印刷業界の世界市場シェアと市場規模について分析をしています。RRダネリー、クォードグラフィックス、シンプレス、大日本印刷、凸版印刷といった大手印刷会社の概要や動向も掲載しています。
【市場シェア】
印刷会社各社の2021年度の売上高を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、2021年の印刷業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位は凸版印刷、2位は大日本印刷、3位はRRダネリーとなります。⇒参照したデータの詳細情報
印刷会社の世界市場シェアと業界ランキング(2021年)
順位 | 会社名 | 市場シェア |
---|---|---|
1位 | 凸版印刷 | 1.02% |
2位 | 大日本印刷 | 0.84% |
3位 | RRダネリー | 0.66% |
4位 | クォードグラフィックス | 0.39% |
5位 | トランスコンチネンタル | 0.35% |
6位 | シンプレス | 0.35% |
7位 | デラックス・コーポレーション | 0.27% |
8位 | ベルテルスマン | 0.20% |
9位 | 富士フィルム | 0.16% |
©ディールラボ
印刷業界の売上高による世界市場シェアの1位は、日本の凸版印刷となります。2位は大日本印刷です。トップ2社を日本が占めました。3位は、米国のRRダネリーとなります。近年金融向けサービス事業等を分社化し、売上高では規模が縮小しました。4位は米国のクォードグラフィックスです。6位は米国の受注印刷最大手であるシンプレス、7位には、米国のデラックスとなっています。8位にはドイツのベルテルスマンが入っています。中国勢は国内の競争が激しく、国内1位と目されるBeijing Shengtong Printingもトップ8社に入っておりません。
【市場規模】
当データベースでは、2021年の商業印刷業界の市場規模を7501億ドルとしております。参照した各種統計データは次の通りです。
調査会社のアイマークによれば2019年、2020年と2021年の同業界の市場規模は、それぞれ7316億ドル、7400億ドル、7501億ドルです。です。2026年には市場規模が7900億米ドルに達すると予測しています。また調査会社のスマイザーによれば、2022年の同業界の規模は8210億ドルです。
年 | 推定市場規模 | 前年比成長率 |
---|---|---|
2021年 | 7501億ドル | 1.36% |
2020年 | 7400億ドル | 1.15% |
2019年 | 7316億ドル | n/a |
印刷の市場規模の分類
印刷の市場規模を製品別に見てみますと、主に新聞、雑誌、書籍、辞書、カタログの分野でマイナス成長となっています。デジタルメディアの進展に伴い、情報媒体がインターネットを通じてスマホやパソコン等へシフトし、印刷の需要が減少していることが要因です。特に書籍は、アマゾン等による電子書籍の進展が見込まれます。かつて音楽業界におけるCDが、ストリーミング等の音楽コンテンツ配信サービスの成長に伴い、販売が減少したことと同じ構図が予想されます。印刷の手法では、カタログや書籍等の印刷方式である平版オフセット印刷の減少は幅が大きいです。これは、メディア媒体の変化に加え、デスクトップ・パブリッシング等の進展により、製版工程の中抜きが進行したことも理由としてあげられます。
印刷の種類
印刷の種類には、製版方法によって、大きく平版、凸版、凹版、孔版の4つに分かれます。平版のオフセット印刷は、その印刷手法から、大量印刷に向いているため、書籍やカタログ等の印刷に用いられてきました。現在は、プリンターの性能も向上して、オフィスや自宅で印刷が可能となるため、印刷種類の中でもマイナス成長が続く分野です。
その他には、フレキソ印刷に代表され、段ボール等の表面が滑らかでない素材への印刷が可能である凸版印刷、グラビア印刷に代表される、写真等の繊細な色使いが求められる素材への印刷が可能である凹版印刷、スクリーン印刷に代表される、プリント基板やプラスチック等紙以外の素材への印刷が可能である孔版があります。
【M&Aの動向】
