オイルメジャー・石油開発業界の世界市場シェアの分析
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オイルメジャー・石油開発業界の世界市場シェアの分析

原油、石油やガスを開発生産する企業(オイルメジャー)の世界市場シェア、埋蔵量や業界再編について分析をしています。サウジアラムコ 、ガスプロム 、ペトロブラス、イラン国営石油、 シノペックといった世界大手石油ガス開発会社の概要や動向も掲載しています。

【オイルメジャー・石油開発業界】

石油業界の構造

石油産業は大きく原油の開発(探鉱・採掘)に関わる上流と、原油の精製やガソリンなどの石油製品の販売を手掛ける下流があります。欧米の石油メジャーは上流・下流ともに手掛けており、石油産業を理解する上では、こうした石油メジャーの動向を理解することが非常に大切になります。
出典:15分で石油業界を理解しよう!

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原油価格推移(ブレント原油)

原油価格には、WTI(ウェスト・テキサス・インターミディエート)、北海のブレント油田のブレント原油、アラブ首長国連邦のドバイ原油に基づく価格があります。WTI主に米国における原油指標、ブレントは欧州、アジアはドバイ原油が価格指標となっています。

日本の石油権益と石油メジャーの権益の比較

日本の大手商社やインペックス(国際石油開発帝石)が束になっても石油持分権益では、大手石油メジャーの足元にも及びません。なお、2016年と2017年の日本の商社の石油換算の持分生産量は以下の通りです。(出所:各社資料)

2017年(万B/D)

三井物産 24.4
三菱商事 17.9
丸紅 3.3
伊藤忠 3.2
双日 1.4
住友商事 0.7

2016年(万B/D)

三井物産 24.3
三菱商事 18.8
丸紅 2.8
伊藤忠 3.3
双日 1.6
住友商事 0.8

なお、国際石油開発帝石は日量40-50万バレル前後なので、世界ランキングで20位前後となります。
他に、2005年に石油公団の後継として誕生したJOGMEG(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)といった石油、天然ガスや鉱物の探鉱・備蓄や技術開発等を行う独立行政法人等はありますが、日本の石油会社はほとんどが下流分野やナフサや重油等の石油化学分野に特化しています。

【市場シェア】

石油ガス開発業界の世界市場シェア(売上高ベース、2021年)

石油ガス開発会社各社の2023年度の売上高⇒参照したデータの詳細情報を分子に、下記に記載の市場規模を分母にして、市場シェアを計算すると、2021年の石油ガス開発業界の世界シェア1位はシノペック、2位はサウジアラビアのサウジアラムコ、3位はペトロ・チャイナとなります。

順位 Company name(English) 会社名 市場シェア
1位 Sinopec シノペック 5.70%
2位 Saudi Aramco サウジアラムコ 4.61%
3位 PetroChina ペトロ・チャイナ 4.36%
4位 Exxon Mobil エクソン・モービル 3.43%
5位 Royal Dutch Shell シェル 2.63%
6位 TOTAL トタル 2.59%
7位 BP BP 1.83%
8位 Chevron シェブロン 1.82%
9位 Petrobras ペトロブラス 1.50%
10位 Pemex ぺメックス 1.39%
11位 ENI ENI 1.21%
12位 Rosneft ロスネフチ 1.18%
13位 Gazprom ガスプロム 1.08%
14位 Petronas ペトロナス 0.99%
15位 Pertamina プルタミナ 0.96%
16位 ConocoPhillips コノコフィリップス 0.96%
17位 CNOOC 中国海洋石 0.82%
18位 Equinor エクイノール 0.80%
19位 Occidental Petroleum Corporation オキシデンタル・ペトロリアム 0.79%
20位 国際石油開発帝石 国際石油開発帝石 0.76%
21位 Petróleos de Venezuela ベネズエラ国営石油公社 0.66%
22位 Repsol レプソル 0.43%
石油ガス開発業界の世界市場シェア(売上高ベース、2023年)

