ダイヤモンド業界の世界市場シェアの分析

ダイヤモンド業界の世界市場シェアと市場規模について分析をしています。デビアス 、アルロサ 、デブスワナ・ダイヤモンド、エンディアマ、リオ・ティントといったダイヤモンド生産会社の概要と動向も掲載しています。

【ダイヤモンド業界とは】

ダイヤモンドというと、希少性が高く美しく輝く宝石をイメージする人が多いかもしれません。しかし、宝飾用として使用可能な品質のダイヤモンドは、わずか30%程度。これらは採掘後、カット・研磨を経て宝飾品として販売されます。

残りの70%は工業用として利用価値があり、硬さや油へのなじみやすさ(親油性)、熱の伝えやすさ(熱伝導性)などの性質から、様々な用途に使用されています。コンクリートの切断工具や歯科で使用されるドリルなど、工事現場から医療現場まで、工業用ダイヤモンドの需要は安定しています。

本記事では、宝飾用と工業用双方の目的で採掘されるダイヤモンドの生産量を調査し、その市場規模と業界シェアを分析しています。

ダイヤモンドの採掘先

ダイヤモンド原石は、ロシア、ボツワナ、カナダ、コンゴ、南アフリカ、アンゴラなどから産出され、ロシア、ボツワナ、カナダ、コンゴで77%のシェアを占めます。主な鉱山は次の通りです。

  • ジュワネング鉱山( Jwaneng Mine):ボツワナ
  • ガーチョ・クエ(Gahcho Kue):カナダ
  • ベネチア鉱山( Venetia Mine):南アフリカ
  • ウダーチヌイ鉱山(Udachny Mine):ロシア
  • カリナン鉱山(Cullinan Mine):南アフリカ

【市場シェア】

ダイヤモンド生産会社各社の2022年度の採掘生産高(⇒参照したデータの詳細情報)を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、2022年のダイヤモンド業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はデビアス、2位はアルロサ、3位はデブスワナ・ダイヤモンドとなります。

ダイヤモンド生産会社の世界市場シェア(2022年)

順位 会社名 市場シェア
1位 デビアス 29.45%
2位 アルロサ 28.94%
3位 デブスワナ・ダイヤモンド 18.98%
4位 エンディアマ 7.45%
5位 リオ・ティント 3.96%
6位 アークティック・カナディアン・ダイヤモンド 3.57%
7位 ペトラ・ダイヤモンド 2.89%

ダイヤモンド業界の市場シェア(2022年)

アルロサ、デビアス、デブスワナ、リオティントがダイヤモンドの四天王と呼ばれており、約80%程度の生産を行っておりましたが、エンディアマが割って入りました。

2022年の世界最大のダイヤモンド産出国はロシアでした。しかし、2022年にロシアがウクライナ侵攻を開始してから、ダイヤモンド業界は政治的な緊張と国際制裁の影響を受けています。米国と英国がロシア国営のダイヤモンド会社アルロサに経済制裁を科したため、資金調達などが困難になる可能性が高いからです。この経済制裁と共に、新しいダイヤモンドの採掘先の不足も足かせとなり、ロシアのダイヤモンド生産量は大きな影響を受けると予測されます。

※デブスワナのデータは2021年のものを使用

※アルロサ・エンディアマ・アークティック・カナディアン・ダイヤモンドのデータは概算

【市場規模】

当サイトでは、各調査会社等の公表データを参考にし、2022年の生産量ベースの世界市場規模を1億1750万カラットとして市場シェアを計算しております。参照にしたデータは以下の通りです。

調査会社グローバルデータによると、2022年の同市場規模は1億1750万カラットです。

調査会社リサーチアンドマーケッツによると、2021年の同市場規模は1億1290万カラットです。2025年は同市場規模は1億2480万カラットになると見込まれています。

これらのデータから、2022年から2025年のCAGR/年平均成長率を算出すると、2.03%となります。

参照したデータの詳細情報

ダイヤモンドの価格と評価

ダイヤモンドの価値は1931年に設立されたGIA(米国宝石学会)が定めた基準である4C(カラット、カラー、クラリティ、カット)よって決定します。カラットは重さ、カラーは色、クラリティは透明度、カットは輝きの度合いを示します。無色で透明で重く輝きのあるダイヤモンドほど高価となります。1カラットは0.2gです。

デビアスが発刊するラパポート・ダイヤモンド・レポートにはグレードに応じた基準価格が掲載されており、参考価格とされています。価格は、ダイヤモンド原石から流通業者を経て最終カットまでの工程で価格が上がっていきます。

ダイヤモンドの価格構成要素

さらに業界に詳しくなるための参考書籍

ダイヤモンドの科学
ダイヤモンド―輝きへの欲望と挑戦

【M&Aの動向】

2011年 アングロ・アメリカンがデビアスを51億米ドルで子会社化

2023年 豪ダイヤモンド生産界会社のBurgundy Diamond Minesがアークティック・カナディアン・ダイヤモンドを1億3600万米ドルで買収することに合意

