プラチナ採掘生産業界の世界市場シェアと市場規模について分析をしています。アングロアメリカンプラチナ、シバニエティルウォーター、ノーザムプラチナ、ノリリスクニッケル、インパラ、アフリカンレインボーミネラルズなどプラチナ生産の世界大手の動向も掲載しています。
【プラチナ業界とは】
プラチナの用途
白金族のプラチナとパラジウムは、自動車の排ガス向け触媒として、エンジンから発生するHC,CO,NOxという毒性ガスを無毒化するために必要不可欠な工業用触媒です。プラチナはどちらかというとディーゼルエンジン、パラジウムはガソリンエンジンに多く使われます。内燃エンジンがEV(電動化)していった時に、プラチナの触媒としての需要も影響を受ける可能性があります。一方で、水素を使った燃料電池車の触媒としても存在感を示しています。
触媒以外には、カテーテルやペースメーカーといった医療機器、液晶の基板やハードディスクドライブの素材、装飾品としても利用されています。
なお、プラチナはパラジウムより柔らかくアレルギーもないため、装飾品でパラジウムより多く使われます。パラジウムはプラチナや金の割金(Pt950のプラチナは95%プラチナで残り5%はパラジウムの場合が多い)として利用されています。
プラチナ価格推移(米ドル建/オンス)
ディーゼルエンジンの主流であった欧州がEV自動車へのシフトをはかる中で、2013年以降プラチナ価格は軟調に推移しています。
さらに業界に詳しくなるためのお薦め書籍と業界団体と関連サイト
Sustainable Urban Mining of Precious Metals
The World Market for Ores and Concentrates of Precious Metals
World Platinum Investment Council:プラチナ価格の統計が充実
金やゴールド採掘業界の企業別世界市場シェアの分析
パラジウム採掘生産会社の世界市場シェアの分析
ロジウム採掘生産会社の世界市場シェアの分析
【市場シェア】
プラチナ生産会社各社の2022年度の年間採掘量⇒参照したデータの詳細情報を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして2022年のプラチナ業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はアングロアメリカンプラチウム、2位は2021年に1位だったインパラプラチナ、3位はシバニエスティルウォーターとなります。
プラチナ生産会社の採掘量市場シェア(2022年)
順位 | Company name(English) | 会社名 | 市場シェア |
---|---|---|---|
1位 | Anglo American Platinum | アングロアメリカンプラチウム | 27.6% |
2位 | Impala Platinum Holdings Limited | インパラプラチナ | 21.3% |
3位 | Sibanye Stillwater | シバニエ スティルウォーター | 16.8% |
4位 | Norilsk Nickel | ノリリスク・ニッケル | 9.7% |
5位 | Northam Platinum | ノーザムプラチナ | 6.5% |
6位 | African Rainbow Minerals Limited | アフリカンレインボーミネラルズ | 2.1% |
7位 | Glencore plc | グレンコア | 0.5% |
【市場規模】
当データベースでは、2022年のプラチナの世界市場規模(採掘量ベース)を6.7百万オンスとしております。参照にしたデータは以下の通りです。
調査会社のレポートリンカーによると、2023年のプラチナ採掘量は7.8百万オンス、2028年には9.71百万オンスになる見込みです。2028年にかけて年平均4.52%の成長と予想しています。電気自動車(EV)の普及が燃料電池の需要を押し上げ、プラチナ需要をも押し上げています。
調査会社のスタティスタによると、2022年のプラチナの採掘量は190トン(≒6.7百万オンス)です。
調査会社アイマークによると、2022年プラチナ業界の市場規模は387億ドルです。2028年にかけて495億ドルに達し、年平均3.95%での成長を見込んでいます。⇒参照したデータの詳細情報
年 | 市場規模 | 成長率見込み |
---|---|---|
2022年 | 387億ドル | – |
2028年 | 495億ドル | 3.95%/年 |
【M&Aの動向】
