蓄電池業界の世界市場シェアと市場規模について分析しています。クラリオス、エキサイド、GSユアサ、エネシス、イーストペン、ティエンノン・パワー、チャオウェイ・パワーといった鉛畜電池メーカーの一覧も掲載しています。
【市場シェア】
鉛蓄電池メーカーの2021年度の売上高(⇒参照したデータの詳細情報)を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、2021年の鉛蓄電池業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はクラリオス、2位はティエンノン・パワー、3位はイーストペンとなります。
鉛蓄電池メーカーの市場シェアと業界ランキング(2021年)
順位 | 会社名 | 市場シェア |
---|---|---|
1位 | クラリオス | 20.49% |
2位 | ティエンノン・パワー | 16.56% |
3位 | イーストペン | 8.36% |
4位 | チャオウェイ・パワー | 8.32% |
5位 | エキサイド | 8.09% |
6位 | エネシス | 8.09% |
7位 | GSユアサ | 2.61% |
(参考) | エナジーウィズ | 2.35% |
鉛蓄電池メーカーの世界シェア・ランキング1位は米国のクラリオス(旧ジョンソン・コントロールズ社のパワーソリューション事業)です。同社によると世界に流通する鉛バッテリーの約3割は同社製です。2021年に上場をしました。
2位と4位は中国の鉛蓄電池メーカーであるティエンノン・パワーとチャオウェイ・パワーです。中国国内のバイクや車の電動化や再エネシフトの追い風をうけて業績を伸ばしています。
7位は日本のGSユアサとなっています。
5位のエキサイドは2020年5月にチャプター11を申請し、欧州とアジアが分社化されエキサイドとして新たに事業を展開しています。米国事業は再生ファンドであるアトラスホールディングスが買収しました。
日本では昭和電工マテリアルズが鉛蓄電池事業をアドバンテッジパートナーズへ売却をし、エナジーウィズが誕生しました。
【市場規模】
当サイトでは、各調査会社等の公表データを参考にし、鉛蓄電池業界の2021年の世界市場規模を371億ドルとしております。参照にしたデータは以下の通りです。
調査会社ポラリスマーケットリサーチによると、2021年の同業界の市場規模は371億ドルです。2030年にかけて、年平均5%での成長を見込みます。
調査会社リサーチアンドマーケッツによると、2020年の同業界の市場規模は499億ドルです。2026年にかけて年平均7%での成長を見込みます。
調査会社グランドビューリサーチによると、2019年の同業界の市場規模は589億ドルです。主に車載用電池、据置鉛蓄電池、小型鉛蓄電池等の用途で利用されます。産業別では、自動車、通信、無停電電源、電動バイク、カート等が主要用途となります。
調査会社のGIIによれば、同市場規模は2020年から2024年の間に年平均4%での成長を見込んでいます。EnerSysによれば、2018年の産業用鉛蓄電池の市場規模は104億ドルです。⇒参照したデータの詳細情報
鉛蓄電池の原材料は鉛、酸化鉛と硫酸です。これらの原材料をもとに鉛蓄電池メーカーが電池の組み立てを行います。酸化鉛の主要プレーヤーはPENOX、Gravita India(グラビタインディア)、Waldies Compoundが挙げられます。硫酸の主要プレーヤーは、ニュートリエン(旧ポタシュ)、モザイク、OCPとなります。鉛蓄電池は、硫酸など人体に有害な物質が含まれるため、使用済み電池はリサイクルするといった適正な管理が必要となります。
停電圧バッテリーとしての鉛蓄電池は今後の自動車の電動化でも重要な役割を持ちます。直流-直流(DC/DC)コンバーターの能力を超えるピークパワーの提供や、エンジンや高電圧バッテリーの停止時、緊急時などにバックアップ電源として必要不可欠です。
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【M&Aの動向】
業界の再編としては、GSユアサが、パナソニックから2016年に鉛蓄電池事業を買収した案件やフランスの石油会社TOTALによるSAFT社買収が挙げられます。主だったM&A案件は下記の通りです。アドバンテッジパートナーズと昭和電工マテリアルズの鉛蓄電池事業の案件を除けば、売上高倍率では概ね2倍前後です。
年 | 買手 | 対象会社 | 企業価値 | 通貨 | 売上高倍率 |
---|---|---|---|---|---|
2021 | アドバンテッジパートナーズ | 昭和電工マテリアルズ | 600 | 億円 | 0.6x |
2019 | 天能動力国際 | 天能バッテリー | 14 | 億ドル | 2.2x |
