段ボール業界の世界市場シェアの分析

段ボール業界の世界シェア、業界ランキングと市場規模について分析をしています。インターナショナルペーパー、玖龍紙業、レンゴー、ウェストロック、スマーフィットカッパ、DSスミスといった世界大手の段ボール会社の概要や動向も掲載しています。

【市場シェア】

段ボールメーカー各社の2022年度の売上高(⇒参照したデータの詳細情報)を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、2021年のダンボール業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はインターナショナルペーパー、2位はスマーフィットカッパ、3位はDSスミスとなります。

2022年段ボール会社の市場シェアと業界ランキング

順位 会社名 市場シェア
1位 インターナショナルペーパー 6.20%
2位 スマーフィットカッパ 5.15%
3位 DSスミス 3.94%
4位 ウェストロック 3.57%
5位 PCA 2.77%
6位 玖龍紙業 2.65%
7位 レンゴー 2.62%
8位 王子ホールディングス 2.56%
9位 日本製紙 1.36%
10位 モンディグループ 1.20%
11位 理文造紙グライフ 1.13%
12位 グライフ 0.80%
13位 カスケーズ 0.76%
14位 トーモク 0.31%
2022年段ボール会社の市場シェアと業界ランキング

段ボール業界の世界市場シェア(2022年)

*玖龍紙業は2023年の推計データを使用

**ウェストロックは2023年会計年度(2022年10月~2023年9月)のデータを使用

***グライフは2023年会計年度(2022年11月~2023年10月)のデータを使用

1位は米国のインターナショナルペーパー、2位はアイルランドのスマーフィットカッパ、3位はイギリスのDSスミスです。その他にも中国の玖龍紙業や日系企業が入り乱れ、世界各国のメーカーが参入している群雄割拠の業界だと言えます。実際、1位のインターナショナルペーパーでも市場シェアは10%以下です。

地域別に見てみると、アジア太平洋地域でのシェアが最大になっています。eコマース市場が特に成長している地域でもあり、段ボールの需要が高いことがうかがえます。

日系企業ではレンゴーが首位、王子ホールディングス、日本製紙と続きます。

【市場規模】

当データベースでは、2022年の段ボール業界の市場規模を2813.8億ドルとしています。参照した公表統計データは次の通りです。

調査会社のマーケットリサーチフューチャーによると、2022年の段ボール業界の市場規模は、2813.8億ドルです。2022年から2030年にかけて年平均5.0%で成長し、同年には4157.3億ドルへと拡大すると予測しています。

調査会社のプレセデンスリサーチによると、2022年の段ボール業界の市場規模は2760億ドルです。2023年から2032年にかけて年平均4.1%で成長し、同年には4105億ドルへと拡大すると予測しています。

調査会社のコヒーレントマーケットインサイトによると、2021年の段ボール業界の市場規模は2831億ドルです。2022年から2030年にかけて年平均成長率4.0%で成長すると予測しています。

調査会社のエキスパートマーケットリサーチによると、2023年の段ボール業界の市場規模は2452.8億ドルです。2024年から2032年にかけて年平均成長率4.7%で成長し、同年には3718.2億ドルへと拡大すると予測しています。⇒参照したデータの詳細情報

【M&Aの動向】

段ボール事業は、設備投資型であるために、事業のバリューチェーン拡充や地域的な規模拡大に向けた同業間での経営統合や買収が盛んに行われています。2023年は業界2位のスマーフィットカッパが業界3位のウェストロックの買収を発表しました。この買収により、世界最大の梱包材メーカーが誕生する予定です。

