世界の主要なデジタルヘルスケア企業の一覧、各社の世界市場シェアや市場規模について分析をしています。デジタルヘルスケア企業の製品・サービス提供先は病院機関などBtoBだけではなく、近年はスマートウォッチなどのウェアラブルデバイスを通じたデータ分析や、遠隔医療の一環としてのサービス提供、病院機関のもつデータに患者本人もアクセス可能とするサービスなど個人向けBtoCへも行われています。本記事では、BtoC向け企業に焦点をあてています。
【デジタルヘルスケア業界とは】
デジタルヘルスケア業界は、デジタル技術を活用して医療サービスを提供する新しい分野です。具体的には、遠隔医療、モバイルヘルス、ウェアラブルデバイス、電子健康記録(EHR)などが含まれます。これらの技術は、患者が自宅にいながら医療サービスを受けられる環境を整え、医療従事者の業務効率を向上させることを目的としています。
特にCOVID-19パンデミック以降、デジタルヘルスケアの重要性が増し、遠隔診療や健康管理アプリの利用が急増しました。これにより、医療へのアクセスが向上し、特に地方や医療資源が限られた地域に住む人々にとって大きな利点となっています。また、AIやビッグデータ解析を活用することで、個別化された医療サービスの提供が可能になり、患者の健康管理がより効果的に行えるようになっています。
近年はフィットネスと健康への関心の高まりにより、mHealth(「モバイルヘルスケア」)と呼ばれるモバイル技術(スマートフォンやウェアラブルデバイスなど)を活用して提供される医療および健康ケアが優位となっています。
デジタルヘルスケアは、医療の質を向上させるだけでなく、医療費の削減や業務の効率化にも寄与することが期待されています。しかし、データのプライバシーやセキュリティ、世代間のデジタルリテラシーの差など、解決すべき課題も残されています。
【デジタルヘルスケアの世界市場シェア】
デジタルヘルスケア業界の2023年度の売上高⇒参照したデータの詳細情報を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、2023年のデジタルヘルスケア業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はテレフォニカ、2位はジョンソンエンドジョンソン、3位はAMD デジタルテレメディスンとなります。
順位 | Company name (English) |
企業名(日本語) | 市場シェア |
---|---|---|---|
1位 | Telefonica | テレフォニカ | 18.01% |
2位 | Johnson & Johnson | ジョンソン&ジョンソン | 12.71% |
3位 | AMD Global Telemedicine Inc. | AMD デジタルテレメディスン | 9.48% |
4位 | Koninklijke Philips N.V. | フィリップス | 6.18% |
5位 | Fuji Film | 富士フイルムホールディングス株式会社 | 3.10% |
6位 | GE HealhCare | GEヘルスケア | 2.28% |
7位 | McKesson Corporation | マケッソン・コーポレーション | 1.99% |
8位 | Epic Systems | エピックシステムズ | 1.92% |
9位 | Dexcom Inc | デクスコム | 1.51% |
10位 | Masimo | マシモ | 0.53% |
11位 | Fitbit(Google) | フィットビッド | 0.42% |
12位 | eCINICALWORKS | イークリニカルワークス | 0.38% |
13位 | Veradigm Inc. (旧:Allscripts Healthcare) | ベラダイム(旧:オールスクリプツヘルスケア) | 0.26% |
14位 | MEDITECH(Medical Information Technology) | メディテック | 0.21% |
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デジタルヘルスケア業界の上位企業は、医療機器、モバイルアプリ、クラウドベースのプラットフォーム、遠隔医療ソリューションなど、多様な製品やサービスを提供しています。
テレフォニカが1位にあがっていることから、通信インフラを活用したデジタルヘルスケアサービスの重要性が高まっていることがわかります。
