水処理膜業界の世界市場シェアと市場規模について分析をしています。デュポン、東レ、日東電工、旭化成、スエズ、北京碧水源科技、三菱ケミカルといった主要な水処理膜メーカー概要も掲載しています。
【水処理膜とは】
水処理膜とは、水に含まれる不純物をμm~nm規模の細孔で分離・除去するための膜の総称で、水処理膜を使用したろ過を「膜ろ過」といいます。近年では家庭用浄水器でも水処理膜の技術が活用され、より身近に感じられるようになりました。
食品・飲料、乳製品、飲料・濃縮物、ワイン・ビールなどの消費者の不健康を予防するための取り組みが強化され、各分野で膜ろ過の利用が拡大しています。
孔径が小さくなるほど水を通すためのエネルギー量が増える点や、定期的に専門的な保守管理が必要な点などの課題もあり、さらなる低コスト化・実用化に向けて開発や研究が進められています。
【水処理膜業界の世界市場シェア】
水処理膜業界の2024年度の売上高⇒参照したデータの詳細情報を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、2024年の水処理膜業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はヴェオリア、2位は東レ、3位はペンテアとなります。
水処理膜業界の市場シェア(2024年)
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*2024年度未公表だったため、2020年度数値を採用
| 順位 | Company name(English) | 企業名(日本語) | 市場シェア |
|---|---|---|---|
| 1位 | Veolia Environnement | ヴェオリア・エンバイロメント | 27.91% |
| 2位 | Toray Industries, Inc. | 東レ | 8.48% |
| 3位 | Pentair Plc | ペンテア | 7.78% |
| 4位 | DuPont Water Technology | デュポンウォーターテクノロジー | 7.24% |
| 5位 | Beijing Originalwater Technology | 北京碧水源科技 | 5.19% |
| 6位 | Asahi Kasei Corporation | 旭化成 | 4.95% |
| 7位 | Nitto Denko Corporation | 日東電工 | 1.23% |
| 8位 | Mitsubishi Chemical Aqua Solutions, Co., Ltd.* | 三菱ケミカルアクア・ソリューションズ* | 0.95% |
*2024年度未公表だったため、2020年度数値を採用
2022年に水ビジネスの巨人「ウォーター・バロン」と言われた2社のヴェオリア・エンバイロメントとスエズが合併して以降、ヴェオリアが他社を圧倒しています。
続く東レ、ペンテア、デュポンが高性能膜技術でグローバル展開を強化しており、旭化成や日東電工も日本発の高度な中空糸膜・RO膜技術で存在感を示しています。水処理膜業界は、環境・資源循環の要として各社が技術革新を競っています。
【水処理膜業界の世界市場規模】
当データベースでは、2024年の水処理膜業界の市場規模を195億ドルとしております。参照した各種調査データは次の通りとなります。調査会社プレセデンスリサーチによると、2024年の同業界の市場規模は194.5億ドルです。2034年にかけて年平均9.5%で成長し、規模は481.9億ドルへと拡大することを見込んでいます。
| 年 | 市場規模 | 成長率見込み |
|---|---|---|
| 2024 | 195億ドル | – |
| 2034 | 482億ドル | 9.5% |

【M&Aの動向】
2013年 東レが韓国のウンジンケミカル社の株式56.2%を取得
2019年 デュポンがEvoqua Water Technologies Corp.からメンブレン事業を買収
2019年 株式会社ウェルシィと三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社が合併
2020年 デュポンが閉回路逆浸透(CCRO)会社であるDesalitech Ltd.を買収
2020年 デュポンがMemcor、他2社の買収を完了
2021年 ペンテアがプリーツコ社の買収を完了
2022年 ペンテアがマニトウォック・アイスの買収を完了
