EV電池・車載電池業界の世界市場シェアの分析

EV電池・車載電池業界の世界シェア、業界ランキング、市場規模の情報について分析をしています。中国政府からの潤沢な補助金で拡大を続ける寧徳時代新能源科技(CATL)、比亜迪(BYD)、国軒高科(Gotion High-Tech)、中創新航科技集団(CALB)等の有力中国メーカーに対し、パナソニック、LG化学、サムスンSDIが対抗しています。

【市場シェア】

EV電池・車載電池業界の2024年度の売上高⇒参照したデータの詳細情報を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、2024年のEV電池・車載電池業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はCATL、2位はBYD、3位はLG化学となります。

車載電池の市場シェアと業界ランキング(2024年)

順位 Company name
(English)
会社名 市場シェア
1位 CATL CATL 37.94%
2位 BYD BYD 17.18%
3位 LG Chem LG化学 10.77%
4位 CALB 中創新航科技集団 4.41%
5位 SK innovation SKイノベーション 4.36%
6位 Panasonic パナソニック 3.92%
7位 Samsung サムスンSDI 3.31%
8位 Gotion 国軒高科動力能源 3.19%
9位 EVE EVE 2.27%
10位 Sunwoda サンオーダ 2.10%
EV電池・車載電池の世界市場シェアと業界ランキング(2024年) ©2025 Deallab

EV電池・車載電池業界の市場シェア(2024年) ©2025 Deallab

電気自動車(EV)の世界最大市場である中国では、かつての太陽電池や液晶パネルと同様に、政府主導による多額の補助金を背景に、生産設備の急拡大を伴う市場席巻戦略が進められています。この戦略のもと、中国勢は車載用電池分野でも急速にシェアを拡大しています。

2024年時点で、世界シェア1位は中国政府系のCATLが引き続き占めています。2位には、電池の製造から電気自動車の完成までを一貫して手がけるBYDが入りました。

3位は韓国のLG化学です。同社は車載電池事業を「LGエネルギーソリューション」として2022年に分社化・上場し、グローバル展開を強化しています。

4位には中国の中創新航科技集団(CALB)、8位にも同じく中国の国軒高科動力能源(グオシュエン・ハイテク)がランクインしており、中国勢の優位性が際立っています。

韓国勢も存在感を示しており、5位はSKグループのSKイノベーション、7位にはサムスンSDIが入っています。

一方、6位に位置するのが日本のパナソニックです。パナソニックは、米国のテスラ、日本のトヨタと連携し、日米中の三極体制による生産規模の拡大を目指しています。

しかしながら、パナソニックとトヨタの合弁会社であった旧プライムアースEV(PEVE)、現トヨタバッテリーは、今回の世界シェアランキングでは圏外となりました。

参考までに、2014年時点の車載電池の世界シェアは、パナソニックが約5割、オートモーティブエナジーサプライが約2割、そして韓国勢(LG、サムスン)が約2割という構成でした。これと比較すると、2017年頃から始まった中国勢の台頭が、現在まで着実に続いていることがわかります。

【市場規模】

当データベースでは、2024年のEV電池・車載電池業界の市場規模を894Gwhとしております。

参照した各種調査データは次の通りとなります。

調査会社SNEリサーチによると、2023年の同業界の市場規模は703Gwhです。2023年から2024年にかけて年平均27.2%で成長し、規模は894Gwhへと拡大しました。

市場規模 年平均成長率
2023年 703Gwh
2024年 894Gwh 27.2%

EV電池・車載電池業界の市場規模の成長 ©2025 Deallab

さらに業界に詳しくなるためのお薦め書籍

決定版 EVシフト
電気自動車メカニズムの基礎知識

【M&Aの動向】

2021年 LG化学、LGエレクトロニクスの分離膜事業を買収

2024年 サムスン電子、レインボー・ロボティクスの筆頭株主に、未来のロボット開発を加速

【会社の概要】

太陽光電池や液晶パネルと同様に、EV電池業界も装置産業化しており、多額の資金を投じて最新の電池製造装置を装備した大規模工場を、競合より先に建設できるかが、競争優位の条件となりつつあります。日本勢が有していた技術的な優位性が薄れていく中、装置産業化した業界においては、政府からの資金援助が潤沢な中国勢に有利に働くと考えられます。

SKイノベーション/SKグループ

SKグループは、1953年に設立された韓国第3位の財閥グループです。崔泰源会長の強いリーダーシップの下でM&Aを通じて事業を拡大しています。半導体(SKハイニックス)、石油・電池(SKイノベーション)、通信(SKテレコム)、医薬品(SKバイオファーム)、医薬品受託(SKバイオサイエンス)、半導体素材(SKシルトロン)等の分野に強みがあります。2021年には、米国の燃料電池メーカーのプラグパワーに出資をし、水素プラントへの進出をしています。さらに詳しく

寧徳時代新能源科技(CATL)

寧徳時代新能源科技(CATL)は日本のTDKの携帯電話向け電池製造子会社であるアンプレックステクノロジー(ATL)から分社化して2011年に誕生した中国の車載用リチウムイオン電池メーカーです。中国ではBYDと規模を競っています。リン酸鉄系の角形電池を得意とし、2017年にBMWが、2018年にはホンダがCATL製のEV電池を採用しました。2018年に日本にも進出し、電池の権威であるロバート・ガリエン氏をはじめ、独コンチネンタル、仏ヴァレオ等から積極的に技術者を採用しています。さらに詳しく

