クアルコムの市場シェア・業績推移・売上構成・株価の分析

クアルコム(Qualcomm)は、1985年にIrwin M. Jacobs氏等によって設立された米国に本拠を置く半導体メーカーです。4Gや5Gといった携帯電話やスマホのCDMA(符号分割多元接続)向け半導体で成長しました。直交周波数多元接続や画像処理チップにも強みを持ちます。工場を持たないファブレス・メーカーです。2016年にNXPセミコンダクターズ(NXP Semiconductors)の買収を提案しましたが、その後断念しています。2021年に自動運転システムを手掛けるオートリブから分社化したVeoneer(ヴィオニア)を買収しました。
元々は世界最大の通信用半導体メーカーでしたが、近年は台湾のチップセットメーカーであるメディアテックの台頭により、世界の市場シェア2位となっております。
この状況に対処するため、クアルコムは高単価のチップセットに絞った機種展開を行い、差別化を図っています。また、車載用、IoTなどの多角化に力をいれています。

2023年10月には、スマートフォン向けの最新プロセッサ「Snapdragon 8 Gen 3」を発表しました。生成AIに注力して設計されたハイエンドプロセッサです。最大100億のパラメーターを持つ生成AIモデルをサポートするAIエンジンを搭載しています。

業績推移(年次)

2019年度
売上高は前年度比7.35%増の242.73億ドルになりました。営業利益は43.68%増の134.79億ドルになりました。営業利益率は55.53%になりました。
クアルコムは、特許料の支払いなどに関してアップルとの法廷闘争を続けていましたが、2019年4に和解が成立しました。取引終了後はクアルコムの株価を23%上げる結果となりました。

2020年度
売上高は前年度比3.06%減の235.31億ドルになりました。営業利益は9.47%減の122.02億ドルになりました。営業利益率は51.85%になりました。

2021年度
売上高は前年度比42.65%増の335.66億ドルになりました。営業利益は39.03%増の169.65億ドルになりました。営業利益率は50.54%になりました。

2022年度
売上高は前年度比31.68%増の442.00億ドルになりました。営業利益は35.54%増の229.95億ドルになりました。営業利益率は52.02%になりました。
2021年、2022年はコロナ下でのステイホームの影響で、PC・スマートフォンへの需要が拡大したため、好調な業績となりました。

2023年度
2023年の売上高は前年度比18.96%減の358.20億ドルになりました。営業利益は24.04%減の174.68億ドルになりました。営業利益率は48.77%になりました。
世界的なスマートフォンの在庫台数減少の影響を受けて低下した模様です。スマートフォン市場は成熟し、買い替えの期間も長期化する傾向にあります。自動運転や車載向け半導体の開発を次の成長の柱に据えています。

クアルコムの業績推移

クアルコムの業績推移

業績推移(四半期)

2022年7-9月
売上高は前年同期比22.07%増の113.96億ドルになりました。営業利益は58億ドル、営業利益率は51.29%になりました。
半導体不足の中、Android向けスマートフォンの高価格帯向けチップセットの売上増加により、好調な業績となりました。また、車載向け、IoT向けも好調です。

2023年第1四半期10-12月
売上高は前年同期比11.60%減の94.63億ドルになりました。営業利益は54億ドル、営業利益率は57.27%になりました。
スマートフォン市場の売上が低迷していることが、長く不調の原因となっています。

2023年第2四半期1-3月
売上高は前年同期比16.92%減の92.75億ドルになりました。営業利益は45億ドル、営業利益率は48.60%になりました。

2023年第3四半期(4-6月)
売上高は前年同期比22.72%減の84.51億ドルになりました。営業利益は40億ドル、営業利益率は47.82%になりました。
Androidの中核半導体である「Snapdragon」など中核半導体の売上高が減少しました。

2023年第4四半期(7ー9月)
売上高は前年同期比24.26%減の86.31億ドルになりました。営業利益は41億ドル、営業利益率は47.77%になりました。
2023年度は、スマートフォン市場の売上が低迷していることが、長く不調の原因となっています。この状況下で、経営陣はAIに関する新製品に投資する一方で、経費削減策を講じていると説明しています。

クアルコムの四半期業績推移

クアルコムの四半期業績推移

EPS・配当額・配当性向の推移


希薄化後EPSは前年度比43.54%減の6.42円になりました。1株当たりの配当は前年度比8.39%増の3.10円になりました。配当性向は48.29%になりました。

クアルコムのEPS・1株配当・配当性向の推移

クアルコムのEPS・1株配当・配当性向の推移

業績予想

2023年4Q
2024年1Qの売上高を91億ドル〜99億ドルと予想しています。
市場予想(中間値92億ドル)を上回りました。その背景としてはスマートフォンの販売低迷の緩和、アップルとの供給契約延長があります。

売上構成

セグメントは、CDMA、ライセンス、ベンチャー投資等の3つに分類されます。セグメント別の売り上げ構成は以下の通りです。

クアルコムの売上構成(2022年度)

クアルコムの売上構成(2022年度)

CDMA事業
無線音声およびデータ通信、ネットワーキング、コンピューティング、マルチメディア、GPS製品に使用される3G/4G/5Gなどの技術に基づく集積回路とシステムソフトウェアの開発および供給をしています。

ライセンス事業
知的財産ポートフォリオの一部について、ライセンス供与や使用権の提供をしています。
具体的には、スマートフォンに不可欠な、Wi-Fi 関連技術の特許を取得し、その知財を持つ企業買収を行っています。ほとんどのスマートフォンを製造するときにこのライセンス料をクアルコムに支払う必要があり、その特許料は事業の1つの柱となっています。

ベンチャー投資事業
Qualcomm Venturesを通じてCVC投資を行っています。2022年には、メタバースの開発を手掛ける開発者や企業を対象に、1億ドルのファンド「Snapdragon Metaverse Fund」を設立しました。

直近のM&A(合併買収)

半導体業界では上位企業同士のM&Aが盛んに行われており、クアルコムもその当事者として積極的にM&Aを行っています。

2015年 オーディオ半導体に強いCSRを買収
2016年 半導体大手NXPの買収を発表
2017年 NXPの買収を断念
2018年 ブロードコムが買収を提案(その後取り下げ)
2021年 CPUを手掛けるNUVIAを買収
2021年 自動運転のVeoneerの買収
2023年 イスラエルのスタートアップ、オートトークスを買収

【ご参考】NXP買収提案の骨子

EN