たばこ(タバコ、煙草)業界の世界市場シェアの分析

たばこ(タバコ、煙草)業界の動向について、世界シェア、市場規模、再編といった視点から分析を実施しています。中国タバコ、フィリップモリス、アルトリア、ブリティッシュアメリカンタバコ、JT、インペリアルブランズ等主要なたばこ(タバコ、煙草)メーカー概要や動向も掲載しています。

【たばこの種類と作り方】

たばこは、紙巻たばこ(Cigarette)、葉巻き(Cigar)、パイプたばこ(Smoking Tobacco)、電子たばこ(Electric Tobacco)、加熱式たばこ、水たばこに大きく分類されます。紙巻たばこの消費量が最も多く、たばこの葉を摘み取ったあと、裁断、乾燥、熟成等をした葉たばこを、最終的に紙をまきつけフィルターを取り付けて作っています。

日本の場合、たばこ事業法においてJTがたばこの販売を独占しています。JTと葉たばこの売買契約を締結すると無償で葉たばこの種子の交付を受けられます。葉たばこの栽培自体は法律で禁じられておらず、日本国内においても自家消費の葉たばこの作付は一定程度存在すると言われております。

さらに業界に詳しくなるためのお薦め書籍

JTのM&A
タバコが語る世界史 (世界史リブレット)

【たばこ(タバコ、煙草)業界の世界市場シェア+ランキング】

たばこ業界各社の2023年度の売上高⇒参照したデータの詳細情報を分子に、後述する市場規模を分母にして、2020年のたばこ業界の世界市場シェアを簡易に算出すると、1位は中国国家タバコ専売公社、2位はフィリップモリス、3位はBATとなります。

順位 企業名(英語) 企業名(日本語) 市場シェア
1位 China National Tobacco 中国煙草 32.93%
2位 Philip Morris International フィリップモリスインターナショナル 3.94%
3位 British American Tobacco BAT、ブリティッシュアメリカンタバコ 3.90%
4位 JAPAN TOBACCO INC. JT、日本たばこ産業株式会社 2.21%
5位 Altria Group アルトリア 2.00%
6位 Imperial Brands インペリアルブランズ 0.95%
7位 Gudang Garam グダンガラム 0.82%
8位 Korea Tabacco & Ginseng KT&G、韓国たばこ 0.52%
9位 ITC Limited ITC、インドたばこ 0.32%

たばこ(タバコ、煙草)業界の世界市場シェアと業界ランキング(2023年) ©2024 Deallab

たばこ会社の世界シェア(2023年) ©2024 Deallab

中国の国営タバコメーカーである中国国家タバコが1位の座を確保しました。中国の12億人を超える人口のタバコを独占的に担う国営会社なので、金額及び数量ベースの規模感で他社を圧倒しています。2位は、米国ブランドなのに米国ではタバコを取り扱えないフィリップモリスインターナショナルが入っています。3位は、英国のブリティッシュアメリカンタバコです。ケント、ロスマンズ、ポールモール等の、世界トップクラスの、複数タバコブランドを抱えます。2017年にレイノルズ・アメリカンを買収し、北米へ進出を加速しています。源流を同じにする5位のアルトリアとの再統合の憶測もされています。仮にアルトリアと経営統合をしても、中国タバコとの差は縮まりません。一方ブランド別の販売本数では、世界1位のマルボロという強力なブランドを有しています。

4位は、JTとなっています。新興国でのたばこ大手を買収する戦略を加速しています。メビウスブランドを育成中です。6位は、英国のインペリアル・ブランズです。

【たばこ(タバコ、煙草)業界の世界市場規模】

当サイトでは、以下の調査や統計情報も参考に、2023年のたばこ業界の市場規模を8923億ドルとしています。

調査会社ミディアムによると、2023年の同業界の市場規模は8923億ドルです。調査会社のミディアムのデータを分析すると、同業界は2032年にかけて年平均約2.5%で成長し、2032年までに1兆1417億ドルになると推計しています。調査会社スフェリカル・インサイツによれば、2023年のたばこ業界の市場規模は9025億ドルです。⇒参照したデータの詳細情報

たばこ(タバコ、煙草)業界の世界市場規模の予想成長推移 ©2024 Deallab

最近はより健康に優しい電子たばこと言われる、葉タバコの代わりにリキッド(液体)を加熱することでニコチンのないたばこフレーバーを味わえるたばこや、加熱式たばこと言われる、葉タバコを加熱しつつも、煙やにおいを発生しないたばこが注目を浴びています。

【たばこ(タバコ、煙草)業界の再編】

タバコ業界は多くの合従連衡を経て、現在の寡占的な構造になりました。たばこ会社(フィリップモリス、アルトリア、BAT、日本たばこ、インペリアルタバコ他)の買収・合併等の再編の歴史を時系列でまとめると以下の通りとなります。

たばこ業界のM&Aマルチプル分析 ©2024 Deallab

たばこ業界のM&Aマップは以下の通りです。

たばこ業界のM&Aマップ     

なお図表の数字は西暦の下二桁を示す(08⇒2008年の意味) ©2024 Deallab

【M&Aの動向】

2017

ブリティッシュ・アメリカン・タバコ社は、レイノルズ アメリカン Inc.を買収。

2022

フィリップ モリス インターナショナルは、スウェディッシュ・マッチの所有権を獲得。

2023

アルトリアは、NJOY Holdings, Inc.を買収。

2015

JTグループは、米国大手電子たばこ会社であるLogic Technology Development LLCの全発行済株式を取得。

2023

インペリアルが米国のニコチンパウチ製品をTJPから買収。

2017

日本たばこ産業株式会社がグダンガラムユニットを取得し、クレテック市場に参入。

※ランキングに上がっている企業の過去10年を目途にM&A情報を記載

【会社の概要】

China National Tobacco(CNTC、中国国家烟草公司、中国煙草) 

