POS端末・決済端末ターミナル業界の世界シェア、市場規模、動向について分析をしています。インジェニコ、ベリフォン、パックス・テクノロジー等のPOS端末・決済端末世界大手の動向も掲載しています。
市場シェア
「決済端末会社の世界売上高ランキングの分析(2020年版)」に記載されている各社の売上高を分子に、市場規模を分母にして、2019年のPOS端末業界の世界市場シェアを簡易に算出すると、1位はIngenico Group(インジェニコ)の5.2%、2位はVeriFone(ベリフォン)の2.6%、3位は東芝テックの1.2%となります。
1位 Ingenico Group(インジェニコ) 5.2%
2位 VeriFone(ベリフォン) 2.6%
3位 東芝テック 1.2%
4位 PAX Technology(パックス・テクノロジー) 0.9%
5位 Xdg 0.6%
6位 SZZT 0.3%
1位はフランスのインジェニコ、2位は米国のベリフォン、3位は日本の東芝テック、4位は中国のPAXと欧米日中で上位を独占しています。但し、出荷台数ベースでは中国勢が上位になります。
調査会社の二―ルソンによれば2019年の出荷台数ベースの市場シェアは1位はNPT、2位はIngenico Group(インジェニコ)、3位はPAX、4位 はVeriFone(ベリフォン)、5位、6位はXdgとDspread Technologyです。
市場規模
調査会社の二―ルソンによれば、2018年のPOS決済端末の出荷台数は103.6億台となります。2017年比39%の増加です。調査会社のグランドビューリサーチによれば、2019年のPOS端末の市場規模は690億ドルです。年平均7.5%で2027年に向けて成長を見込みます。
日本市場の場合、2018年頃からQRコード決済の提供会社が増加し、また日本政府のキャッシュレス決済の推進によって、従来現金決済のみの店舗への決済端末導入が浸透しつつあります。従来はメーカー独自費用のPOS連動型の高機能クレジットカード決済端末が主戦場でしたが、iPadなどを用いた汎用型機器で対応できるスマレジやスクエア等のクラウド連動型の携帯決済端末を扱う決済代行業者の登場によって、潜在的な価格競争にさらされています。また、QRコード決済は、そもそも決済端末を必要としないため、今後キャッシュレス決済を検討している少額多頻度決済が行われる店舗では、クレジットカード等の端末を導入せずに、読み取り型QRコードのみを設置するような流れも考えられます。さらには、クラウド上に蓄積されたPOSデータの活用という観点からビッグデータ分析のニーズも生まれてきています。
再編
- 2006年 ベリフォンによるLipmanの買収
- 2008年 インジェニコとSagemMonetelとの経営統合
- 2008年 HypercomによるThalesのe-Transactions事業の買収
- 2010年 ベリフォンによるGemaltoの決済端末事業の買収
- 2011年 ベリフォンによるHypercom買収
- 2018年 Francisco Partnersがベリフォンを買収
- 2020年 フランスの決済システム大手Worldlineによるインジェニコ買収
POS端末メーカーの動向
Ingenico Group(インジェニコ)
フランスに本拠を置く世界的なPOS・決済端末メーカーです。世界で約3,000万台程度の稼働決済端末を提供しています。ユーロネクスト市場に上場しています。2020年2月にフランスの決済プロセッシング大手であるWorldline(ワールドライン)がインジェニコの買収を発表しました。ワールドラインは、スイス証券取引所の運営会社であるSIXグループやフランスの大手IT会社であるAETOS(エートス)が大株主となっています。
VeriFone(ベリフォン)
米国に本拠を置く決済端末メーカー大手です。世界で2,000万台程度の決済端末を提供しています。2018年にFrancisco Partnersが約27億ドルで買収をしました。端末販売モデルからPaaS型クラウドサービス展開を図るために、smartpayなどの買収を行っています。
- 2018年 オランダのオンライン決済プラットフォームを展開するDimeboxを買収
- 2019年 無人店舗用のセルフサービス決済端末を展開するZIVELOを買収
- 2019年 Swedbank傘下のスウェーデンのBabsPaylinkを買収
- 2019年 決済ソリューションソフトウェアを展開するSmartpayのニュージーランド事業を買収
- 2020年 オランダのイーコマース開発会社で2Checkoutを展開するAvangateを買収
PAX Technology(パックス・テクノロジー)
中国の大手POS決済端末メーカーです。モバイル向けや非接触型の決済端末にも注力しています。
SZZT(深圳市证通电子股份有限公司)
中国を代表するPOS端末メーカー大手です。キオスク(情報端末)の分野にも強みを持ちます。
Newland Payment Technology (NPT、ニューランドペイメントテクノロジー)
中国のNewland Group(新大陸)グループ傘下のPOS端末メーカーです。新大陸グループは1994年に設立されたIT開発企業です。
XGD(Shenzhen Xinguodu Technology, Nexgo)
2001年に設立された中国に本拠をおくPOS端末メーカーです。
Dspread Technology
中国の決済端末メーカーです。ポータブル型に強みがあります。
東芝テック
東芝の子会社です。端末とレジシステム等を連動した決済システムの構築を得意とします。
東芝について
東芝は、日本を代表する重電メーカーです。重電5社(日立、三菱電機、富士電機、明電舎)の一角です。芝浦製作所と東京電気が経営統合して、東京芝浦電気(現東芝)が1939年に誕生しました。経団連会長を輩出する等日本を代表するメーカーの1社でもあります。2016年のウェスティンハウスの減損問題発覚以降は、事業の再編を行い、ビジネスモデルを大きく転換しています。
インフラサービス、インフラシステム、デバイスプロダクトが2020年時点での事業の柱となっています。インフラサービスは、産業用モータ、空調設備、照明、鉄道車両電気品、エレベーター、原子力・火力タービン、送配電、上下水道監視といった、ライフサイクの長い機器を取り扱っています。タービンでは、水力発電タービンや蒸気タービンの分野の世界シェアランキングの上位に位置し、強みを持っています。エレベーター分野ではフィンランドのKONE Corporation (コネ)社と合弁を展開していています。
冷暖房空調機とエアコン業界では東芝は旧ユナイテッドテクノロジーズから分社化独立したキャリアとの合弁事業を展開しています。
デバイスプロダクトでは、パワー半導体であるディスクリート、システムLSI、集積回路のHDD、二次電池、精密医療機器が含まれます。半導体・パワー半導体業界や車載カメラ向け画像処理チップ業界でも上位に位置づけています。HDDは富士通のハードディスク事業を統合し、世界3強の一角です。
インフラシステムには、情報セキュリティ、IoTソリューションズなどが含まれます。東芝テックにてPOS端末を手掛けており、国内のPOS端末業界では大手とされています。
2004年 超硬工具・タングステン業界大手の東東芝タンガロイを売却
2006年 沸騰水型原子炉 (BWR)大手のウェスティングハウスを買収
2007年 シリコンウエハ業界大手の東芝セラミックスを売却
2007年 東芝EMIを売却
2010年 携帯電話事業を富士通へ売却
2011年 東芝が電気・ガス・水道メーター業界大手のランディスギアを買収
2016年 東芝ライフスタイルを家電・エレクトロニクス・電機業界大手のMidea Group(美的集团)へ売却
2016年 医療機器・ヘルスケア機器業界大手の東芝メディカルシステムをキャノンへ売却
2017年 ウェスティングハウスが経営破綻
2018年 パソコン(ダイナブック)事業をシャープへ売却
2018年 東芝メモリを分社化・売却
2018年 テレビ事業をハイセンスへ売却
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