塗料・コーティング業界の世界市場シェアの分析
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塗料・コーティング業界の世界市場シェアの分析

塗料・コーティング業界の世界市場シェアランキングと市場規模について分析しています。シャーウィン・ウイリアムズ、PPGインダストリーズ、アクゾノーベル、日本ペイント、アクサルタ、関西ペイントといった世界大手の塗料メーカーの概要や動向も掲載しています。

【塗料・コーティングとは】

塗料は、建築物(Decorative)から自動車(Auto)・船舶(Ship)まで幅広く利用されています。塗料は、顔料、溶剤や添加剤といった要素から作られ、溶剤塗料、油性塗料、水性塗料や粉末塗料等用途ごとに特化した塗料が開発されています。塗料には、装飾以外にも、腐食を防ぐ、傷を防ぐ、耐熱性、耐久性や防水性を高めるといった様々な役割が求められます。

溶剤系塗料製造に使用されるトルエンは、キシレン、酢酸エチルと並びVOC(volatile organic compounds、揮発性有機化合物)規制の対象となっています。浮遊粒子状物質及び光化学オキシダントの原因とされています。

【塗料・コーティング業界の世界市場シェア+ランキング】

塗料メーカーの2023年度の売上高⇒参照したデータの詳細情報を分子に、後述する市場規模を分母にして塗料・コーティング業界の2021年の世界市場シェアを計算すると、世界1位は米国のシャーウィン・ウイリアムズ、2位は米国のPPGインダストリーズ、3位はオランダのアクゾノーベルとなります。

塗料メーカーの市場シェアランキング(売上高ベース、2023年度)

順位 会社名 市場シェア
1位 THE SHERWIN-WILLIAMS COMPANY(シャーウィン・ウイリアムズ) 12.06%
2位 PPG Industries(PPGインダストリーズ) 9.54%
3位 Akzo Nobel(アクゾノーベル) 5.91%
4位 Nippon Paint Holdings Co., Ltd. (日本ペイントホールディングス株式会社) 5.73%
5位 RPM INTERNATIONAL INC.(アール・ピー・エム) 3.80%
6位 Axalta Coating Systems Ltd(アクサルタ・コーティング・システムズ株式会社) 2.71%
7位 BASF(ビーエーエスエフ) 2.43%
8位 Kansai Paint Co.,Ltd.(関西ペイント株式会社) 2.23%
9位 JOTUN(ジョータン) 1.58%
10位 Asian Paints Limited(アジアン・ペインツ・リミテッド) 1.57%
11位 Hempel(ヘンペル) 1.30%
塗料メーカーの市場シェアランキング(売上高ベース、2023年度) ©2024 Deallab

塗料コーティング業界の市場シェア(2023年) ©2024 Deallab

1位のシャーウィン・ウイリアムズは同業のバルスパーを2016年に買収し、世界首位を維持しております。

2位は、同じく米国のPPGインダストリーズで、2014年にメキシコの建築用塗料大手であるConsorcio Comexを買収して、規模拡大を図っております。

3位にはオランダのアクゾノーベルがつけます。スペシャルティケミカル事業をカーライルに売却する一方で、スペインや中国の中堅塗料会社を買収しています。2017年にアクゾノーベルとPPGインダストリーズの経営統合が検討されました。

3位のアクゾノーベルに僅差で迫るのは、Wuthelam(ウットラム)と経営統合を行った日本ペイントHDです。2019年の豪州デュラックスグループ買収をはじめ、M&Aを足がかりに海外事業の拡大を図っています。5位はRPM、6位は自動車関連の塗料に特化しているアクサルタ、7位はBASF、8位は関西ペイントです。9位は船舶塗料に強いジョータンとなっています。10位はインドのアジアン・ペインツです。

【塗料・コーティング業界の売上高ランキング】

2024年1-3月の四半期売上高をベースとしたランキングも市場シェアとほぼ同じ順位です。特に上位4社の売上高は5位以下と差があり、塗料・コーティング業界において高いシェアを誇っていることがわかります。なお、ヘンペルは四半期ごとの売上高を公表していないため、ランキングから除外しています。

塗料・コーティング業界の売上高ランキング(四半期ベース)©2024 Deallab

*RPMは2023年12-2024年2月の売上高

【塗料上位4社の指標比較】

塗料業界の世界シェア上位4社のEBITDA成長率、売上高成長率、ROEを比較しました。

トップ4社の指標比較(2023年度決算ベース)©2024 Deallab

リフィニティブのデータ(※2023年制作時点)を加工修正して作成

*EBITDA成長率、売上高成長率は過去5年の平均値を計算しています。

**ROEは直前期の当期利益と期初と期末の自己資本額の平均値から計算しています。

4社の中で、EBITDA・売上高どちらも高い成長率を誇っているのが日本ペイントです。日本ペイントのEBITDA・売上高成長率が競合3社よりも高い理由として、同社が積極的に買収を行い海外へ進出していることが挙げられます。

