ニッケル生産会社の世界市場シェアの分析

ニッケル生産会社の世界シェアや市場規模について分析をしています。ノリリスク・ニッケル、金川集団、ヴァーレ等の世界大手ニッケル生産会社の概要を掲載しています。

【ニッケルの特色と用途】

特色など ニッケル
元素記号 Ni
銀白色
埋蔵量 元素の中では5番目に豊富
融点 1453℃
耐性 腐食と酸化
磁性 室温
その他 合金化が容易、触媒
ニッケルの特色 ©2024 Deallab

ニッケルの生産量のうち、今後需要の伸びが期待できるバッテリーグレード(クラスIと称される)のニッケルは、全体の1/3程度と言われています。フェロニッケルは主にスプーン等の原料であるステンレスとして利用されています。クラスIIのNPI(Nickel pig iron)ニッケルは、所謂低品位のニッケル鉱石で、バッテリー向きでありません。

ニッケルの用途
ニッケルの用途 ©2024 Deallab

ニッケル生産に伴い、副産物としてコバルトが算出されます。コバルトの年間生産トン数は13万トン程度で、リチウム・イオン電池の正極材として利用されます。ニッケルの鉱床には硫化鉱床(Sulphindes)とラテライト鉱床(Laterites)があります。

ニッケルの鉱床
ニッケルの鉱床分布 出所:British Geological Survey

【ニッケル生産会社の世界市場シェア+ランキング】

ニッケル生産会社各社の採掘・生産量⇒参照したデータの詳細情報を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして2022年の市場シェアを簡易に試算しますと、企業別ニッケル業界の世界市場シェアの1位は2020年と同様ノリリスク・ニッケル、2位と3位が逆転し2位に金川集団、3位にヴァーレとなります。

ニッケル業界の市場シェア(2022年度生産ベース) ©2024 Deallab

順位 企業名 市場シェア
1位 Norilsk Nickel (ノリリスク・ニッケル) 7.16%
2位 Jinchuan Group(金川集団、ジンチュアングループ) 6.54%
3位 Vale(ヴァーレ) 5.85%
4位 Glencore(グレンコア) 3.51%
5位 BHP Billiton(BHPグループ) 2.51%
6位 Sumitomo Metal Mining Co., Ltd.(住友金属鉱山株式会社) 2.06%
7位 Eramet(エラメット) 1.34%
8位 Anglo American(アングロ・アメリカン) 1.30%
9位 Aneka Tambang(アネカ・タムバング) 0.80%
10位 First Quantum(ファースト・クオンタム) 0.80%
11位 Sherritt International(シェリット・インターナショナル) 0.53%
2022年のニッケル生産量の市場シェア ©2024 Deallab

2020年に10位だった住友金属鉱山が6位にランクアップしました。

【生産規模】

当サイトでは、調査会社等の公表データを参考にし、2022年のニッケル生産量を306万トンとしております。参照にしたデータは以下の通りです。

国際ニッケル研究会(INSG)によると、2022年の生産量は306.0万トン、2023年の生産量は335.6万トンで、2024年には生産量が355.4万トンに達すると予想しています。

生産量 成長率見込み
2022 306.0万トン
2023 335.6万トン 9.67%
2024 355.4万トン 5.90%
2022-2024年のニッケル生産量の推移 ©2024 Deallab

 ニッケル生産量推移(2022年から2024年) ©2024 Deallab

【ニッケル価格の推移】

リチウムイオン電池の正極材は、ニッケル、マンガン、コバルトで構成する三元系(NMC)が主流です。ニッケルは、電気自動車(EV)向けの車載電池に必要な原料(バッテリーメタル)として注目を浴びており、「ニッケル価格の推移」の通り、2020年の春以降、価格も強含んでいます。IEAの「地球の気温上昇を2度より低く抑える」シナリオに基づけば、ニッケルの需要が、今後急増する可能性があります。

