セメント・コンクリート業界の世界シェアと市場規模について分析をしています。ラファージュホルシム、中国建材、セメックス、ハイデルブルグ、アンキコンチ、太平洋セメント等の世界大手セメント・コンクリート会社の動向も掲載しています。
【セメント・コンクリート業界】
セメントは、建設業界で使用される重要な材料で、レンガ、石、パネルの2つの表面の間の結合剤として機能します。一般的には、石灰石、粘土、砂、鉄鉱石、ボーキサイトを用いて製造する細かい粉末状の物質です。
世界中でセメント製造の需要が急増した理由に、人口増加による住宅建築のニーズの高まりがあります。拡大する建設部門からの製品需要の高まりが現在の市場動向です。非住宅建築や、医療センター、病院などの公共インフラの需要の高まりも製品の消費機会を生み出しました。
COVID-19パンデミックの拡大は、人や物の移動を制限する政府の規制により市場に悪影響を及ぼし、米国とドイツの製造工場の閉鎖は、主要な市場プレーヤーの業務に影響を及ぼしましたが、各国の政府が支援的な規制を制定し、経済の再建を試みています。
インフラプロジェクトへの政府投資は需要拡大の可能性に繋がりますが、製造工場からの炭素排出に対する政府の規制が成長を阻害するとも予想されています。
地域別では、市場は北米、ヨーロッパ、アジア太平洋、中東およびアフリカ、ラテンアメリカに区分されており、主要な市場はアジア太平洋で、世界シェアの大部分を占めています。
セメントとコンクリート主原料と作り方
セメントの工程は、原料工程、焼成・仕上工程に大きく分かれる設備投資産業です。セメントの種類には、汎用的なポルトランドセメントに加え、混合セメントや高炉セメント等の派生セメントも多くありますが、セメント自体の製品の差別化は難しいと言われ、原価にしめる原材料の調達力の強化や製造コスト(燃料費)の効率化が経営上重要となります。なお、セメントの主原料は、石灰石、珪石、粘土等です。
セメントの用途の多くは、コンクリートです、生コンクリート(ready-mix concrete)はセメント、水、骨材の組み合わせで作られます。骨材は、英語でaggregates(アグリゲイツ)と言われ、砕石、砂利、砂などが代表的な骨材です。ほとんどの骨材は、採石場から硬い岩石を発破し、それを抽出して粉砕することで製造されます。
さらにセメント・コンクリート業界に詳しくなるためのお薦め書籍と関連サイト
図解入門 よくわかる最新コンクリートの基本と仕組み
セメントの科学―ポルトランドセメントの製造と硬化
M&Aや再編対象となる素材メーカーの分析
【セメント・コンクリート業界の世界市場シェア】
セメント・コンクリート各社の2023年度の売上高⇒参照したデータの詳細情報を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、2023年のセメント・コンクリート業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はホルシム(旧:ラファージュホルシム)、2位はハイデルベルク・マテリアルズ(旧:ハイデルブルグセメント)、3位はアンフィコンチセメントとなります。
セメント・コンクリートメーカーの世界市場シェア(2023年)
順位 | 会社名 | 市場シェア | |
---|---|---|---|
1位 | HOLCIM | ホルシム (旧:ラファージュホルシム) |
7.41% |
2位 | Heidelberg Materials | ハイデルベルク・マテリアルズ (旧:ハイデルブルグセメント) |
5.76% |
3位 | Anhui Conch Cement | 安徽コンチセメント | 5.06% |
4位 | Cemex | セメックス | 4.46% |
5位 | CHINA NATIONAL BUILDING MATERIAL | 中国建材 | 4.27% |
6位 | UltraTech Cement | ウルトラテック・セメント | 1.82% |
7位 | Taiheiyo Cement | 太平洋セメント | 1.73% |
8位 | Votorantim Cimentos | ボトランチン・シメントス | 1.25% |
9位 | HUAXIN CEMENT | ホワシンセメント | 1.21% |
10位 | Buzzi Unicem | ブッジユニセム | 1.17% |
11位 | Tangshan Jidong Cement | 唐山冀東セメント | 1.01% |
12位 | Taiwan Cement Corp | 台湾セメント | 0.91% |
13位 | China Resources Building Materials Technology | 華潤セメント | 0.82% |
14位 | Mitsubishi UBE Cement | UBE三菱セメント | 0.71% |