また、ジョンソン&ジョンソンやフィリップスなど従来の医療機器メーカーも上位を占めており、デジタルヘルスケア分野へも積極的に参入して存在感を示していることが分かります。
そして、3位に上がったAMDデジタルテレメディスンなど遠隔医療の専門企業も急速に成長傾向がみられます。
BtoC向け製品・サービスの提供者としてDexcomやFitbit(Google)などのウェアラブルデバイス企業も上位にランクインしており、個人向けヘルスケアデバイスの市場が拡大していることもわかります。
【デジタルヘルスケア業界の市場規模】
当データベースでは、2023年のデジタルヘルスケア業界の市場規模を2,392億ドルとしております。参照した各種調査データは次の通りとなります。
調査会社straits researchによると、2023年の同業界の市場規模は2,392億ドルです。2032年にかけて年平均17.34%で成長し、規模は10,158憶ドルへと拡大することを見込んでいます。⇒参照したデータの詳細情報
年 | 市場規模 | 年平均成長率 |
2023 | 2,392億ドル | – |
2032 | 10,158億ドル | 17.34% |
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【M&Aの動向】
2015年 ジョンソン&ジョンソン、Verily(旧:旧Google Life Sciences)と提携し、Verb Surgical Inc.を設立
2020年 Teladoc Health、糖尿病など慢性疾患のモニタリングで知られるLivongoを買収
2021年 Boston Scientific、ウェアラブル心臓センサーメーカーのPreventice Solutionsを買収
2022年 Oracle、病院や医療システムで使用されるデジタル情報システムのリーディング・プロバイダーCernerを買収
【会社の概要】
Telefonica(テレフォニカ)
スペインに本拠を置く固定及び通信会社です。南米のスペイン語圏を中心に世界展開しています。さらに詳しく
Johnson & Johnson(ジョンソン&ジョンソン)
Johnson & Johnson(ジョンソン&ジョンソン)は、1887年にジョンソン三兄弟によって創設された米国に本拠を置く世界最大級の日用品・医療機器メーカーです。医療・衛生用品のバンドエイドや綿棒、スキンケア用のベビーローション、オーラルケアのリステリン、一般医薬品、整形外科のインプラント、外科関連の手術器具では圧倒的な強みを有しています。さらに詳しく
AMD Global Telemedicine Inc.(AMD デジタルテレメディスン)
AMD Global Telemedicine(AMD デジタルテレメディスン)は、1991年に設立された、約30年以上の経験を持つ遠隔医療技術のパイオニア企業です。遠隔医療遭遇管理システム(TEMS™)を提供し、ライブ遠隔医療と非同期診察のための技術、機器、アプリケーションソフトウェアを開発・販売しています。さらに詳しく
Koninklijke Philips N.V.(フィリップス)
Philips(フィリップス)は、オランダに本拠を置く、家電・ヘルスケアメーカーであり、1891年にヘラルド・フィリップスによって設立されました。照明事業が祖業で、かつては半導体事業等も手掛けていましたが、近年、事業の再構築を行い、現在では医療機器、パーソナルヘルスケアの分野に注力しています。デジタルプラットフォーム「Philips HealthSuite Digital Platform (HSDP)」を通じて、個別化されたヘルスケアサービスを提供しています。さらに詳しく
Fuji Film(富士フィルム)
富士フイルムは、1934年に大日本セルロイドの写真フイルム事業がスピンオフして誕生した会社です。写真フイルムでは長らく世界最大級の会社でしたが、カメラのデジタル化やスマホ化が加速度的に進展した結果、フイルム技術を転用することが可能な医薬品・医療機器・ドキュメンテーションといった分野へ事業転換を進めています。デジタルカメラはコンパクトカメラやインスタントカメラに注力しています。
かつての世界を席巻した写真フイルムという成功の罠にはまらず、事業構造の転換を果たしつつあることは、大企業の成長戦略の成功事例として数多くケーススタディ化されています。富士フイルムは主にBtoB向けの医療機器や技術を提供していますが、BtoC向けにも以下のようなデジタルヘルスケアサービスや製品を展開しています。