1982年設立された中国最大手の国営専売タバコメーカーです。国家タバコ独占管理局(The State Tobacco Monopoly Administration)に属します。中国市場を事実上独占しており販売本数では群を抜きます。2019年に香港子会社(CTI)を香港証券取引所に上場させました。玉溪红塔山、中华といった多数のタバコブランドを展開しています。

Philip Morris International Inc.(フィリップモリスインターナショナル)

米国に本拠を置く世界大手のタバコメーカーです。米国以外で「マールボロ」等のたばこを展開しています。加熱式たばこ等の無煙タバコも強化し、加熱式たばこはiQOS(アイコス)ブランドで世界展開をしています。

Altria Group(アルトリア)

フィリップモリスインターナショナルと同根です。米国でのタバコ訴訟リスクを避けるため、アルトリアとフィリップモリス・インターナショナルが分社化された経緯があります。米国において「マールボロ」等のブランドのタバコ事業を手掛けております。ビール大手のミラー(SABが買収しSABミラーとなるも、SABミラーはAB Inbevに買収されています。)を保有していたことから、現在でもビール業界最大手のAB Inbevの大株主でもあります。

British American Tobacco(BAT、ブリティッシュアメリカンタバコ)

英国ロンドンに本拠を置く大手タバコメーカーです。主要ブランドは「KENT」「ラッキーストライク」等があります。R.J. Reynolds(R.Jレイノルズ)の親会社のレイノルズ・アメリカンをBATの米国子会社のBrown&Williamsonとの経営統合を機に関連会社化しました。2014年にレイノルズ・アメリカンは米タバコ3位のロリラード、2017年にレイノルズ・アメリカンの買収をしました。

レイノルズアメリカンは1875年に設立されたR.J. Reynolds Tobacco Companyが源流の由緒あるたばこ会社です。
たばこ以外の事業展開をめざし、1985年にビスケット等のブランドで有名な米ナビスコを買収し、社名をRJRナビスコへと変更しました。

1999年に投資ファンドのKKRが当時としては最大の買収額でRJRナビスコを買収しました。KKRはRJRナビスコの事業価値を高めるために、いくつかの事業再編を行い、RJRナビスコの海外たばこ事業については、日本のJTへ売却を行いました。更にたばこ事業と食品事業を分離するために、RJレイノルズを傘下に持つレイノルズアメリカンとナビスコを分社化・設立しました。

2004年に米国でのたばこ訴訟リスクを回避するために、ブリティッシュ・アメリカン・タバコの米国子会社のBrown&Williamsonとレイノルズアメリカンが合併し、米国第2位のたばこ会社が誕生しました。ブリティッシュアメリカンタバコが同社の親会社となりました。
2017年にブリティッシュアメリカンタバコはレイノルズ・アメリカンを完全子会社化するための買収を行いました。主要なブランドとしては、Newport、Camel、Pall Mall、Natural American Spirits、Grizzly、VUSEが挙げられます。

JAPAN TOBACCO INC.(JT、日本たばこ産業株式会社)

日本たばこ産業は、1985年に設立されたたばこ会社です。前身は1949年に日本専売公社です。1994年に上場しました。1999年にR.Jレイノルズの米国外のたばこ事業であるRJRインターナショナルや英ギャラハーを買収し、国際展開に積極的です。次世代たばことして加熱式たばこのブルーム・テックも積極展開しています。2017年にはフィリピンのたばこ大手マイティー・コーポレーションを買収しました。さらに詳しく

Imperial brands(インペリアルブランズ)

英国に本拠を置く歴史的な大手タバコメーカーです。ブリティッシュアメリカンタバコの源流は、1902年に当時にインペリアル・タバコ(現インペリアルブランズ)とアメリカンタバコが設立した合弁会社です。葉巻たばこの分野に強みを持ちます。

Korea Tabacco & Ginseng(KT&G、韓国タバコ)

韓国に本拠を置くタバコメーカーです。旧韓国タバコ公社。韓国内でのタバコ販売で圧倒的なシェアを誇ります。

ITC Limited(ITC、インドたばこ)

インドに本拠を置くタバコ・消費財メーカーです。インド国営タバコを源流に持ちます。

Gudang Garam(グダンガラム)

インドネシアを代表するタバコ会社です。ガラムブランドのタバコを展開しています。

Swedish Match(スウェディッシュマッチ)

スウェーデンに本拠を置くニコチンパウチメーカーです。スヌース、モイストスナッフ、ニコチンもタバコも入っていないパウチ製品、チューバッグ、タバコビット、チューイングタバコ、葉巻、マッチ、ライター等を製造しています。

コンテンツの残りを閲覧するにはログインが必要です。既に会員の方はログインすると閲覧できます。まだ会員登録がお済みでない方は、こちらから会員登録ができます。

シェアをする

  • facebook
  • hatebu
  • linkedin
  • line
EN