2023年 ペトラ・ダイヤモンドがM&A交渉があれば受け入れを検討すると発表

ペトラ・ダイヤモンドは2021年に会社を売却するプランを放棄し、債務を株式化しています。再編を通してより強固で健全なバランスシートが得られるという理由から、M&Aに積極的な姿勢を示しています。

【会社の概要】

De Beers (デビアス)

1888年にセシルローズ氏によって設立された南アフリカに本拠を置くダイヤモンド世界大手です。現在は資源大手アングロ・アメリカンの子会社です。LVMHとの合弁会社であるDeBeers Diamond Jewellersを通じてダイヤモンドの小売販売も行っています。

ALROSA(アルロサ)

ロシアに本拠を置く政府系のダイヤモンド生産会社です。ロシアにおけるダイヤモンド生産を独占している上場企業です。ロシアのウクライナ侵攻開始後、アルロサは米国からの経済制裁対象となり、ジュエリー協議会の権威であるRJC(Responsible Jewellery Council:責任あるジュエリー協議会)からも脱退しています。RJCの脱退は、カルティエやヴァンクリーフ&アーペル、ブシュロンなどの大手高級ブランドからの圧力によるものだとされています。

DebswanaDiamond(デブスワナダイヤモンド)

デビアスとボツワナ政府の50/50の合弁会社です。オラパ、ジュワネン、レトラカネ、ダムツァアが主なダイヤモンド鉱山となります。2023年には、ファーウェイが開発したスマート鉱山ソリューションを導入して、ダイヤモンドの採掘の効率化・安全性の確保を進めていくことを発表しました。

Endiama EP(エンディアマ)

1981年に設立された、アンゴラ政府が保有する国営ダイヤモンド会社です。民営化を進めており、アンゴラ証券取引所と国外で新規株式公開を行う方針だと公表されています。

Rio Tinto(リオティント)

Rio Tinto(リオティント)は、世界最大級の鉱業会社です。1995年に英国RTZ と豪CRA が統合して誕生しました。経営統合の経緯から、現在でもロンドンとシドニーの両証券取引所に上場をしています。鉄鉱石やアルミに強みを持ちます。アルミニウムは2007年に買収したリオ・ティント・アルキャンを通じて展開しています。石炭は豪州を中心に注力していましたが、2017年にCoal Allied Industrialをヤンコールへ、2018年にHail Creek炭田をグレンコア、Kestrel炭田をAdaroエナジーなどへ売却して撤退しました。ダイヤモンドにも強みを持ちます。ジンバブエのムロワダイヤモンド鉱山やカナダの鉱山での生産を行っています。

Arctic Canadian Diamond Company(アークティックカナディアンダイアモンド)

カナダに本拠を置くダイヤモンド開発・生産会社です。1994年にAber Diamond Corporationとして設立されました。事業ポートフォリオの高級ジュエリー小売のHarry WinstonをスイスのSwatch Groupに売却後、現社名になりました。BHPグループからダイヤモンド事業を買収しています。カナダ最大のダイヤモンド鉱山であるDiavik(ダイアヴィク)を保有しています。2017年に米国の投資会社であるThe Washington Companiesが買収しました。2021年に破たんし、スポンサーとなった投資ファンドの下でDominion Diamond Corporation(ドミニオンダイヤモンド)から現社名へと変更しました。2023年、豪ダイヤモンド生産界会社のBurgundy Diamond Minesが1億3600万米ドルで買収することに合意したと発表されました。

BHPグループ

BHP(ビーエイチピー、BHP)は、世界最大の鉱業会社です。2001年に豪ブロークンヒル・プロプライエタリー・カンパニー(Broken Hill Proprietary Company Limited、BHP) と英ビリトン(Billiton plc) の統合により誕生しました。2018年にBHPビリトン(BHP Billiton)からBHPグループへと改称しています。合併後もロンドンとオーストラリアの2つの株式市場に上場するdual-listed companyとして存在しています。
銅、鉄、石炭、石油、ニッケル、ボーキサイト等の鉱石の生産に携わっています。豪州のOlympic Dam鉱山でウランの生産・開発を行っています。ダイヤモンドも手掛けていましたが、2012年にドミニオンダイヤモンドに事業を売却しました。銅鉱山では世界最大規模の生産量を誇るチリのEscondida(エスコンディーダ)を保有しています。ニッケルは、ウェスト・オーストラリア鉱床が、世界最大級の良質なニッケルブリケットやパウダーを生産しています。ウェスト・オーストラリア鉱床においては、Mount Keith(キース山)が、良質なニッケル鉱山です。

BHPビリトン キース山

BHPビリトン キース山
出所:同社

Petra Diamonds(ペトラダイヤモンズ)

イギリス領ジャージーに本社を置くダイヤモンド生産会社です。南アフリカ、タンザニアとボツワナにダイヤモンド鉱山を保有します。ロンドン証券取引所に上場しています。

参照したデータの詳細情報について


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