商用車とトラック業界の世界市場シェアの分析

商用車とトラック業界の世界市場シェアや市場規模について分析をしています。東風汽車、 ボルボ、いすゞ、日野、第一汽車、ダイムラー、トライトン、アショック・レイランド、タタといった世界大手の商用車及びトラックメーカーの概要や動向も掲載しています。

【商用車とトラック業界とは】

 世界の商用車市場にはトラック、バス、バン、トレーラーなどが含まれ、物流、建設、農業、公共交通機関で重要な役割を果たしています。

 市場の成長は経済成長、工業化、都市化、政府の規制、技術の進歩に影響されます。アジア太平洋、ラテンアメリカ、アフリカなどの新興国では都市化とインフラ整備が進み、商用車の需要が増加しています。また、電気自動車や自動運転車の技術進歩により効率と環境持続可能性の向上が期待されています。ただし、燃料価格の変動や規制の変更、サプライチェーンの混乱などの課題もあります。世界市場は輸送サービスとインフラ開発の需要により成長が続くでしょう。COVID-19のパンデミックで一時的に需要が減少しましたが、経済活動の再開と共に市場は回復しました。

トラックの用途別種類

トラックの種類は大きく分けて、平ボディ、バン型車、ダンプの3種類があります。 平ボディは色々なものが平積みできるという特徴があり、バン型は密閉型の荷入れを活用し保冷や冷凍等の用途でも使えます。ダンプは砂利や土砂を運ぶ際に用いられます。なお、積載量によって、小型トラック(2t・3tトラック)、中型トラック(4tトラック)、大型トラック(10tトラック)という区分もあります。

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【市場シェア】

商用車・トラックメーカー各社の売上高⇒参照したデータの詳細情報を分子に、後述する業界の市場規模を分母にして、2023年の商用車・トラック業界の世界市場シェアを簡易に試算しますと、1位はダイムラートラック、2位はトレイトン、3位はボルボとなります。

トラックメーカーの2023年度世界シェア

順位 Company name(English) 企業名(日本語) 市場シェア
1位 Daimler truck ダイムラートラック 5.92%
2位 TRATON トレイトン 4.97%
3位 Volvo Group ボルボ 3.63%
4位 PACCAR パッカー 3.33%
5位 ISUZU いすゞ自動車 2.57%
6位 Iveco(CNH Industrial) イヴェコ
(旧:CNHインダストリアル)
1.46%
7位 China National Heavy Duty Truck
Group (Sinotruk Groups)
シノトラック、
中国重型汽車集団車
1.20%
8位 HINO 日野自動車 1.15%
9位 FAW Group 第一汽車 0.89%
10位 Tata Motor タタ自動車 0.79%
11位 Dongfeng motor group 東風汽車 0.69%
12位 Ashok Leyland アショック・レイランド 0.38%
13位 Shacman
(Shaanxi Automobile Holding Group)
陜西汽車集団 0.21%
©2024 Deallab

トラック業界のグローバルマーケットシェア(2023年) ©2024 Deallab

世界市場シェア1位は、ドイツのダイムラートラックです。三菱ふそうトラック・バスを傘下に持ち、北米ではフレイトライナー・ブランドで展開しています。乗用車がEVに集中する一方で、商用車・トラックは燃料電池に集中する戦略を取る中、2021年に商用車・トラック事業を分社化しました。

2位は、2021年にNavistarを合併したTRATONとなりました。

3位は、ボルボグループで、トラックの売上がグループ全体の約60%超を占めるなど、最大の事業部門となっています。

4位は、米国のワシントンに本拠を置き、大型トラックを得意とするPACAARです。

5位は、2019年にボルボからUDトラックスを買収した日本のいすゞ自動車です。

【市場規模】

当サイトでは、2023年の世界の商用車市場規模を1兆米ドルとして市場シェアを計算しています。参照したデータ⇒参照したデータの詳細情報は以下の通りです。

調査会社のフォーチュンビジネスインサイツによると、世界の商用車市場規模は、2023 年に 1 兆 737 億 3000 万米ドルと推定されています。市場は 2024 年の 1 兆 1,840 億 300 万米ドルから 2032 年までに 2 兆 800 億 3000 万米ドル、 年平均成長率(CAGR)7.3%になると予測されています。

調査会社のリサーチアンドマーケッツによると、同市場規模は2023 年の8,770億ドルから 2024 年には 9,525億ドルに成長し、年平均成長率 (CAGR) は 8.6% になると予想されています。

調査会社のグランドビューリサーチによると、同市場規模は2022年に1兆3,500億米ドルと推定され、2023年から2030年にかけて年平均成長率(CAGR)3.7%になると予測されています。⇒参照したデータの詳細情報

商用車・トラックの推定市場規模の推移 ©2024 Deallab

【M&Aの概要】

2000年代は自動車大手メーカーが、車両のフルライン化(乗用車、商用車、トラック等)を目指し、トラックの規模拡大を目指しました。2010年後半から、動力機関の技術開発の負担から、トラックやバス事業を分社化する動きが続いています。M&A時の企業価値に対する売上高の倍率は概ね1倍前後です。

