ブリヂストンの市場シェア・業績推移・売上構成・株価の分析

ブリヂストンは、1930年に石橋氏が福岡にて創業した日本を代表するタイヤメーカーです。世界ビッグ3の一角です。幅広い輸送機(乗用車用、トラック・バス用、二輪車用、航空機用、建設・鉱山車両用、農業機械用)の新車及び補修用タイヤを手掛けています。米ファイアストンを傘下に保有しています。
テニス(2020年に撤退を発表)・ゴルフ・自転車等の分野でも事業を展開しています。2019年にオランダの地図大手TomTomからテレマティックス事業を約10億ドルで買収し、タイヤを通じたビッグデータの解析の強化を図っています。従来のタイヤ製造販売事業から、TaaS(タイヤアズアサービス)とよばれる事業モデルへの変革をすすめています。ゴルフボールは、1935年に国産ボールを販売して以降、現在はTOURSTAGE、Newing、Reygrande、ツアーB等のブランドで展開しています。

業績推移(年次)

2019年度
売上高は前年度比3.91%減の3,507,243百万円になりました。営業利益は13.26%減の349,336百万円になりました。営業利益率は9.96%になりました。新車用タイヤの需要がグローバル全体で減少したことが響き、減収減益となりました。

2020年度
売上高は前年度比23.15%減の2,695,224百万円になりました。営業利益は82.11%減の62,488百万円になりました。営業利益率は2.32%になりました。コロナウイルス拡大による需要減で、大幅な減収減益となりました。ただし、第三四半期から需要回復の兆しが見られました。

2021年度
売上高は前年度比20.44%増の3,246,057百万円になりました。営業利益は502.99%増の376,799百万円になりました。営業利益率は11.61%になりました。プレミアム領域を中心にグローバルのタイヤ販売が増えたことで大幅な増収増益となりました。「稼ぐ力の再構築」を進める中で、多角化事業の再編をほぼ完了したところ、継続事業ベースで化工品・多角化事業の黒字を達成しました。

2022年度
売上高は前年度比26.62%増の4,110,070百万円になりました。営業利益は17.12%増の441,298百万円になりました。営業利益率は10.74%になりました。自動車各社の生産回復を受けて、新車用タイヤの需要も回復しました。またPSR-HRD(18インチ以上)やORなどプレミアム領域でも販売シェアを伸ばし、増収増益となりました。

2023年度
売上高は前年度比4.96%増の4,313,800百万円になりました。営業利益は9.17%増の481,775百万円になりました。営業利益率は11.17%になりました。
売上収益は、市販用乗用車用プレミアムタイヤの販売拡大や鉱山車両用タイヤの販売数量増加、為替の追い風により増収しました。営業利益は、原材料価格やインフレによるコスト増、工場操業度の悪化、アルゼンチンの超インフレ会計の影響で減益となりましたが、この影響を除けば増益でした。

ブリヂストンの業績推移

ブリヂストンの業績推移

業績推移(四半期)

2023年第1四半期(1ー3月)
売上高は前年同期比17.12%増の1,043,541百万円になりました。営業利益は127,501百万円、営業利益率は12.22%になりました。市販用タイヤは欧米で需要が減速しましたが、プレミアム領域における需要は堅調に推移しました。新車用タイヤも半導体不足改善で車両生産が回復したことにより、需要が増えました。

2023年第2四半期(4ー6月)
売上高は前年同期比6.31%増の1,058,165百万円になりました。営業利益は123,119百万円、営業利益率は11.64%になりました。売上高の増加は、乗用車及び小型トラックにおける米欧を中心に高インチタイヤ(18ミリ以上)などのプレミアム領域における需要が相対的に堅調に推移したことが要因です。新車用タイヤも半導体不足解消による生産量回復で増加しました。

2023年第3四半期(7ー9月)
売上高は前年同期比0.54%増の1,096,438百万円になりました。営業利益は125,175百万円、営業利益率は11.42%になりました。第2四半期と同様、米欧中心に高インチタイヤのプレミアム領域における需要が相対的に堅調に推移し、半導体不足解消による新車用タイヤの生産量回復も影響しています。

2023年第4四半期(10ー12月)
売上高は前年同期比1.54%減の1,115,656百万円になりました。営業利益は105,980百万円、営業利益率は9.50%になりました。

2024年第1四半期(1ー3月)
売上高は前年同期比1.97%増の1,064,115百万円になりました。営業利益は117,755百万円、営業利益率は11.07%になりました。売上高増加の要因は高インチタイヤ(18インチ以上)の北米・欧州中心の需要伸張です。ただ、市販用トラック・バス用タイヤ需要は、北米・欧州では市販用乗用車用、小型トラック用タイヤ需要と比較して需要回復が遅れております。依然として前年を下回るレベルで推移しました。また、日本では春の履き替え需要遅れ及び前年の値上げ前の仮需の影響が大きく、市販用乗用車用及び小型トラック用タイヤ並びにトラック・バス用タイヤ需要共に前年比大幅減となりました。