主なM&Aの概要

2005年 アイルランドのジェファーソンスマーフィットとオランダのカッパパッケージングが経営統合してスマーフィットカッパ設立

2011年 ロックテンがスマーフィット・ストーン・コンテナーズを約35億ドルで買収

2011年 レンゴーがベトナムのアルカマックス・パッケージングを約2500万ドルで買収

2012年 インターナショナルペーパーが段ボール製造Temple-Inlandを約45億ドルで買収

2012年 スマーフィットカッパが段ボール製造のOrange County Container Groupを約3.4億ドルで買収

2012年 DSスミスがスウェーデンSvenska Cellulosaの段ボール事業を買収

2013年 PCAが米製紙会社のBoiseの買収

2015年 ロックテンがMeadWestvacoを約92億ドルで買収しウェストロック設立

2015年 DSスミスがオーストリアの段ボール製造Duropackを買収

2015年 レンゴーがベトナムの軟包装メーカーのティン・タイン・パッキングを買収

2016年 レンゴーが重量物段ボール販売のTri-Wallを買収

2017年 レンゴーが段ボールメーカーのTPMSポーランドを買収

2017年 レンゴーが段ボールメーカーのWelsh Boxesグループを買収

2017年 DSスミスが米国の包装資材メーカーInterstate Resourcesを買収

2018年 モンディがフィンランドの段ボール原紙メーカーであるPowerfluteを約3.65億ユーロで買収

2018年 スマーフィットカッパが東欧の段ボールメーカーであるAvala AdaとフランスのPapcartを買収

2018年 ウェストロックが米国の同業であるKapStone Paper and Packaging Corpを買収

2018年 玖龍紙業がCatalyst Paper Corporationの製紙工場を約1.75億ドルで買収

2018年 スマーフィットカッパがオランダの製紙メーカーReparencoを買収

2019年 レンゴーが包装資材の仕入れ・販売の樽谷包装産業株式会社を買収

2019年 DSスミスがスペインのパッケージング大手であるEuropacを約19億ユーロで買収

2019年 インターナショナルペーパーがスペインの包装資材メーカーのKadem Montclancを買収

2019年 インターナショナルペーパーがDSスミスより北西フランスとポルトガルの事業を6300万ユーロで買収

2019年 レンゴーがTri-Wall社を通じてドイツの重量包装企業のTRICOR Packaging & Logistics AGならびにGutmann Anlagentechnik GmbHを買収

2022年 レンゴーがTri-Wall社を通じてイギリスのコルゲーティッド・ケース・ホールディングスを買収

2023年 スマーフィットカッパがウエストロックを110億ドルで買収予定

段ボール業界のM&Aマルチプル(企業価値売上高倍率)を算出すると以下の表のようになります。概ね売上高倍率が1~2倍のレンジでM&Aが行われています。

段ボール業界のM&Aマルチプル分析
段ボール業界のM&Aマルチプル分析

段ボールの作り方

段ボールには大きく、(1)段ボール原紙の製造(製紙)、(2)段ボール原紙を貼り合わせる貼合工程、(3)貼合工程で生まれた段ボールシートを加工する製箱工程に分かれます。

段ボール原紙の製造
段ボールを製造するためには、段ボール原紙の原料となる古紙パルプ(古紙のこと)と木材パルプが必要となります。古紙はパルパーという水槽の中で繊維状にされ、乾燥・引き延し&巻き取られ、段ボール原紙となります。

貼合工程
3枚の段ボール原紙を貼り合わせる工程です。中芯(ギザギザの紙)とライナーを貼りあわせるためにはコルゲータと呼ばれる設備が必要です。コルゲータへの大きな投資が必要となる段ボールシートの製造工程は、中国系の段ボール大手の玖龍紙業や理文造紙は行っておりません。

【コルゲータを使った貼合工程】

段ボールが出来るまで(原紙の貼合工程)
段ボールが出来るまで(原紙の貼合工程)

製箱工程
最終工程の段ボールの加工については、大きな投資が必要ないこともあり、段ボール加工作業の専業が多く参入しています。

さらに業界に詳しくなるためのお薦め書籍と関連する業界

第13次業種別審査事典(第3巻) 【木材・紙パ・化学・エネルギー 分野】
トコトンやさしい段ボールの本
製紙業界・パルプ業界の世界市場シェアの分析
M&Aや再編対象となる製紙・パルプ会社の分析

【会社の概要】

インターナショナルペーパー(International Paper)

1898年に設立された米国テネシー州に本拠を置く世界最大級のパルプ製紙会社です。インダストリアルパッケージング、パルプ、印刷紙が大きな事業の柱となっています。2000年に北米同業のチャンピオンインターナショナル、2011年にはインドの大手製紙会社APPM(Andhra Pradesh Paper Mills Rajahmundry、アンドラプラデッシュ・ペーパー・ミルズ)の過半数を取得する等、買収により規模を拡大しています。インダストリアルパッケージング事業で、段ボールを製造販売しています。段ボールの原紙製造に加え、段ボールの貼合加工も行っています。また、2011年に段ボール大手の米Temple-Inland(テンプルインランド)買収しました。さらに詳しく

玖龍紙業(Nine Dragons Paper)

中国に本拠を置く大手段ボールメーカー紙です。パルプからライナーボード(linerboard、段ボールシートの表面の厚紙)や中しん原紙であるコルゲータミディアム(Corrugating medium)、すき合わせ板紙(coated duplex board)などの製造をしています。香港証券取引所に上場しています。

