日本ペイントの市場シェア・業績推移・売上構成・株価の分析

日本ペイントは、1898年に茂木家によって設立された日本の大手塗料会社です。建設用塗料や自動車向けに強みを持ちます。売上高の約6割はアジアとなっています。シンガポールに本拠を置く塗料大手のWuthelam(ウットラム)と資本提携しました。2019年に豪州のデュラックスグループを買収しています。2020年にウットラムが日本ペイントの買収を発表しました。買収のストラクチャーはやや複雑で、日本ペイントが、ウットラムグループからアジアの合弁会社とウットラムのインドネシア子会社を買収する一方で、買収資金調達のためにウットラムに対して増資を行うことで、ウットラムが日本ペイントの株式の約6割を保有する形となります。

業績推移(年次)


2019年度
売上高は692,009百万円で、前年度比10%増となりました。営業利益は78,060百万円になりました。営業利益率は11%になりました。売上の増加は、円高の影響があった一方、日本の汎用塗料・工業用塗料、及び中国 の汎用塗料が好調に推移、さらに豪州塗料メーカーDULUXGROUP LIMITED及びトルコ塗料メーカーBETEK BOYA VE KIMYA SANAYI ANONIM SIRKETIを連結子会社化したことによるものです。 営業利益は、中国で原材料価格が低位で推移し大幅な増益となったものの、日本で企業買収に関連し株式取得関連費用を計上、欧州及びインド自動車用塗料事業において減損損失を計上したことから、9.8%減となりました。

2020年度
売上高は772,560百万円で、前年度比12%増となりました。営業利益は87,594百万円になりました。営業利益率は11%になりました。売上の増加は、新型コロナウイルス感染症が各事業へ影響したものの、豪州塗料 メーカーDULUXGROUP LIMITED及びトルコ塗料メーカーBETEK BOYA VE KIMYA SANAYI ANONIM SIRKETIの子会社 化に加え、中国経済の回復に伴い主力事業である中国の汎用塗料が好調に推移したことによるものです。営業利益は、前期の保険金収入の反動があった一 方、増収効果や原材料調達価格の低減が奏功し、11.4%増となりました。

2021年度
売上高は998,276百万円で、前年度比29%増となりました。営業利益は87,615百万円になりました。営業利益率は9%になりました。売上の増加は、アジア合弁事業の100%子会社化や、Wuthelamグル ープが保有するインドネシア事業の子会社化に加え、主力事業である中国の汎用塗料が好調に推移したことなどによるものです。営業利益は、各地で原材料価格が上昇したにも拘わらず、増収効果により微増となりました。

2022年度
売上高は1,309,021百万円で、前年度比31%増となりました。営業利益は111,882百万円になりました。営業利益率は9%になりました。売上の増加は、2022年1月20日にクロージングした欧州塗料メーカ ーCromologyの子会社化、2022年5月31日にクロージングした欧州塗料メーカーJUBの子会社化や円安の影響、 加えて主力事業である中国の汎用塗料が継続的な製品値上げを進めて好調に推移したためです。営業利益は、各地で原材料価格が上昇し、中国に おいて貸倒引当金を追加計上したものの、製品値上げの浸透により、27.7%増となりました。

2023年度
売上高は1,442,574百万円で、前年度比10%増となりました。営業利益は168,745百万円になりました。営業利益率は12%になりました。売上の増加は、主力事業である中国の汎用塗料において、新型コロナウイルス感染症に伴う都市封鎖等の解除を背景に経済活動の正常化が進んだことなどによるものです。営業利益は、製品値上げの浸透などによる売上総利益率の改善や、中国において貸倒引当金を追加計上した前期からの反動増などにより、50.8%増となりました。

日本ペイントの業績推移

日本ペイントの業績推移

業績推移(四半期)

2023年第1四半期(1ー3月)
売上高は330,213百万円になりました。営業利益は34,909百万円、営業利益率は11%になりました。2022年5月31日にクロージングした欧州塗料 メーカーDP JUB delniska druzba pooblascenka d.d.の子会社化や円安の影響、主力事業である中国の汎用塗料において販売数量が増加したことなどにより、売上収益は前年同期比15.8%増、営業利益は前年同期比59.4%増となりました。

