映画制作業界の世界市場シェアと市場規模の情報について分析しています。ユニバーサル・ピクチャーズ、ワーナー・ブラザーズ、ディズニー、パラマウント・ピクチャーズ、ソニー・ピクチャーズ等世界の主要な映画会社の動向も掲載しています。
映画制作業界について
映画が映画館で上映されるまでには、制作・配給・興業という3つのプロセスを経ることになります。制作は映画を作ること、配給は映画を買い付けて映画館に販売・宣伝すること、興行は配給された映画を上映し映画館を運営することを意味します。
大手の映画会社ではこの3つすべてを担っていることもあります。例えば、国内大手映画会社の東宝はシネコン「TOHOシネマズ」を運営しており、制作から興行までを手がけています。
当メディアでは、配給・興行を含めて広義の上での「映画会社(映画制作会社)」の市場シェアを分析しています。
【映画制作業界市場シェア+ランキング】
映画制作会社各社の2022年度の売上高(⇒参照したデータの詳細情報)を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして2022年の映画制作・配給業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はユニバーサル・ピクチャーズ、2位はワーナー・ブラザース・ディスカバリー、3位はウォルト・ディズニーとなります。
2022年映画制作会社の世界シェア
順位 | 会社名 | 市場シェア |
---|---|---|
1位 | ユニバーサル・ピクチャーズ(コムキャスト) | 10.81% |
2位 | ワーナー・ブラザース・ディスカバリー | 10.19% |
3位 | ウォルト・ディズニー | 9.01% |
4位 | ソニー・ピクチャーズ | 4.23% |
5位 | パラマウント・ピクチャーズ | 3.88% |
©ディールラボ
ランキングに挙がっている5社が、映画制作・配給の「ビッグ5」と呼ばれています。かつてはMGM、コロンビア、PKOなどの企業も主要会社に名を連ねて「ビッグ6」「ビッグ7」と呼ばれていましたが、現在ではランキングに挙がっている5社が「ビッグ5」として落ち着きました。
映画を制作し、世界市場で配給するには、制作費・人件費・広告費など巨大な費用を必要とします。そのため、毎年数百本の映画を世界中に配給できる企業は少なく、ほぼ寡占状態となっています。また、「ビッグ5」は通信・エンターテイメントをおこなうコングロマリットで、多角的なビジネスの1つとして映画事業を手がけています。
ビッグ5のうち、ソニー以外の4社が米国企業です。元々アメリカは映画制作がさかんで、世界へ向けて配給することが可能なため、映画会社も世界で高いシェアを誇っています。映画の制作数が多い国としてインドや中国も挙げられますが、基本的に国内向けに制作・配給されているため、世界シェアランキングには上がってこないのだと考えられます。
【映画制作業界の市場規模+ランキング】
当サイトでは、調査会社等の公表データを参考にし、映画業界の2022年の市場規模を954.5億ドルとしております。参考にしたデータは以下の通りです。
調査会社のリサーチアンドマーケッツによると、2022年の同業界の市場規模は954.5億ドルです。2012年から2030年にかけて、年平均7.2%で成長し、2030年には1696億ドルへ拡大することが見込まれます。
調査会社のスカイクエストによると、2022年の同業界の市場規模は974.7億ドルです。2022年から2030年にかけて、年平均7.2%で成長し、2030年には1697億ドルへ拡大することが見込まれます。
調査会社のグランドビューリサーチによると、2021年の同業界の市場規模は909.2億ドルです。2022年から2030年にかけて、年平均7.2%で成長し、2030年には1697億ドルへ拡大することが見込まれます。
⇒参照したデータの詳細情報【M&Aの動向】
映画制作会社を大手通信・メディア会社が買収する流れが続き、5大映画制作会社で独立系はなくなりました。映画の制作費が大きくなったことが背景にあります。M&Aにおける企業価値に対する売上高の倍率は1~4倍前後となっています。
- 2006年 ウォルトディズニーがピクサーを74億ドルで買収
- 2009年 ウォルトディズニーがマーベルエンタテインメントを40億ドルで買収