原油生産会社の世界シェア(売上高ベース、2023年)©2024 Deallab

【市場規模】

本サイトでは2023年の石油ガス業界(上流+下流)の金額ベースの市場規模を7兆ドルとしています。参照したデータは以下の通りです。

調査会社のリサーチアンドマーケットによると、2023年の石油ガス業界の市場規模は7兆1883億ドルです。2028年にかけて、年平均5.2%で成長し、同年には9兆3479億ドルへと規模が拡大する見込みです。

エクソンモービル、シェルとBPの収益力と成長性分析

2021年度は、ロスネフチの持ち分売却で損失を計上したBPを除き、油価上昇の恩恵を受け、ROE、EBITDA成長率、売上高成長率ともプラスとなりました。

市場規模 成長率見込み
2023年 7兆1882.5億ドル
2024年 7兆6258.2億ドル 6.10%
2028年 9兆3479億ドル 6.10%
オイルメジャー・石油開発業界の市場規模推移 ©2024 Deallab

オイルメジャー・石油開発業界の市場規模の予想成長推移 ©2024 Deallab

ショートタームエナジーアウトルック 出所eia
ショートタームエナジーアウトルック 出所eia

原油埋蔵量は約1兆7千億バレル程度と推計されます。地域別の埋蔵量の分布では中東が約50%、南米20%、北米15%、欧州とアフリカが其々8%、アジア数%程度と言われています。

石油・ガス開発ビッグ3の指標比較(2021年度決算ベース)
石油・ガス開発ビッグ3の指標比較(2021年度決算ベース)
*ROEは直前期の当期利益と期初と期末の自己資本額の平均値から計算をしています。
**売上高成長率とEBITDA成長率は直前期を基準に過去5年間の年平均成長率(CAGR)を計算しています。

【M&Aの動向】

現在の欧米の石油メジャーの源流は、かつて石油産業を独占したスタンダード・オイル・トラストの末裔とも言うべき会社です。スタンダード・オイル・トラストは1911年に7社に分割されますが、セブン・シスターズと言われ、その7社は数々の再編を経て、現在の欧米メジャーのエクソンモービル、BP、シェブロン、ロイヤル・ダッチ・シェルの源流になっています。
1960年に設立されたOPEC(石油輸出国機構、Organization of the Petroleum Exploring Countries)による原油価格の統制や、1970年代の中東の産油国による石油会社や鉱区の国有化が大きな影響を及ぼしました。こうした地政学リスクも業界再編に影響を及ぼします。石油価格が下落した1999年~2002年にかけて石油メジャー同士の再編が頻発しています。最近の石油価格の下落が業界再編に与える影響には注目です。

