ネクストMSCのデータをもとにディールラボが加工
【北米主要企業の分析】
売上構成の比較
地域別売上高を見てみると、最大手トレイン・テクノロジーズは北米・中南米事業の比率が高い一方で、ダイキンは、市場規模の大きい米国の比率が高いものの、中国、日本、欧州でもバランスよく事業を展開していることが特徴的です。


ダイキンは30年前の海外売上高比率は15%前後でしたが、2025年時点では85%以上となっています。直近では、東南アジア・中東・アフリカ・インドなどで生産拠点の拡充や販売拠点の強化を行っています。
- 2022年 インドネシアに空調機の生産工場を設立
- 2022年 サウジアラビアで中東2ヵ国目の組み立て工場を設立
- 2023年 ポーランドにヒートポンプ暖房機の新工場建設開始
- 2023年 カンボジアに空調の販売会社を設立
- 2023年 インドで空調機の生産拠点を新設
- 2024年 アフリカで住宅用空調の生産網構築
- 2024年 台湾大手空調リーリンなどと合弁会社設立
- 2025年 サウジアラビアに空調機器の新工場を設立
近年では、ダイキンが先行して築いたグローバル戦略を追うように、他社も海外展開を積極化しています。 2022年11月にはトレイン・テクノロジーズがドイツの大手空調メーカーのAL-KOエアテクノロジーの買収を完了。2023年5月にはイタリアのMTAを買収しており、北米以外のシェア拡大も積極的に推進しています。
2024年にはキャリア・グローバルがドイツ大手空調メーカーのビスマン・クライメイト・ソリューションズを買収しており、ダイキンに続いて各社のグローバル展開が加速していることが顕著です。
北米主要企業におけるM&Aの動向
近年の各社のM&A動向においては、前述のような空調機器における直接的な買収だけではなく、建物全体のエネルギー効率の最適化を目的とした従来の空調機能への付加価値を見込むディールも増加しています。
一例として、2022年ダイキンのベンスター買収では、同社の空調機器遠隔サービスを提供できるようになりました。2023年のトレイン・テクノロジーズによるNuvoloやBrainBoxAIの買収も建物や施設の運用管理ソリューションへの付加価値向上を目的としており、新たな顧客の創造を強化しています。
また、2025年には、ジョンソン・コントロールズが住宅用および小規模商業施設向けのHVAC事業をボッシュへ売却してビルディングソリューションに集中する動きもあり、今後も世界的に大きく業界再編が進んで行くことが予想されます。
主なM&A
- 1979年 ユナイテッド・テクノロジーズ社によるキャリア買収
- 2006年 ダイキンによるマレーシア空調メーカーOYLの買収
- 2008年 Ingersoll-Rand(インガソール・ランド)によるTrane(トレイン)の買収
- 2011年 美的集団によるCarrierの南米事業の買収
- 2012年 ダイキンによるグッドマングローバル買収
- 2014年 ジョンソン・コントロールズによる米Air Distribution Technologiesの買収
- 2016年 ジョンソン・コントロールズとタイコの経営統合
- 2016年 ダイキンによる米Flanders(フランダース)の買収
- 2018年 ジョンソン・コントロールズによる空気流ソリューション製造のTriatekの買収
- 2018年 三菱電機とインガソール・ランドによるダクトレス空調機販売の合弁会社設立
- 2020年 インガソール・ランドによるトレイン・テクノロジーズの分社化
- 2020年 ダイキンによる空調販売店のアブコ、ロビンソン、スティーブンスの買収
- 2020年 ユナイテッド・テクノロジーズによるキャリアの分社化
- 2021年 キャリアによる米空調販売大手のワッコと共に空調販売大手のテンプラチャーエクイップメント(TEC)の買収
- 2021年 ジョンソン・コントロールズによる英国のHVAC販売・設置のFisher Groupの買収
- 2021年 ダイキンによる空調卸のサーマルサプライや業務用空調販売のエアレップスの買収
