肥料業界

肥料業界の世界シェア、売上高ランキング、市場規模と業界再編の情報を分析しています。ポタシュ、ヤラ、アグリウム、モザイク、ウラルカリー、イスラエルケミカルズ等世界大手の肥料メーカー動向も掲載しています。

市場シェア

「肥料会社の世界売上高ランキング(2020年版)」の売上高の情報を分子に、2019年の肥料業界の市場規模を分母に世界市場シェアを計算すると、1位はカナダのニュートリエン、2位はノルウェーのヤラ・インターナショナル、3位は米国のモザイクとなっています。

1位 ニュートリエン 11%
2位 ヤラ 7%
3位 モザイク 5%
4位 ユーロケム 3%
5位 OCP 3%
6位 イスラエルケミカルズ 3%
7位 CFインダストリーズ 3%
8位 フォスアグロ 2%
9位 ウラルカリ 2%
10位 OCI 1%
11位 KプラスS 1%

ニュートリエンはポタシュとアグリウムが経営統合して誕生した会社で、トップ3の中でも頭一つ抜き出た存在です。4位のユーロケムはスイスに本拠を置きますが、ロシア系の資本が大株主となっています。5位はモロッコ政府系のOCPです。6位はイスラエルのイスラエルケミカルズです。死海とネゲブ砂漠で肥料原料を採取できる強みがあります。7位は米国のCFインダストリーズ、8位はロシアのフォスアグロ、9位はウクライナのウラルカリとなっています。作物価格等のマクロ経済の影響をうけるものの、農作物への需要が今後の世界人口とともに増加することが見込まれ、肥料業界は成長市場であるといえます。

市場規模


2019年の肥料市場は、Global Market Insights社やworldfertilizer.com等を参照にして、両方の平均の1779億ドルと推計しています。

worldfertilizer.com
2019年の市場規模は1558億ドルで2024年までに年平均3.8%の成長を見込みます。
The global fertilizer market is expected to value at US$155.8 billion in 2019, and it is expected to register a CAGR of 3.8% during the forecast period (2019-2024).

Global Market Insights
2019年の肥料市場は2000億ドルを見込み、2020~2026年で2.3%の年平均成長率を見込みます。
the overall fertilizer market size was valued at $200 billion in 2019 and is projected to surpass $230 billion by 2026, registering a CAGR of 2.3% from 2020 to 2026.

日本の肥料市場の規模は経済産業省によれば概ね3、000億円から4,000億円程度で推移していますが、生産者の高齢化と作付けの減少で需要は減少しつつあります。

肥料の基礎知識

肥料の3大要素は、リン酸(phosphate)、カリ(Potash、Kalium)、窒素(nitrogen)。五大要素は、リン酸、カリウム、窒素に加えカルシウムとマグネシウムです。茎や幹の成長の要素となるカリウムはカナダとロシアが一大産地(世界生産量の7割超)となっており、カナダの肥料会社やロシアの肥料会社が強い背景にもなっています。一方で、リン酸も産地が米国、中国、モロッコ、ブラジル等に産地が限定されています。

肥料は、原料となるリン酸、カリウム、窒素を配合して作るため、加工における技術は余り必要としません。また、肥料のコストに占める原料の割合が非常に高く、リンやカリウム等の主要原料を押さえているかが競争優位の源泉となります。日本の肥料会社は、原料を輸入に頼っており、肥料原料の価格変動等の影響等を大きく受けてしまいます。

業界の再編

業界再編を通じて、肥料大手各社は得意とする肥料要素へのフォーカスを強めています。窒素はCFインダストリーズが業界再編を通じてヤラ・インターナショナルと首位を競っています。カリウムの分野ではポタッシュがアグリウムを買収して首位固めをしています。リンの分野ではモザイクがヴァーレの肥料部門を買収し大手となっています。

肥料業界の再編の時系列
  • 2004年
    ノルスクハイドロが肥料部門をヤラ・インターナショナルとして分社化
  • 2004年
    化学肥料メーカー大手のIMCとカーギルの肥料部門が経営統合してモザイクが誕生

  • 2013年
    モザイクがCFインダストリーズからにリン酸塩事業を買収

  • 2015年
    片倉チッカリンとコープケミカルが経営統合し片倉コープケミカルが誕生
  • 2015年
    CFインダストリーズによるOCIの肥料事業の買収を発表(その後断念)
  • 2016年
    ポタシュによるアグリウム買収、ニュートリエンの誕生
  • 2016年
    モザイクがブラジルの資源大手ヴァーレから肥料事業を買収

世界の主要な肥料メーカーの一覧

ニュートリエン(Nutrien)

