不織布は、ヘルスケア、ハイジーン、建設、自動車、農業、家具など、さまざまな業界でのアプリケーションに利用されています。アジア太平洋地域が最大の不織布市場であり、中国とインドがこの地域の成長をけん引しています。北米やヨーロッパも、技術革新と高度なヘルスケア・ハイジーン製品の需要により、主要な市場としての地位を保持しています。
Berry Global Inc., Freudenberg Group, Ahlstrom-Munksjö, Kimberly-Clark, Fitesa, TORAYなどの企業は、不織布の世界市場での主要なプレイヤーとして知られています。
環境に優しい生分解性の不織布やリサイクル可能な製品へのニーズが高まる中、持続可能な製品開発への取り組みも進められています。
不織布市場は、用途(ハイジーン、医療、建築、農業など)、技術(スピンボンド、メルトブローンなど)、材料(ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロンなど)によってセグメント化されています。
【不織布業界の世界市場シェア+ランキング】
不織布メーカー各社の2022年度の売上高⇒参照したデータの詳細情報を分子に、また後述する市場規模を分母にして、2022年の不織布業界の市場シェアを簡易に計算しますと、1位はフロイデンベルグ、2位はキンバリークラーク、3位は東レとなります。⇒参照したデータの詳細情報
不織布業界の世界市場シェアと業界ランキング(2022年)
順位 | 会社名 | 市場シェア |
---|---|---|
1位 | Freudenberg Group(フロイデンベルグ) | 26.91% |
2位 | Kimberly-Clark (キンバリー・クラーク) | 22.94% |
3位 | TORAY INDUSTRIES, INC.(東レ株式会社) | 16.40% |
4位 | BERRYGLOBALGROUP,INC.(ベリーグローバル) | 6.84% |
5位 | Glatfelter Corp(グラットフェルター) | 3.24% |
6位 | Fitesa(フィテサ) | 3.02% |
7位 | DuPont de Nemours, Inc.(デュポン) | 2.16% |
8位 | Alkegen(アルケジェン) | 1.65% |
9位 | Hollingsworth & Vose (ホリングスワース&ヴォーズ) | 1.57% |
10位 | PFNonwovens(PFノンウーベン、PFN) | 1.57% |
11位 | Johns Manville(ジョンズ・マンビル) | 1.57% |
12位 | Ahlstrom-Munksjö(オールストローム) | 1.41% |
13位 | Suominen(株式会社スオミネン) | 1.13% |
1位は、ドイツのフロイデンベルグ社です。同社は2015年に不織布大手の日本バイリーンを東レとともに共同買収しております。
2位は米国の衛生用品大手のキンバリークラークです。他のおむつメーカーと異なり、不織布の生産も行う垂直統合的な事業展開を行っています。
3位は日本の東レ(TORAY)で、同社は繊維業から派生しグローバルに展開しており、多岐にわたるビジネスセグメントに事業を拡大しています。
4位は、米国の特殊プラスチックメーカーのベリー・プラスチック(Berry)です。同社は、1967年に、インペリアル・プラスチックとして創業された老舗プラスチックメーカーです。2015年に、アヴィンティブ(Avintiv)を買収し、不織布分野を強化しています。
【不織布業界の世界市場規模】
当サイトでは、各調査会社等の公表データを参考にし、不織布業界の2022年の世界市場規模を463億ドルとして市場シェアを計算しております。参照したデータは以下の通りです。
調査会社のリサーチネスタ―によると、2022年の同業界の市場規模は463億ドルとなります。2035年にかけて年平均8.70%で成長し、同年には1259.9億ドルに達することを予想しています。⇒参照したデータの詳細情報
年 | 市場規模 | 成長率見込み |
---|---|---|
2022年 | 463億ドル | – |
2035年 | 1259.9億ドル | 8.70% |
【M&Aの動向】
不織布は自動車のシートやおむつやマスクなどの衛生用品として引き合いが強く、市場の成長が期待できます。大手不織布メーカーによる買収などが盛んに行われている業界です。
2020年 独フロイデンベルグがFilc社の株式100%を取得
2018年 東レはオランダに本社のあるテンカーテ・アドバンスト・コンポジット社(TCAC)を買収
2018年 タイのIndorama VenturesがイスラエルのAvrolを買収
2017年 R2G Rohan CzechがPFノンウーベンを買収
2017年 アールストロームとムンクシューが経営統合
2015年 ベリーがアヴィンティブを買収
2015年 フロイデンベルグと東レが日本バイリーンを買収
2014年 アヴィンティブがProvidenciaを買収
2013年 アヴィンティブがFiberwebを買収
2013年 アヴィンティブがFiberwebを買収
【不織布の作り方】
不織布は、原料等によって種類が分かれます。用途としては、紙おむつなどの衛生用品から、タイルカーペット、建築向けの防水基布、車の素材、農業用のシートなど幅広く使用されています。特に、ポリプロピレンを原料とする不織布は、高吸水性樹脂とならび、おむつの必要不可欠な原料となっています。紙おむつは、不織布おむつと換言しても過言ではないでしょう。
不織布は、布状の織らない繊維の総称です。作り方は、わたの集合を作るウェブ工程と、結合するバインディング工程に分かれます。ウェブ工程には、乾式、湿式、エアレイド式等の方式が、またバインディング工程にはケミカルボンド式、サーマルボンド式、ニードルパンチ式等の方式があります。ウェブ工程とバインディング工程を合わせたスパンレイド(スパンメルト)方式も最近よく使われています。
工程の違いによって、ケミカルボンド不織布(CB)、サーマルボンド不織布(TB)、ニードルパンチ不織布(NP)、スパンレース不織布(SL)、スパンボンド不織布(SB)やメルトブロー不織布(MB)が生まれます。
さらに業界に詳しくなるためのお薦め書籍と関連サイト
不織布活用のための基礎知識
不織布のおはなし―織らない布って何だろう?