2023年第2四半期(4ー6月)
売上高は362,712百万円になりました。営業利益は48,829百万円、営業利益率は13%になりました。2022年5月31日にクロージングした欧州塗料 メーカーDP JUB delniska druzba pooblascenka d.d.の子会社化や円安の影響、主力事業である中国の汎用塗料に おいて、新型コロナウイルス感染症に伴う都市封鎖等の解除を背景に経済活動の正常化が進んだことなどにより、 売上は前年同期比11.4%増となりました。営業利益は、製品値上げの浸透など による売上総利益率の改善や、中国において貸倒引当金を追加計上した前年同期からの反動などにより、前年同期比98.9%増となりました。

2023年第3四半期(7ー9月)
売上高は392,953百万円になりました。営業利益は47,887百万円、営業利益率は12%になりました。主力事業である中国の汎用塗料において、新型コロナウイルス感染症に伴う都市封鎖等の解除を背景に経済活動の正常化が進んだことなどにより、売上は前年同期比10.8%増となりました。営業利益は、製品値上げの浸透などによる売上総利益率の改善や、中国において貸倒引当金を追加計上した前年同期からの反動増などにより、前年同期比60.8%増となりました。

2023年第4四半期(10ー12月)
売上高は356,696百万円になりました。営業利益は37,120百万円、営業利益率は10%になりました。

2024年第1四半期(1ー3月)
売上高は384,319百万円になりました。営業利益は42,664百万円、営業利益率は11%になりました。主力事業である中国の汎用塗料において販売数量が増加したことや、円安の影響などにより、売上は前年同期比16.4%増、営業利益は前年同期比22.2%増となりました。

日本ペイントの四半期業績推移

日本ペイントの四半期業績推移

EPS・配当額・配当性向の推移

希薄化後EPSは前年度比49%増の50.44円になりました。1株当たりの配当は前年度比27%増の14円になりました。配当性向は28%になりました。

日本ペイントのEPS・配当額・配当性向の推移

日本ペイントのEPS・配当額・配当性向の推移

業績予想

2024年5月
2024年度第一四半期の決算短信において、2024年度通期の売上は1,600,000百万円、営業利益は184,000百万円を予定していると掲載されています。

売上構成

セグメントは、自動車用塗料、一般用塗料、工業用塗料、ファインケミカル、その他塗料、塗料周辺事業に分類されます。セグメント別の売り上げ構成は以下の通りです。

日本ペイントHDの(2023年度)

日本ペイントHDの売上構成(2023年度)

自動車用塗料
ボディ用塗料、樹脂部品用塗料、塗装下地皮膜などの製造販売を行っています。

一般用塗料
建築・重防食、コンクリート剥落防止システム、家庭用塗料などの製造販売を行っています。

工業用塗料
溶剤塗料、水性塗料、粉体塗料、電着塗料などが含まれます。

ファインケミカル
鉄鋼やアルミ向けの機能性コーティング、アクリル樹脂粒子、UV硬化型ハードコートなどが含まれます。

その他の塗料
低燃費型船底防汚や防食塗装といった船舶用塗料などが含まれます。

塗料周辺事業
接着剤等の塗料関連製品の製造販売を行っています。

M&A情報

汎用及び工業用塗料と地域フットプリントの拡大を狙ったM&Aを行っています。EPSへの貢献、ROIC>WACC、レバレッジ余力などといった財務規律を利かせた買収に特徴があります。


2017年 塗料メーカーDunn-Edwardsを買収
2019年 塗料メーカーDuluxGroupを買収
2019年 塗料メーカーBetek Boyaを買収
2021年 ウットラムのインドネシア・アジア合弁事業を買収
2021年 ウットラムに第三者割当増資を行い同社が日本ペイントHDの50%超を保有
2021年 マレーシアでシーラントおよび接着剤の市場シェア No1.のメーカーであるVital Technicalを買収
2022年 建築用塗料等の製造・販売を手掛けるCromology Holdingを買収
2022年 建築用塗料及びETICS(External Thermal Insulation Composite System:断熱材)等の製造・販売を手掛けるDP JUB delniška družba pooblaščenka d.d.を買収
2023年 密封剤や接着剤等の製造・販売を手掛けるN.P.T. s.r.l.を買収
2023年 ドライミックスモルタル材や塗料等の製造・販売を手掛けるAlinaを買収

株主構成

ゴー・ハップジン氏率いるウットラムグループが実質支配しています。

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