塩化ビニル(塩ビ)業界の世界シェアと市場規模について分析をしています。信越化学、台湾プラスチック、オキシビニール、イノビンといった塩ビ大手メーカーの概要や動向も掲載しています。
【塩化ビニル(塩ビ)とは】
塩化ビニルの原料と最終製品
塩素とエチレンを化学反応させ塩化ビニルモノマー(VCM、Vinyl Chloride Monomer、化学式CCH2=CHCI)を製造します。その後、塩化ビニルモノマーを付加重合させると塩化ビニル樹脂(PVC、Polyvinyl Chloride)となります。塩化ビニルは、硬質製品である水道管や配管、軟質製品であるフィルム、シート、ホース、チューブなどの最終製品に使用されます。

【塩化ビニル(塩ビ)業界の世界市場シェア】
塩化ビニル(塩ビ)業界の2024年度の企業発表値(生産量、生産販売量、年間生産能力)⇒参照したデータの詳細情報を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、2024年の塩化ビニル(塩ビ)業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位は信越化学、2位はウェストレイク、3位は台湾プラスチックとなります。
業界の市場シェア(2024年).png)
※当ランキングでは企業発表値(トン)を使用。*販売量 **生産量 ***年間生産能力
| 順位 | Company name (English) |
企業名(日本語) | 市場シェア |
|---|---|---|---|
| 1位 | Shinetsu | 信越化学*** | 8.49% |
| 2位 | Westlake Chemical | ウェストレイク*** | 6.84% |
| 3位 | Formosa Plastics | 台湾プラスチック*** | 5.49% |
| 4位 | Xinjiang Zhongtai Chemica | 中泰化学*** | 4.04% |
| 5位 | Inovyn | イノビン(イネオス)*** | 3.70% |
| 6位 | OxyVinyls | オキシビニール*** | 3.25% |
| 7位 | Orbia(旧メキシケム) | オルビア* | 2.40% |
| 8位 | Beiyuan Chemical | 北元化工** | 2.38% |
| 9位 | Hubei Yihua | 宣化化工*** | 1.26% |
| 10位 | Sinochem | シノケム* | 0.59% |
※当ランキングでは企業発表値(トン)を使用。*販売量 **生産量 ***年間生産能力
信越化学が米国、欧州、日本の拠点を合わせて1位の生産量となっております。2位は米国に本拠を置く化学大手ウェストレイク。3位は台湾最大の総合化学メーカー、台湾プラスチックになります。4位は新疆ウィグル自治区に本拠を置く化学メーカー、中泰化学となっております。欧州の化学大手Solvay(ソルベイ)とINEOS(イネオス)が経営統合したイノビン(イネオス)が5位、オキシデンタル石油の傘下、オキシビニールが6位となっております。7位はメキシコに本拠を置く化学メーカー、オルビアです。
【塩化ビニル(塩ビ)業界の世界市場規模】
当データベースでは、2024年の塩化ビニル(塩ビ)業界の市場規模を5700万トンとしております。参照した各種調査データは次の通りとなります。
調査会社ケムアナリストによると、2024年の同業界の市場規模は5700万トンです。2035年にかけて年平均2.9%で成長し、規模は8000万トンへと拡大することを見込んでいます。
| 年 | 市場規模 | 年平均成長率 |
|---|---|---|
| 2024 | 5700万トン | – |
| 2035 | 8000万トン | 2.9% |
業界の市場規模の成長予想.png)
【M&Aの動向】
2016年 Westlake Chemical、Axiall Corporation の買収を完了
2016年 INEOS、INOVYN合弁会社の買収を完了
2021年 AGC Biologics 社、米国における遺伝子治療薬工場の買収契約締結
2022年 Orbia の接続ソリューション事業 Dura-Line が Biarri Networks を買収
【会社の概要】
Shin-Etsu Chemical Co., Ltd. (信越化学工業株式会社)
信越化学は1926年に創業された日本を代表する化学メーカーです。旭化成、積水化学、積水ハウスと同じ源流である日本窒素肥料(現チッソ)の関連会社として誕生しました。同社のアニュアルレポートによれば、塩化ビニル樹脂、シリコンウエハ、先端品フォトマスクブランクス、フェロモン製剤では世界1位です。セルロース、シリコーンでも世界大手となっています。半導体ウエハはSUMCOと二強体制となっています。さらに詳しく
