CVCキャピタルからの東芝への買収提案とその結末

2021年4月7日に投資ファンド大手であるCVCキャピタルによる東芝への買収提案が行われたことが明らかになりました。今後、東芝の取締役は、株主の利益を確保するために合理的な努力を行う義務(レブロン基準)が発生してしまうため、東芝経営陣が想定する自社の企業価値の算定、CVCの買収価格と企業価値に乖離がある場合、買収価格見直しやその他条件の交渉、より有利な条件を提示できる他の買手があるかどうかの検証、といったプロセスを経る必要があります。当ページでは、東芝とCVCの買収提案の推移をタイムリーかつ時系列でフォローしています。

東芝について

東芝は、日本を代表する重電メーカーです。重電5社(日立、三菱電機、富士電機、明電舎)の一角です。芝浦製作所と東京電気が経営統合して、東京芝浦電気(現東芝)が1939年に誕生しました。経団連会長を輩出する等日本を代表するメーカーの1社でもあります。2016年のウェスティンハウスの減損問題発覚以降は、事業の再編を行い、ビジネスモデルを大きく転換しています。インフラサービス、インフラシステム、デバイスプロダクトが2020年時点での事業の柱となっています。さらに詳しく

CVCキャピタルについて

1981年にシティバンクのプライベートエクイティ部門として設立された老舗の投資ファンドです。1993年にシティバンクから分社化独立を果たしました。2021年現在運用資産は1178億ドルと投資ファンドでも有数の規模となります。

東芝への提案の経緯

2015年の東芝の不適切会計発覚、2016年のウェスティングハウスの巨額減損によって大幅に毀損した自己資本を回復するため、2017年にアクティビストファンド等も含む投資家への約6000億円の新株発行を実施したことが、今回の提案の遠因とも言えます。東芝は、その後発表した「東芝Nextプラン」で企業価値を向上させるため、2016年には家電事業やヘルスケア機器の売却、2018年は東芝メモリの分社化、パソコン事業やテレビ事業の売却と矢継早に各種施策を打ちました。しかし、外部環境の変化もあり、東芝Nextプラン通りのV字回復には、当初予定よりも時間がかかってしまっています。2017年に東芝株式を取得したアクティビストは不満を抱え、積極的に株主提案を行っています。そうした状況の中で、CVCキャピタルが買収提案を行うに至りました。

東芝の打ち手

  • 2016年
    東芝ライフスタイルを家電・エレクトロニクス・電機業界大手のMidea Group(美的集团)へ売却
  • 2016年
    医療機器・ヘルスケア機器業界大手の東芝メディカルシステムをキャノンへ売却
  • 2017年
    ウェスティングハウスが経営破綻
  • 2018年
    パソコン(ダイナブック)事業をシャープへ売却
  • 2018年
    東芝メモリを分社化・売却

    ベインキャピタルを中心とするコンソーシアムへ売却し、キオクシアへと社名を変更しました。東芝は40%の株式を保有しています。

  • 2018年
    テレビ事業をハイセンスへ売却
  • 2020年

    東芝の理論株価(6560円、株式価値ベースで3兆円)=既存事業の価値(2.2兆円)+キオクシア持分価値(8000億円)ーネット有利子負債等で計算されます。

    3Dインベストメントパートナーズが実施した、既存事業の価値評価は、事業部毎のサムオブパーツ方式で、簡易に試算をしております。カッコ内は2019年の各事業部の売上高と営業利益率です。⇒参照したデータの詳細情報

    東芝の事業部門別の株式価値
    東芝の事業部門別の株式価値 出所:3Dインベストメントパートナーズの資料を基にディールラボ作成

    原子力事業:2490億円 (143億円、10%)
    火力・水力発電事業:1280億円 (221億円、4%)
    送配電機器:1060億円(228億円、7%)
    エレベーター:2330億円(241億円)
    照明:810億円(134億円)
    空調:2550億円(223億円)
    産業システム:1630億円(405億円、5%)
    プリンター:2060億円(507億円、4%)
    HDD:2170億円(453億円、3%)
    ストレージ機器:2360億円(314億円、6%)
    ICTソリューション:1530億円(256億円、7%)

  • 2020年12月

    エフィッシモも総会決議の調査を付議しました。

  • 2021年3月
    エフィッシモ案が臨時株主公開で承認

    外部の第三者委員会が2020年7月の株主総会の議決権行使を調査

  • 2021年4月7日
    CVCキャピタルによる買収提案

    NHKによれば(⇒参照したデータの詳細情報1株約5000円での提案があった模様。日経新聞やその他のメディアによると、買収提案には、買収コンソーシアムには産業革新投資機構や日本政策投資銀行へも参加を呼びかけ、6月中に最終提案を提示、7月TOBを実施予定。
    マイクロンがキオクシアに対して300億ドルでの買収提案を検討しているとのWSJによる報道。

  • 2021年4月9日
    東芝取締役会が提案書受領後に正式検討する旨発表

    防衛事業などが改正外為法や外国貿易法上のクリアランスが得られるか、資金調達が得られるか等の前提条件があり、検討の時間が必要

東芝の株価推移

CVCキャピタルからの提案受領後株価は大きく上昇しました。

東芝の株価推移


買収実現までにクリアすべきポイント

改正外為法

東芝は原子力や国防事業を営み、安全保障に関わる事業を手掛ける国内企業と定義されるため、改正外為法に基づき、海外の投資家が1%以上の株式を取得する際は、財務省と経済産業省による事前審査が必要となります。

キオクシアホールディングス

半導体は経済安全保障上の重要産業であり、既に4割を保有している外資系のベインキャピタルに加え、CVCがキオクシアの4割の株式を保有する東芝を買収すると、全体として9割を外資系が保有することになります。

参照したデータの詳細情報について


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