航空貨物業界の世界市場シェア・売上高ランキング・市場規模・M&A(合併買収)について分析をしています。DHL、FedEx、エミレーツ、カタール航空、カーゴルックス航空、チャイナエアライン、シンガポール航空、エールフランス、ターキッシュエアラインズ、エバー航空、全日本空輸といった航空貨物大手の概要も掲載しています。
【空港貨物業とは】
航空貨物業とは、航空機を保有(賃借)する航空貨物会社が、顧客の貨物や郵便物などを顧客の指定する場所の空港まで運送し、対価として運送料を顧客から受領することです。肉・魚介・果物・野菜など鮮度が重要な食品や緊急を要する医療機器・医薬品や部品、精密機械であるパソコンやスマートフォンなどのスピードが求められたり長時間の輸送に不向きな貨物には航空貨物が利用されています。ただし、どんなものでも航空輸送できるわけではなく、基本的に危険物の類はNGです。航空輸送は、かつては運賃が高く、利用することができたのは一部の特別な人々という時代もありましたが現在では、航空機のジェット化、大型化により単位当りの費用が大きく低下して、誰もが利用することのできる運送手段となりました。そのため成長性がきわめて高く、今後も市場の拡大が期待されています。
【市場シェア】
航空貨物会社の2021年度の年間売上高を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、2021年の航空貨物業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はDHLアビエーション、2位はFedEx、3位はエミレーツスカイカーゴとなります。
航空貨物業界の世界市場シェアと業界ランキング(2021年)
順位 | 会社名 | 市場シェア |
---|---|---|
1位 | DHLアビエーション | 30.15% |
2位 | フェデックス | 29.21% |
3位 | エミレーツ・スカイカーゴ | 2.03% |
4位 | カタール航空 | 1.74% |
5位 | カーゴルックス航空 | 1.54% |
6位 | チャイナエアライン | 1.52% |
7位 | シンガポール航空カーゴ | 1.51% |
8位 | キャセイパシフィック航空 | 1.46% |
9位 | ルフトハンザドイツ航空 | 1.40% |
10位 | ターキッシュ エアラインズ | 1.40% |
11位 | エバー航空 | 1.04% |
1位はDHLアビエーションです。ドイツポストグループでDHLエクスプレスの空運を行う事業部です。2位は、アメリカのFedExとなっています。世界最大規模の総合航空貨物輸送会社として、世界220の国と地域を自社の輸送手段で結び、最適な物流サービスを提供しています。日本ではFedEx Expressの日本法人として、「フェデラルエクスプレスジャパン合同会社」がサービスを行っています。3位はエミレーツ・スカイカーゴです。アラブ首長国連邦のドバイを本拠とするエミレーツ・グループの貨物航空会社であり、エミレーツ航空の貨物部門です。貨物専用のボーイング777F型機11機の他にエミレーツ航空が保有する200機以上のボーイング777型とエアバスA380型のワイドボディ旅客機でグローバルネットワークを通じて6大陸140都市以上へ貨物を輸送しています。4位はカタール航空です。カタールの首都ドーハにあるハマド国際空港を本拠地としており、コードシェアも含め150都市以上の国際的な目的地へ繋がっています。5位はカーゴルックス航空です。ヨーロッパのルクセンブルク大公国を拠点とする国際貨物航空会社です。6位、7位にはチャイナエアラインとシンガポール航空が入っています。
日本の全日本空輸は12位に入っています。
【市場規模】
当サイトでは、下記データを参考に、市場シェア算出のベースとなる2022年の航空貨物業界の市場規模を2874億ドルとしています。参考にしたデータは以下の通りです。
調査会社のインターナショナルマーケットアナライシスリサーチアンドコンサルティンググループ(IMARC Group) によれば、航空貨物業の2022年の市場規模は約2874億ドルです。2023年から2028年にかけて5.7%の成長率を見込みます。
調査会社スタティシアによると、航空貨物業界の2022年の市場規模は前年比約10.8%減の約1970億ドルです。航空貨物市場は三年間の減少傾向を経て回復し、2027年には約2103億ドルに達する見込みです。
調査会社のインサイトパートナーズによれば航空貨物業の2022年の市場規模は約1239億ドルです。COVID-19の影響とグローバル分析から2028年には1752億4000万ドルに拡大し、2022年から2028年までのCAGRは5.9%の見込みです。
