任天堂とアクティビストの対話

経営陣との対話を重視するアクティビスト型の投資ファンドであるValue Act Capital(バリューアクトキャピタル)が、11億ドルを投じて任天堂株を購入したうえで、2020年4月に同社との対話を行ったとの報道がありました。バリューアクトキャピタルの概要や投資の狙い等について分析をしています。

バリューアクトキャピタルについて

米国サンフランシスコに拠点を置く経営陣との対話を重視したアクティビスト型の投資ファンドです。同社はIT、インダストリアル、エネルギー、金融セクター、コンシューマー。テクノロジー・ヘルスケア等の広範なセクターの上場企業に対して投資を行っています。投資先企業にはアドビ、マイクロソフト、ロールスロイスなどが含まれます。

過去にはマイクロソフト社に対するキャンペーンを行っています。2013年8月において米マイクロソフト社はバリューアクトキャピタルの社長であるメイソン・モーフィット社長とマイクロソフト社の幹部が同社の中長期的な企業価値向上に向けた経営上の課題をディスカッションしています。メイソン氏はマイクロソフト社の取締役に就任しています。

任天堂への投資について

ロイターによると、バリューアクトキャピタルは11億ドルを投じて任天堂株を購入したうえで、2020年4月に同社経営陣に対して「エレクトロニックアーツやアクティビジョンブリザードのようなゲーム会社に比べて、過去10年間でそこまで成功していない」としているものの、「任天堂は、広範なゲーミングプラットフォームを生かして、効果的なIRを行い、かつ既存の知的財産や任天堂スイッチのようなツールを駆使して高度なデジタルサービスを提供することができればネットフリックス、アップル、テンセント、ディズニーに比肩するグローバルデジタルメディアサービス企業になることができるのではないでしょうか。」との対話を行った模様です。⇒参照したデータの詳細情報

対話の背景の分析

任天堂は、自社独自仕様のコンソール型ゲーム機器及びマリオ等のゲームコンテンツ開発を垂直統合的に手掛けるビジネスモデルに特徴があります。ハードウェア・ソフトウェア一体型の商品開発に加え、任天堂の有するゲームのキャラクターや世界観等を重要視しています。
ハードとソフト開発という垂直統合モデルに対して、近年ではスマホの普及により、ユーザー間の交流・ネットワークといったデジタルコミュニケーションを重視したハードウェアフリーのゲームコンテンツへのニーズも高まっています。任天堂はスイッチを活用したサービス展開を可能にしていることが大きな強みとなっており、従来のソフト・ハードの強みを生かしながら、任天堂のゲームソフト、モバイルアプリ、スイッチを連携させるアプローチをとっています。

独自仕様のハードを重視するか、ソフトなどのコンテンツを重視するか、両方のバランスを取るか、コンテンツを深化させ、ゲーム業界の枠を超えてメディアエンターテイメント分野へ参入をするか、最適解がない難しい経営課題といえ、まさにゲーム会社やメディア会社などへの投資を行い両分野の成長戦略において知見を持つ株主との対話がより重要になっている局面かもしれません。任天堂に限らず、アップルやソニーも程度の差はあれ、同じ戦略アジェンダを持っていることでしょう。

市場規模の比較

ゲーム業界の市場規模

調査会社のグランドビューリサーチによると、2019年の同業界の市場規模は1511億ドルです。2017年にかけて年平均12.9%での成長を見込みます。調査会社のモードーインテリジェンスによると、2020年の同市場規模は1623億ドルです。2025年までに2956億ドルへ市場が拡大することを見込みます。調査会社のニューズーによると、2020年の同市場規模は1593億ドルです。

メディア業界の市場規模

調査会社のビジネスリサーチカンパニーによると、2020年の同業界の市場規模は1兆7130億ドルです。2025年にかけて9.3%での成長を見込みます。⇒参照したデータの詳細情報

ゲーム業界とメディア業界を比較すると約10倍の差があることがわかります。

業界の最近のM&A

ソーシャルゲーム大手のTencentや米国の有力ゲームメーカーであるエレクトロニックアーツやテンセント等が、ゲーム開発会社を買収する業界内での再編の流れが続いています。企業価値に対する売上高の倍率を見てみると、2倍~12倍とばらつきがあります。人気ソフトの評価によって倍率も異なることが伺えます。

売上高倍率は企業価値/直近対象会社売上高で計算
売上高倍率は企業価値/直近対象会社売上高で計算

まとめ

任天堂はハードウェアとソフトウェアのコンビネーション開発に強みがあるゲーム開発会社です。保有しているコンテンツ自体のさらなるunlock the valueを進めることで、ゲーム会社という枠にとらわれず、メディアエンターテイメントという位置づけで存在感を示すことができるかが楽しみです。

参照したデータの詳細情報について


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