EV電池・車載電池業界の世界市場シェアの分析

EV電池・車載電池業界の世界シェア、業界ランキング、市場規模の情報について分析をしています。中国政府からの潤沢な補助金で拡大を続ける寧徳時代新能源科技(CATL)、比亜迪(BYD)、国軒高科(Guoxuan High-Tech)、天津力神(Lishen)等の有力中国メーカーに対し、パナソニック、LG化学、サムスンSDIが対抗しています。

【市場シェア】

2021年の車載電池各社の搭載量(⇒参照したデータの詳細情報)を分子に、後述する市場規模を分母にして、2021年の車載電池メーカーの世界市場シェアを簡易に計算すると、1位はCATL、2位はLG化学、3位はパナソニックとなります。

車載電池の市場シェアと業界ランキング(2021年)

順位会社名市場シェア
1位CATL32.6%
2位LG化学20.3%
3位パナソニック12.2%
4位BYD8.9%
5位SKイノベーション5.6%
6位サムスンSDI4.4%
7位中航鋰電科技2.7%
8位国軒高科動力能源2.2%
9位オートモーティブエナジーサプライ1.4%
10位SVOLT1.0%
車載電池の市場シェアと業界ランキング(2021年)
車載電池の市場シェア(2021年、搭載量ベース)
車載電池の市場シェア(2021年、搭載量ベース)

車載用の電池の分野は、電気自動車の世界最大の市場が中国ということもあり、かつての太陽電池や液晶パネルと同じ構造で、政府からの多額の補助金で、まずは生産設備を急拡大させるという、中国勢による市場席巻戦略が始まりました。その結果、2021年も、引続き中国政府系のキャトルが世界シェア1位となっています。

世界2位は韓国のLG化学となっています。LG化学は、車載電池事業をLGエネルギーソリューションとして2022年に分社化上場させました。

世界3位は、日本のパナソニックです。米国のテスラ、日本のトヨタと組んで、日本、米国、中国の三極体制での、生産規模の拡大を目指します。

4位は電池から電気自動車まで通気一貫で製造する、BYDです。

5位は韓国のSKグループのSKイノベーション、6位サムスンSDIです。

7位は、中国の中航鋰電科技(CALB)です。8位には中国の国軒高科動力能源(グオシュエン・ハイテク)です。

9位は旧日産自動車の子会社だったオートモーティブエナジーサプライ(AESC)となっています。

10位は長城汽車から分社化したSVOLTです。

パナソニックとトヨタの合弁会社であるプライムアースEV(PEVE)は圏外となりました。2014年の生産量世界シェアでは、パナソニックが約5割、オートモーティブエナジーサプライが約2割、韓国勢(KG、サムスン)が約2割であったことを考えると、2017年頃から続いている中国勢の躍進が継続しています。

車載電池メーカーの業界ランキング推移(2018年-2021年、設置容量ベース)

2018年以降のランキングをトラックしてみると、CATLの強さが光ります。LG化学は毎年順位を上げており、車載リチウムイオン電池への強いコミットメントが伺えます。パナソニックはPEVE(プライムアースEVエナジー)との両面戦略ですが、両社ともに順位を下げています。NECと日産の合弁であったオートモーティブ・エナジー・サプライも、中国資本となりましたが、順位を下げています。

車載電池の設置容量ランキング推移(2018-2021年)
車載電池の設置容量ランキング推移(2018-2021年)

【市場規模】

調査会社のSNEリサーチによると、車載電池業界の世界市場規模(設置容量ベース)は2019年、2020年と2021年は116.7GWh137GWh296.8GWhです。調査会社のプレシデンスリサーチによると、2021年の車載向け電池市場の規模は460億ドルです。2030年かけて年平均32%での成長を見込みます。⇒参照したデータの詳細情報
リチウムイオン電池は、約25%が民生用(パソコンやスマホ向)です。車載用蓄電池の市場は、40%程度ですが、今後の世界的なEV(電気自動車)へのシフトによって、市場規模が急拡大する可能性があります。リチウムイオン電池は、蓄電池、UPS(無停電電源装置)、バックアップ電源用としても活用されています。

さらに業界に詳しくなるためのお薦め書籍

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【会社の概要】

太陽光電池や液晶パネルと同様に、EV電池業界も装置産業化しており、多額の資金を投じて最新の電池製造装置を装備した大規模工場を、競合より先に建設できるかが、競争優位の条件となりつつあります。日本勢が有していた技術的な優位性が薄れていく中、装置産業化した業界においては、政府からの資金援助が潤沢な中国勢に有利に働くと考えられます。

SKイノベーション/SKグループ

SKグループは、1953年に設立された韓国第3位の財閥グループです。崔泰源会長の強いリーダーシップの下でM&Aを通じて事業を拡大しています。半導体(SKハイニックス)、石油・電池(SKイノベーション)、通信(SKテレコム)、医薬品(SKバイオファーム)、医薬品受託(SKバイオサイエンス)、半導体素材(SKシルトロン)等の分野に強みがあります。2021年には、米国の燃料電池メーカーのプラグパワーに出資をし、水素プラントへの進出をしています。さらに詳しく

寧徳時代新能源科技(CATL)

