タイヤ業界の市場シェアの分析

タイヤメーカーの世界市場シェアと市場規模について分析しています。
ブリヂストン、ミシュラン、グッドイヤーといった大手タイヤメーカーの概要や動向も掲載しています。

【タイヤ業界とは】

タイヤは用途によって大きく自動車用タイヤ、産業車用タイヤ、農業機械用タイヤ、航空機用タイヤ、二輪自動車用タイヤに分類されます。産業車用タイヤ、農業機械用タイヤは建設や採鉱を行う厳しい天候や困難な地形に耐えられるように設計されたタイヤで、オフザロード(OTR)タイヤと総称されています。

タイヤの構造

外側から見ると単なる黒いゴムで単純そうに見えるタイヤですが、内側は高度な設計になっています。タイヤの構造は、一番外側のトレッドゴム(黒いゴムの部分)に始まり、カーカス、インナーライナー、ビードワイヤー等が組み合わさりできています。原材料は、ゴム(天然・合成)、配合剤(シリカ、カーボンブラック等)、タイヤコード(ナイロン等)、ワイヤー(ピアノ線のようなもの)となります。

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【市場シェア】

タイヤメーカー各社の2023年度の売上高[affi id=16]を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、2023年のタイヤ業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はブリヂストン、2位はミシュラン、3位はグッドイヤーとなります。
*杭州中策は2021年度の売上高
*クムホタイヤは2022年度の売上高
*Gitiタイヤは2022年度の売上高
*リンロンは2022年度の売上高となっています。

タイヤ会社の市場シェアと業界ランキング(2023年)

順位 会社名 市場シェア
1位 Bridgestone(ブリヂストン) 18.62%
2位 Michelin(ミシュラン) 18.30%
3位 The Goodyear Tire And Rubber Compony(グッドイヤー) 11.39%
4位 Continental(コンチネンタル) 9.04%
5位 Sumitomo Rubber(住友ゴム工業) 4.66%
6位 Pirelli(ピレリ) 4.29%
7位 Hankook tire(ハンコック) 4.27%
8位 The Yokohama Rubber(横浜ゴム) 4.05%
9位 ZC Rubber(杭州中策) 2.76%
10位 Toyo Tire(トーヨータイヤ) 2.34%
11位 Cheng Shin Rubber(正新ゴム工業) 1.76%
12位 Giti Tire(Gitiタイヤ) 1.73%
13位 Kumho Tire(クムホタイヤ) 1.70%
14位 MRF Tyres(MRFタイヤ) 1.52%
15位 Apollo(アポロ) 1.50%
16位 Linglong(リンロン) 1.45%
17位 Nexen(ネクセン) 1.29%
18位 Titan(タイタン) 1.11%
タイヤ会社の市場シェアと業界ランキング(2023年)

タイヤ業界の世界シェア(2023年) ©2024 Deallab

首位は日本を代表するタイヤメーカーであるブリヂストンです。幅広い輸送機のタイヤを取り扱っています。2021年のデータと比較すると2位のミシュランと順位を入れ替えて首位になりました。

2位はフランスのミシュランです。レストランガイドのミシュランガイド事業も展開していることで有名です。

3位はアメリカのグッドイヤーです。ここまでの上位3社がタイヤ業界のBig3と呼ばれます。しかし、上位2社には大きく差をつけられてしまっています。

4位はブレーキなどの自動車部品事業とタイヤ事業を取り扱うドイツのコンチネンタルです。これらの上位4社でタイヤ業界の市場シェアの約半分を占めます。

続いて5位にランクインしたのが日本企業の住友ゴム工業です。2015年にはグッドイヤーとの包括提携を解消しました。また、住友ゴム工業はスポーツ用品事業を展開していることでも知られています。

その他の日本企業では、8位に横浜ゴム、10位にトーヨータイヤが入っています。

ランキング内に多くのアジアの企業が入っているのが印象的です。

業界上位3社の成長率と収益力比較

業界トップ3のポジションにいるブリヂストン、ミシュラン、グッドイヤーの3社について、売上高成長率(過去5年平均)、EBITDA成長率 (過去5年平均)、ROE(直前期)について比較をしました。

長らく業界トップ3のポジションにいる3社ですが、成長性や収益力を見てみると勢いに陰りがみられます。業界下位メーカーが徐々に競争力をつけていることが伺えます。その中でも、ブリヂストンは多角化事業の再編中ということもあり、成長率で特に見劣りしています。

タイヤ大手3社の指標比較(2021年)
タイヤ大手3社の指標比較 ©2024 Deallab
*各財務数値は2021年度決算数値を使用しています。
**売上高とEBITDA成長率は直前期を基準に過去5年間の年平均成長率(CAGR)を計算しています。
***ROEは直前期の当期利益と期初と期末の自己資本額の平均値から計算をしています。