化学業界の市場シェア・売上高ランキング・市場規模・再編の分析
【会社の概要】
BERRYGLOBALGROUP,INC.(ベリーグローバル)
1967年に設立された米国に本拠を置くプラスチック包装大手メーカーです。エアゾールキャップ製造では世界大手の一角です。ヘルスケア、パーソナルケア、食品・飲料向けに、不織布や各種プラスチック容器を販売しています。競合会社にはAmcor、Silgan、Aptar、Reynolds、Intertape、3M、Tredegar、Avgol、Fitesaなどが含まれます。
Freudenberg Group(フロイデンベルグ)
ドイツに本拠を置く不織布メーカー世界大手です。非公開会社です。2015年に日本バイリーンに対して東レとともに子会社化しました。ポリエステルスパンボンド不織布とフィルター事業が二本柱です。
DuPont de Nemours, Inc.(デュポン・ド・ヌムール、デュポン)
米国に本拠を置く世界最大級の化学メーカーです。日本では旭化成との合弁会社の旭・デュポン フラッシュスパン プロダクツにて不織布(タイベック)を展開しています。
Kimberly-Clark (キンバリー・クラーク)
Kimberly Clark(キンバリー・クラーク)は、1872年に設立された米国のテキサス州に本拠を置くおむつ等の衛生用品及びティッシュメーカーです。おむつは、Huggies(ハギーズ)、Pull-Ups、Little Swimmers、GoodNites、DryNites、Kotexなどのブランドで展開し、不織布も内製しています。Kleenex(クリネックス)やScottブランド等のブランドでティッシュにも強みを持ちます。消費者向けだけでなく業務用でも展開しています。2014年にヘルスケア部門をスピンオフ(現Avanos Medical、アバノスメディカル)しました。さらに詳しく
Ahlstrom-Munksjö(アールストローム・ムンクショー)
フィンランドに本拠を置く特殊紙・繊維大手です。ヘルシンキ証券取引所に上場しています。2017年にアールストロームとムンクシューが経営統合をして誕生しました。不織布以外にも、フィルター、グラスファイバー布、化粧紙等の分野で世界的な強みを持ちます。
化粧紙の分野では、Technocell, Malta Decor, Koehler, Kingdecor, Shandong Qifengが競合会社として挙げられます。
グラスファイバー布では、Saertex, Owens Corning, Johns Manville, Saint Gobainが競合会社となっています。
Avintivについて
旧PGIです。2013年に不織布大手の英Fiberweb社、2014年にブラジルの不織布大手のProvidencia社を買収し規模を拡大しました。ブラックストーン傘下にありましたが、2015年に米特殊プラスチックメーカーのベリー・プラスチックが買収しました。
PFNonwovens(PFノンウーベン)
チェコ共和国に本拠を置く不織布大手メーカーです。2017年に投資会社のR2G Rohan Czechが買収をし、PEGAS NONWOVENSより社名変更しました。
Johns Manville(ジョンズ・マンビル)
米国に本拠を置く建材大手です。かつてはアスベストの生産で世界最大のメーカーでした。現在はBerkshire Hathaway(バークシャー・ハサウェイ)傘下です。
バークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway)は、オマハの賢人ウォーレン・バフェット氏率いるコングロマリットです。元々は1888年に設立された綿紡績業の会社でした。1960年代にウォーレン・バフェット氏が支配権を獲得、現在は保険(GEICO)・再保険事業(ジェネラル・リー )、鉄道、ガス電力、各種製造業等を幅広く展開しています。同社の株式は、ウォーレン・バフェット氏が議決権の30%程度を保有しています。さらに詳しく
Glatfelter Corp(グラットフェルター)
米国に本拠を置く不織布メーカーです。コーヒーフィルターや衛生用不織布等に強みを持ちます。ニューヨーク証券取引所に上場をしています。
TORAY INDUSTRIES, INC.(東レ株式会社)
1926年に三井物産が設立した東洋レーヨンを祖とする総合化学メーカーです。祖業は繊維で、東レは東洋レーヨンの略です。現在は日本を代表する素材系メーカーとなっています。
水処理分野ではRO膜の分野に強みを持ちます。ダウ、キャボットと並び大手です。炭素繊維では航空機向けに強みを持ちます。
熱硬化性炭素繊維、CFRPにも強く1971年に発売を開始した「トレカ」の商標で販売をしています。航空機分野ではボーイングへの納入実績では他社を圧倒しています。熱可塑性の炭素繊維複合材に強みを持つオランダのテンカーテ・アドバンスト・コンポジット社を2018年に買収し、熱硬化性と熱可塑性の素材に対応できる技術力を高めています。
セパレータはセティーラブランドで展開しています。車載電池向けでは、ボリューム拡大よりも、利幅が大きいとされるハイエンド向けに特化する方針です。ドイツのダイムラーと提携しています。
エアバッグの生地やおむつ等に使用する不織布でも大手です。さらに詳しく
日本だと、東レ以外には旭化成、三井化学、東洋紡、ユニチカなどが不織布を手掛けています。
Fitesa(フィテサ)
ブラジルに本社を持つFitesaは、ノンウーブン業界での主要なプレーヤーであり、ハイジーンや医療用途の製品を中心に製造しています。
Hollingsworth & Vose (ホリングスワース&ヴォーズ)
アメリカに拠点を置く会社で、高性能フィルタリングメディアや工業用材料を製造しています。