日本ペイントは2020年にシンガポールの塗料メーカーウットラムに買収されましたが、その後第三者割当増資などを行い、資金を確保しやすい状態です。低金利もあいまってM&Aを行うための資金が充分にあり、欧米・新興国を問わず世界の建築関連の塗料メーカーを中心に買収を行っています。

ここで、日本ペイントと並ぶ日系塗料大手の関西ペイントについてもEBITDA・売上高成長率を比較してみましょう。

日系2社の指標比較(2023年度決算ベース)©2024 Deallab

リフィニティブのデータを加工修正して作成

*EBITDA成長率、売上高成長率は過去5年の平均値を計算しています。

やはり日本ペイントの成長率が高いことがわかります。同時に、2020年からのM&A件数を比較すると、日本ペイントが圧倒的に多く、積極的に事業拡大へ動いていることが明らかです。

会社名 2020年以降の買収件数
日本ペイント 9件(うち1件は2024年内に完了予定)
関西ペイント 2件
日系2社の2020年以降のM&A件数 ©2024 Deallab

国内の塗料市場規模は年々縮小傾向にあり、国内のみで展開していても事業を拡大するのが厳しいという現実があります。一方、海外ではまだまだ市場規模の拡大が期待でき、特に新興国の塗料市場は今後も発展が期待できます。日本ペイントは、海外企業を積極的に買収し市場を開拓することで、順調に市場シェアを伸ばし世界首位も視野に入ってくるでしょう。

【塗料・コーティング業界の世界市場規模】

当データベースでは、塗料・コーティング業界の2023年の世界市場規模を1912億ドルとしております。参照した各種調査データは以下の通りです。

調査会社のMarkets and Marketsによると、2023年の塗料・コーティング業界の市場規模は1912億ドルです。2024年には1945億ドルに達し、2024年から2029年にかけて年平均3.2%で成長し、同年には2275億ドルに成長すると予想しています。⇒参照したデータの詳細情報

           市場規模    成長率見込み
     2023     1912億ドル       -
     2024     1945億ドル      1.7%
     2029     2275億ドル      3.2%
塗料・コーティング業界の市場規模の成長率見込み  ©2024 Deallab

塗料・コーティング業界の市場規模の予想成長推移 ©2024 Deallab

【さらに業界に詳しくなるためのお薦めの書籍】

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【M&Aの動向】

塗料は建築向けを中心に品質での差別化が難しくなってきており、各社ともの原材料の調達におけるコスト競争力を強化するために、M&Aでの規模拡大を図っています。直近では対象会社売上高に対して2~3倍の価格(企業価値ベース)でM&Aが行われています。

2024年(予定) 日本ペイントがインド事業の買戻し計画を発表

2024年 関西ペイントが連結子会社を通じ、ドイツWEILBURGERを買収

2023年 日本ペイントがイタリアのN.P.T. s.r.l.を買収

2023年 日本ペイントがカザフスタンのAlinaを買収

2022年 日本ペイントが仏クロモロジーを1478.86億円で買収

2022年 日本ペイントがスロベニアのJUBを261.77億円で買収

2022年 日本ペイントが中国自動車用連結子会社5社を約67億円で買収

2022年 PPGがArsonsisi’s Powder Coatingsを買収

2022年 関西ペイントが連結子会社を通じ、ドイツCWSグループを買収

2020年 シンガポール塗料大手のウットラムが日本ペイントを買収

2021年 日本ペイントがウットラムとのアジア合弁事業を1兆2900億円で買収

2021年 日本ペイントがウットラムのインドネシア事業を買収

2021年 日本ペイントがマレーシアのバイタル・テクニカルを買収

2019年 日本ペイントがトルコのベテック・ボイヤを買収

2019年 日本ペイントが豪州のDuluxを27億ドル(38豪億ドル、3000億円)で買収

2019年 PPGがWhitford Worldwide Companyを買収

2017年 シャーウィン・ウイリアムズによるバルスパーの買収

2017年 アクサルタをめぐりアクゾノーベルと日本ペイントが争奪戦(ともに買収失敗)