2022年 ヴェオリアがスエズを買収 2025年 ヴェオリアが投資会社CDPQの子会社Water Technologies and Solutions(WTS)を完全子会社化
【会社の概要】
Veolia Environnement S.A(ヴェオリア・エンバイロメント)
1853年に設立され、フランス・パリに本拠を置くヴェオリアグループは「エコロジカル・トランスフォーメーション(環境変革)」のベンチマーク企業となることを目指しています。2022年現在、全世界で約22万人の従業員が、水、廃棄物、エネルギー管理という三つの事業分野において有用かつ実用的で、革新的なソリューションを設計し提供しています。また、相互補完的な関係にあるこれら三つの事業活動を通じて、資源の利用方法を開発し、利用可能な資源を保全、再生しています。2021年にヴェオリアがスエズを買収しました。さらに詳しく
Suez(スエズ)について
Suez(スエズ)は、1880年に設立された世界トップクラスの水道事業運営・産業用水処理会社(ウォーターバロン)です。電力・ガス大手であるエンジ―(Engie)が主要株主でしたが、2021年にヴェオリアが買収をしました。スエズの源流は1800年代中盤にスエズ運河を建設したスエズ運河株式会社にまで遡ることができます。インドスエズ銀行の売却やフランスガス公社(GDF)と合併によるGDFスエズの誕生、その後エンジ―ヘの社名変更を行っております。2017年にはGEから水処理機器大手であるGEウォーターを32億ユーロで買収し、運営会社から水処理機器製造販売へと事業領域を拡大しております。MBR、UF/MF膜の分野に強みを持ちます。2020年にはドイツの化学メーカーであるランクセスよりRO膜を買収しました。2021年にヴェオリア傘下となりました。
Pentair Plc(ペンテア)
ペンテアは2012年に創業し英国に本社を置く、水、その他液体、熱管理、設備保護など各種ニーズに合わせたサービスやソリューションを提供する会社です。さらに詳しく
DuPont Water Technology(デュポンウォーターテクノロジー)
デュポン・ドゥ・ヌムール(E.I du Pont de Nemours)は、1802年にフランス人のエルテール・イレネー・デュポンによって設立された世界最大級の化学メーカーです。2015年米同業のダウケミカルと経営統合しましたが、特殊産業材事業が分社化され新生デュポンとなりました。2011年にデンマークに本拠を置く食品成分大手であるDanisco(ダニスコ)を買収し、ニュートリション&バイオサイエンス事業で食品成分事業を強化していましたが、同事業は2019年に香料大手のIFFとの経営統合し、香料と食品成分を手掛ける総合食品成分会社となりました。水処理膜事業についてはDuPont Water Technology(デュポンウォーターテクノロジー)で展開しています。RO膜に強みがあります。さらに詳しく
Asahi Kasei Corporation.(旭化成株式会社)
日本を代表する化学メーカーです。化学や住宅など多角化経営に特徴があります。水処理膜ではUF/MF膜に強みを持ち、マイクローザブランドで展開しています。膜事業ではセパレータにも強みを持ちます。さらに詳しく
Toray Industries, Inc.(東レ株式会社)
1926年に三井物産が設立した東洋レーヨンを祖とする総合化学メーカーです。祖業は繊維で、東レは東洋レーヨンの略です。現在は日本を代表する素材系メーカーとなっています。
水処理分野ではRO膜の分野に強みを持ちます。ダウ、キャボットと並び大手です。炭素繊維では航空機向けに強みを持ちます。
熱硬化性炭素繊維、CFRPにも強く1971年に発売を開始した「トレカ」の商標で販売をしています。航空機分野ではボーイングへの納入実績では他社を圧倒しています。熱可塑性の炭素繊維複合材に強みを持つオランダのテンカーテ・アドバンスト・コンポジット社を2018年に買収し、熱硬化性と熱可塑性の素材に対応できる技術力を高めています。
セパレータはセティーラブランドで展開しています。車載電池向けでは、ボリューム拡大よりも、利幅が大きいとされるハイエンド向けに特化する方針です。ドイツのダイムラーと提携しています。
エアバッグの生地やおむつ等に使用する不織布でも大手です。さらに詳しく
NITTO DENKO CORPORATION (日東電工株式会社)
日本を代表する包装材料・半導体関連メーカーです。1987年に買収をしたHydranautics社が水処理膜事業の中核です。水処理膜ではRO膜に強みを持ちます。