ニュートリエン(Nutrien)はカナダの本拠を置く世界最大級の大手化学肥料メーカーであり、1975年にサスカチュワン州政府によって設立されたPotash(ポタッシュ・コーポレーション・オブ・サスカチュワン)が2016年に同業のアグリウム買収して誕生しました。肥料売上高で約2兆円超を超えています。リチウム大手のSQMの大株主。ポタシュとはカリ (炭酸カリウム)の略です。


Yara International (ヤラ)

Yara International (ヤラ)はノルウェーに本拠を置く世界最大級の肥料メーカーです。尿素、硝酸塩、アンモニアといった窒素肥料に強みを持ちます。オスロ証券取引所に上場しています。アルミ生産会社大手のノルスクハイドロ社より独立して誕生しました。


Agrium(アグリウム)


Agrium(アグリウム)はカナダに本拠を置く肥料メーカー大手です。カナダ・北米にて肥料や種子等の小売も手掛けていましたが、2016年ポタシュがアグリウム買収し、ニュートリエンとなりました。

Mosaic(モザイク)


Mosaic(モザイク)は米国に本拠を置く大手化学肥料メーカーです。2004年に化学肥料メーカー大手のIMCとカーギルの肥料部門が合併して誕生しました。リン酸肥料やカリに強みを持ちます。2016年にブラジルの資源大手ヴァーレより肥料事業を買収しました。肥料のなかでも、リン酸業界では世界シェアが最大級、炭酸カリウムではポタシュとウラルカリと並ぶ上位陣の一角となっています。

2016年 ヴァーレの肥料部門を買収
2014年 ADMよりブラジル等の肥料部門を買収
2014年 塩事業をカーギルに売却
2013年 リン酸事業をCFインダストリーより買収

OCP


OCPはモロッコに本拠を置く肥料メーカーです。リン酸に強みを持ちます。モロッコ政府100%子会社です。

CF Industries(CFインダストリーズ)

CF Industries(CFインダストリーズ)は北米に本拠を置く肥料大手です。2015年にリン大手のOCIの肥料事業の一部の買収を発表するも買収を断念しました。窒素肥料に強みをもちます。

Uralkali(ウラルカリー)


Uralkali(ウラルカリー)はロシアを代表するカリウム生産大手です。ロシアの証券取引所に上場しています。

Belaruskali(ベラルーシカリー)


Belaruskali(ベラルーシカリー)はベラルーシに本拠を置く国営のカリウム生産大手です。

Israel Chemicals(イスラエルケミカルズ、ICL)


Israel Chemicals(イスラエルケミカルズ、ICL)はイスラエルに本拠を置く肥料大手です。カリやリン酸の生産に強みを持ちます。

K+S

ドイツに本拠を置く肥料・食塩メーカーです。塩事業では、2000年にベルギーのソルベーから塩事業を買収したのに続き、2009年には米国の塩大手モートン・ソルト(Morton Salt)を買収し、塩生産量の拡大を図ってきました。2020年に負債削減のため米国の塩事業の売却検討を発表しました。

肥料部門はカリウム肥料に強く、BASFの肥料部門と経営統合し事業を拡大しています。

EUROCHEM(ユーロケム)


EUROCHEM(ユーロケム)はスイスに本拠を置く肥料メーカーです。窒素とリン酸の生産に強みを持ちます。ロシアの富豪のAndrey Melnichenko(アンドレイ・メルニチェンコ)氏が大株主となっています。

PhosAgro(フォスアグロ)


PhosAgro(フォスアグロ)はロシアに本拠をおく肥料会社です。リン酸塩ベースの肥料に強みを有しています。

OCI


OCIはオランダに本拠をおく肥料メーカーです。肥料以外にもメタノールとバイオメタノールの製造を行っていまs。

日本国内では、丸紅・三菱商事・JA系の片倉コープアグリが国内肥料市場シェア約10%超で業界最大手となっていますが、2019年の売上高は約375億円であり、世界的にみても規模は小さいです。その他三井物産系の日東エフシーと住友商事系の多木化学等が肥料業界大手です。

肥料業界の主要な業界団体
日本肥料アンモニア協会ホームページ
全国肥料商連合会(全肥商連)

参考図書
肥料業界のページを作成するにあたり、以下の書籍を参考にさせて頂きました。
窒素固定の科学 化学と生物学からの挑戦
よくわかる 土と肥料のハンドブック 肥料・施肥編 [大型本]
肥料になった鉱物の物語―グアノ、チリ硝石、カリ鉱石、リン鉱石の光と影 (のぎへんのほん) [単行本]

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