- 2022年 キャリアが東芝キヤリアを子会社化(キャリアの子会社Global Comfort Solutions LLCが東芝キヤリアを買収)
- 2022年 ジョンソン・コントロールズによるAIソフトウェアFogHornの買収
- 2022年 ダイキンによる米通信機器大手ベンスターの買収
- 2022年 トレイン・テクノロジーズによるドイツ空調大手AL-KOの買収
- 2023年 トレイン・テクノロジーズによるイタリアMTAの買収
- 2023年 ダイキンによる米アライアンスエアープロダクツとCM3ビルディングソリューションの買収
- 2023年 レノックスによる米商業HVACサービスAESの買収
- 2023年 トレイン・テクノロジーズによる米施設管理ソリューションNuvoloの買収
- 2023年 キャリアが商業用冷蔵部門を合弁パートナーでもある中国ハイアールに売却
- 2023年 レノックスが欧州HVAC事業を投資ファンドに売却予定と発表
- 2024年 キャリアによるドイツViessmann Climate Solutionsの買収
- 2024年 レノックスとサムソンによる合弁会社設立の合意
- 2024年 ダイキンによる英国のRobert Heath Heatingの買収
- 2024年 トレイン・テクノロジーズによる販売代理店Damuth Servicesの買収
- 2025年 キャリアによるポルトガル企業Addvoltの買収
- 2025年 トレイン・テクノロジーズによるAIでのHVAC制御を手がけるBrainBox AIの買収
- 2025年 ボッシュがジョンソン・コントロールズから住宅用・軽商業用HVAC事業を買収
北米空調市場においては、各社オーガニック成長を実現しながら、M&Aを活用した事業の強化やシェアの拡大を行っている傾向が見られます。一方でHVAC事業の中でも大型機器に注力するなどの動向も見られ、北米空調業界においては、今後もM&Aの推進により、再編はより加速していくものと考えられます。
北米空調大手3社の指標比較
北米空調大手のトレイン・テクノロジーズ、ダイキン、キャリアの売上高成長率(過去5年)、配当性向、ROE(自己資本利益率)を比較すると下表の通りとなります。売上高成長率ではダイキンが、配当性向ではキャリアが、ROEではトレイン・テクノロジーズが他社を上回っています。

*配当性向は2026年7月16日時点のTTMベースで計算しています。
**ROEは直前期の当期利益と期初と期末の自己資本額の平均値から計算しています。
***売上高成長率は直前期を基準に過去5年間の年平均成長率(CAGR)を計算しています。
まず売上高成長率では、ダイキンが15.00%と最も高く、積極的な海外展開や需要拡大を背景に事業規模を拡大しています。次いでトレイン・テクノロジーズが11.35%と高い成長率を維持しており、AI向けデータセンターや大型商業施設向けHVAC需要の拡大を取り込んだことが寄与したと考えられます。一方、キャリアは4.49%と堅調ではあるものの、他2社と比較すると成長は緩やかです。
また、配当性向を見ると、キャリアが53.20%と最も高く、利益を積極的に株主へ還元する姿勢がうかがえます。一方、トレインは28.33%と比較的低い水準に抑えており、利益を成長投資や自社株買いに振り向ける余地を残しています。ダイキンは36.18%と両社の中間に位置しており、成長投資と株主還元のバランスを重視した資本政策を採っているといえます。
一方、ROE(自己資本利益率)は、トレイン・テクノロジーズが36.86%と他社を大きく上回っています。これは利益率の高い商業用HVAC事業やサービス事業の比率が高いことに加え、自社株買いなどを通じた資本効率の改善が背景にあります。対して、ダイキンとキャリアはいずれも約10%前後となっており、安定した収益を確保しているものの、資本効率ではトレインが際立っています。
【北米における空調業界の会社の概要】
Trane Technologies plc(トレイン・テクノロジーズ)