【タイヤメーカーの売上高ランキング(四半期ベース)】

2023年度10〜12月四半期売上高をベースとしたタイヤメーカーの売上高ランキングでは、1位はブリヂストン、2位はミシュラン、3位はグッドイヤーとなっています。これは2023年度通年のランキングと同じです。

四半期の売上高が直接公表されていない杭州中策、Gitiタイヤ、リンロンはランキングから除外しています。

通年のランキングと比較すると、横浜ゴムとハンコックがピレリの順位を抜き、アポロとMRFタイヤが順位を入れ替えています。

タイヤメーカーの売上高ランキング(四半期ベース) ©2024 Deallab

【市場規模】

当サイトでは2023年のタイヤ業界の市場規模を約1641億ドルとして市場シェアを計算しております。参照した各種調査データは以下の通りです。

調査会社のStellar Market Research によれば自動車用タイヤ業界の2023年の市場規模は1418億ドルで2024年から2030年にかけて年平均成長率が6.32%で同年に約2178億ドルに達すると予想しています。⇒参照したデータの詳細情報

市場規模 成長率見込み
2023 1418億ドル
2030 2178億ドル 6.32%
自動車用タイヤ業界の市場規模 ©2024 Deallab

調査会社のSpherical Insights によればOTRタイヤ業界の2023年の市場規模は約47億ドルで2024年から2033年にかけて年平均成長率が6.41%で同年に約87億ドルに達すると予想しています。⇒参照したデータの詳細情報

市場規模 成長率見込み
2023 47億ドル
2033 87億ドル 6.41%
OTRタイヤ業界の市場規模 ©2024 Deallab

調査会社のMarket Research Future によれば航空機用タイヤ業界の2023年の市場規模は約24億ドルで2024年から2032年にかけて年平均成長率が3.44%で同年に約32億ドルに達すると予想しています。⇒参照したデータの詳細情報

市場規模 成長率見込み
2023 24億ドル
2032 32億ドル 3.44%
航空機用タイヤ業界の市場規模 ©2024 Deallab

調査会社のMarket Research Future によれば二輪自動車用タイヤ業界の2023年の市場規模は約153億ドルで2024年から2030年にかけて年平均成長率が3.8%で同年に約199億ドルに達すると予想しています。⇒参照したデータの詳細情報

市場規模 成長率見込み
2023 153億ドル
2030 199億ドル 3.8%
二輪自動車用タイヤ業界の市場規模 ©2024 Deallab

タイヤの分類と市場規模 ©2024 Deallab

2024年以降のタイヤ種類推定成長率 ©2024 Deallab

自動車用タイヤの需要が増加する要因として自動車販売台数の増加が挙げられます。

また、OTRタイヤの需要の増加要因としては、先進国や新興国の急速なインフラ開発による建設機械などの需要が増加していることが挙げられます。

航空機用のタイヤの需要は、商用と軍用の飛行機の需要と共に増加しています。

【M&Aの動向】

  • 1988年 ブリヂストンによる米ファイヤストンの買収
  • 2005年 GoodyearによるSouth Pacific Tyresの買収
  • 2007年 ブリヂストンによる更生タイヤメーカーの米バンダグの買収
  • 2008年 Schaefflerによる独Continentalの買収
  • 2009年 インドのApollo TyresによるオランダのVredestein Bauden買収
  • 2010年 東洋タイヤによるSilverstoneの買収
  • 2013年 投資ファンドのKKRによるAlliance Tire Groupの買収
  • 2013年 投資ファンドによるCarlisle Transportation Productsの買収
  • 2015年 中国のケムチャイナによるイタリアのピレリタイヤの買収
  • 2016年 横浜ゴムによるオランダのAlliance Tire Groupの買収
  • 2016年 グッドイヤーがラーベンタイヤを買収
  • 2016年 横浜ゴムがアライランスタイヤグループを買収
  • 2017年 中国の双星による韓国クムホタイヤへの出資
  • 2017年 グッドイヤーが自動タイヤ検査技術を持つベンテック・システムズを買収
  • 2017年 住友ゴム工業はDUNLOPブランドのスポーツ用品事業とライセンス事業を買収した
  • 2017年 住友ゴム工業はイギリスのタイヤ販売会社Micheldeverを買収
  • 2018年 ミシュランはOTRタイヤの製造・販売を行うかカムソを買収
  • 2018年 コンチネンタルがカトラインの自動車部門を買収
  • 2018年 ハンコックがモデルソリューションを買収
  • 2019年 ミシュランがマスターノートを買収
  • 2019年 ミシュランがインドネシアのマルチストラーダーを買収
  • 2021年 ブリヂストンはオーストラリアでOTR事業を行うOtracoを買収
  • 2021年 ブリヂストンがAzugaを428億円で買収
  • 2021年 グッドイヤーがクーパーを買収
  • 2021年 アポロが三菱ケミカルの結晶質アルミナ繊維事業を買収
  • 2021年 グッドイヤーによるクーパー・タイヤ・アンド・ラバーの買収
  • 2022年 横浜ゴムが農機用のタイヤを手掛けるスウェーデンのトレルボルグ・ホイール・システムズを買収
  • 2023年 ミシュランがフレックス・コンポジットを買収
  • 2023年 ピレリがブラジルの天然ゴム加工会社であるヘベアテックを買収
  • 2023年 横浜ゴムがトレルボルグのWheel Systems事業を買収
  • 2024年 ハンコックがハノンシステムズを買収
  • 近年では電動自動車が増加しているため、電気自動車専用のタイヤの開発が今後増加すると予測されます。また、その他にも新しい種類のタイヤの開発も今後増えるとされています。

