ニッケル生産会社の世界シェアや市場規模について分析をしています。ノリリスク・ニッケル、ヴァーレ、金川集団等の世界大手ニッケル生産会社の概要も掲載しています。
ニッケル生産の世界市場シェア
ニッケル生産会社各社の採掘・生産量(⇒参照したデータの詳細情報)を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして2020年の市場シェアを簡易に試算しますと、企業別ニッケル業界の世界市場シェア1位はノリリスク・ニッケル、2位はヴァーレ、3位は金川集団となります。
- 1位 ノリリスク・ニッケル 9.1%
- 2位 ヴァーレ 8.4%
- 3位 金川集団 8.1%
- 4位 グレンコア 4.5%
- 5位 BHPグループ 3.2%
- 6位 エラメット 1.9%
- 7位 アングロ・アメリカン 1.8%
- 8位 アネカ・タムバング 1.1%
- 9位 シェリット・インターナショナル 0.65%
- 10位 住友金属鉱山 0.61%
- 11位 ファースト・クオンタム 0.5%
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ロシアのノリリスク・ニッケルは、大株主であるルサールが米国の制裁対象となっており影響が心配されます。2位はサドバリー鉱山を有するブラジルのヴァーレ、3位は中国の最大手である金川集団、4位はスイスの資源大手であるグレンコア、5位は西オーストラリア州での産出に強みを持つBHPビリトンとなっています。2019年からランキングに変動はありません。
10位の住友金属鉱山は、低品位の鉱石からニッケルを取り出す事業の商業化に成功し、フィリピンやインドネシアでニッケル生産を行っています。
生産規模
当サイトでは、調査会社等の公表データを参考にし、2020年のニッケル生産量を2,464 千トンとしております。参照にしたデータは以下の通りです。
ニッケルやマンガンのマイニング会社であるエラメットによると、2020年と2019年のニッケルの生産量(リサイクルを除く)は、2,464千トン、2,343千トンとなります。2019年から5.2%生産量が増えています。⇒参照したデータの詳細情報
業界団体のインターナショナルニッケルスタディグループによると2017年の生産量は概ね2百万トンです。調査会社のスタティスタによると、2019年の同生産量2.7百万トンです。
年 | 生産量 | 成長率 |
---|---|---|
2020 | 2,464千トン | 5.2% |
2019 | 2,343千トン | – |
©ディールラボ
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出所:インターナショナルニッケルスタディグループ
ニッケルの特色と用途
特色など | ニッケル |
---|---|
元素記号 | Ni |
色 | 銀白色 |
埋蔵量 | 元素の中では5番目に豊富 |
融点 | 1453℃ |
耐性 | 腐食と酸化 |
磁性 | 室温 |
その他 | 合金化が容易、触媒 |
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ニッケルの生産量のうち、今後需要の伸びが期待できるバッテリーグレード(クラスIと称される)のニッケルは、全体の1/3程度と言われています。フェロニッケルは主にスプーン等の原料であるステンレスとして利用されています。クラスIIのNPI(Nickel pig iron)ニッケルは、所謂低品位のニッケル鉱石で、バッテリー向きでありません。

©ディールラボ
ニッケル生産に伴い、副産物としてコバルトが算出されます。コバルトの年間生産トン数は13万トン程度で、リチウム・イオン電池の正極材として利用されます。ニッケルの鉱床には硫化鉱床(Sulphindes)とラテライト鉱床(Laterites)があります。