2005年 ダイムラーが三菱ふそうを子会社化
2007年 日産ディーゼル(UDトラックス)をボルボが子会社化
2019年 VWがトラックバス事業をトレイトンとして分社化上場
2020年 いすゞがUDトラックスを買収
2020年 トレイトン、ナビスター買収
2021年 ダイムラー、トラックバス部門をダイムラートラックとして分社化上場
2024年 いすゞ自動車、連結子会社いすゞリーシングサービスと、同社の完全子会社UDフィナンシャルサービスを合併

発表年 買手 対象会社 売手 売上高倍率(倍)
2020 いすゞ自動車 UDトラックス ボルボ 0.9
2020 トレイトン ナビスター 1.1
売上高倍率は企業価値/直近対象会社売上高で計算(⇒参照したデータの詳細情報)©2024 Deallab

日本のトラックメーカー

国内のトラックメーカーは4社、すなわち、いすず自動車、日野自動車、三菱ふそうトラックバス、UDトラックスです。これらのトラックメーカーの中で、日野自動車はトヨタの傘下に入り、三菱ふそうはダイムラー傘下、またUDトラックスはボルボ傘下(2019年にいすゞが買収)、と独立したトラックメーカーはいすず自動車のみとなっています。いすゞがボルボからUDトラックスを買収し、1社気を吐いているものの、ダイムラー、ボルボ、VWを筆頭に、中国系の東風やFAWに押されています。一方、乗用車の分野では、世界トップクラスであるトヨタと筆頭に、ホンダ、ルノーの提携している日産等上位を占めています。乗用車では圧倒的な強みを見せる日本の自動車メーカーですが、技術的な差別化が難しい、商用車では海外勢に押され気味ということがわかります。

【会社の概要】

Daimler AG(ダイムラー)

ドイツに本拠を置く大手自動車メーカーです。乗用車と自動車リースが事業の柱となっています。乗用車ではメルセデスベンツで高級車セグメントにフォーカスした世界展開をしています。1998年にクライスラーと合併したが、2007年にクライスラーを売却しました。インドではバーラト・ベンツ (BharatBenz) ブランドを展開しています。2021年にメルセデスベンツとダイムラートラックが分社化され、社名をメルセデスベンツグループへと変更しました。自動車リースはAthlonで展開しています。

分社化された、ダイムラートラックは、三菱ふそうトラック・バスを傘下に保有しています。バス分野はメルセデスベンツとゼトラ(Setra )ブランドで展開しています。売上の約66%が欧州となっています。さらに詳しく

Volvo Group (ボルボ)

Volvo(ボルボ)グループは、スウェーデンに本拠を置くトラック・建機メーカーです。1928年にトラックメーカーとして設立されて以降、現在もトラックの売上がグループ全体の約60%超を占めるなど、最大の事業部門となっています。さらに詳しく

Traton(トレイトン)

Traton(トレイトン)は、フォルクスワーゲン(VW)傘下のトラック及びバスメーカーです。Volkswagen Truck&Bus(フォルクスワーゲントラック&バス)がトレイトンへ社名変更し、マントラック&バス、Scania(スカニア)がトレイトン傘下となりました。2018年に分社化上場しました。2020年に16.8%の株式を保有している米トラック大手のナビスター・インターナショナルの買収を発表しました。

MAN(マン)

1758 年に創業したルール地方の鉄工所にルーツがある、ドイツに本拠を置くエンジン・機械メーカーです。トラック・バス等の商用車、船舶・産業用エンジン等を手掛けています。MAN Diesel & Turbo(マンディーゼル&ターボ)は、MANグループの動力エンジニアリング部門です。1981 年には、船舶エンジンの老舗であるデンマークBurmeister & Wain(B&W)のディーゼルエンジン部門を買収し、船舶エンジンの分野では主要ライセンサーとして圧倒的な地位を占めています。メンテナンス等のサービスもグローバルで展開しています。トラックとバスは、MAN Truck & Bus(マン・トラック&バス)を通じて展開していましたが、マントラック&バスはトレイトン傘下となりました。

Scania(スカニア)

スウェーデンに本拠を置くトラック・バスメーカーです。元々はスウェーデンのサーブと親しかったのですが、フォルクスワーゲン(VW)傘下となりました。バスは、地盤の欧州のみならず、ラテンアメリカおよびアジアでも強みを有しております。

Navistar International(ナビスター・インターナショナル)について

1831年に設立された米国に本拠を置くトラック大手です。2016年にVWと資本提携しています。バスの分野ではスクールバスに強みを持ちます。2020年にVWが買収をしました。

PACCAR(パッカー)

米国のワシントンに本拠を置くトラック大手です。大型トラックを得意とします。

いすゞ(Isuzu)