寧徳時代新能源科技(CATL)は日本のTDKの携帯電話向け電池製造子会社であるアンプレックステクノロジー(ATL)から分社化して2011年に誕生した中国の車載用リチウムイオン電池メーカーです。中国ではBYDと規模を競っています。リン酸鉄系の角形電池を得意とし、2017年にBMWが、2018年にはホンダがCATL製のEV電池を採用しました。2018年に日本にも進出し、電池の権威であるロバート・ガリエン氏をはじめ、独コンチネンタル、仏ヴァレオ等から積極的に技術者を採用しています。さらに詳しく

パナソニック

パナソニックは、1917年に松下幸之助氏によって設立された日本を代表する電機メーカーです。松下電工や三洋電機と統合し、総合電機メーカーとして世界的なプレゼンスを有します。アプライアンス(家電、空調、AV機器、累計2000億個を売り上げた約90年の歴史を持つ電池等)、オートモーティブ(蓄電池、音響機器等)、インダストリアル(電池やモーター等)、ライフソリューション(照明や水まわり等)、コネクティッドソリューションズ(フライトエンターテイメント、航空機向け電子機器、監視カメラ等)といった事業部制に特徴がありましたが、2022年にパナソニックホールディングスを設立し、事業部はホールディング傘下の独立した子会社となりました。さらに詳しく

BYD(比亜迪)

BYD(比亜迪)は、王伝福(Wang Chuanfu)氏によって1995年に設立された中国の電気自動車・車載電池メーカーです。スマホや産業機器向けのリチウムイオン電池の製造に加え、車載向けの電池と電気自動車製造の一貫生産体制が強みです。電気自動車は、SUVのTang、PHVのQin、セダン型のEVであるe6、e5等のブランドを展開しています。王氏は電池王とも称されています。電気自動車を含む新エネ車(EV自動車)でも世界最大規模を誇ります。ウォーレンバフェット率いるバークシャー・ハサウェイ傘下のMidAmerican Energyが大株主となっています。2020年には刀片電池と言われる長距離走行が可能な車載電池を開発しました。さらに詳しく

LG化学

LGグループは1952年にク・インフェ氏によって設立された韓国を代表する財閥グループです。1958年にLuckyとGoldStarが経営統合をして設立されました。電機事業、化学事業、通信事業が3本柱です。子会社は、家電メーカーのLGエレクトロニクス、電子部品の製造を手掛けるLGイノテック、液晶ディスプレイを手掛けるLGディスプレイ、総合化学メーカーのLG化学など多岐にわたります。さらに詳しく

車載電池事業はLGエネルギーソリューションが担っています。ゼネラルモーターズ(GM)やステランティス、現代自動車と合弁車載電池工場を運営し、フォルクスワーゲン・アウディ、テスラ、ルノー日産連合にも電池を供給し、CATLを猛追しています。

Samsung SDI(サムスンSDI)

Samsung(サムスン電子)は、韓国を代表する総合電機メーカーです。スマホ、半導体、テレビ、白物家電など、最終商品まで手掛けていることが強みです。垂直統合型の半導体チップメーカーとして、DRAM、NAND型フラッシュメモリ、SSDの自社製造を手掛けています。また半導体受託生産も行っております。最終製品のスマホやテレビにも強みを持ちます。OLEDや液晶パネルの製造はサムスンディスプレイ、リチウムイオン電池はサムスンSDI、電子部品はサムスン電気、造船はサムスン重工、バイオ製薬の製造はサムスンバイオロジックスで手掛けています。2016年には車載音響機器大手のハーマンを買収しました。さらに詳しく

国軒高科(Guoxuan High-Tech、ゴーション・ハイテク)

江蘇省に本社を置くリチウム電池メーカーです。車載電池の製造に強みを持ちます。ドイツのVWが出資をしています。

オートモーティブ・エナジー・サプライ(AESC)

日産自動車とNECの合弁会社として誕生したEV電池メーカーです。2014年にはパナソニックに次ぐ市場シェアでした。中国の投資会社であるGSRキャピタルへの売却を試みましたが、クローズせず、最終的にエンビジョングループへの売却となりました。

GSユアサ

GSユアサは産業用や自動車用蓄電池、電源システムメーカーです。車載電池では、三菱自動車、三菱商事とリチウムエナジージャパンを設立しました。ホンダともブルーエナジー(BE)の合弁会社を設立しています。

中航鋰電科技(CALB、China Aviation Lithium Battery Technology)

中国の大手EVバッテリーメーカーです。中国の大手航空機メーカーであるAVICのグループ会社です。

SVOLT

中国の長城汽車(Great Wall Motors)から分社化した車載バッテリーメーカーです。

その他の中国のEVバッテリーメーカーとしては、力神電池(Lishen Battery)、億緯鋰能(Eve Energy)、孚能科技(Farasis Energy)、比克動力電池(BAK POWER BATTERY)、欣旺達電子(Sunwoda Electronic)などが大手としてあります。 

沃特瑪(OptimumNano、オプティマム・ナノ)

2002年に設立されたシンセンに本拠を置く車載電池メーカーです。バスやトラック等の商用車向け電池の強みを持っていましたが、2019年に破綻しました。

【外部リンク】より詳細な業界分析レポートをご希望の方は下記リンクもご参照ください。

市場調査レポート: 電気自動車(EV)用バッテリーの世界市場レポート 2023年 (gii.co.jp)

参照したデータの詳細情報について


参照したデータは以下の通りです。リンク切れなどありましたら、お問い合わせのページからご連絡頂けますと大変有難く存じます。

参照した搭載量と市場規模の情報

SNE Research (via Inside EVs)
Precedence Research
BTR New Material Group

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