HPエンタープライズ(ヒューレットパッカードエンタープライズ)は、米国を代表するIT企業です。2015年にサーバー、ネットワーク機器、クラウドコンピューティングに注力するHPエンタープライズ(Hewlett-Packard Enterprise)と個人向けパソコンやプリンターにフォーカスするHPへと会社分割されました。サーバー、スーパーコンピューターやストレージなど法人向けの機器に強みを持っています。ルーターやスイッチのネットワーク機器事業では、2015年にH3Cテクノロジーズの過半数の株式を中国の清華紫光集団に売却し、米中連合での成長戦略を遂行しています。2017年にサービスやソフトウェア事業をDXC Technologyとして分社化しています。
2019年度
売上高は29,135百万ドルで、前年度比6%減となりました。営業利益は1,274百万ドルになりました。営業利益率は4%になりました。売上の減少は、製品やビジネスプロセスの合理化を含むHPE Next変革イニシアチブの実行に注力しているためです。粗利率は2.7ポイント増加しました。これは、商品コストの減少、コスト管理の取り組み、および利益率の低い Tier-1 サーバー販売と、低利益率の Tier-1 サーバー販売による収益の減少によるものです。
2020年度
売上高は26,982百万ドルで、前年度比7%減となりました。営業利益は329百万ドルの赤字になりました。売上の減少は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが事業運営と世界的な需要環境に影響を与えた為です。
2021年度
売上高は27,784百万ドルで、前年度比3%増となりました。営業利益は1,132百万ドルになりました。営業利益率は4%になりました。売上の増加は、全体的な需要状況が良好で、ほとんどのセグメントで売上が増加した為です。粗利率は2.3ポイント増加しました。これは、強力な価格設定規律、変革プログラムによるコスト削減、利益率の高いソフトウェアを豊富に含む製品への継続的なミックスシフトなどの要因の組み合わせによるものです。
2022年度
売上高は28,496百万ドルで、前年度比3%増となりました。営業利益は782百万ドルになりました。営業利益率は3%になりました。売上の増加は、受注残高の多さに反映された旺盛な需要(特に、サーバー製品の効果的な価格管理とネットワーク製品の強い需要)が、不利な為替変動、継続的なサプライチェーンの制約、ロシアからの収益減少というマイナスの要素を相殺した為です。粗利率は0.3ポイント減少しました。これは主にサプライチェーンの制約と関連コストの増加、さらに、不利な為替変動によるものです。
2023年度
売上高は29,135百万ドルで、前年度比2%増となりました。営業利益は2,089百万ドルになりました。営業利益率は7%になりました。売上の増加は、ネットワーク機器セグメントとサーバーセグメントの平均単価の上昇によるものです。為替変動の影響を取り除くと、売上は前年度比で6%の増加となりました。粗利率は1.7ポイント増加しました。これは、利益率の高いネットワーク機器セグメントの粗利率増加によるものです。
2023年第1四半期(11ー1月)
売上高は7,809百万ドルになりました。営業利益は591百万ドル、営業利益率は8%になりました。
2023年第2四半期(2ー4月)
売上高は6,973百万ドルになりました。営業利益は520百万ドル、営業利益率は7%になりました。
2023年第3四半期(5ー7月)
売上高は7,002百万ドルになりました。営業利益は471百万ドル、営業利益率は7%になりました。
2023年第4四半期(8ー10月)
売上高は7,351百万ドルになりました。営業利益は507百万ドル、営業利益率は7%になりました。
2024年第1四半期(11ー1月)
売上高は6,755百万ドルになりました。営業利益は525百万ドル、営業利益率は8%になりました。
希薄化後EPSは前年度比133%増の1.54ドルになりました。1株当たりの配当は前年度と同額で0.48ドルになりました。配当性向は31%になりました。
2024年2月
2024年度第一四半期のレポートにて、2024年度通期の売上は0から2%増、営業利益率は7から11%増を予定していると掲載されています。
セグメントは、サーバー、人工知能、ストレージ、ネットワーク機器、金融サービスに分類されます。セグメント別の売り上げ構成は以下の通りです。
サーバー
HPE Proliantラックサーバーおよびタワーサーバー、HPE Synergy、HPE BladeSystemsといったサーバーの開発や販売を行っています。
人工知能
エクサスケールスーパーコンピューターを含むスーパーコンピューティングシステムとして販売されることが多いHPE ApolloやCrayの製品の開発や販売を行っています。