Formosa Plastics (台湾プラスチック株式会社、台湾塑膠公司)
1954年に設立された台湾最大の総合化学メーカーです。創業者は王永慶(Y. C. Wang)氏で、「台湾の松下幸之助」とも称される名経営者です。
Inovyn(イノビン)
2015年に欧州の化学大手Solvay(ソルベイ)とINEOS(イネオス)が経営統合して誕生した塩ビメーカーです。BASFとの合弁のSolVinも吸収しています。
ソルベイについて
Solvay(ソルベイ)は、1863年にエルネスト・ソルベイ氏によって設立されたベルギーに本拠を置く化学メーカーです。ソルベイ法を用いた炭酸ナトリウムやソーダ灰の製造で有名です。2011年にフランスの特殊化学メーカーであるローディアを買収し事業領域を拡大、現在は特殊ポリマー、炭素繊維、過酸化物、シリカ、特殊化学、アロマパフォーマンスといった分野を手掛けています。さらに詳しく
OxyVinyls(オキシビニール)
米国に本拠を置く塩ビメーカーです。独立系石油大手のオキシデンタル石油の傘下にあります。
Westlake Chemical(ウェストレイク・ケミカル)
米国に本拠を置く化学大手です。2016年に塩ビ大手のAxiall(PPGインダストリーズのクロールアルカリ事業とGeorgia Gulfが合併して誕生した汎用化学大手)を買収して、塩ビ事業を強化しています。
Orbia(オルビア)
1953年にMexichem(メキシケム)として設立されたメキシコに本拠を置く化学メーカーです。PVC(塩ビ)に加え、ラスクエバス鉱山で蛍石を採掘しています。プラスチック製パイプおよび継手で大手です。
Xinjiang Zhongtai(新疆中泰化学、シンジャン・ジョンタイ・ケミカル)
2001年に設立された 新疆ウィグル自治区に本拠を置く化学メーカーです。PVC樹脂(PVC)、イオン膜苛性ソーダ、ビスコース繊維、ビスコース糸などを製造販売しています。
Hubei Yihua(湖北宣化化工、フーベイ・イーホワ・ケミカル・インダストリー)
1977年に設立された政府系の湖北益華集団傘下の化学メーカーです。尿素、化学製品、電気製品、クロールアルカリ製品、ポリ塩化ビニル(PVC)及びリン酸二アンモニウムなどの製造開発を行っています。
Shaanxi Beiyuan Chemical Industry(狭西北元化工集団有限公司)
2003年に設立された中国の陝西省に本拠を置く化学メーカーです。PVC樹脂、セメント、苛性ソーダ、液体塩素、塩酸、炭化カルシウムなどの製造販売を行っています。
Kem One (ケムワン)
フランスに本拠を置く塩ビメーカーです。2012年に仏アルケマがKlesch Groupに売却し誕生しました。投資ファンドのアポログローバルマネジメントが買収し、2021年に経営陣によるMBOを発表しました。
アルケマについて
フランスを代表する機能性化学メーカーです。石油メジャーのTotalから2004年に分社化して誕生しました。接着剤、パフォーマンスマテリアル、コーティング事業が3分柱です。2021年にPMMA事業を合成ゴム大手メーカーであるTrinseoへ売却しました。さらに詳しく
China National Chemical Corporation (ChemChina、ケムチャイナ、中国化工集団)
中国化工集団(ケムチャイナ、ChemChina、China National Chemical Corporation )はRen Jianxin(任建新)氏によって設立されたChina National Blue Star Corp(藍星) と China Haohua Chemical Industrial Corp(昊華)が2004年に経営統合して誕生した中国政府系の化学メーカーです。中国政府が100%株式を保有しています。農薬、ゴム、シリコーンや機能性化学等の分野で事業展開しています。2016年から寧高寧氏がシノケムとケムチャイナのCEOとなり、2021年に国営化学会社のシノケムと経営統合、中国中化(シノケム)ホールディングス傘下になりました。続きを読む
AGC Inc. (AGC株式会社)
1907年に創業をした日本を代表するガラス・素材メーカーです。ガラス以外にも電子・化学品・セラミックスの分野で事業を展開しています。ガラス分野では仏サンゴバンと首位を競っています。液晶用ガラスにも強みを持ちます。ディスプレイ用特殊ガラス(Dragontrail®)が有名です。近年ライフサイエンス分野(バイオ医薬品原薬の製造開発受託等)への多角化を推進しています。さらに詳しく