- 2011年 コムキャストがNBCユニバーサルメディアの株式51%を62億ドルで買収
- 2012年 ウォルトディズニーがルーカスフィルムを40.5億ドルで買収
- 2013年 コムキャストによるNBCユニバーサルメディア買収
- 2014年 AT&TによるディレクTV買収
- 2016年 AT&Tによるタイムワーナー買収
- 2017年 ウォルトディズニーによる21世紀フォックス買収
- 2018年 AT&Tがタイムワーナーを850億ドルで買収
- 2019年 ウォルトディズニーが21世紀フォックスを約710億ドル買収
- 2019年 CBSとバイアコムが経営統合し、バイアコムCBSが誕生
- 2019年 ウォルトディズニーがHuluを買収
- 2022年 アマゾンがMGMを85億ドルで買収
- 2022年 ワーナーメディアとディスカバリーが経営しWarner Bros. Discoveryが誕生
- 2022年 バイアコムCBSが社名をパラマウントグローバルへ変更
2019年ディズニーが21世紀フォックス(旧20世紀フォックス)を買収したことで、ディズニーのシェアが大きくなりました。また、映画制作会社を大手通信・メディア会社が買収する流れが続いており、親会社がTV事業などの映像メディア事業とともに映画事業を手がける構図が広まっています。これは、映画の制作費が大きくなり、映画の上映までに巨額の費用が必要になってきたことが背景にあります。
2010年以降の規模が大きい(50億ドル以上)M&Aにおいて売上マルチプルを比較すると、倍率は0.3~6倍前後となっています。倍率の平均値は2.3、中間値は2.9です。
業界に詳しくなるためのお薦め書籍と関連サイト
最新映画産業の動向とカラクリがよ~くわかる本
Webメディア(検索サイト・SNS)の市場シェアと市場規模の分析
音楽配信サービス業界の世界市場シェアの分析
【会社の概要】
Universal Pictures(ユニバーサル・ピクチャーズ)
米国に本拠を置く映画大手です。代表作に、「ジュラシック・パーク」、「ジョーズ」、「ミニオンズ」が挙げられます。ケーブル会社大手のコムキャスト傘下にあります。グループ会社には、GE傘下にあった米4大テレビ局のNBCユニバーサル等があります。ユニバーサルスタジオは、ユニバーサル・ピクチャーズのテーマパークです。
コムキャストについて
Comcast(コムキャスト)は、1963年に設立された米国を代表するケーブルテレビ会社です。2002年にAT&Tからケーブル事業、2009年にGEからNBCユニバーサル、2018年には欧州のSkyを買収して、通信・メディア大手企業となりました。さらに詳しく
Warner Bros. (ワーナー・ブラザース)
米国に本拠を置く世界大手のテレビ・映画・ゲーム製作・配給会社です。代表作に、「ハリー・ポッター」シリーズ、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズがあります。米のメディアコングロマリットであるCNNグループのタイム・ワーナー社の傘下でしたが、2016年にAT&Tがタイムワーナー社を買収しました。2017年に出版大手のタイムを同業のメレディスが買収しています。2022年にはワーナーとディスカバリーが経営統合し、ワーナーブラザーズ・ディスカバリーが誕生しました。
AT&Tについて
AT&Tは米国最大級の通信メディア会社です。電話を開発したグラハム・ベルによって設立された世界初の電話会社の流れをくみます。長距離と地域電話会社(ベビーベル)への分割後、ベビーベルの1社のSBCコミュニケーションがAT&Tを買収し、AT&Tへと改めて社名を変更しました。携帯、固定電話、ブロードバンドといった通信事業を展開しています。ルーセントテクノロジーやリバティメディア等はもともとAT&Tより派生した会社群です。2014年に衛星通信テレビDirecTVを、2016年にタイムワーナーを買収しメディア事業を強化していますが、5Gの免許料や設備投資が重く、2020年にDirecTVを売却し、2021年にワーナーメディアをディスカバリーと経営統合するとの発表をしました。さらに詳しく
Walt Disney( ウォルト・ディズニー)