【会社の概要】

ブリヂストン(Bridgestone)

ブリヂストンは、1930年に石橋氏が福岡にて創業した日本を代表するタイヤメーカーです。世界ビッグ3の一角です。幅広い輸送機(乗用車用、トラック・バス用、二輪車用、航空機用、建設・鉱山車両用、農業機械用)の新車及び補修用タイヤを手掛けています。米ファイアストンを傘下に保有しています。

テニス(2020年に撤退を発表)・ゴルフ・自転車等の分野でも事業を展開しています。2019年にオランダの地図大手TomTomからテレマティックス事業を約10億ドルで買収し、タイヤを通じたビッグデータの解析の強化を図っています。従来のタイヤ製造販売事業から、TaaS(タイヤアズアサービス)とよばれる事業モデルへの変革をすすめています。ゴルフボールは、1935年に国産ボールを販売して以降、現在はTOURSTAGE、Newing、Reygrande、ツアーB等のブランドで展開しています。さらに詳しく

Michelin(ミシュラン)

ミシュランは、ミシュラン兄弟によって1889年に設立されたフランスに本拠を置く世界的なタイヤメーカーです。タイヤ業界のビッグ3の一角を占めます。世界で初めてラジアルタイヤを開発したことでも有名です。レストランガイドのミシュランガイド(レッドガイドブック)事業も展開しています。さらに詳しく

The Goodyear Tire(グッドイヤー・タイヤー・アンド・ラバー)

グッドイヤーは、1898年に創業をした米国に本拠を置く世界的なタイヤメーカーです。世界ビッグ3の一角で、日本の住友ゴム工業と提携をしていましたが、解消しています。GOODYEAR、DUNLOP、FULDAなどのブランドで展開しています。商用トラックタイヤにも強みを持ちます。2021年にクーパー・タイヤ・アンド・ラバーを買収しました。

Continental(コンチネンタル)

Continental(コンチネンタル)は、1871年に創業されたドイツのハノーヴァーに本拠を置くタイヤ・ブレーキ等の自動車部品メーカーです。シーメンスやモトローラより自動車制御関連の事業も積極的に買収しています。2008年にドイツのベアリング大手のシェフラ―を傘下にもつシェフラー家が支配株主となりました。大きくタイヤ事業と自動車部品事業に分かれます。タイヤ事業の世界シェアではミシュラン、ブリジストン、グッドイヤーのトップ3に次ぐ規模を誇っています。自動車部品メーカーにおける規模でも、ボッシュやデンソー等に匹敵する世界最大級の自動車部品メーカーです。自動車部品の中でも、ブレーキ、パワートレイン、シャーシ、インパネ、カーオーディオ、ディスプレイといった分野の世界シェアでは上位に位置しています。さらに詳しく

住友ゴム工業

住友ゴム工業株式会社は、1909年に創業されたタイヤメーカーの世界大手です。ダンロップ、ファルケンブランドで世界展開しています。グッドイヤーとの包括提携を2015年に解消しました。テニスやゴルフといったスポーツ用品事業もダンロップブランドで展開しています。テニスボールの公式球であるダンロップFORTは有名です。ゴルフでは、ゼクシオやスリクソンブランドで事業を展開しています。2016年にスポーツ用品のダンロップブランドの商標権を英スポーツダイレクト社から買収して、更なる海外展開を図っています。さらに詳しく

Pirelli(ピレリ)

ピレリは1872年にイタリアのミラノで設立された大手タイヤメーカーです。特に、高級車向けのタイヤに強みを持ちます。また、自動車用タイヤとオートバイや自転車を含む2輪自動車用タイヤの販売を消費者のみに向けて販売するのは世界でピレリだけです。2015年には中国の中国化工集団(ケムチャイナ)が買収しました。

