水素製造業界の世界市場シェアの分析
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水素製造業界の世界市場シェアの分析

水素製造業界の世界シェアと市場規模の分析を行っています。水素製造大手である岩谷産業、エア・リキード、リンデ、エアープロダクツ&ケミカルズ、日本酸素ホールディングスに加え、水素製造ベンチャーであるエルゴサップ、H2PROやBayoTechの概要や動向についても記載しております。

【市場シェア】

水素製造会社の2019年度の水素事業の推定売上高(⇒参照したデータの詳細情報)を分子に、後述する2020年の水素製造の市場規模を分母にして、簡易に2020年の水素製造業界の世界市場シェアを計算するとて、1位はエア・リキードとリンデ、3位はエアープロダクツ&ケミカルズとなります。

1 位 エア・リキード 1.92%
1 位 リンデ 1.92%
3 位 エアープロダクツ&ケミカルズ 1.57%
(参考) 岩谷産業 0.11%
(参考) 日本酸素ホールディングス 0.08%

水素製造では、エア・リキード、リンデ、エアープロダクツ&ケミカルズの上位3社が拮抗しています。上位3社以外は、日本勢を含め、オンサイト型の水素を供給する産業ガス会社が地域に点在する構造です。数量ベースですと、エア・リキードの年間生産量は140億N㎥と推計されています。市場規模に比べ、上位3社の市場シェアは小さく、多くのスタートアップも参入している業界です。

【市場規模】

当サイトでは、以下の公表データも参照にして、2020年の水素製造業界の市場規模を1250億ドルとしております。
調査会社グランドビューリサーチによると、2020年の同業界の市場規模は1208億ドルです。2028年まで年平均約5.7%での成長を見込みます。また調査会社のマーケッツアンドマーケッツによると、2020年の同市場規模は1300億ドルです。2025年まで年平均9.2%での成長を見込みます。⇒参照したデータの詳細情報
水素は、燃焼しても二酸化炭素を排出しないクリーンな燃料として注目を集めており、今後は自動車やバス、トラック、航空機、船舶といった輸送機器の燃料電池の原料としての需要が高まってくると考えられています。

水素製造のトレンド

水素は、古くからアンモニア製造、原油の脱硫用、ガラス類の製造で利用されていました。水素の製造方法を分類する際に、水素は苛性ソーダ(NaOH)製造や製鉄の際に発生する副生ガスか石化燃料から製造した水素かによって大きく分類されます。さらに、石化燃料の製造にも原料によって複数の方法があります。最近ではESGの側面から製造方法毎に、「グリーン水素」「ブルー水素」「グレー水素」と水素の色分けが進んでいます。

グリーン水素

水素の製造工程でCO2を排出しない水素です。リニューアブル電源(風力や大陽光)の電力で水電解法(water electrolysis、水を電気分解させ水素と酸素を生み出す)によって製造されます。他の方法で製造するよりも現状コストが高いと言われています。また電極に用いる触媒にも更なる開発が必要と言われています。

ブルー水素

天然ガスや褐炭(石炭)等の化石燃料を、水蒸気メタン改質技術(Steam methane reforming technology)や自動熱分解技術(Autothermal Reforming technology)などで水素と二酸化炭素に分解し、二酸化炭素を回収して製造される水素です。従来水素の製造で用いられてきた技術です。二酸化炭素の回収(Carbon Capture Utilization and Storage, CCUS)については更なる技術開発が必要と言われています。

グレー水素

水素製造工程で発生する二酸化炭素を空気中に放出して製造された水素です。二酸化炭素を放出するので、クリーンな燃料とならず、今後は規制の対象となっていく可能性があります。

とくにグリーン水素製造やCCUSの分野では、標準的な技術が定まっておらず、多くのスタートアップが新規参入をしていることも特徴です。

さらに業界を詳しく知るためのお薦め書籍と業界団体

日本の国家戦略「水素エネルギー」で飛躍するビジネス―198社の最新動向
図解入門ビジネス 最新 水素エネルギーの仕組みと動向がよ~くわかる本

ハイドロジェンカウンシル(水素協議会)

【会社の概要】

エア・リキード

Air Liquide(エア・リキード)は仏産業ガス最大手です。日本国内シェアは太陽日本酸素とエア・ウォーターに次ぐ第3位です。独リンデとは歴史的に熾烈なシェア争いをしています。2015年に米国のエアガス社を1兆6500億円で買収しました。水素製造でも大手です。

リンデ

Linde(リンデ)は独産業ガス大手です。エア・リキードと競合しています。2006年に大手工業ガスメーカーであったThe BOC Group(ビーオーシー・グループ)を80億ポンドで買収しています。2016年に米プラクスエアと経営統合をしました。水素製造でも大手です。

エアープロダクツ&ケミカルズ

Air Products&Chemicals(エアープロダクツアンドケミカルズ)は1940年に設立された米産業ガス・工業ガス大手です。工業ガス上位2社であるリンデやエア・リキードと規模では差が開いていますが、水素やヘリウムでは世界最大級です。サウジアラビアで再エネ由来のアンモニアを製造しています。ニューヨーク証券取引所に上場しています。さらに詳しく

日本酸素ホールディングス

国内産業ガス最大手です。三菱ケミカルホールディングスが筆頭株主です。2018年にリンデと経営統合を発表したプラクスエアの欧州事業を買収しています。産業ガスの市場はほぼ再編が終わりました。今後はガス分離・合成技術やガスアプリケーション等の新技術の獲得、医療ガスを含むメディカル事業(医療機器、在宅医療、病院設備等)といった新市場の拡充を目指しています。2020年に日本酸素ホールディングスが設立され持株会社体制へと移行しました。さらに詳しく

岩谷産業

LPGガスの大手です。水素燃料は製造から水素ステーションまで手掛け日本で最大手です。

その他、フランスのガス・電力大手であるエンジー(Engie)やFortumグループのドイツのUniperが大手です。

水素製造の有力スターアップ

 Ergosup(エルゴサップ)

本社所在地: フランス
設立年: 2012年
株主: Bpifrance、Air Liquide Venture Capital、Demeter Ventures、GO CAPITAL、Arkéa Capital
2012年に設立されたフランスに本拠をおく会社です。亜鉛電気分解技術によって水素の生成を行っています。2015年に2.7百万ユーロ、2019年に11百万ユーロの資金調達を行っています。

 H2PRO

本社所在地: イスラエル
設立年: 2019年
株主: Breakthrough Energy Ventures、住友商事、TPY Capital、iAngels、Contrarian Ventures
2019年にイスラエルで設立された水電解法による水素製造会社です。特許を取得したE-TAC(Electrochemical, Thermally Activated Chemical)という製造方法に強みを持ちます。

BayoTech(バヨテック)

本社所在地: 米国
設立年: 2015年
株主: Newlight Partners、Sun Mountain Capital、Yield Lab
水蒸気メタン改質(SMR:Steam Methane Reforming)によって水素を製造する会社です。オンサイトに製造装置を設置する点が特徴です。4回のラウンドで合計27.1百万ドルの資金を調達しています。

参照したデータの詳細情報について


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