日本を代表するトラックメーカーです。1990年代末にかけいすゞが経営危機となった際、一時米GMの傘下に入りましたが、現在はトヨタと資本提携を行なっています。三菱ふそうは、ダイムラー傘下となり、また日野は2018年にVWと提携を行いました。2020年にUDトラックスを買収し、国内商用車は3社体制となりました。

CNHインダストリアル/Iveco(イベコ)

CNHインダストリアルは、2013年のCNHグローバルとフィアット・インダストリアルとの経営統合の結果誕生しました。フィアット創業家であるアニェッリ家が大株主となっています。
建機、農機、商用車(トラック)事業を全世界180ヶ国で展開しています。現在はニューヨーク証券取引所とミラノ証券取引所に株式を上場しています。2022年1月に商用車・トラック事業を担うIveco(イベコ)が分社化上場をしました。さらに詳しく

Dongfeng Motor(東風汽車、ドンファン)

中国に本拠を置く国有大手自動車メーカーの一角です。乗用車からトラック等の商用車までフルラインナップで提供しています。トラックに関してはVolvo傘下のUDトラックスと合弁会社を設立しました。

China National Heavy Duty Truck Group (Sinotruk Groups)(シノトラック、中国重型汽車集団車)

シノトラックは、1930年に設立された、中国の重型車両産業の発祥です。以下の4つのブランドが展開されています。

黄河は、中国国家大型トラックのハイエンド高級ブランドとして位置付けられており、国家大型トラックの革新的な技術リーダーです。 1960 年に、中国で大型車を生産できない歴史に終止符を打ちました。

SITRAKは、2009年にドイツMAN社と共同で創設した高級大型トラックブランドです。

Howoは、中国国家大型トラックの中核大型トラック ブランドの 1 つで、トラクター、トラック、ダンプトラック、ミキサー、特殊車両などのあらゆるカテゴリーをカバーする総合商用車ブランドです。 国のインフラ建設と経済発展において決定的な役割を果たしてきました。

SINOTRUK Chengdu Commercial Vehicles は、新しく設立されたミッドからハイエンドの中型および大型トラック ブランドです。 2021年9月には純粋な電気モデルがリリースされました。

Hino Motors(日野自動車)

トヨタ自動車傘下のトラックメーカーです。2018年にVWとの提携を発表しました。

トヨタ自動車について

トヨタ自動車は、1937年に豊田喜一郎氏などによって設立された日本を代表する自動車メーカーです。かつては世界首位を米GMと競い、現在はVW(フォルクスワーゲン)やルノー・日産・三菱自動車連合と首位を競っています。2016年にダイハツ工業を完全子会社化し小型車の開発を強化しています。商用車では日野トラックとの連携を深めています。CASEや燃料電池といった今後の自動車業界の技術革新に備え、マツダやスズキとも業務提携を行い、緩やかな連合体制を構築しています。トヨタ車体の親会社でSUBARUは持分法適用会社です。さらに詳しく

First Automobile Works Group(第一汽車)

中国に本拠を置く国有大手自動車メーカーの一角です。乗用車からトラック等の商用車までフルラインナップで提供しています。トラックに関してはトヨタ自動車と合弁会社を設立しました。

Tata Group(タタ)

タタは、1868年にペルシャ系ゾロアスター(拝火、インドではパルシーとも言われる)教徒であるジャムシェトジー・タタ氏がムンバイで設立した木綿貿易会社が発祥です。インド西部のムンバイに本拠を置きます。インド三大財閥の一角です。規模ではインド最大級で、塩からソフトまでと言われ、鉄鋼、自動車、ホテル、紅茶、ITサービス、時計、宝飾品、電力、通信、化学、食品、小売などに至る多岐分野で事業を展開する財閥です。海外100ヶ国で事業を展開し、約70万人の従業員と1000億ドル超の売上を計上しています。日本に企業では、三菱商事、新日鐵住金、日立製作所、スズキ、NTTグループ等と提携をしています。リライアンス、アーディティヤ・ビルラー・グループを擁するビルラグループを含めインド3大財閥と評されます。初代ジャムセトジー・タタ、二代目ドラブジ・タタ、三代目ノウロジ・サクラトヴァラ、四代目JRD・タタに続き、現在は五代目となるラタン・タタ氏がグループの総帥です。さらに詳しく

Ashok Leyland(アショック・レイランド)

インドに本拠を置く商用車メーカーです。日産と提携しています。英国に本拠を置くHinduja Group(ヒンドゥージャ・グループ)傘下にあります。

Beijing Automotive Group(北京汽车工业控股)

中国政府系の総合自動車メーカーです。トラックに関してはいすゞやDaimlerと合弁会社を設立しています。

China National Heavy Duty Truck Corp(中国重型汽車集団)

中国政府系のトラックメーカーです。バスも製造しています。子会社のSinotrukは香港で上場しています。

陝西汽車(Shaanxi Automobile Group)

1968年、中国第一機械部が陝西自動車を設立し、最初のベンチャー企業としてスタートし、2018年に創立50周年を迎えました。ドイツのMAN社の技術を製品に導入しています。

参照したデータの詳細情報について


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