  • 1984年:米国のSoCalとGulfの合併
  • 1998年:英国のBPと米国のAmocoが合併が合併してBP Amocoが誕生
  • 1999年:フランスのTotalとベルギーのPetro Finaが合併してTotalFinaが誕生
  • 1999年:米国のExxonとMobilが合併してExxon Mobilが誕生
  • 2000年:BP Amocoが米国のArcoと経営統合をしてBPが誕生
  • 2000年:TotalFinaとElf Aquitaineが経営統合をしてTotalが誕生
  • 2001年:ChevronとTexacoが経営統合をしてChevronが誕生
  • 2009年:エクソンモービルによるXTOエナジーの買収
  • 2013年:中国CNOOCがカナダのネクセンを買収
  • 2015年:ロイヤル・ダッチ・シェルによるBGの買収
  • 2016年:エクソンモービルよるインターオイルの買収
  • 2017年:フランスのトタルによるAPモラーマースクの石油上流権益の買収
  • 2017年:フランスのトタルによるエンジーのLNG事業の買収
  • 2017年:エクソンモービルによるモザンビークの天然ガス事業のイタリア・エネルからの買収
  • 2018年:フランスのトタルによる電力供給会社のディレクト・エネルジーの買収
  • 2022年:バークシャー・ハザウェイがオキシデンタル・ペトロリアムの株式を追加購入
  • 2017年ロスネフチ、エッサール・オイル・リミテッドの株式49%を買収する戦略的取引を成功裡に締結。
  • 2018年:トタルは、株式および債務取引の一環として、Mærsk Olie og Gas A/S (Maersk Oil) の買収完了。
  • 2019年:ペトロナス、ブラジルのタルタルーガ・ヴェルデおよびエスパダルテ・モジュールIIIの株式50%の取得を完了。
  • 2020年:シノペックは石油・ガスパイプライン関連資産を中国石油ガス配管網有限公司に売却。
  • 2024年:アラムコ、ガス&オイル・パキスタンの株式40%の取得を完了。
  • 2024年:ペトロ・チャイナの完全子会社である大慶油田が大慶石油管理局およびCNPC Electric Energyと買収契約を締結。
  • 2024年:エクソンモービル、パイオニア・ナチュラル・リソース社の買収を完了。
  • 2024年:シェル、太陽光発電およびエネルギー貯蔵開発会社サヴィオンの買収を完了。
  • 2024年:ENI:ネプチューンの買収完了

【会社の概要】

Saudi Aramco(サウジアラムコ)

サウジアラビアの国営石油会社です。世界三大国営石油会社(NOC)の一角です。原油生産量ではエクソンモービルの3倍超、埋蔵量では20倍と圧倒的存在感を示しています。

Gazprom(ガスプロム)

ロシアの国営エネルギー会社です。世界三大国営石油会社(NOC)の一角です。ガス確認埋蔵量は全世界の20%弱、ロシアの70%超を占めるといわれており、非常に大きな影響力を持っています。国営石油会社のロスネフチとシブネフチを買収しています。

Shell(シェル、旧ロイヤル・ダッチ・シェル)

1907年に誕生した石油メジャーです。2005年にオランダのロイヤル・ダッチとイギリスのシェルが合併して現在の形となりました。かつてのセブンシスターズである民間石油メジャーのエクソン・モービル、BPと競合しています。温暖化ガスの流れを受け、ガス分野の強化やPower as a Service (PaaS)分野の強化を図っています。2021年はオランダの裁判所から二酸化炭素(CO2)の純排出量の削減を命じる判決を出され、物言う株主からリニューアブルエネルギー事業の切り出しを求められています。社名をシェルへと再変更しました。さらに詳しく

Exxon Mobil(エクソン・モービル)

Exxon Mobil(エクソンモービル)は、1870年に創業した米に本拠を置く石油メジャーです。1999年にエクソンとモービルが合併しエクソン・モービルとなりました。
原油・ガスの探査と生産を在来型から深海まで行い、重油、シェール、LNGなど幅広い分野の上流権益を保有しています。中下流では石油化学コンビナートやガソリンスタンドを展開している垂直統合型のビジネスモデルが特徴です。
脱炭素の流れの中で総合エネルギー会社への脱皮を模索中です。2021年には環境系の物言う株主エンジン・ナンバーワンが取締役会の議席を獲得しました。さらに詳しく

BP(British Petroleum、ビーピー)

英に本拠を置く石油メジャーの一角です。2015年に英ガス大手のBGを買収しました。

中国石油天然気集団公司

China National Petroleum Corporationの略称であるCNPCがよく使われています。中国政府系の国営石油会社。子会社に石油会社の事業を行うPetro China(中国石油)を保有しています。SinopecとCNOOCと併せて、中国の3大石油会社と言われています。

Chevron(シェブロン)

米カリフォルニア州に本拠を置く石油メジャーの一角です。ガルフオイルやテキサコを買収し上位3強入りを狙っています。2019年には、独立系の米石油大手アナダルコを買収しました。買収総額は500億ドルです。