15位 | China Shanshui Cement Group | 山水セメント | 0.65% |
16位 | Siam Cement | サイアムセメント | 0.37% |
1位はフランスのホルシムです。事業を量から価値へと移行し、強力な成長ドライバーと利益率を持つ最も魅力的な市場へのシフトに成功しました。
2位はハイデルベルク・マテリアルズです。生産量と併せて名実ともに世界最大級のセメント会社となりました。
3位は中国のアンフィ・コンチセメントです。
【セメント・コンクリート業界の世界市場規模】
当データベースでは2023年のセメント・コンクリート業界の市場規模を3,900億ドルとしております。参照した各種統計データは次の通りです。
フォーチュンビジネスインサイツによれば、2023年のコンクリートとセメント業界の金額ベースの市場規模は4,060億ドルです。2024年には4,232億ドルへと成長し、2032年にかけて4.3%での成長を見込みます。
調査会社のリサーチアンドマーケットによると、2023年の同業界の市場規模は3,858億ドルです。2032年までに6,299億米ドルに達すると予測されており、2023年から2032年にかけて5.6%の成長を見込みます。⇒参照したデータの詳細情報
年 | 市場規模 | 予想成長率 |
---|---|---|
2023年 | 3858億ドル | – |
2032年 | 6299億ドル | 5.6%/年 |
【M&Aの概要】
セメント・コンクリート業界世界大手同志が経営統合してさらに規模を拡大する流れが続いています。
2014年 ラファージュとホルシムの経営統合。世界最大(当時)のセメントメーカーの誕生
2015年 ハイデルブルグによるイタリアのイタルチェメンティ買収
2016年 ウルトラテックセメントによるJaiprakash Associateのセメント事業買収
2017年 中国建材集団と中国中材集団が経営統合
2021年 フランスのセメントなどを取り扱うChryso(クリソ)をSaint-Gobainが買収
2022年 UBEと三菱マテリアルのセメント事業が統合し、UBE三菱セメントが誕生
2023年 セメックスが、イスラエルの建設・解体・掘削廃棄物リサイクル会社SHTANG Recycle LTDを買収
2023年 セメックスが建設資材業界で60年以上の経験を持つモルタルおよび接着剤の技術リーダーであるキーセルを買収
2024年 セメックスが砂利サプライヤーの Couch Aggregates および海洋バルク製品販売業者の Premier Holdings と合弁契約
2024年 ハイデルベルグ マテリアルズが、独立系骨材およびアスファルト製造業者であるハイウェイ マテリアルズ社他2社を買収
【会社の概要】
HOLCIM(ホルシム)
ホルシムは革新的で持続可能な建築ソリューションの世界的リーダーです。「人類と地球のために進歩を築く」という目的のもと、6万人を超える従業員は、すべての人の生活水準を向上させながら、建築物の脱炭素化に取り組んでいます。詳しくはこちら
Heidelberg Materials(ハイデルベルク・マテリアルズ)
ハイデルベルグ・マテリアルズは世界最大の建築資材会社の一つで、5 大陸で事業を展開しています。主な事業は、セメント、骨材、生コンクリート、アスファルトの生産と流通です。さらに、セメントや石炭の海上輸送による世界規模の取引などのサービスも提供しています。詳しくはこちら
Anhui Conch Cement(安徽コンチセメント)
安徽コンチセメントは1997年に設立され、主にセメントと商品クリンカーの生産と販売を行っています。
中国国内18省・自治区、およびインドネシア、ミャンマー、ラオス、カンボジアなど「一帯一路」沿いの海外諸国に160社以上の子会社を持ち、セメント総生産能力は3億5,300万トンに達している。
生産ラインはすべて先進技術を採用しており、エネルギー消費量が少なく、自動化レベルが高く、労働生産性が高く、環境保護に優れています。詳しくはこちら
Cemex(セメックス)
メキシコを本拠にするセメントメジャーの一角です。積極的な買収で、南北アメリカ、カリブ海、ヨーロッパ、アフリカ、中東、アジアに戦略的に展開しています。取引ネットワークは、4 つの中核事業により 100 か国近くにまで広がっています。詳しくはこちら
CHINA NATIONAL BUILDING MATERIAL(中国建材)
中国の大手コングロマリット華潤集団傘下のセメント会社です。セメント、コンクリートの製造販売を行っています。華南を中心に事業を展開しています。香港証券取引所に上場しています。
華潤集団について