ディズニーは1923年に設立された米国を代表するメディアエンターテイメント会社です。ミッキーマウスやディズニーランドで有名です。ディズニー映画は圧倒的な人気を保ち、映画配給の分野でも大手です。4大テレビ放送局のABCもグループ会社です。映画制作会社の分野では、2006年にPixar、2009年にMarvel Entertainment、2011年にLucasfilmをM&Aで買収しています。2017年にFox Entertainment(フォックス・エンターテイメント)を含む21世紀フォックス社の買収をしました。2019年にHuluの完全子会社化を発表し、ケーブルテレビ向けとインターネット向けのコンテンツ動画配信を強化しています。さらに詳しく
フォックス・エンターテイメントについて
Rupert Murdoch氏率いるメディアコングロマリットである21st Century Fox社傘下の映画製作・配給会社です。代表作に、「X-メン」シリーズや「ダイハード」シリーズがあります。元々は20世紀フォックスの名前でした。21st Century Fox社は2013年のNews Corpから会社分割を経て誕生しました。FOXコーポレーションはアメリカの4大テレビ局の1社です。2017年にウォルト・ディズニーが21世紀フォックス社を買収しました。現在はフォックス・コーポレーションとしてテレビやケーブルテレビ向けのコンテンツ制作・配信事業を行っています。
Paramount Pictures(パラマウント・ピクチャーズ)
2013年にViacom(バイアコム)とCBSが経営統合して誕生した米国のメディア大手パラマウントグループ(旧バイアコムCBS)傘下の映画制作・配給会社です。兄弟会社に米4大テレビ局のCBSやMTV等があります。Sumner Redstone氏率いるNational Amusementsがパラマウントグループの実質オーナーとなっております。
パラマウントグループについて
パラマウントグループ(旧Viacom(バイアコム))は、米国の大手通信メディア企業です。CBS Filmsが分社化して誕生しました。1986年にサムナー・レッドストーン氏が経営権を握ったあとは、買収を通じて成長をしました。1994年にパラマウント・ピクチャーズ、1999年に源流であるCBSを買収し、会社分割を経て現在は、テレビ局、ケーブルテレビ、映画事業を展開しています。2022年にパラマウントグループへと社名変更をしました。さらに詳しく
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(Sony Pictures)
ソニーの子会社の映画製作・配給会社です。ソニーが1989年にコカコーラ社よりコロンビア・ピクチャーズ・エンタテインメントを買収して誕生しました。
ソニーについて
ソニーは、日本を代表する総合電機メーカーです。ソフトウェアとハードウェアが融合したエコシステム構築を目指しています。ゲーム機器、音楽、金融、映画、音響やテレビ等のエレクトロニクス、イメージセンサーで事業を展開しています。
イメージセンサー分野では、ルネサンスの山形工場を買収する等圧倒的な強みを持ちます。2015年には東芝の大分工場の一部を買収しました。競合他社を引き離すために、2019年以降3年間で約6000億円の設備投資を実施し、現状強みを発揮するスマホ更なる需要(複眼化)に対応しつつ、今後の主戦場になると考えられる車載や産業機器向けの分野を伸ばす予定です。日米欧の3極での拠点構築に積極的です。
テレビでは、ブラウン管の時代からテレビ事業の競争力を保っております。液晶パネルの製造はしておらず、EMSの台湾ホンハイ(Hon Hai Precision)へのOEM比率を高めています。
ゲーム機では、プレイステーション・シリーズを展開し、ハードと課金の両面で成長しております。
ビデオカメラでは、ハンディカムで一世風靡しました。スマホでのビデオ利用に押され同市場も縮小しているなか、デジタルカメラはミノルタの一眼レフを買収しています。ミラーレスやプロ向けの機種に注力をしています。さらに詳しく
その他の映画会社として、現アマゾン傘下のMGM、「ソウ」シリーズで有名なカナダの映画会社ライオンズ・ゲートなどがあります。日系の映画会社としては、東宝、松竹、東映があります。
参照したデータの詳細情報について
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