ウェストロック(WestRock)

Westrock(ウェストロック)は、2015年にパルプ製紙大手のRock-Tenn(ロックテン)と包装材大手のMeadWestvaco(メッドウエストヴェイコ)が経営統合をして誕生しました。主力事業は、段ボール紙と商品用包装用紙の製造・加工です。飲料・食品・日用品パッケージなど消費財向け梱包材を得意とします。
なおロックテンは、2011年に段ボール大手のSmurfit-Stone Container(スマーフィット・ストーン・コンテナー)社を買収しました。直近では、SP Fiber、Cenveo Packaging、Star Pizza、MPS、U.S. Corrugated、Island Container、Hannapak、Plymouth Packaging、Schlüter Print Pharma、KapStone、Linkx、UBSを買収し、M&Aによる成長戦略を強化しています。さらに詳しく

スマーフィットカッパ(Smurfit Kappa)

アイルランドに本拠を置く大手段ボールメーカーです。2005年のジェファーソンスマーフィット(Jefferson Smurfit)社とカッパパッケージング(Kappa Packaging)社の経営統合によって誕生しました。

DSスミス(DS Smith)

イギリスに本拠をおく包装・段ボールメーカーです。段ボール紙から包装用段ボールへの加工などを行っています。

Packaging Corporation of America(パッケージングコーポレーションオブアメリカ、PCA)

Packaging Corporation of America(パッケージングコーポレーションオブアメリカ)は、米国の大手段ボール製品メーカーです。非塗工フリーシート(UFS)紙にも強みを持ちます。

理文造紙(Lee&Man Paper)

中国の段ボールメーカー大手です。板紙、パルプ、ティッシュが事業の3分柱です。日本製紙と資本提携を結んでいましたが、2015年に提携を解消しました。

レンゴー

レンゴーは1920年に設立された聯合紙器を源流とする日本を代表する段ボール紙メーカーです。製紙、段ボール、紙器、軟包装、重包装、包装機器などを手掛けます。東南アジアは、タイのサイアムセメントグループ傘下のSCGパッケージングとダンボール分野で合弁会社(タイ・コンテナーズ・グループ、レンゴーの持分は30%)を設立しております。2013年に段ボール機械メーカーの石川製作所に出資、2015年にポリオレフィンフィルムに強いサン・トックスに出資、2018年に凸版印刷の子会社であるトッパンコンテナーを買収、2019年に産業用重量物包装メーカーであるトライコー(ドイツ)を買収、2020年にタイ・コンテナーズ・グループを通じてベトナムのビエンホア・パッケージングを買収しするなど、国内、欧州や東南アジアでの積極的に事業を拡大しています。さらに詳しく

王子ホールディングス

日本を代表する製紙メーカーです。板紙、段ボール、おむつ、感熱紙、パルプ、新聞、印刷情報用紙で事業を展開しています。

Mondi(モンディ)

1967年に資源大手アングロアメリカンによって設立された製紙・段ボール会社です。段ボール、フレキシブルパッケージ、不織布、印刷情報用紙などを手掛けています。2007年に分社化され、ロンドン証券取引所に上場しました。

ジョージアパシフィック(Georgia Pacific)

米国に本拠を置く建材・包装材大手メーカーです。段ボール以外にも、ウッドパネル、不織布、トイレットペーパー等を製造しています。親会社はKoch Industries(コークインダストリーズ)です。

Cascades(カスケーズ)

1957年に設立されたカナダに本拠を置く製紙・包装会社です。カナダと北米を中心に展開する段ボール、パッケージング、ティッシュペーパーの製造販売に強みを持ちます。

Greif(グライフ)

1877年に設立されたパッケージングメーカーです。源流は樽製造です。段ボールなどの工業用包装と容器の製造に強みを持っています。

段ボール業界の用語集

  • 木材パルプ:パルプとは、紙を作るための原料のことで、通常は木材チップを溶かしたものから繊維を取り出すことで製造します。
  • 段ボール原紙(Containerboard):リサイクルされた段ボールやパルプを用いて作られ、つくる中芯やライナーの元となります。
  • 中芯(fluted inner sheet、corrugating medium):段ボールの上下の紙(ライナー)に挟まれた波をうった形に加工された紙の部分のこと。
  • ライナー(linerboard):段ボールの上下の紙のこと。
  • コルゲータ(Corrugator):中芯とライナーを貼りあわせる機械のこと。

参照したデータの詳細情報について


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