トレイン・テクノロジーズは、米国に本拠を置く産業用冷暖房空調機メーカーです。輸送温度コントロール設備、ゴルフカート、エアコンプレッサー等を手掛ける米Ingersoll-Rand(インガソール・ランド)の子会社でしたが、2020年トレイン・テクノロジーズとして分社化独立を果たしています。インガソールランド以前は、衛生陶器等も手掛けたAmerican Standard(アメリカンスタンダード)社のグループ会社であったこともあります。さらに詳しく
Ingersoll-Rand(インガソール・ランド)について
Ingersoll-Rand(インガソール・ランド)は、1871年に創業された米国に本拠を置く産業機器メーカーです。2020年に真空ポンプ、コンプレッサー等の産業機械メーカーであるGardner Denver(ガードナーデンバー)と経営統合を行いました。統合に先立ち、空調事業はトレイン・テクノロジーズとして分社化しています。インガソール・ランドからは、過去、鍵のアレジオン、冷凍ショーケースのハスマン(2015年にパナソニックへ売却)等、各分野でトップクラスの企業が巣立っております。コンプレッサー・エアツールや輸送用冷凍装置の分野でも強いです。ゴルフカートでは「クラブカー」ブランドを展開し、世界最大級の規模ですが、2021年にプラチナムエクイティへ売却しました。さらに詳しく
DAIKIN INDUSTRIES, LTD.(ダイキン工業株式会社)
ダイキンは、1924年に設立された日本を代表する空調機メーカーです。産業用の冷暖房空調機では世界トップ級です。ダクト方式に強い米グッドマンやマレーシアのエアコン大手OYL社を買収する等して世界的に事業を展開しています。国内ではパナソニックと家庭用エアコンの分野で競っております。フッ素化合物などの化学品事業も行っています。さらに詳しく
Carrier Global Corporation(キヤリア・グローバル・コーポレーション)
キャリアグローバルは、米国に本拠を置く冷暖房空調機の大手メーカーです。元々は航空機エンジン、エレベーター等の大手であるUnited Technologies(ユナイテッド・テクノロジーズ)の子会社でした。2020年にユナイテッド・テクノロジーズは、空調機事業(キャリアグローバル)、エレベーター事業(Otis)と航空機部品事業へと分社化しました。冷暖房空調に加え、輸送用冷蔵機器や火災報知器にも強みを持ちます。さらに詳しく
Johnson Controls(ジョンソン・コントロールズ)について
Johnson Controls(ジョンソンコントロールズ)は、1885年に設立された米国に本社を置く業務用空調制御システム、セキュリティシステム、火災検知システム、ビル管理サービスを提供する会社です。電気式サーモスタットを発明した歴史を持ちます。2016年に火災警報分野に強いTyco(タイコ・インターナショナル)と経営統合しました。世界150ヵ国で展開し、エネルギー効率ソリューションや各種オートメーション事業を展開しています。自動車用のバッテリー等の分野に強みがありましたが2018年に売却しました。さらに詳しく
Lennox International Inc.(レノックスインターナショナル株式会社)
1895年に設立された米国に本拠を置く冷暖房空調機メーカーです。住宅及び産業向けの空調事業と商業用冷蔵庫事業に強みを持ちます。冷蔵庫事業では、生鮮品を保存するためのユニットクーラー、流体冷却器、空冷式コンデンサー、エアハンドラー、冷蔵ラックシステムといった製品をスーパーマーケット、コンビニエンスストア、レストラン、倉庫、配送センターに納入しています。
参照したデータの詳細情報について
参照したデータは以下の通りです。リンク切れなどありましたら、お問い合わせのページからご連絡頂けますと大変有難く存じます。
※以下のsourceは御覧いただきますタイミングにより上記市場規模と数値が異なる場合がございます。
参照した空調市場規模の情報
参照した世界空調市場地域別データの情報
参照したデータセンター市場規模の情報