【M&Aの動向】
・2020年 FedExがECプラットフォームのShopRunnerを買収
・2020年 カタール航空がIAG の 9.99% の株式を約 11 億 5000 万ポンドで購入
・2021年 キャセイパシフィック航空が香港エクスプレス航空を買収
・2022年 DHLがオランダのフルフィルメントプロバイダーMontaとメキシコを拠点とする医薬品およびヘルスケア ロジスティクスのスペシャリストである New Transport Applications (NTA) を買収
・2022年 アトラスエア・ワールドワイド・ホールディングス(AAWW)が米アポロ・グローバル・マネジメントが率いる投資家グループに約52億ドル(約7000億円)で買収される
・2023年 中国国際航空が山東航空の親会社を買収
・2023年 ANAホールディングスが日本郵船から日本貨物航空を買収
・2023年 大韓航空のアシアナ買収を英国が承認
・2023年 ルフトハンザ・ドイツ航空がTAエアウェイズ(旧アリタリア航空)を買収
【会社の概要】
DHL Aviation (DHLアビエーション)
ドイツポストグループ、DHLエクスプレスの空運を行う事業部です。一般航空貨物市場におけるグローバルリーダーの1つです。DHLのオペレーションは150カ国以上で管理されており、すべての主要な市場との間で個別対応したサービスを提供しています。
Deutsche Post(ドイツ郵政、ドイツ)とは、元々国営の郵便会社です。郵政民営化に伴い2002年にDHLを完全子会社化し、企業間物流、フォワーダー、個人向け配送、郵便サービスを手掛ける総合物流会社へと成長しました。Packstationの名称でドイツ国内を中心に宅配ロッカー事業を展開しています。さらに詳しく
FedEx Corporation (フェデックス)
アメリカに本拠地を置く、世界最大規模の総合航空貨物輸送会社として、迅速かつ信頼性の高い輸送サービスを全米ならびに世界220以上の国と地域で提供しています。FedEx(フェデックス)は1971年にフレデリック・W・スミス氏によって設立された米大手総合物流会社です。同氏がイエール大学の学生時代に提出した拠点空港を利用したハブ・アンド・スポーク理論を社会実装した航空輸送や国際宅配便ネットワークに強みを持ちます。国際エクスプレス配送はDHLと首位の座を競っています。 2016年には欧州同業のTNTエクスプレスを買収し、欧州にも強固な基盤を有しています。さらに詳しく
Emirates SkyCargo (エミレーツ・スカイカーゴ)
アラブ首長国連邦のドバイに本拠を置く貨物航空会社です。エミレーツ航空の主要な貨物部門であり、輸送された貨物総トンキロ数と国際貨物輸送トンキロ数の点で、世界で4 番目に大きい貨物航空会社です。
Qatar Airways (カタール航空)
ワード 2022 で「世界最高の空港」に選ばれたドーハのハブであるハマド国際空港を経由して、世界中の 150 を超える目的地に運航しています。
Cargolux Airlines International S.A. (カーゴルックス航空)
ヨーロッパのルクセンブルク大公国を拠点とする国際貨物航空会社です。
China Airlines Ltd. (チャイナエアライン)
中華民国桃園市に本社を置く中華民国最大手の航空会社です。
Singapore Airlines Cargo (シンガポール航空カーゴ)
シンガポール航空の完全子会社であり、国際航空貨物運輸では世界第三位の実力を持っています。
Cathay Pacific Airways (キャセイパシフィック航空)
香港を拠点とする航空会社で、実質最高評価の「ザ・ワールド・ファイブ・スター・エアラインズ(The World’s 5-Star Airlines)」の認定を得ています。
Deutsche Lufthansa AG (ルフトハンザドイツ航空)
ドイツのケルンに本拠を置くドイツ最大の航空会社です。ルフトハンザ航空は、1926年に設立されたドイツ最大の航空会社です。大戦を経て東西ドイツへ分割された時期もありますが、東西ドイツ統一時に東ドイツの事業を引き継ぎました。1994の民営化後は、スイス航空やオーストリア航空を買収して規模を拡大させています。さらに詳しく
Turkish Airlines (ターキッシュ エアラインズ)
トルコの国営航空会社であり、トルコのフラッグ・キャリアです。
参照したデータの詳細情報について
参照したデータは以下の通りです。リンク切れなどありましたら、お問い合わせのページからご連絡頂けますと大変有難く存じます。