2018年にラベル印刷大手のCenveo(センベオ)、2020年にRRダネリーから分社化したLSC Communications(LSCコミュニケーションズ)がチャプター11を申請するなど、紙媒体からデジタル化の流れが加速するなかで、事業の再構築を目指す流れが続いています。
さらに業界に詳しくなるためのお薦め書籍と関連サイト
印刷業界大研究 新版
1秒でわかる!印刷業界ハンドブック
プリンター、コピー機、複合機、複写機業界の世界市場シェアの分析
【会社の概要】
R.R. Donnelley & Sons(RRダネリー)
米国に本拠を置く世界大手の総合印刷会社です。印刷事業外にもビジネスプロセスアウトソーシング、金融情報サービスやフルフィルメント事業へ展開をしています。顧客の配送コスト削減に向けたぶつ雨竜サービスの展開、顧客管理のアウトソースの受託まで行うBPO業務等も積極的に買収を通じて取り込んでいます。2006年に金融向けアウトソース大手のオフィス・タイガー、2007年にDMサービスのバンタ、2012年に米国で開示資料管理システムを展開するエドガーオンライン(米国版のEDINET)、2015年には電子出版のクーリエを買収しています。
2015年に、金融向けサービスを手掛ける事業をドネリー・フィナンシャル・ソリューションズとして、出版や配達及びノートやファイル等のオフィス商品を手掛ける事業をLSCコミュニケーションズとして分社化させました。
Quad/Graphics(クォードグラフィックス)
米国に本拠を置く大手印刷会社です。子会社にインク会社を保有しています。2010年にWorld Color Press(ワールドカラープレス社)を買収し、中南米事業を強化しました。2014年にはカタログ印刷に強みを持つ米国のブラウン・プリンティングを買収し、旧来型の印刷事業での規模拡大を図っています。
Cimpress(シンプレス)
オランダに本拠を置くオンデマンド印刷大手です。旧VistaPrint(ビスタプリント)です。インターネットを駆使し、名刺やポストカードの印刷受注を行っています。
Cenveo(センベオ)
米国に本拠を置く印刷会社です。ラベル印刷等の分野に強みを持っています。2011年にオランダとインドのアルバムプリンターとプリントベルを買収しました。2014年と2015年にはイタリアのピクスアートプリンティング、フランスのエグザグループを買収し、アジアと欧州での事業を強化しています。2018年にチャプター11を申請し、上場廃止となりました。
Deluxe Corporation(デラックス・コーポレーション)
デラックスは、米国の印刷会社です。中小企業や金融機関に対して、小切手、伝票、名刺、事務用品、グリーティングカード、ラベルの印刷を提供しています。
Bertelsman(ベルテルスマン)
Bertelsmann(ベルテルスマン)は、1835年にカール・ベルテルスマン氏によって設立されたドイツに本拠をおくメディアコングロマリットです。ベルテルスマン財団と中興の祖であるヨハネス・モーン氏系のモーン家が支配する未上場です。テレビ事業はRTL Group、出版事業はランダムハウス(Random House)とグルナー・ヤール(Gruner + Jahr)、音楽レーベルのBMG、印刷のBertelsmann Printing、オンライン教育を手掛けています。2020年にグルナー・ヤール傘下のPrisma Media(プリズマ・メディア)をビベンディへ売却しました。さらに詳しく
Transcontinental(トランスコンチネンタル)
1976年に設立された米国に本拠を置く商業印刷と軟包装印刷に強みを持つ会社です。
Beijing Shengtong Printing(北京盛通印刷)
2000年に設立された中国の大手印刷会社です。深セン証券取引所に上場しています。雑誌や新聞の印刷を得意とします。
日本の大手印刷会社
日本は大日本印刷と凸版印刷が大手です。商業印刷はデジタル印刷の分野も積極的に取り込んでいき防衛的な戦略をとりつつ、紙以外の分野での印刷、包装印刷、プリント基板印刷、液晶フィルター事業等エレクトロニクス関連等の成長分野への積極投資を行っています。
参照したデータの詳細情報について
参照したデータは以下の通りです。リンク切れなどありましたら、お問い合わせのページからご連絡頂けますと大変有難く存じます。
印刷会社の売上高ランキング
参照した市場規模の情報