ATM・キャッシュディスペンサー業界の世界市場シェアと市場規模について分析をしています。グローリー、ディーボールド・ニックスドルフ、ユーロネットといったATMメーカーの概要や動向も掲載しています。
【ATM・キャッシュディスペンサー業界とは】
ATM(現金自動預払機)やキャッシュディスペンサー(CD)は、金融取引の自動化を支える重要なインフラです。この業界は、銀行や金融機関に加え、コンビニなど非金融機関による設置や運用が広がり、取引の利便性を高めています。ATMは預金、引き出し、振込、残高照会といった幅広いサービスを提供し、CDは主に現金引き出しに特化しています。
近年、スマートフォン決済やキャッシュレス化の進展により、利用の減少が指摘される一方、現金需要の根強い地域や緊急時のセーフティーネットとしての役割は依然として重要です。技術面では、生体認証やAIによる不正防止が進化しており、運用コスト削減や安全性向上が図られています。また、収益源として運用サービスや広告掲載などの多角化も進展しています。
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【市場シェア】
ATM・キャッシュディスペンサー業界の2023年度の売上高⇒参照したデータの詳細情報を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、2023年のATM・キャッシュディスペンサー業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はグローリー、2位はディボールド・ニックスドルフ、3位はユーロネットとなります。
順位 | Company name (English) |
企業名(日本語) | 市場シェア |
---|---|---|---|
1位 | Glory Global Solutions | グローリー | 11.80% |
2位 | Diebold Nixdorf | ディーボールド・ニックスドルフ | 11.12% |
3位 | Euronet | ユーロネット | 4.41% |
1位は日本の貨幣処理・両替機大手のグローリーで、ATMメーカーではない点に留意が必要です。2位は米国のディーボールドです。ドイツのニックドルフを買収し、欧米を中心に事業を展開しています。3位はATMオペレーターのユーロネットです。グローリーと同様、ATMメーカーではない点に留意が必要です。
中国のGRGバンキングや韓国のヒョスンTNSも主要企業の1つですが、2023年の財務データが公表されていないためランキングから除外しています。また、米国のNCRはATM事業を分社化、富士通フロンテックは富士通の完全子会社化などにより、データを公表していないため、同様にランキングには含まれていません。
【市場規模】
当データベースでは、2023年のATM・キャッシュディスペンサー業界の市場規模を240億ドルとしております。参照した各種調査データは次の通りとなります。
調査会社グランドビューリサーチによると、2023年の同業界の市場規模は239.6億ドルです。2031年にかけて年平均4.0%で成長し、規模は316.4億ドルへと拡大することを見込んでいます。⇒参照したデータの詳細情報
年 | 市場規模 | 成長率見込み |
---|---|---|
2023年 | 239.6億ドル | – |
2031年 | 316.4億ドル | 4.0% |
【M&Aの動向】
2016年 ディボールドがWincor Nixdorfを買収し、ディボールド・ニックスドルフが誕生
2020年 富士通が富士通フロンテックを完全子会社化
2020年 富士通フロンテックが生体認証を手がける米Fulcrum Biometricsを買収
2023年 NCRが分社化によりATM事業分離
2024年 ユーロネットがマレーシアにてPayNetからATM約800機を買収
【会社の概要】
グローリー
日本のATMメーカーです。両替機など貨幣処理機をメインに取り扱っています。さらに詳しく
Diebold Nixdorf(ディボールド・ニックスドルフ)
米国に本拠を置くATMメーカー大手です。2015年にドイツの同業であるWincor Nixdorf(ウィンコー・ニックスドルフ) 買収しました。同社は、シーメンスのATM事業であり、その後ゴールドマンサックス系の投資ファンドとKKRに買収され、フランクフルト市場に株式を上場しました。
Euronet(ユーロネット)
米国に本拠をおくATMオペレーターです。提携している金融機関や小売店などにATMやPOSを設置し、外貨送金、外国為替決済などから収益を得ています。
NCR
米国に本拠を置くATMメーカーの世界大手です。キャッシュレジ等の製造販売が祖業です。AT&T社傘下となった時期もありますが、現在はニューヨーク証券取引所に株式を上場しています。事業の柱は銀行向けATM関連事業と小売向けのPOSやレジシステム事業となっています。
Hyosung TSN(ヒョスンTNS)
韓国に本拠を置くATMメーカーです。韓国の財閥のHyosungグループ傘下にあります。米国等でのATM事業に強みを持ちます。2021年にDoverコーポレーションからATMメーカーのTritonシステムズを買収しました。
Triton(トリトン)
米国に本拠を置くATM専業大手です。リース形態でATMを顧客に提供しています。
GRG Banking(广州无线电集团)
1999年に中国の広州で設立された中国政府系のATM会社です。中国においては圧倒的な存在感です。ATM、キャッシュリサイクラー、キャッシュデポジター、キャッシュソーターなどを開発製造しています。
日本勢の主要なATMメーカー
富士通フロンテック、沖電気、日立オムロンターミナルソリューションズの3社で日本国内シェアの90%を占めると言われています。グローリーは両替機など貨幣処理機がメインです。
富士通について
富士通は、古河電気工業とシーメンスの合弁会社として設立された現富士電機の電話部門が1935年に分社化されて設立されました。ICT関連のハードウェアからソフトウェアを手掛けていますが、近年はITソリューションサービスへ事業ポートフォリオをシフトしています。ハードウェアではPC&サーバ、メインフレーム・スーパーコンピューター「富岳」(2012年に稼働した「京」の後継機)、ATM、通信ネットワーク機器などを開発製造しています。グループ関連会社には、富士通フロンテック、新光電気工業、FDK、富士通ゼネラルなどが含まれます。さらに詳しく
参照したデータの詳細情報について
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