エレベーター業界の世界市場シェア・売上高ランキング・市場規模・M&A(合併買収)について分析をしています。オーチス、シンドラー、コネ、日立製作所といった世界の主要なエレベーターメーカーの概要や動向も記載しております。
エレベーター業界は近年、行先予測システムや再生可能エネルギーなどの技術や様々なメンテナンスソリューションを駆使し、日々進化しています。
今後は船舶、ダム、ロケット発射機などで働く人々の移動手段としてもエレベーターは活用されると推測されています。
【エレベーター業界とは】
エレベーターの構造
エレベーターには、電動モーターを利用するロープ式のエレベーターと電動ポンプで油圧をコントロールする油圧式の2つの方式があります。現在の主流はロープ式エレベーターです。ロープ式にはおもりを利用するトラクション式とドラム利用するドラム式の2つの方式があります。
【エレベーター業界の世界市場シェア+ランキング】
エレベーター各社の2023年度の売上高⇒参照したデータの詳細情報を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、2023年のエレベーター業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はオーチス、2位はシンドラー、3位はコネとなります。
エレベーター業界の世界市場シェア(2023年)
順位 | Company name(English) | 会社名(日本語) | 市場シェア |
1位 | Otis Worldwide Corporation | オーチス | 16.04% |
2位 | Schindler Elevator Corporation | シンドラー | 13.88% |
3位 | Kone Corporation | コネ | 13.10% |
4位 | Hitachi Ltd | 株式会社日立製作所 | 7.91% |
5位 | Mitsubishi Electric Corporation | 三菱電機株式会社 | 5.54% |
6位 | Hyundai Elevator Co Ltd | ヒュンダイ エレベーター |
2.31% |
7位 | Fujitec Co. Ltd | フジテック株式会社 | 1.97% |
エレベーター業界の世界市場シェアとランキング(2023年) ©2024 Deallab
ユナイテッド・テクノロジーズ社から分社化後もオーチスが引き続き1位となっています。
2位はスイスのシンドラーで、3位はフィンランドのコネです。コネは世界初の機械室なしエレベーターを開発したことでも有名です。
4位の日立製作所、5位の三菱電機はともに日本を代表する企業で、エレベーター以外にも多くの製品を展開しています。
【エレベーター業界の世界市場規模】
当サイトでは、エレベーター業界の2023年の世界市場規模を885.9億ドルとしております。参照した各種調査データは以下の通りです。
調査会社のフォーチュンビジネスインサイツによると、2023年のエレベーター業界の市場規模は885.9億ドルです。2024年には940.5億ドルに達し、2024年から2032年にかけて年平均7.5%で成長し、同年には1676.2億ドルに成長すると予想しています。
年 | 市場規模 | 成長率見込み |
---|---|---|
2023 | 885.9億ドル | – |
2024 | 940.5億ドル | 6.16% |
2032 | 1676.2億ドル | 7.5% |
グローバルマーケットインサイツによりますと、先進国、新興共に住宅地や商業ビルでのエレベーターの投資が多いことが今後のエレベーター業界の成長率に繋がっているとのことです。また、主要国の政府が超高層ビル(スカイスクレーパー)や一般的な高層ビルの建設を予定していることも高成長率が推定されている要因となっています。
【M&Aの動向】
エレベーター業界はグローバルでメンテナンス事業を行う必要があり、大手エレベーター会社が地域毎の有力エレベーター会社を買収する流れが続いています。
主要M&A
1976年 オーチス・エレベーターが米ユナイテッド・テクノロジーズに買収される
1997年 オーチス・エレベーターによる英Evans Liftsの買収
1999年 ティッセンクルップによる米Dover Elevator Companyの買収
2003年 オーチス・エレベーターによるAmtech Elevator Servicesの買収
2006年 シンドラーによるSuzhou Schindler Elevatorの買収
2008年 シンドラーによるカタールのAl Doha Elevators & Escalatorsの買収
2009年 シンドラーによるサウジアラビアのSaudi Elevator の買収
2010年 シンドラーとティッセンクルップによるフランスのConstructions Industrielles de la Mediterranee SA (CNIM)の共同買収
2011年 コネによる 米Long Elevator & Machineの買収