ニッケル価格の推移(1995年~現在、セントルイス連邦準備銀行のニッケル商品価格)

https://s.tradingview.com/widgetembed/?hideideas=1&overrides=%7B%7D&enabled_features=%5B%5D&disabled_features=%5B%5D&locale=ja#%7B%22symbol%22%3A%22FRED%3APNICKUSDM%22%2C%22frameElementId%22%3A%22tradingview_a1f3c%22%2C%22interval%22%3A%22W%22%2C%22saveimage%22%3A%220%22%2C%22studies%22%3A%22%5B%5D%22%2C%22theme%22%3A%22light%22%2C%22style%22%3A%222%22%2C%22timezone%22%3A%22Etc%2FUTC%22%2C%22withdateranges%22%3A%221%22%2C%22studies_overrides%22%3A%22%7B%7D%22%2C%22utm_source%22%3A%22deallab.info%22%2C%22utm_medium%22%3A%22widget_new%22%2C%22utm_campaign%22%3A%22chart%22%2C%22utm_term%22%3A%22FRED%3APNICKUSDM%22%2C%22page-uri%22%3A%22deallab.info%2Fnickel%2F%3Fpreview_id%3D2705%26preview_nonce%3D66dce69f70%26preview%3Dtrue%26_thumbnail_id%3D29370%22%7D

【M&Aの動向】

2020年 BHPグループ、ノリリスク・ニッケルのオーストラリア撤退に伴いニッケル鉱区を購入

2021年 Sibanye-Stillwaterがフランスのエラメ社のニッケル加工施設を買収

2021年 ファーストクォンタム社、豪ニッケル鉱山株をポスコに2億4,000万ドルで売却

2022年 住友金属鉱山が子会社の住鉱テック株式会社をミツミ電機株式会社に譲渡

2023年 グレンコア、Stellantis、PowerGoの3社がACG Acquisitionへブラジルのニッケル銅鉱山買収のために10億ドルを支援

2023年 アングロ・アメリカン社、カナダ・ニッケル社の9.9%を買収

【会社の概要】

Norilsk Nickel (ノリリスク・ニッケル)

Norilsk Nickel(ノリリスクニッケル)は、ロシアに本拠を置くニッケル・銅・パラジウム・プラチナ等の非鉄金属生産会社です。副産物としてコバルトも生産しています。大株主は、ロシアの財閥であるインターロス(Interros)やロシアのオリガルヒであるオレグ・デリパス氏率いるアルミニウム大手のルサール社です。同社が権益を保有するロシア北東のノリリスク-タルナフ地区は、世界最大のニッケル・銅・パララジウム鉱床です。アルミニウム製錬大手で、ルサールが筆頭株主です。ロンドン証券取引所に上場しています。ルサールは米国によるロシアの制裁の対象となっています。ロシアのKola (コラ)Divisionが主要鉱山です。

Jinchuan Group(金川集団、ジンチュアングループ)

中国政府(甘粛省)系の国営資源大手です。宝鋼集団や中国開発銀行も株主(下記株主構成を参照)となっています。ニッケルの生産ではアジア最大です。アフリカのザンビアやコンゴ共和国にも積極的に投資を行っており、コバルトの生産でも大手です。

金川集団の株主構成

金川集団の株主構成

Vale(ヴァーレ)

Vale(ヴァーレ)は、世界最大手のブラジル資源大手です。資源メジャーの1角です。主力商品は鉄鉱石ですが、ニッケルも大手の一角です。カナダのインコ(Inco)社から2006年に180億ドルで買収をしたオンタリオ州のSudbury(サドバリー) Mine、Voisey’s Bay(ボイジーズ・ベイ)をはじめとして、住友金属鉱山も参画しているインドネシアのSorowako(ソロワコ)、ニューカレドニアのVNC-Goro、ブラジルのOnca Puma(オンサ・プーマ)、カナダのThompson(トンプソン)が主要ニッケル鉱山となっています。マンガン、ボーキサイト、アルミニウム、銅、石炭、コバルト、貴金属の鉱山も手掛けています。コバルトは、カナダのSudbury、Voisey‘s Bay、ニューカレドニアで採掘をしています。三井物産との関係が深いことでも有名です。