2018 | ブルックフィールド | クラリオス | 132 | 億ドル | 1.7x |
2016 | トタル | SAFT | 9.5 | 億ユーロ | 1.4x |
2016 | GSユアサ | パナソニック鉛蓄電池 | - | - | - |
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【会社の概要】
Clarios(クラオリス)
米国に本社を置く自動車部品、ビル管理や電力システム関連企業であるJohnson Controls(ジョンソン・コントロールズ)から、2018年に自動車の鉛バッテリー事業を含むパワーソリューション事業を約1兆5000億円でブルックフィールド・ビジネスパートナーズおよびケベック州貯蓄投資公庫(CDPQ)が買収しClariosが誕生しました。世界に流通する鉛バッテリーの約3割は同社製と言われています。
ジョンソンコントロールズについて
Johnson Controls(ジョンソンコントロールズ)は、1885年に設立された米国に本社を置く業務用空調制御システム、セキュリティシステム、火災検知システム、ビル管理サービスを提供する会社です。電気式サーモスタットを発明した歴史を持ちます。2016年に火災警報分野に強いTyco(タイコ・インターナショナル)と経営統合をしました。世界150ヵ国で展開し、エネルギー効率ソリューションや各種オートメーション事業を展開しています。自動車用のバッテリー等の分野に強みがありましたが2018年に売却しました。さらに詳しく
Edison Group(エディソングループ)
米国に本拠を置く鉛蓄電池メーカーです。自動車用はEXIDE Technologies(エキサイドテクノロジーズ)、産業用はGNB Industrial Power(ジーエヌビーインダストリアルパワー)にて事業を展開していました。2020年5月にチャプター11を申請しました。その後、再生ファンドであるアトラスホールディングス傘下に入り、Stryten社と名称を変えEdison Group(エディソングループ)を形成しています。欧州とアジア事業はExide Technologiesとして独立をしました。
Exide Technologies(エキサイドテクノロジーズ)
フランスに本拠をおく鉛蓄電池メーカーです。2020年に旧エキサイドから分社化独立しました。自動車、オフロード、マテリアルハンドリング、ステーション、鉄道、防衛向けの鉛蓄電池を開発製造しています。
GSユアサ
日本を代表する蓄電池メーカーです。2004年に京都の名門島津グループの日本電池(GS)と関西のバッテリーの名門ユアサが合併し誕生しました。車載向けは三菱商事との合弁であるリチウムエナジージャパン、ホンダとの合弁会社であるブルーエナジーを通じて供給を行っています。2020年はブルーエナジーのバッテリーがトヨタ自動車に採用されたことが話題になりました。GSユアサ以外の日本勢では旧日立化成(2016年にイタリアの自動車部品会社フィアム社から自動車・産業用の鉛蓄電池買収を発表)、古河電池が大手です。
エナジーウィズ
旧日立化成の鉛蓄電池事業です。日立化成が昭和電工に買収された後、昭和電工マテリアルズとなりました。同社の鉛蓄電池事業は、2021年にアドバンテッジパートナーズへ売却され、エナジーウィズが誕生しました。
EnerSys(エナーシス)
1999年に設立された米国に本拠を置く産業用鉛蓄電池大手です。フォークリフト、無停電電源、アンテナ向けの蓄電池にも強みを持ちます。買収を通じて成長し、2002年に英Hawker社、英Invensysのパワーストレージ事業、2011年にニッケルバッテリー大手のErgon Batteries、2013年にブロードバンドや通信向けのバッテリーキャビネットを手掛けるパーセルシステムを買収しています。
East Penn(イースト・ペン)
1946年創業の米国に本拠を置く大手鉛電池メーカーです。
天能動力(Tianneng Power、ティエンノン・パワー)
1986年に設立された中国に本拠をおく蓄電池メーカーです。リニューアブルや、電動バイク、電気自動車向けの鉛蓄電池の製造販売を行っています。
超威動力(Chaowei Power、チャオウェイ・パワー)
中国に本拠をおく鉛蓄電池メーカーです。2020年は電動バイク向けの売上が約7割占めています。中国に8箇所の工場を有しています。
Banner Batteries(バナーバッテリーズ)
1937年に設立されたオーストリアに本拠をおく蓄電池メーカーです。
参照したデータの詳細情報について
参照したデータは以下の通りです。リンク切れなどありましたら、お問い合わせのページからご連絡頂けますと大変有難く存じます。
鉛蓄電池メーカーの売上高ランキング
参照した市場規模の情報