健康診断サービス「NURA(ニューラ)」を通して、インド、モンゴル国、ベトナムなどの新興国で健康診断センターを展開しています。約120分で全ての検査を完了し、その場で診断結果を説明するなど、利便性の高いサービスを提供しています。さらに詳しく
GE HealhCare(GEヘルスケア)
GEヘルスケアは、General Electric(GE)からスピンオフして2023年1月4日に独立企業となりました2。同社は、イメージング(画像診断)、超音波、患者ケアソリューション、医薬品診断の4つの主要事業を展開しています。さらに詳しく
McKesson Corporation(マケッソン・コーポレーション)
マケッソン・コーポレーションは、1833年以来、2世紀近くにわたり業界をリードしてきた米国の企業です。全米最大の調剤薬局チェーンであるHeath Martを運営しており、アメリカで処方される薬品の多くを取り扱っています。デジタルヘルスの一環として、オンラインでの処方箋管理や薬の配達サービスも提供しており、消費者は自宅から便利に医薬品を入手できます。さらに詳しく
Epic Systems Corporation(エピック・システムズ・コーポレーション)
1979年に設立された、米国に本拠を置く非公開医療ソフトウェア会社です。2025年現在、 3億2,500万人以上の患者の電子記録がEpicに保管されています。さらに詳しく
Dexcom Inc(デクスコム)
デクスコムは、1999年に設立された米国の医療機器メーカーで、主に持続血糖測定器(CGM: Continuous Glucose Monitoring)システムの開発、製造、販売を行っています。さらに詳しく
Masimo(マシモ)
マシモは、1989年に設立された米企業で、「患者の転帰を改善し、医療費を削減する」という使命のもと、35年間にわたり前進を続けています。マシモ ホスピタル オートメーション™ およびマシモ セーフティネット®プラットフォームを搭載したマシモの接続性、自動化、遠隔医療、遠隔モニタリング ソリューションは、病院内外でのケアの提供を改善し、自動化しています。さらに詳しく
Fitbit(Google)(フィットビッド)
Fitbitは、2007年に米国で設立された企業で、2021年1月にGoogleが買収し子会社化しています。臨床研究でトップの消費者向けウェアラブルであり、Fitbit デバイスを使用した 1,700 件以上の研究が発表されています。ウェアラブルデバイス技術を活用し、個人の健康管理から企業や保険者向けのソリューションまで、幅広いデジタルヘルスケアサービスを展開しています。さらに詳しく
eCINICALWORKS(イークリニカルワークス)
eClinicalWorksは、電子医療記録(EMR)ソフトウェア市場で活躍する米国の医療技術企業です。患者が自身の医療情報にアクセスし、管理できるオンラインプラットフォームや、healowアプリとトラッカーで患者が健康データを追跡し、管理するためのモバイルアプリケーションを通じて、BtoC向けサービスにも注力しています。さらに詳しく
Veradigm Inc. (旧:Allscripts Healthcare)(ベラダイム 旧:オールスクリプツヘルスケア)
Veradigmは、1986年に設立され、旧称はAllscriptsとして知られていました。ライフサイエンス企業、健康保険会社、医療提供者、そして最も重要な患者を対象にした統合データシステムおよびサービスを提供する企業です。さらに詳しく
MEDITECH(Medical Information Technology)(メディテック)
Medical Information Technology, Incorporated は、1969年に設立されたマサチューセッツ州に本拠を置く非公開のソフトウェアおよびサービス会社であり、医療機関向けの情報システムの開発と販売を行っています。さらに詳しく
Validic(バリディック)
Validic, Inc.は、2010年に設立された、デジタルヘルスプラットフォームを提供する米国の企業です。遠隔パーソナライズケアのための最先端のヘルスケアIoTプラットフォームとEHR統合ソリューションを提供しています。さらに詳しく
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