2016年 シバニエはスティルウォーター鉱山会社を買収
2016年 シバニエスティルウォーターによるアクエリアスプラチナの買収
2018年 アングロアメリカンプラチウムがモトトロ合弁事業の買収を完了
2019年 インパラによるノースアメリカンパラジウムの買収
2019年 シバニエスティルウォーターによるロンミンの買収
2022年 アフリカン レインボー ミネラルズ はボコニ・プラチナ・マインズ社の買収完了
2023年 インパラプラチナはロイヤル・バフォケン・プラチナの株式を過半数取得
【会社の概要】
Anglo American Platinum(アングロアメリカンプラチナム)
南アフリカに本拠を置く世界最大のプラチナ生産会社です。ヨハネスブルグ証券取引所に上場しています。資源大手のAnglo American(アングロアメリカン)子会社です。
Impala Platinum Holdings Limited(インパラプラチナムナホールディングス)
南アフリカの本拠を置くパラジウム、プラチナ生産大手です。略称Implats(インパラ)です。2019年にカナダに本拠を置くプラチナ・パラジウム生産大手であるNorth American Palladium(ノースアメリカンパラジウム)を買収しました。
Sibanye Stillwater(シバニエスティルウォーター)
米国に本拠を置くプラチナ・パラジウム生産大手です。ニューヨーク証券取引所に上場しています。プラチナ以外にもロジウムやパラジウムに強みを持ちます。2016年にオーストラリアのプラチナ大手であるAquarius Platinum(アクエリアスプラチナ)、2019年にプラチナ生産大手のロンミンを買収しました。
Lonmin(ロンミン)について
英国に本拠を置くプラチナ生産大手です。主な鉱山は南アにあり、Anglo Platinum(アングロ・プラチナ)、Implats(インパラ)と併せてプラチナ生産会社の御三家と称されていました。
Norilsk Nickel(ノリリスクニッケル)
Norilsk Nickel(ノリリスクニッケル)は、ロシアに本拠を置くニッケル・銅・パラジウム・プラチナ等の非鉄金属生産会社です。副産物としてコバルトも生産しています。大株主は、ロシアの財閥であるインターロス(Interros)やロシアのオリガルヒであるオレグ・デリパス氏率いるアルミニウム大手のルサール社です。同社が権益を保有するロシア北東のノリリスク-タルナフ地区は、世界最大のニッケル・銅・パララジウム鉱床です。アルミニウム製錬大手で、ルサールが筆頭株主です。ロンドン証券取引所に上場しています。ルサールは米国によるロシアの制裁の対象となっています。ロシアのKola (コラ)Divisionが主要鉱山です。
Northam Platinum(ノーザムプラチナ)
南アフリカに本拠を置くPGM生産会社です。プラチナ以外にもパラジウムやロジウムを生産します。南アフリカのブッシュフェルト、ゾンデラインデ鉱山やブイセンダル鉱山で生産をします。
African Rainbow Minerals(アフリカンレインボーミネラルズ、ARM)
1997年に南アフリカで設立された鉱山開発会社です。アングロアメリカン、インパラ、ロシアの資源大手であるNorilsk Nickel(ノリリスク・ニッケル)等とプラチナ生産を共同で行っています。白金族元素、鉄、石炭、銅、金などの鉱山を開発しています。
Royal Bafokeng Platinum Ltd(ロイヤルバフォケンプラチナ)
ロイヤル・バフォケン・プラチナは、アングロアメリカン・プラチナとロイヤル・バフォケン・ホールディングスの合弁事業、バフォケン・ラシモネ・プラチナ鉱山合弁事業を起源とする中堅の白金族金属の生産会社です。
Glencore plc(グレンコア)
1997年に南アフリカで設立された鉱山開発会社です。アングロアメリカン、インパラ、ロシアの資源大スイスを拠点とする天然資源を生産・販売する会社です。銅、亜鉛、ニッケル、合金鉄などの多様な金属と鉱物を生産・販売しています。オーストラリア、アフリカ、南アメリカに鉱山を持つ石炭の生産・販売業者であり、原油、精製製品、天然ガスの販売業者でもあります。銅や貴金属のリサイクルにも取り組んでいます。
参照したデータの詳細情報について
参照したデータは以下の通りです。リンク切れなどありましたら、お問い合わせのページからご連絡頂けますと大変有難く存じます。
参照した売上高ランキング
参照した市場規模の情報 ※以下のsourceは御覧いただきますタイミングにより上記市場規模と数値が異なる場合がございます。