アクティビスト最大手クラスのサードポイント Third Pointが2021年10月27日に四半期レターを発行しました。レター内容について分析しています。
運用成績の概略
サードポイントのリターンは、第3四半期のYTDで29.5%、年率換算で15.5%となりました。ベンチマークとなるMSCIワールドインデックスは、同期間でそれぞれ13.4%、7.8%なので、インデックスを上回るリターンを計上しております。
第3四半期は、個人向け融資を行うシリコンバレーのフィンテック企業のアップスタートホールディングス(+153%)、クラウドベースでサイバーセキュリティを提供するセンチネルワン(+26%)、生命保険のプルデンシャルPLC、医療診断機大手のダナハ―、バイオ医薬品開発向け試薬品や消耗品供給会社のアバントールへの投資が好リターンに繋がりました。
短期的な見通しでは、サプライチェーンの混乱、労働力不足、資源価格の上昇など、業界によって業績はまばらになると予想しています。
イベントドリブン投資
ビベンディ
2021年の第1四半期にビベンディに投資を行いました。投資の背景としては、音楽業界大手のユニバールミュージックの分社化を発表したことになります。サードポイントは、ビベンディの大株主であるヴィンセント・ボロレと2021年当初よりユニバーサルミュージックのガバナンス手法と協議を行いました。2021年9月下旬にユニバーサルミュージックが上場を果たしました。
デルテクノロジーズ
2021年初めにVMWareの分社化を発表したデルテクノロジーズにも投資を行っています。サーバー業界やパソコン業界でトップクラスのシェアを持ちますが、同業他社に比べるとディスカウントで取引されており、VMWareの分社化によって潜在的な価値が解き放たれると考えています。
エンテイン(Entain)
カジノ業界大手のMGMが英国のスポーツくじ・iGamingやオンラインカジノ大手であるエンテインの買収を2021年初頭に断念して以降、エンテインへの投資を行いました。その後9月にオンラインカジノ大手であるドラフトキングス(DraftKings)がアプローチした後、買収を断念しました。エンテインの戦略的な価値が市場で評価をされました。
プルデンシャルPLC
Jackson Nationalの分社化やアジア事業強化に向けた資金調達を行っており、同業の保険会社とのディスカウントが解消されつつあると考えています。
ロイヤルダッチシェル
2021年の第2四半期と第3四半期にロイヤルダッチシェルへの投資を実行しました。過去2年間の大幅な減配、現地での裁判など取り巻く環境は厳しく、株価も割安な状態(2021eのEBITDAの4倍)となっています。シェルは、石油生産のみならず、脱炭素への移行期間のエネルギーとして重要なLNGの分野でも大手です。
シェルは既に石油精製所や上流権益を売却し、純負債のEBITDA倍率が1位以下となりました。再生可能エネルギーなどへも大型の投資をおこなっています。
一方で、コンベンショナルな石油開発・石油化学事業と低炭素を促すLNGや再生可能エネルギー事業は投資リターンや投資家層も異なるため、サードポイントは両事業の分割の検討を要請しています。
サードポイントは2020年にマネジッドケア最大手のユナイテッドヘルスへの投資やEV業界において電動ピックアップ車を製造販売するリビアンへのプライベートインベストメントを行っています。