ケムチャイナ

中国化工集団(ケムチャイナ、ChemChina、China National Chemical Corporation )はRen Jianxin(任建新)氏によって設立されたChina National Blue Star Corp(藍星) と China Haohua Chemical Industrial Corp(昊華)が2004年に経営統合して誕生した中国政府系の化学メーカーです。中国政府が100%株式を保有しています。農薬、ゴム、シリコーンや機能性化学等の分野で事業展開しています。2016年から寧高寧氏がシノケムとケムチャイナのCEOとなり、2021年に国営化学会社のシノケムと経営統合、中国中化(シノケム)ホールディングス傘下になりました。続きを読む

Hankook tire(ハンコック)

ハンコックは1941年に設立された韓国の大手タイヤメーカーです。タイヤの中でも電気自動車タイヤ、乗用車タイヤ、SUVタイヤ、軽トラック用タイヤの製造、販売を行っています。ヨーロッパと北アメリカでの販売が全体の半分以上を占めています。

横浜ゴム

横浜ゴムは1917年に創立されました。事業内容には乗用車用タイヤや建設車両用等のOTRタイヤの製造・販売を行うタイヤ事業があります。他にも、MB(Multiple Business)事業で工業用ホースや航空機部品やその他事業でゴルフ用品など幅広い製品を取り扱っています。

ZC Rubber(杭州中策)

杭州中策は1958年に設立された中国のタイヤメーカーです。幅広いタイヤ製品を取り扱っていて、乗用車用、SUV用、トラック用、OTR用、農業用、2輪車用、4輪バギーとも呼ばれるATV(All Terrain Vehicle)用などの様々な製品を製造しています。

トーヨータイヤ

トーヨータイヤは1945年に設立された、兵庫県に本社を置くタイヤメーカーです。タイヤ事業にはTOYO TIRESとNITTOの2種類のブランドがあり、乗用車用、ライトトラック用、バス用などのタイヤを取り扱っています。他にも、自動車部品事業では自動車用の防振ゴム製品を取り扱っています。タイヤ事業が売上の9割以上を占めています。また、2018年には三菱商事と資本業務提携を締結しました。

Cheng Shin Rubber(正新ゴム工業)

正新ゴム工業は1967年に設立された台湾のタイヤメーカーです。当初は自転車用タイヤメーカーとして事業を行っていましたが、その後複数のタイヤを取り扱うようになりました。

Giti Tire(Gitiタイヤ)

Gitiタイヤはシンガポールを拠点とするタイヤメーカーです。Gitiタイヤは1951年のインドネシアでの自転車タイヤとインナーチューブの製造から始まりました。現在では乗用車用タイヤやトラック・バス用タイヤの製造を行っています。

Kumho Tire(クムホタイヤ)

クムホタイヤは1946年に韓国でタクシー事業会社として誕生しました。その後1960年代にバス事業に参入しましたが、タイヤの確保が困難だったことをきっかけにタイヤ事業も行うようになりました。2014年には横浜ゴムと技術提携を締結しました。

また、クムホタイヤジャパンは1977年に設立されました。日本専用のスタッドレスタイヤの開発を行うなど、日本に合ったタイヤを開発・販売しています。

MRFタイヤ

MRFタイヤは1946年に設立されたインドのタイヤメーカーです。設立当初はおもちゃの風船の製造を行っていて、1952年からトレッドゴムと呼ばれるタイヤの路面と接するゴム層の販売を開始しました。現在はタイヤ事業の他にクリケット製品の販売やおもちゃ事業、塗料の販売など様々な事業を行っています。

Apollo(アポロ)

アポロは1972年にインドで設立されたタイヤメーカーです。現在、インドに5か所、オランダとハンガリーに1か所ずつ製造拠点を持っています。また、乗用車用、トラック・バス用、二輪車用などのタイヤを製造しています。その中でもトラック・バス用のタイヤの売上が最も大きく全体の約4割を占めています。

Shandong Linglong Tyre(山東リンロンタイヤ)

リンロンは1975年に設立された中国のタイヤメーカーです。乗車用、小型トラック用、トラック・バス用タイヤなどの製品を取り扱っています。

Nexen(ネクセン)

ネクセンは1942年に設立された韓国のタイヤメーカーです。1956年に韓国で初めて自動車用タイヤを発売した会社でもあります。一般的な乗用車用のタイヤに加えて電気自動車に特化したタイヤの開発も行っています。

Titan(タイタン)

タイタンは1993年に設立されたアメリカのオフザロードタイヤメーカーです。

参照したデータの詳細情報について


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