2016年 アクサルタ コーティング システムによるハイパフォーマンス・コーティングの買収

2016年 アクゾノーベルによるコイルや壁紙向け工業用塗料事業のBASFからの買収

2014年 PPGがメキシコの建築用塗料大手コンソルシオ・コメックスを23億ドルで買収

2014年 シンガポールのウットラムグループが日本ペイントへの出資比率を38.9%に引き上げ

2013年 CarlyleがDuPont Performance Coatingsを49億ドルで買収し、アクサルタ コーティング システムと改名

2013年 PPGがアクゾノーベルの北米建築用塗料事業を10.5億ドルで買収

2011年 関西ペイントが南アフリカのFreeworld Coatingsを買収

2008年 アクゾノーベルがICI(インペリアル・ケミカル・インダストリーズ)を買収

2008年 PPGがオランダの建築用コーティング大手シグマカロン・グループを32億ドル(22億ユーロ)で買収

1994年 オランダのアクゾとスウェーデンのノーベルインダストリーが経営統合し、アクゾノーベルが誕生

塗料コーティング業界の買収マルチプル分析

塗料コーティング業界の売上マルチプルの推移 ©2024 Deallab
塗料業界の売上マルチプル(売上高マルチプル、横軸の単位は倍率、円の大きさは対象会社の企業価値を示す

上の売上マルチプルにおける中間値は2.1倍、平均値は2.3倍です。

【会社の概要】

Sherwin-Williams(シャーウィンウィリアムズ)は1866年に設立された北米に本拠を置く老舗の大手塗料会社です。一般消費者や業者向けの塗料やコーティング剤の製造販売を行っています。塗料販売用の直営店での販売がメインです。2016年に米同業のバルスパーを買収しました。さらに詳しく

PPG Industries(PPGインダストリーズ)は1883年に設立された米国に本拠を置く塗料メーカーです。ガラス製造会社が発祥です。現在は航空機、船舶や自動車用の塗料事業が主軸となっています。シャーウィン・ウィリアムズと米国首位の座を競っています。さらに詳しく

アクゾノーベル(Akzo Noble)は、オランダに本拠を置く世界最大級の化学・塗料会社です。1994年にオランダのアクゾとスウェーデンのノーベルが合併して誕生しました。ノーベルはノーベル賞の生みの親のアルフレッド・ノーベルが買収して誕生した由緒のある会社です。さらに詳しく

1898年に茂木家によって設立された日本の大手塗料会社です。建設用塗料や自動車向けに強みを持ちます。売上高の約6割はアジアとなっています。シンガポールに本拠を置く塗料大手のWuthelam(ウットラム)と資本提携しました。2019年に豪州のデュラックスグループを買収しています。2020年にウットラムが日本ペイントの買収を発表しました。買収のストラクチャーはやや複雑で、日本ペイントが、ウットラムグループからアジアの合弁会社とウットラムのインドネシア子会社を買収する一方で、買収資金調達のためにウットラムに対して増資を行うことで、ウットラムが日本ペイントの株式の約6割を保有する形となります。さらに詳しく

1947年にFrank C. Sullivan氏によって設立された北米に拠点を置く塗料大手です。Tremco、Carboline、Universal Sealants、Stonhard、Euco、Day-Glo、Dryvi、Zinsser、Rust-Oleum、DAP、Varathane、Testorsといったブランドで事業を展開しています。

旧デュポン パフォーマンス コーティングス。2013年にカーライルグループが買収し、Axaltaへと社名を変更しました。自動車向けの塗料に強く、Cromax(クロマックス)、Standox(スタンドックス)、Duxone等の有力ブランドで世界展開を強化しています。2014年にニューヨーク証券取引所に上場しました。2017年にアクゾノーベルとの経営統合の交渉を発表しましたが、その後日本ペイントとの交渉を発表し、結局決裂しています。

BASFは、1865年に設立された世界最大級の独化学メーカーです。バイエル、ヘキスト(現サノフィ・アヴェンティス)と並ぶドイツ三大化学メーカーの一角となっています。BASFとはバーデン・アニリン・ウント・ソーダ(Badische Anilin- und Soda-Fabrik)の略です。BASFの読み方はバスフでなく、ビーエーエスエフです。アンモニアの量産を可能にしたハーバー・ボッシュ法を発明したことでも有名です。化学業界の売上高ランキングでは、世界1位の座が定番の総合化学の雄と言えます。現在は、石油化学品、高性能製品、機能性材料、農薬事業を展開しています。さらに詳しく

1918年に玉水弘氏によって設立された日本の大手塗料会社です。建築向けに強みがあります。2016年に北米のUSペイント、サウジアラビアのサウジインダストリアルペイントとマレーシアのサンコラペイントインダストリーズ、2017年にオーストリアの鉄道車両向け塗料大手のヘリオスグループを買収する等、海外展開を積極的に推進しています。

JOTUN(ジョータン)

1926年に設立されたノルウェーに本拠を置く塗料メーカーです。食品などを手掛けるコングロマリットであるOrkla Groupの関連会社です。

1942年に設立されたインドの塗料最大手です。

1915年にデンマークで設立された塗料メーカーです。建築、船、コンテナ、産業機器、ヨットなどの最終製品にコーティングソリューションを提供しています。

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