2013年 シンドラーによるカナダのSkyline Elevatorの買収
2013年 コネによるアイルランドのEnnis Liftsの買収
2015年 コネによる米Barist Elevatorの買収
2018年 日立による永大機電工業の買収
2020年 ティッセンクルップがエレベーター事業を投資ファンドに売却
2023年 フジテックがカナダのStampede Elevator社を買収
2024年 コネ社がニュージーランドとオーストラリアのOrbitz Elevators社を買収
2024年 オーチス台湾支社が台湾のJardine Schindler Lifts Limited を買収
さらに業界に詳しくなるためのお薦め書籍と関連サイト
エレベーター革命
イラストでわかる建築電気・エレベータの技術
自動ドア業界の世界市場シェアの分析
オートメーション業界の世界市場シェアと市場規模の分析
フジテック対アセット・バリュー・インベスターズのリアルタイムケーススタディ
ティッセンクルップのエレベーター事業の概要とアドベント連合の戦略オプション
M&Aの対象となる産業用機器・部品メーカーの分析
【会社の概要】
Otis Worldwide Corporation(オーチス)
米国に本拠を置くエレベーター世界最大手の一角です。オーチスのブランド力は圧倒的です。エッフェル塔、自由の女神、日本では霞が関ビルに設置され、歴史ある建物はオーチスのエレベーターといっても過言ではありません。元々は、米航空宇宙防衛大手メーカーであるUnited Technologies(ユナイテッド・テクノロジーズ、現レイセオン・テクノロジーズ、Raytheon Technologies)が1973年にオーチス・エレベーターを買収し、同社の事業部門でしたが、2020年に同社から分社化する形で誕生しました。設置実績のあるエレベーター・エスカレーターは200万台超です。
Schindler(シンドラー)
1874年に、ロバート・シンドラーによって設立されたスイスに本拠を置くエレベーター専業メーカーです。エスカレーターも世界首位級です。上場会社ではありますが、シンドラーファミリー(Schindler and Bonnard families)が過半数の議決権を所有しています。
Kone Corporation(コネ)
1910年に設立されたアンティ・ヘルリン(Antti Herlin)氏率いるフィンランドのエレベーター大手です。エスカレーターにも強みを持ちます。上場会社でもありますが、アンティ・ヘルリン氏が議決権の過半を有しています。世界初の機械室なしエレベーターを開発したことでも有名です。クレーンやフォークリフト事業を分社化しています。東芝エレベーターへ出資をしています。
Hitachi Ltd (株式会社日立製作所)
日立製作所は、久原鉱業所日立鉱山付属の修理工場として、1910年に創業された日本を代表する重電メーカーです。IT、エネルギー、インダストリー、モビリティ、ライフを主要領域とします。配電事業、自動車部品、エレベーター事業や鉄道事業は強化する一方で、日立化成、日立金属、日立キャピタル、日立建機等は外部へ売却をし、選択と集中を進めています。さらに詳しく
永大機電工業(Yungtay Engineering、ユンタイ・エンジニアリング)について
1966年に設立された台湾に本拠をおくエレベーターメーカーです。設立当初より日立と提携関係にあります。エスカレーター、建設機械、および駐車装置の製造・販売を手掛けています。2018年に日立が公開買付を行い子会社化しました。
Mitsubishi Electric Corporation (三菱電機株式会社)
1921年に設立された日本を代表する総合電機メーカーです。重電システム、産業メカトロニクス、情報通信システム、電子デバイス、家庭電器のセグメントで事業を展開しています。エレベーターは重電システムのビルシステム事業で展開しています。産業用ロボットは産業メカトロニクスで、霧ヶ峰ブランドで有名な空調やエアコンは家庭電器セグメントに含まれます。空調分野は特にM&Aに積極的で、業務用空調分野では2015年にDe’Longhi(デロンギ)のイタリアの子会社のDeLclima(デルクリマ)社を買収して、欧州市場にて業績拡大を目指しています。北米では2018年にインガソールランドによるダクトレス空調機販売の合弁会社を設立しました。さらに詳しく
Hyundai Elevator Co Ltd (ヒュンダイ エレベーター)
現代グループでエレベーター事業を手掛けています。2000年代に現代自動車や現代重工といった現代グループが分社化されていく中で、同社がかつての中核会社である現代の主要事業会社となっています。シンドラーが出資をしています。
Fujitec Co. Ltd (フジテック株式会社)
1948年に設立された滋賀県に本拠を置くエレベーター・エスカレーター専業大手です。上場していますが、創業者の内山ファミリーが大株主かつ経営を担っています。
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