ニッケル価格の推移
リチウムイオン電池の正極材は、ニッケル、マンガン、コバルトで構成する三元系(NMC)が主流です。ニッケルは、電気自動車(EV)向けの車載電池に必要な原料(バッテリーメタル)として注目を浴びており、「ニッケル価格の推移」の通り、2020年の春以降、価格も強含んでいます。IEAの「地球の気温上昇を2度より低く抑える」シナリオに基づけば、ニッケルの需要が、今後急増する可能性があります。
2021年ー2026年の銅・ニッケル・鉛・亜鉛業界の概要
世界の主要なニッケル生産会社の動向
Norilsk Nickel (ノリリスク・ニッケル)
Norilsk Nickel(ノリリスクニッケル)は、ロシアに本拠を置くニッケル・銅・パラジウム・プラチナ等の非鉄金属生産会社です。副産物としてコバルトも生産しています。大株主は、ロシアの財閥であるインターロス(Interros)やロシアのオリガルヒであるオレグ・デリパス氏率いるアルミニウム大手のルサール社です。同社が権益を保有するロシア北東のノリリスク-タルナフ地区は、世界最大のニッケル・銅・パララジウム鉱床です。アルミニウム製錬大手で、ルサールが筆頭株主です。ロンドン証券取引所に上場しています。ルサールは米国によるロシアの制裁の対象となっています。ロシアのKola (コラ)Divisionが主要鉱山です。
Vale(ヴァーレ)
Vale(ヴァーレ)は、世界最大手のブラジル資源大手です。資源メジャーの1角です。主力商品は鉄鉱石ですが、ニッケルも大手の一角です。カナダのインコ(Inco)社から2006年に180億ドルで買収をしたオンタリオ州のSudbury(サドバリー) Mine、Voisey's Bay(ボイジーズ・ベイ)をはじめとして、住友金属鉱山も参画しているインドネシアのSorowako(ソロワコ)、ニューカレドニアのVNC-Goro、ブラジルのOnca Puma(オンサ・プーマ)、カナダのThompson(トンプソン)が主要ニッケル鉱山となっています。マンガン、ボーキサイト、アルミニウム、銅、石炭、コバルト、貴金属の鉱山も手掛けています。コバルトは、カナダのSudbury、Voisey‘s Bay、ニューカレドニアで採掘をしています。三井物産との関係が深いことでも有名です。
BHPグループ(ビーエイチピーグループ)
BHP(ビーエイチピー、BHP)は、世界最大の鉱業会社です。2001年に豪ブロークンヒル・プロプライエタリー・カンパニー(Broken Hill Proprietary Company Limited、BHP) と英ビリトン(Billiton plc) の統合により誕生しました。2018年にBHPビリトン(BHP Billiton)からBHPグループへと改称しています。合併後もロンドンとオーストラリアの2つの株式市場に上場するdual-listed companyとして存在しています。
銅、鉄、石炭、石油、ニッケル、ボーキサイト等の鉱石の生産に携わっています。豪州のOlympic Dam鉱山でウランの生産・開発を行っています。ダイヤモンドも手掛けていましたが、2012年にドミニオンダイヤモンドに事業を売却しました。銅鉱山では世界最大規模の生産量を誇るチリのEscondida(エスコンディーダ)を保有しています。ニッケルは、ウェスト・オーストラリア鉱床が、世界最大級の良質なニッケルブリケットやパウダーを生産しています。ウェスト・オーストラリア鉱床においては、Mount Keith(キース山)が、良質なニッケル鉱山です。

BHPビリトン キース山
出所:同社
金川集団(Jinchuan Group、ジンチュアングループ)
中国政府(甘粛省)系の国営資源大手です。宝鋼集団や中国開発銀行も株主(下記株主構成を参照)となっています。ニッケルの生産ではアジア最大です。アフリカのザンビアやコンゴ共和国にも積極的に投資を行っており、コバルトの生産でも大手です。

金川集団の株主構成
Glencore(グレンコア)
グレンコア(Glencore)はスイスに本拠を置く資源商社です。1974年にスイスのトレーダーであるマーク・リッチによって設立されました。2012年にカナダの穀物流通大手バイテラを、2013年には資源メジャーであるエクストラータを買収しています。亜鉛、原料炭、一般炭、銅、コバルト、ニッケルなどの採掘やエネルギー及び穀物トレーディングが事業の柱となっています。トレーディング機能と上流権益の開発機能をあわせもつ資源メジャーとも言えます。2017年1月に穀物トレーディング部門をグレンコア・アグリカルチャーとして分社化し、バイテラへと社名変更しました。さらに詳しく
Sherritt International(シェリット・インターナショナル)
カナダに本拠を置くニッケルやコバルト等資源大手です。キューバ政府とニッケル・コバルト開発会社のCubaniquel(キューバニッケル)を運営しています。
Eramet(エラメット)
フランスに本拠を置くニッケル・マンガン大手です。ニューカレドニアにおけるニッケル権益やガボンにおけるマンガン権益等に強みを持ちます。
住友金属鉱山
日本の金属資源大手です。住友グループの名門です。銅、ニッケル、金に強みを持ちます。発祥は別子銅山です。
アングロ・アメリカン
アングロ・アメリカン(Anglo American)は英大手資源会社です。ロンドン証券取引所に上場しています。銅鉱山ではLos Bronce(ロスブロンセ)鉱山等を運営しています。ニッケルは、ブラジルのBarro Alto(バーホ・アウト)が主要鉱山です。ダイヤモンドのデビアスを傘下に保有しています。金、プラチナにも強みを持ちます。石炭でも原料炭を中心に優良アセットを保有しております。
アネカ・タムバング(Aneka Tambang、Antam)
アネカ・タムバングはインドネシア政府の投資会社であるinalum社傘下企業です。ニ ッケル、金、銀、ボーキサイト、石炭を生産しています。
参照したデータの詳細情報について