ケリングの市場シェア・業績推移・売上構成・株価の分析

ケリングは仏大手ブランドマネジメント会社です。2013年PPR(ピノー・プランタン・ルドゥート、Pinault-Printemps-Redoute)から社名を変更しました。1921年より続く伊ファッションブランドのグッチ(GUCCI)を筆頭に主にファッション・宝飾品関連のブランドを保有しています。主要ブランドには、グッチのほかに、1992年より続く英アパレルブランドのアレキサンダー・マックイーン(Alexander McQeen)、1937年により続くバスク系スペイン人のクリストバル・バレンシアガによって生み出されたバレンシアガ(BALENCIAGA)、1966年より続く伊ファッションブランドのボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)、1961年により続く仏ファッションブランドのイブ・サン・ローラン(Yves Saint-Laurent)、伊ファッションブランドのセルジオ・ロッシ(Sergio Rossi)、英ファッションブランドのステラ・マッカートニー(Stella McCartney)、1858年に設立され仏ヴァンドーム広場にブティックを構えた最初の宝石会社のブシュロン(BOUCHERON)、1791年より続くスイスの高級時計メーカーのジラール・ペルゴ(GIRARD-PERREGAUX)、スイスの高級時計メーカーのジャンリシャール(JEANRICHARD)、1967年より続く伊ジュエリーブランドのポメラート ドド(Pomellato)が含まれます。一方で、独スポーツブランドのプーマ(PUMA)は2018年に、ケリングが持分を、ケリングの株主に分配する形で、同社より独立を果たし、2019年に米スケートボード、スノーボード、サーフボード向けファッションブランドのボルコム(Volcom)を売却するなどポートフォリオの入れ替えを図っています。

業績推移

2019年度
売上高は15,884百万ユーロで、前年度比16%増となりました。営業利益は4,610百万ユーロになりました。営業利益率は29%になりました。売上高の増加は、グッチの成長の影響が大きく、売上高成長の約60%を占めましたが、他のブランド、特にイヴ・サンローランとバレンシアガも売上成長に貢献しました。

2020年度
売上高は13,100百万ユーロで、前年度比18%減となりました。営業利益は3,298百万ユーロになりました。営業利益率は25%になりました。COVID-19パンデミックとロックダウンの影響で、年度開始時は売上高が好調であったにもかかわらず、上半期において前年同期比で30%の売上減少となりました。下半期の売上高は、前年同期比で僅か3.3%の減少にとどまりました。

2021年度
売上高は17,645百万ユーロで、前年度比35%増となりました。営業利益は4,797百万ユーロになりました。営業利益率は27%になりました。為替レートを一定にした場合の売上高は13%の増加となります。すべてのブランドで、2020年度と比較して売上高が非常に力強く回復しました。

2022年度
売上高は20,351百万ユーロで、前年度比15%増となりました。営業利益は5,395百万ユーロになりました。営業利益率は27%になりました。第1四半期は、主にヨーロッパでの比較ベースが好調で、前年同期比で21%の売上増となりました。第2四半期は、中国市場の不調によりアジア太平洋地域が減速しましたが北米で成長し、前年同期比で12%の売上増となりました。第3四半期は、ヨーロッパを訪れる観光客数の力強い増加の恩恵を受けましたが、北米では成長が正常レベルに戻り、中国ではトレンドの改善にもかかわらず、事業レベルは前年比で低いままで推移し、全体としては前年同期比で14%の売上増となりました。第4四半期は、西ヨーロッパと日本での業績が堅調だったにもかかわらず、中国でのCOVID-19の状況のさらなる悪化と北米での需要減速が収益の足かせとなり、前年同期比で7%の減少となりました。

2023年度
売上高は19,566百万ユーロで、前年度比4%減となりました。営業利益は4,643百万ユーロになりました。営業利益率は24%になりました。売上高は第1四半期と第2四半期に増加しました。これは、北米とオンライン販売の減少にもかかわらず、直営店(特に西ヨーロッパと日本)の好調な勢いによるものです。第3四半期の業績は前年同期比で9%減少しています。これは、各地での需要の低下と観光客の減少によるものです。第4四半期の売上高(前年同期比で4%減)は、直営店で安定していましたが、年間を通じてそうであったように、オンライン販売の減少に苦しみました。粗利率は1.6ポイント上昇しましたが、店舗費用、コレクションの創作、開発、発表、コミュニケーション、デジタル化の予算を増やすなど、グループのブランドとケリングアイウェアが開発と拡大を支援するために行った投資による営業費用の増加により、売上に対する営業費用の割合は6ポイント増加し、営業利益率は減少しました。

ケリングの業績推移

ケリングの業績推移

業績推移(四半期)

2021年下半期(7ー12月)
売上高は9,598百万ユーロになりました。営業利益は2,578百万ユーロ、営業利益率は27%になりました。

2022年上半期(1ー6月)
売上高は9,930百万ユーロになりました。営業利益は2,807百万ユーロ、営業利益率は28%になりました。売上は前年同期比で23%増加しました。為替変動の影響を取り除くと、売上の成長は16%でした。これは主にヨーロッパでの業績が好調であったためで、中国市場の減速により一部相殺されました。

2022年下半期(7ー12月)
売上高は10,421百万ユーロになりました。営業利益は2,588百万ユーロ、営業利益率は25%になりました。

2023年上半期(1ー6月)
売上高は10,135百万ユーロになりました。営業利益は2,739百万ユーロ、営業利益率は27%になりました。前年同期と比較すると売上は2%増加しました。これは、中国で不調だったことに加え北米で需要が低下した一方で、西ヨーロッパでの需要が正常なレベルまで回復したためです。

2023年下半期(7ー12月)
売上高は9,431百万ユーロになりました。営業利益は1,904百万ユーロ、営業利益率は20%になりました。

ケリングの半期業績推移

ケリングの半期業績推移

EPS・配当額・配当性向の推移

希薄化後EPSは前年度比17%減の24.37ユーロになりました。1株当たりの配当は前年度と同額の14ユーロになりました。配当性向は57%になりました。

ケリングのEPS・配当額・配当性向の推移

ケリングのEPS・配当額・配当性向の推移

売上構成

ブランド別の売上構成ではグッチが59%と最も高く、イブサンローラン、ボッテガ・ヴェネタと続きます。

ケリングの売上構成(2023年度)

ケリングの売上構成(2023年度)

製品別の売上構成

製品別の売上構成では革製品の比率が最も大きくなっています。シューズ、アパレル、宝石時計と続きます。

ケリングの製品別売上構成(2021年度)

ケリングの製品別売上構成(2021年度)

M&A情報

2014年 高級時計ブランドUlysse Nardinを買収
2018年 ケリングの子会社であった、スポーツウェアやスポーツ用品ブランドのPumaが、ケリングから独立
2019年 スポーツおよびライフスタイルブランドVolcomを売却
2021年 高級アイウェアブランドLindbergを買収
2022年 サングラスとアイウェアの高級ブランドMaui Jimを買収
2023年 高級メガネ分野向けの高精度機械部品の製造を専門とするUsinage & Nouvelles Technologiesを買収
2023年 高級フレグランスブランドのCreedを買収

株主構成

ケリンググループを一代で築き上げたフランソワピノー一族の投資会社であるArtémis Groupが約41%の株式を保有しています。Artémis Groupはオークションのクリスティーズ、シャトーラトゥールをはじめとするワイナリー(ワイン会社)、クルーズ運航会社のPonant、プーマ等に投資を行っています。

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