ストレージ
HPE Primera、HPE Nimble Storage、HPE Alletra、HPE 3PAR Storageによるプライマリストレージ、HPE Recovery Manager Central、HPE StoreOnce、HPE Cloud Volumes Backupといったストレージ製品およびサービスを提供しています。
ネットワーク機器
Wi-Fiアクセスポイント、スイッチ、ルーター、センサーなどの製品を提供しています。
金融サービス
製品購入者へのベンダーファイナンスを提供しています。
下記の会社がサーバーやストレージ事業で競合しています。
Dell Technologies、Cisco Systems、NetApp、IBM、ファーウェイ・テクノロジーズ、アマゾン、オラクル、富士通株式会社、日立、エクストリームネットワークス、ピュアストレージ、ジュニパーネットワークス、インシュア VMware、Nutanix
クラウド分野を中心にアプリケーションやハードウェア開発会社の買収を積極的に行っています。
2015年 HPEとHPが分社化
2016年 高性能サーバーに強みを持つSilicon Graphicsを買収
2017年 サービスやソフトウェア事業をDXC Technologyとして分社化
2017年 SimpliVityを買収
2017年 Nimble Storageを買収
2019年 スーパーコンピューターのCrayを買収
2020年 Silver Peak Systemsを買収
2021年 ITインフラのモニターや分析を行うCloudPhysicsを買収
2021年 オープンソース型の機械学習を行うDetermined AIを買収
2021年 クラウドデータマネジメントに強みを持つZertoを買収
2021年 SQL分析を行うAmpoolを買収
2023年 ハイブリッド IT インフラストラクチャの監視、クラウドサービス、イベント管理などのIT運用管理プラットフォームを提供するOpsRampを買収
2023年 企業およびパブリッククラウドのリソースへの安全なアクセスを可能にするクラウドベースのセキュリティサービスエッジ製品を専門とするAxis Securityを買収
2023年 企業や通信サービスプロバイダーにモバイルコア ットワークを提供するAthonetを買収
2023年 再現可能なデータパイプラインを自動化するためのソフトウェアプラットフォームをデータエンジニアリングチームに提供するPachydermを買収
紫光集団について
紫光集団(ユニチンファグループ)は、習国家主席が卒業した中国の理系名門大・清華大学(チンホワ・ユニバ―シティ、Tsinghua University)傘下の国有企業です。 紫光集団の呼び方はユニチンファ(Tsinghua Unigroup)です。「しこうしゅうだん」ではありません。1993年に設立されました。米国のインテルや国家IC産業投資ファンド (China National IC Fund)も出資しています。会長は、ユニチンファの株主でもあるCITIC系の北京健坤投資集団(Beijing Jiankun Investment Group、BJIG)を率いるZhao Weiguo(趙偉国)氏です。同氏は、胡錦濤(フー・ジンタオ)前国家主席の息子の胡海峰氏と親しいと言われています。2013年にファブレスのスプレッドトラム(展訊通信)を買収し半導体分野に参入しました。
主要株主は清華大学100%出資のファンド(清華股イ分)が51%、BJIGが49%の株主構成となっています。BJIGはCITIC系の趙氏が組成したファンドです。なお、インテルはユニチンファの子会社に20%を出資し、当該子会社には国家IC産業投資ファンド (China National IC Fund)も資金を提供しています。フラッシュメモリーについては、長江メモリーテクノロジーズ(長江存儲科技、Yangtze River Memory Technologies、YMTG)が武漢と成都に工場を建設し、128層の3次元フラッシュメモリーに乗り出しています。また元エルピーダメモリーの坂本氏を招聘し、DRAM分野への参入をするため、重慶にDRAM工場を建設しています。半導体の設計を行うファブレスメーカーである紫光展鋭(UNISOC)や集積回路基板大手の紫光国芯微電子(Unigroup Guoxin Microelectronics、ユニグループ・グオシン・マイクロエレクトロニクス)、クラウドやITサービスを手掛ける紫光雲技術(ユニクラウド)、紫光股份(ユニスプレンダー)、紫光華山智安科技(ユニインサイト)などがグループ会社です。
過去にマイクロン、ウェスタンデジタル、聯発科技(メディアテック)の買収を目指すも、当局からの承認が得られず、実現には至っておりません。