Total Energies(トタル・エナジーズ)

仏に本拠を置く石油メジャーの一角です。地球温暖化対策の国際的な枠組みであるパリ協定に沿う形で、近年はガス・電力のバリューチェーンを拡大しています。2018年に電力供給会社である仏ディレクト・エネルジーを買収しました。脱化石燃料を明確にするために、2021年に社名をTotal Energies(トタル・エナジーズ)へと変更しました。

ConocoPhillips(コノコフィリップス)

米ヒューストンに本拠。2002年にコノコとフィリップスが合併して誕生しました。

ENI(イーエヌアイ)

1926年にイタリア石油公団として設立された政府系の総合エネルギー会社です。現在のイタリア政府の持分は30%です。関連会社に石油やガス油田開発の大手エンジニアリング会社であるサイペム(Saipem)があります。

Petronas(ペトロナス)

マレーシアの国営石油会社です。

Petrobras(ペトロブラス)

ブラジルを代表する半官半民の石油会社です。政府との癒着は政治問題化し、2015年には経営陣の刷新が行われました。ブラジルの深海沖での石油開発はFPSOを利用するため、日本のMODEC(三井海洋開発)と協業を行っています。

中国海洋石油总公司CNOOC(China National Offshore Oil Corporation、中国海油)

中国国営の総合エネルギー会社で海洋の権益に強みを持ちます。カナダの大手エネルギー会社であるネクセンを買収しています。

Sinopec(China Petrochemical Corporation、シノペック)

中国国営の三大総合エネルギー会社の一角です。

Sinochem(シノケム、中国中化集団)

中国国営の化学会社です。2021年にシノペックと経営統合をしました。

Petróleos de Venezuela(ペトロレオス、ベネズエラ国営石油公社)

ベネズエラの国営石油会社です。API比重で原油を分類したときに26度以下の超重質油が産出されることが特徴ですが、開発技術の導入等が遅れています。

台湾中油

台湾の国営石油会社です。中華民国政府によって設立された中国石油公司(China Petroleum Corp)が起源となります。

Pemex(ぺメックス)

メキシコに本拠を置く国営石油会社です。

National Iranian Oil Company(イラン国営石油、 NIOC)

イランの国営石油会社です。世界三大国営石油会社(NOC)の一角です。

Pertamina(プルタミナ)

インドネシアの国営石油・ガス会社です

OAO Rosneft(ロスネフチ)

ロシアの大手国営石油会社です。2017年に石油商社業界大手のトラフィギュラと組み、インドのエッサールグループより石油精製所及び給油会社を1兆4千億円で買収しています。

エクイノール

Equinor(エクイノール)は、ノルウェーの国営石油会社です。旧Statoil(スタトイル)です。石油ガス開発とリニューアブル発電事業に注力をしています。今後のエネルギー転換に備え、2018年に社名からオイルを外す形で社名変更を行っています。

Marathon Oil (マラソンオイル)

米民間の独立系石油会社です。

Occidental Petroleum Corporation(オキシデンタル・ペトロリアム)

1920年に故アーマンド・ハマー氏によってカリフォルニアで創業された米の独立系石油会社です。2019年に米国の独立系の石油開発会社であるアナダルコをシェブロンを退けて、570億ドル(6兆2700億円)で買収しました。アナダルコも保有していたシェールオイルの有力油田のあるパーミアンにおける権益確保を、同油田に権益を持つシェブロンとオキシデンタル・ペトロリアムが競った形での買収合戦といわれています。

Apache Corporation(アパッチ)

1954年にレイモンド・プランクによって創業された米の独立系石油会社です。

レプソル(Repsol S.A)

スペイン最大手の石油・ガス会社です。

タイ石油公社(PTT)

タイに本拠を置く国営石油・ガス開発会社です。旧国営のタイ石油公団。2001年に上場しています。

参照したデータの詳細情報について


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