パナソニック

パナソニックは、1917年に松下幸之助氏によって設立された日本を代表する電機メーカーです。松下電工や三洋電機と統合し、総合電機メーカーとして世界的なプレゼンスを有します。アプライアンス(家電、空調、AV機器、累計2000億個を売り上げた約90年の歴史を持つ電池等)、オートモーティブ(蓄電池、音響機器等)、インダストリアル(電池やモーター等)、ライフソリューション(照明や水まわり等)、コネクティッドソリューションズ(フライトエンターテイメント、航空機向け電子機器、監視カメラ等)といった事業部制に特徴がありましたが、2022年にパナソニックホールディングスを設立し、事業部はホールディング傘下の独立した子会社となりました。さらに詳しく

BYD(比亜迪)

BYD(比亜迪)は、王伝福(Wang Chuanfu)氏によって1995年に設立された中国の電気自動車・車載電池メーカーです。スマホや産業機器向けのリチウムイオン電池の製造に加え、車載向けの電池と電気自動車製造の一貫生産体制が強みです。電気自動車は、SUVのTang、PHVのQin、セダン型のEVであるe6、e5等のブランドを展開しています。王氏は電池王とも称されています。電気自動車を含む新エネ車(EV自動車)でも世界最大規模を誇ります。ウォーレンバフェット率いるバークシャー・ハサウェイ傘下のMidAmerican Energyが大株主となっています。2020年には刀片電池と言われる長距離走行が可能な車載電池を開発しました。さらに詳しく

LG化学

LGグループは1952年にク・インフェ氏によって設立された韓国を代表する財閥グループです。1958年にLuckyとGoldStarが経営統合をして設立されました。電機事業、化学事業、通信事業が3本柱です。子会社は、家電メーカーのLGエレクトロニクス、電子部品の製造を手掛けるLGイノテック、液晶ディスプレイを手掛けるLGディスプレイ、総合化学メーカーのLG化学など多岐にわたります。さらに詳しく

車載電池事業はLGエネルギーソリューションが担っています。ゼネラルモーターズ(GM)やステランティス、現代自動車と合弁車載電池工場を運営し、フォルクスワーゲン・アウディ、テスラ、ルノー日産連合にも電池を供給し、CATLを猛追しています。

Samsung SDI(サムスンSDI)

Samsung(サムスン電子)は、韓国を代表する総合電機メーカーです。スマホ、半導体、テレビ、白物家電など、最終商品まで手掛けていることが強みです。垂直統合型の半導体チップメーカーとして、DRAM、NAND型フラッシュメモリ、SSDの自社製造を手掛けています。また半導体受託生産も行っております。最終製品のスマホやテレビにも強みを持ちます。OLEDや液晶パネルの製造はサムスンディスプレイ、リチウムイオン電池はサムスンSDI、電子部品はサムスン電気、造船はサムスン重工、バイオ製薬の製造はサムスンバイオロジックスで手掛けています。2016年には車載音響機器大手のハーマンを買収しました。さらに詳しく

国軒高科(Guoxuan High-Tech、ゴーション・ハイテク)

江蘇省に本社を置くリチウム電池メーカーです。車載電池の製造に強みを持ちます。ドイツのVWが出資をしています。

オートモーティブ・エナジー・サプライ(AESC)

日産自動車とNECの合弁会社として誕生したEV電池メーカーです。2014年にはパナソニックに次ぐ市場シェアでした。中国の投資会社であるGSRキャピタルへの売却を試みましたが、クローズせず、最終的にエンビジョングループへの売却となりました。

GSユアサ

GSユアサは産業用や自動車用蓄電池、電源システムメーカーです。車載電池では、三菱自動車、三菱商事とリチウムエナジージャパンを設立しました。ホンダともブルーエナジー(BE)の合弁会社を設立しています。

中航鋰電科技(CALB、China Aviation Lithium Battery Technology)

中国の大手EVバッテリーメーカーです。中国の大手航空機メーカーであるAVICのグループ会社です。

SVOLT

中国の長城汽車(Great Wall Motors)から分社化した車載バッテリーメーカーです。

その他の中国のEVバッテリーメーカーとしては、力神電池(Lishen Battery)、億緯鋰能(Eve Energy)、孚能科技(Farasis Energy)、比克動力電池(BAK POWER BATTERY)、欣旺達電子(Sunwoda Electronic)などが大手としてあります。 

沃特瑪(OptimumNano、オプティマム・ナノ)

2002年に設立されたシンセンに本拠を置く車載電池メーカーです。バスやトラック等の商用車向け電池の強みを持っていましたが、2019年に破綻しました。

【外部リンク】より詳細な業界分析レポートをご希望の方は下記リンクもご参照ください。

市場調査レポート: 電気自動車(EV)用バッテリーの世界市場レポート 2023年 (gii.co.jp)

参照したデータの詳細情報について


コンテンツの残りを閲覧するにはログインが必要です。 お願い . あなたは会員ですか ? 会員について

シェアをする

  • facebook
  • hatebu
  • linkedin
  • line
EN