ブリヂストンの四半期業績推移

ブリヂストンの四半期業績推移

EPS・配当額・配当性向の推移

希薄化後EPSは前年度比75.57%増の414.70円になりました。1株当たりの配当は前年度比14,29%増の200円になりました。配当性向は48.23%になりました。

ブリヂストンの希薄化後EPSの推移

ブリヂストンのEPS・配当額・配当性向の推移

業績予想

2024年2月
今期の売上高は44,300百万円、営業利益は5,300百万円、営業利益率は12%、1株配当は210円を見込みます。

2024年第1四半期(1-3月)
通期の業績予想から変更はないと発表。
為替前提の変更による円安の追い風を見込んでいます。一方で、南米ビジネス(特にアルゼンチン)の悪化が折り込まれています。

売上構成

セグメントは地域ごとに分類されており、日本、米州、欧州・ロシア・中近東・インド・アフリカ、中国・アジア・大洋州となっています。セグメント別の売り上げ構成は以下の通りです。

ブリヂストンのセグメント別売上構成(2023年度)

ブリヂストンのセグメント別売上構成(2023年度)

ブリヂストン社は、子会社239社、及び関連会社等128社により構成されており、「日本」「中国・アジア・大洋州」「米州」「欧州・ロシア・中近東・インド・アフリカ」の報告セグメントを「セグメント」と称しています。またそれぞれのセグメントにおいて以下の事業を行っています。

プレミアムタイヤ事業

ブリヂストンのコア事業で、タイヤの製造・販売を手がけています。乗車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、スペシャリティタイヤ(鉱山・建設車両用、航空機用、農業車両用、モーターサイクル用)があり、新車用・販売用に分かれます。タイヤは海外でも多く生産されており、2023年の海外生産比率は71%でした。

ソリューション事業

グループの成長事業と位置づけられており、タイヤを始めとした製品のメンテナンスやセンサー・ソフトウェアなどのITツールを組み合わせたソリューションを提供しています。小売サービスソリューション事業、タイヤセントリックソリューション事業、モビリティソリューション事業に分かれます。

化工品・多角化事業

メインのタイヤ関連の事業とは別に、幅広い分野で事業を展開しています。油圧・高機能ホース・ゴムクローラ、 樹脂配管・免震ゴム、空気バネスポーツ(ゴルフボール、ゴルフクラブ )、 サイクル(電動アシスト自転車、自転車)などを手がけています。 2021年2月に発表した中期事業計画(2021-2023)に基づいて、多角化事業を再編し、いくつかの事業が売却されました。

探索事業

サステナビリティの推進のために進められている事業です。リサイクル事業、グアユール事業、ソフトロボティクス事業があります。グアユール事業では、米国南西部からメキシコ北部に広がる砂漠に自生するグアユールという低木の研究を行っています。グアユール由来の天然ゴムを使用してタイヤを創るなど、事業領域での活用を目指しています。

M&A情報

ブリヂストンは2021年2月に発表した中期事業計画(2021-2023)に基づいて、多角化事業を再編することを発表しました。生産拠点の再編と共に事業の再編も行ったため、2021年には事業の売却が相次ぎました。

一方で主力分野のタイヤ関連に関しては、積極的に買収を行っています。

2017年 ブリヂストン米国グループ会社、米国油圧ホース販売・サービス会社Fittings社の買収を完了
2017年 ブリヂストン欧州子会社が仏大手タイヤ小売チェーン Ayme社の買収を完了
2017年 ブリヂストンの米州多角化事業会社、米Gaco Westernの買収を完了
2018年 ブリヂストン欧州子会社が、英国自動車整備業チェーン Exhaust, Tyres and Batteries社を買収
2018年 ブリヂストン米国グループ会社、米国油圧ホース販売・サービス会社Industrial Rubber社の買収を完了
2019年 ブリヂストンがTomTom社のデジタルフリートソリューション事業を買収
2020年 英Transense社のiTrackソリューション事業を買収
2020年 ブリヂストン欧州子会社が、独タイヤ関連サービスチェーン REIFF Reifen und Autotechnik GmbHを買収
2021年 防振ゴム事業を安徽中鼎に売却
2021年 化成品事業を投資ファンドに売却
2021年 タイのテニスボール事業をヨネックスに売却
2021年 米国グループ会社のブリヂストンアメリカスインクが車両運行管理サービスのアズーガHDを買収
2021年 ラファージュフォルシムにブリヂストンの北米建材事業を売却
2021年 中国合成ゴム事業を素材・化学関連企業のLCYに売却
2021年 豪州グループ会社のブリヂストン マイニング ソリューションズ オーストラリアが鉱山用車両タイヤのOtracoを買収
2022年 スポーツスクール運営のブリヂストンスポーツアリーナ株式会社をナガセに売却
2024年 ブリヂストン米国グループ会社、油圧ホース・モバイルサービスプロバイダーCline Hose & Hydraulicsを買収

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