Glencore(グレンコア)

グレンコア(Glencore)はスイスに本拠を置く資源商社です。1974年にスイスのトレーダーであるマーク・リッチによって設立されました。2012年にカナダの穀物流通大手バイテラを、2013年には資源メジャーであるエクストラータを買収しています。亜鉛、原料炭、一般炭、銅、コバルト、ニッケルなどの採掘やエネルギー及び穀物トレーディングが事業の柱となっています。トレーディング機能と上流権益の開発機能をあわせもつ資源メジャーとも言えます。2017年1月に穀物トレーディング部門をグレンコア・アグリカルチャーとして分社化し、バイテラへと社名変更しました。さらに詳しく

BHP Billiton(BHPグループ)

BHP(ビーエイチピー、BHP)は、世界最大の鉱業会社です。2001年に豪ブロークンヒル・プロプライエタリー・カンパニー(Broken Hill Proprietary Company Limited、BHP) と英ビリトン(Billiton plc) の統合により誕生しました。2018年にBHPビリトン(BHP Billiton)からBHPグループへと改称しています。合併後もロンドンとオーストラリアの2つの株式市場に上場するdual-listed companyとして存在しています。
銅、鉄、石炭、石油、ニッケル、ボーキサイト等の鉱石の生産に携わっています。豪州のOlympic Dam鉱山でウランの生産・開発を行っています。ダイヤモンドも手掛けていましたが、2012年にドミニオンダイヤモンドに事業を売却しました。銅鉱山では世界最大規模の生産量を誇るチリのEscondida(エスコンディーダ)を保有しています。ニッケルは、ウェスト・オーストラリア鉱床が、世界最大級の良質なニッケルブリケットやパウダーを生産しています。ウェスト・オーストラリア鉱床においては、Mount Keith(キース山)が、良質なニッケル鉱山です。

BHPビリトン キース山

BHPビリトン キース山
出所:同社

Sumitomo Metal Mining Co., Ltd.(住友金属鉱山株式会社)

日本の金属資源大手です。住友グループの名門です。銅、ニッケル、金に強みを持ちます。発祥は別子銅山です。

Eramet(エラメット)

フランスに本拠を置くニッケル・マンガン大手です。ニューカレドニアにおけるニッケル権益やガボンにおけるマンガン権益等に強みを持ちます。

Anglo American(アングロ・アメリカン)

アングロ・アメリカン(Anglo American)は英大手資源会社です。ロンドン証券取引所に上場しています。銅鉱山ではLos Bronce(ロスブロンセ)鉱山等を運営しています。ニッケルは、ブラジルのBarro Alto(バーホ・アウト)が主要鉱山です。ダイヤモンドのデビアスを傘下に保有しています。金、プラチナにも強みを持ちます。石炭でも原料炭を中心に優良アセットを保有しております。

Aneka Tambang(アネカ・タムバング)

アネカ・タムバングはインドネシア政府の投資会社であるinalum社傘下企業です。ニ ッケル、金、銀、ボーキサイト、石炭を生産しています。

First Quantum(ファースト・クオンタム)

カナダの銅、ニッケル、金、銀の生産、及び探鉱と開発を行っている会社です。
ロンドン証券取引所に上場しています。ザンビアで手がけるKansanshi鉱山(銅、金)、トルコのÇayeli鉱山(銅、亜鉛)、モーリタニアのGuelb Moghrein鉱山(銅、金)、オーストラリアのレーベンズソープ(Ravensthorpe)鉱山(酸化ニッケル)、フィンランドのPyhäsalmi鉱山(銅、亜鉛)、パナマのコブレパナマ(Cobre Panama)鉱山(銅)があります。

Sherritt International(シェリット・インターナショナル)

カナダに本拠を置くニッケルやコバルト等資源大手です。キューバ政府とニッケル・コバルト開発会社のCubaniquel(キューバニッケル)を運営しています。

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