東芝とファラロンキャピタルの対話
  • 株主提案

東芝とファラロンキャピタルの対話

2018年11月に公表した東芝の「東芝Nextプラン」(以下、原プラン)及びその後の進捗を報告している2020年11月の「東芝Nextプラン進捗報告」(以下、進捗報告)に対して、投資運用会社のFarallon Capital Management(ファラロンキャピタルマネジメント、以下ファラロン)が2020年12月に臨時株主総会を要求し、東芝が2021年3月8日に同総会を開催することを発表しました。
(参照)原プランと進捗報告資料

東芝と2017年の東芝の増資を引受け、社外取締役も担ったファラロン側との意見の相違がどこにあるのかを時系列で分析しています。

ファラロンキャピタルマネジメントについて

1986年に米国で設立された資産運用会社です。約350億ドルの資産を、債権、ロングショート、M&Aやリスク裁定、不動産等への投資で運用しています。

前哨戦

公開対話までのやり取り
  • 2020年11月
    東芝が進捗報告(58頁のプレゼンテーション)を公表

    2018年以降の基礎的収益の改善フェーズは完了し、2021年以降はフェーズ2、3へと移行します。2025年の中期目標は以下の通りです。

    18年度実績19年度実績25年度目標
    売上3.7兆円3.4兆円4.0兆円
    営業利益354億円1305億円4000億円
    ROE1%マイナス12%
    ROICマイナスマイナス15%
    ©進捗報告25頁よりディールラボ作成
  • 2020年12月
    ファラロンが東芝に書簡を送付

    進捗報告は資本政策において原プランと大きく異なっており、株主総会を招集し、資本政策の変更が総会決議を経ない場合は、営業キャッシュフローの全額を株主還元するよう提案したます。

  • 2021年2月
    東芝が臨時株主総会を開催することを開示

    臨時株主総会を3月8日に開催することを決定しました。しかしファラロンによる株主提案には反対を推奨します。

東芝とファラロンキャピタルの公開書簡の論点整理

ファラロン
ファラロン

2018年11月の原プラン39頁に記載の「株主還元の考え方」の通り、適正資本を超える資本は株主還元の対象としているはずではないでしょうか?

東芝
東芝

確かに、原案39頁の解釈については相違はありません。配当性向も30%以上を基本としています。ただし、適正資本はその時々の財務状況や事業計画によって異なってくるものと思われます。よって、適正資本については、都度取締役の検証を受けるものとしております。

ファラロン
ファラロン

進捗報告57頁の図からは、25年までに1.3兆円の営業キャッシュフロー、5000億円のキオクシア株式売却代金、5000億円の負債調達で、計2.3兆円のキャッシュフローが見込まれると推察できますが、30%の配当性向に基づく3000億円、設備投資7000億円を差し引いた1兆3千億円は株主還元されるのでしょうか?

東芝
東芝

仮にキオクシアの株式を売却した場合、売却手取り額の過半は株主に還元する予定です。ご指摘のあった7000億円は、概ねインフラサービスで5000億円、M&Aで2300億円、基本は数百億円、大きければ1000億円の案件を積み上げる予定です。適正資本に基づく追加株主還元と厳格な投資基準に基づくM&Aが成長投資の骨子となります。

ファラロン
ファラロン

過去20年間で6.7兆円の投資を行い、1.8兆円の減損を出しておりM&Aの実施は再び株主資本を毀損するのでは、と危惧しています。むしろ、市場から高い評価を得ている同業他社のコネ、シンドラー、オーティスのように、営業キャッシュフローから借入返済と設備投資を控除した金額を、全額株主還元する戦略の方が、東芝の企業価値を高めるものと思われます。

東芝
東芝

進捗状況25頁の通り、2019年度のROE5%、営業利益1100億円を、2026年度にROE15%、営業利益4000億円へと改善・成長させることで、企業価値向上を目指す予定です。そのために成長投資を行って行く予定です。

ファラロン
ファラロン

書簡をやり取りしても溝が埋まらないようですね。取締役会に裁量を与えるのであるならば、クロ―バック(役員報酬返還義務)をご検討頂くことも選択肢の一つでしょう。いずれにせよ総会での決議を待ちましょう。

日経
日経

もっと大事な論点は、そもそもキャッシュが生み出されるという事業計画の前提条件を分析することではないでしょうか?2026年度に売上1兆円増、ROE15%を目指すには、ROE=(当期純利益÷売上高) × (売上高÷総資産) × (総資産÷株主資本、財務レバレッジ)で分解すると、売上1兆円利益率20%位の会社を買収する必要がありそうですね。

東芝
東芝

ファラロン様の議案は3月18日の臨時株主総会で否決されました。一方、同時に議案として挙がっていた「2020年の総会が公正に運営されていたかを調べる件」については、株主であるエフィッシモ・キャピタル・マネジメント様の案が可決されました。直ちに、株主側から提案のあった株主3名を選任致します。

考察
  • ファラロンと東芝側の生み出されたキャッシュの分配方法をめぐる議論は臨時株主総会の開催に繋がりました。総会開催コストの問題はありますが、機動的に総会が開催されることはコーポレートガバナンス上評価されるでしょう。
  • 日経の指摘の通り、売上高純利益や資産回転を現状もしくは少し改善という前提を置くならば、2025年度の目標達成には、売上高1兆円、当期利益2千億円の会社を買収することが必要になりますが、現状のM&Aのマルチプルを考えれば数兆円規模の買収となってしまいます。
  • 内部成長で利益をどこまで積み上げられるかに注目が集まります。

ファラロンの動向(2022年)

2022年1月に東芝経営陣宛てに、会社3分割案について臨時株主総会において議決権の3分の2の承認基準で株主の承認を得るべきとのレターを送付しました。⇒参照したデータの詳細情報

参照したデータの詳細情報について


参照したデータは以下の通りです。リンク切れなどありましたら、お問い合わせのページからご連絡頂けますと大変有難く存じます。

東芝Nextプラン
東芝Nextプラン進捗報告
臨時株主総会招集ご通知
ファラロンから東芝への手紙(2022年1月)

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