航空機部品業界の市場シェアの分析

航空機部品業界の世界市場シェア・売上高ランキング・市場規模・M&A(合併買収)について分析。アビオニクスやコックピットディスプレー分野に強いロックウェルコリンズを買収したレイセオン、ハネウェル、サフラン、ボーイング、タレスといった航空機部品メーカーの概要も掲載。

【市場シェア】

航空機部品会社各社の2022年度の売上高(⇒参照したデータの詳細情報)を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、2022年の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はレイセオン・テクノロジーズ、2位はGE、3位はサフランとなります。

航空機部品メーカーの市場シェア(2022年)

順位 会社名 市場シェア
1位 レイセオン・テクノロジーズ 4.57%
2位 GE 2.45%
3位 サフラン 2.24%
4位 ボーイング 1.96%
5位 ロールスロイス 0.76%
6位 ハネウェル 0.70%
7位 タレス 0.52%
8位 パーカー・ハニフィン 0.28%
航空機部品メーカーの市場シェアと売上高ランキング(2022年)

航空機部品の世界シェア(2022年)

【市場規模】

当データベースでは、調査会社等の公表データを参考にし、航空機部品業界の2022年の世界市場規模を8994億ドルとして市場シェアを計算しております。参照にしたデータは以下の通りです。

調査会社グランドビューリサーチによると、2022年の同業界の市場規模は8994億ドルです。2030年にかけて年平均4%での成長を見込みます。
コロナ禍による人流、物流の停滞に伴い、2020年、21年期には航空業界全体の業績が大きく落ち込みました。2022、23年には、人流、物流の回復に伴い、航空業界の業績も改善していくことになると考えられます。⇒参照したデータの詳細情報

航空機部品業界の構造

航空機部品は、大きく機体(胴体、主翼、尾翼)と装備品に分かれます。装備品には、油圧システムやアビオニク等の分野に分かれ、それぞれ強みを持つ会社が群雄割拠している状態です。

  • 油圧システム:ハネウェル(米)、パーカー・ハニフィン(米)、リープヘル(スイス)、ナブテスコ等
  • 与圧・空調システム:ハネウェル(米)、レイセオン・テクノロジーズ(旧ハミルトン・サンドストランド、米)、リープヘル(スイス)等
  • アビオニクス・飛行制御システム:レイセオン・テクノロジーズ(旧ハミルトン・サンドストランド、米)、ハネウェル(米)、パーカー・ハニフィン(米)、メギー(英)、タレス(仏)、ナブテスコ等
  • 降着システム:レイセオンテクノロジーズ(旧グッドリッチ、米)
  • エンジン:GE(米)、ロールスロイス(英)、プラット&ホイットニー(米)、ハネウェル(米)、スネクマ(仏)

一方で、航空機メーカーは、ワイドボディとナローボディ機のジャイアントであるボーイングとエアバスが市場をほぼ2分しています。その結果、航空機部品メーカーは常に両社からの圧力にさらされていました。

ユナイテッド・テクノロジーズ(現レイセオンテクノロジーズ)によるロックウェルコリンズの総額約2兆5200億円の買収(債務を含む企業価値ベースでは300億ドル以上)は、群雄割拠していた航空機部品メーカーが集結し、航空機メーカーのジャイアント2社に対抗できる規模を築く意味合いを持っていました。
特にユナイテッド・テクノロジーズ社は、エンジン機器やシステム機器に強い一方で、ロックウェルコリンズは、電子機器や買収したBEエアロスペースを通じて内装関連にも強く、製品の補完関係が見込めます。

【M&Aの動向】

1986年 ハネウェルによるアビオニクスに強いスペリー・エアロスペースの買収
1998年 ハネウェルとアライドシグナルとの経営統合
1999年 ユナイテッド・テクノロジーズによるサンドストランドの買収
2000年 タレスによるイギリス防衛機器メーカーのレーカル・エレクトロニクスの買収
2002年 グッドリッチによるTRWエアロノーティカル・システムズの買収
2011年 ユナイテッド・テクノロジーズによるグッドリッチの買収
2016年 ロックウェルコリンズによるBEエアロスペースの買収
2017年 ユナイテッド・テクノロジーズによるロックウェルコリンズの買収
2018年 カーライルによるMRO大手のスタンダード・アエロ(Standard Aero)の買収
2020年 ユナイテッド・テクノロジーズとレイセオンが経営統合し、レイセオンテクノロジーズ誕生

さらに業界に詳しくなるためのお薦め書籍と関連サイト

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【会社の概要】

レイセオン・テクノロジーズ

レイセオンテクノロジーズ(Raytheon Technologies)は、2019年に防衛大手のレイセオンとユナイテッド・テクノロジーズグループが経営統合して誕生しました。旧ユナイテッド・テクノロジーズグループは、2020年にエレベーター事業のオーチス(Otis)及び空調事業のキャリア(Carrier)の分社化を実施し、現在は、航空機エンジンのプラット・アンド・ホイットニー、民間工機向けシステムを提供するコリンズエアロスペース、宇宙防衛機器製造を行うレイセオンが主力事業となっています。さらに詳しく

ハネウェル

ハネウェル(Honeywell)は1886年に設立された米国に本拠を置く複合企業です。航空機エンジンや電子制御機器、自動化機器、特殊素材分野、自動車部品等幅広く展開しています。ビルディング・オートメーションやターボチャージャーの分野では世界大手の1社です。2017年にターボチャージャー事業と住宅向け空調機器、火災報知器事業を分社化しました。さらに詳しく