China Resources(華潤グループ、チャイナリソーシズ)は、中国の国務院直轄の企業集団です。第二次世界大戦以前からの歴史を持ちますが、改革開放後に持株会社へと再編されました。傘下には華潤ビール、華潤電力、華潤セメントなど電力、不動産、消費財、医薬品、金融、セメント、ガスなどの分野でグループ会社を多数抱えます。さらに詳しく
UltraTech Cement(ウルトラテックセメント)
ウルトラテック セメントは、アディティア ビルラ グループのセメント フラッグシップ企業です。インド最大の灰色セメントおよびレディーミックス コンクリート (RMC) 製造業者であり、白セメントの最大手製造業者の 1 つです。インド全土に10万以上のチャネルパートナーのネットワークを持ち、インド全土の80%以上の市場にリーチしており、事業は、UAE、バーレーン、スリランカ、インドに広がっています。さらに詳しく
Taiheiyo Cement(太平洋セメント)
1998年に秩父小野田セメントと日本セメントが合併して誕生した日本最大手のセメント会社です。詳しくはこちら
Votorantim Cimentos(ボトランチン・シメントス)
1936 年にサンパウロの内陸部ボトランティム市にサンタ ヘレナ工場が開設されたことから始まったブラジル最大のセメントグループです。ブラジルの大手財閥のVotorantimグループに属しています。詳しくはこちら
HUAXIN CEMENT(ホワシンセメント)
武漢に本拠を置く中国大手セメントメーカーです。上海証券取引所に上場しています。
Buzzi Unicem(ブッジユニセム)
1999年にBuzziCementiとUnicemが経営統合して誕生したイタリアに本拠を置くセメント大手です。欧州及び米国の東海岸にセメント工場を保有しています。詳しくはこちら
Tangshan Jidong Cement(唐山冀東セメント)
唐山冀東セメントは、1994年設立の中国大手セメントメーカーです。
BBMGの子会社であり、セメント製造、廃棄物処理、技術コンサルティングなど多岐にわたる事業を展開しています。同社は世界でも有数のセメント生産企業であり、大規模な生産能力と幅広い製品ラインナップを誇ります。
中国のインフラ開発に重要な役割を果たしており、セメント業界における持続可能で革新的な取り組みにも力を入れています。詳しくはこちら
Taiwan Cement Corp(台湾セメント)
台湾セメントは1954年に正式に国有企業から民営企業に転換されました。
1974年、台湾十大建設プロジェクトが開始され、台湾セメントは政府の政策に従って業務を拡大し、台湾の新世界の構築に貢献しました。ゼロから始まった台湾十大建設プロジェクトは、台湾経済の奇跡を生み出し、台湾の近代生活を可能にしました。詳しくはこちら
China Resources Building Materials Technology(華潤セメント)
中国建材は2003年に設立された、国有企業である中国資源集団傘下の香港上場企業です。
基礎建材(セメント・骨材)、構造建材(コンクリート、プレハブ建築、機能建材(人工石材、タイル接着剤、白色セメント)、新素材などの事業領域に重点を置いています。
中国セメント協会による「2023年中国セメント上場企業総合力ランキング」で5位にランクされました。詳しくはこちら
Mitsubishi UBE Cement(UBE三菱セメント)
三菱マテリアル(1893年設立)と宇部興産(1923年設立)のセメント事業および関連事業を承継し、宇部三菱セメントを吸収合併して2022年に設立されたセメント業界を牽引するグローバルカンパニーです。
豊富な石灰石資源を有する東谷鉱山および宇部伊佐鉱山、日本一の生産量を誇る九州工場などの工場群、宇部地区の大型港湾施設等のインフラ設備や国内外の製造・販売ネットワークにより、国内最大級の生産能力と供給のポテンシャルをもっています。
米国南カリフォルニア地区で、セメントから骨材・生コンクリート事業領域におよぶ垂直統合型のバリューチェーンを確立しています。詳しくはこちら
China Shanshui Cement Group(山水セメント)
山東省に本拠を置く、山水グループ傘下のセメントメーカーです。新しい乾式セメントの生産にいち早く取り組んだ国内企業の 1 つです。詳しくはこちら
Siam Cement(サイアム・セメント)
サイアム・セメントは、SCG セメント・グリーンソリューション事業、SCG スマートリビ ング事業、SCG 流通・小売事業、SCG デコール事業(SCGD)、ケミカル事業(SCGC)、パッケー ジング事業(SCGP)があります。SCGセメント・グリーンソリューション事業は、セメント、生コンクリート、耐火物を製造しています。詳しくはこちら
参照したデータの詳細情報について
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