GE

GE(ジェネラル・エレクトロニック)は、1878年にトーマス・エジソンによって設立されたエジソン電気照明会社を源流に持つ世界を代表する総合電機メーカーの老舗です。世界シェア1位か2位以外の事業からは撤退するというナンバーワン・ナンバーツー戦略を実施し、積極的な事業ポートフォリオの入れ替えを行うことでも有名です。インダストリアル・インターネットを成長戦略にしたジェフ・イメルト氏が退任した後、2017年に生え抜きのジョン・フラナリー氏が社長に就任したものの、2018年には外部のダナハーからラリー・カルプ氏が招聘され、新CEOとなるなど、経営陣の交代が続きます。2021年にGEをヘルスケア部門、電力・エネルギー部門、航空部門の3社へと分社化することを発表しました。さらに詳しく

2022年には、全日本空輸株式会社(以下ANA)がGEデジタルの提供する『フューエル・インサイト』を採用したことを発表した。

サフラン

Safran S.A (サフラン)はフランスに本拠を置く防衛・通信大手企業です。傘下のSnecma(スネクマ)にて民間及び軍用の航空機エンジンの製造を行っています。ナローボディー機ではGEと手を組んでいます。2018年に機内エンターテイメント、シート、機内食機器に強いゾディアックを買収しました。

ボーイング

The Boeing Companyは、アメリカ合衆国のイリノイ州シカゴに本社を置く世界最大の航空宇宙機器開発製造会社。ヨーロッパのエアバス社と世界市場を二分する巨大企業である。また旅客機だけでなく、軍用機、ミサイル、宇宙船や宇宙機器などの研究開発、設計製造を行う。4つの事業セグメントを通じて事業を展開する。民間航空機(BCA)セグメントは、民間ジェット機を開発、製造し、世界中の民間航空業界に販売する。防衛、宇宙とセキュリティ(BDS)セグメントは、有人と無人の軍用機及び兵器システムの研究、開発、生産や修正を行う。グローバルサービス(BGS)セグメントは、サプライチェーンとロジスティクス管理、エンジニアリング、メンテナンスと変更、アップグレードと変換、スペアパーツ、パイロット等を含む、様々な製品とサービスを備えた航空宇宙プラットフォームやシステムを提供する。ボーイングキャピタル(BCC)セグメントのポートフォリオは、オペレーティングリース、販売型とファイナンスリース、手形とその他の債権、売却または再リース及び投資のために保有される資産で構成される。

ロールスロイス

Rolls-Royce(ロールス・ロイス)は英国に本拠を置く航空機・船舶エンジンメーカーです。自動車のロールス・ロイスとは同根です。一時は英政府により国有化されましたが、ドイツのBMWとの航空機エンジン事業を子会社する等、積極的な買収により成長しました。民間航空、防衛、パワーシステムが3本柱です。産業用ディーゼルエンジンでは、発電所、建機、鉄道、船舶向けのエンジンを製造・販売し、キャタピラー、カミンズ、GE等と競っています。民間船舶部門が低調であり、2018年以降リストラを加速しています。燃料噴射装置を手掛けるロランジュ(L’Orange)を米航空機部品メーカーのウッドワードへ売却しました。船舶用エンジンではMTUブランドの高速エンジンとBergenブランドの中速エンジンがメインとなっていますが、2021年にBergenをロシアの鉄道車両大手であるJSC Transmashholdingへ売却しました。さらに詳しく

2022年には、世界最大の航空機エンジンとなる「UltraFan」のデモ機の製造を完了したと発表した。

ハネウェル・エアロスペース

2023年には、AJW グループとハネウェルエアロスペースがボーイング 787 コンポーネントの供給契約を拡大し、今後継続的に航空機部品提供、アフターサービスが提供されることとなった。

タレス

タレス(Thales )は、フランスに本拠を置く防衛・重電メーカーです。前身はThomson-CSF社で、現在は航空関連の電子サービス(Flight avionics)、衛星、鉄道信号、マイクロ波、防衛セキュリティ、本人認証サービス等の分野を手掛けています。航空機部品は、ハネウェルやコリンズエアロスペースが競合会社です。エアバス、ATR、ベル、ボーイング、ボンバルディア、ダッソーアビエーション、エンブラエル、ガルフストリーム、レオナルド等へ販売をしています。機内エンターテイメント事業にも強く、グローバルイーグルエンターテイメント、ゴーゴー、パナソニック アビオニクスやゾディアック インフライト イノベーションズ(サフラングループ)と競合しています。マイクロ波およびイメージングサブシステムでは、Varian Medical Systems、CPIやL3Harrisと競合しています。2021年に日立に鉄道信号事業を売却しました。さらに詳しく

パーカー・ハニフィン(Parker Hannifin)

パーカーハニフィンは、1917年に設立された米国に本拠を置く機器制御大手です。モーションコントロール、フロー制御、プロセス制御、フィルター、制御系航空システム、油圧機器、空気圧機器に強みを持ちます。2021年にはイギリスの制御技術大手であるメジットを買収しました。

ナブテスコ

日本を代表する自動ドアメーカー。鈴木商店を源流とするナブコと帝人製機が経営統合をして誕生しました。自動ドアでは国内最大手です。「NABCO」「GILGEN」というブランドで建物用自動ドア、特殊用途向け自動ドア、産業用自動ドア自動ドアを日米欧アジアで展開しています。自動ドア以外にも鉄道車両用機器のブレーキ装置、産業用ロボット関節、ドア開閉装置等に強みを持ちます。2011年にはスイスのカバより自動ドア事業(ギルゲン・ドア・システム(Gilgen Door Systems))を買収しています。さらに詳しく

参照したデータの詳細情報について


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